断熱性の高い住まいが「健康」と「お金」を生み出す理由とは?

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近年、住まいの高断熱化が推進されています。これまで省エネルギーの観点で語られることが多かった住まいの断熱ですが、最新の調査により、実は健康にも大きな影響を与えていることが分かってきました。今回は健康とお金の両面から、住まいを高断熱化するメリットをまとめてみました。

1、住まいの断熱と健康との関係が、医学的調査で明らかになってきた

2019年2月、日本サステナブル建築協会が「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査」の中間発表を行いました。この調査は国土交通省の支援事業として2014年~2018年までの5年間、断熱改修をした全国の住宅、約1,800軒(約3,600人)を対象に、改修の前後における居住者の血圧や生活習慣、身体活動量など健康への影響を調査したもので、これにより断熱化と健康についていくつかの重要な知見が得られつつあります。

 

1-1. 室温と高血圧との関係

高血圧は脳梗塞や心筋梗塞などの病気と強い関連をもっており、特に高齢者の場合、血圧の上昇や急激な変化は命にかかわることもあります。今回の調査により室温と血圧の関係について、3つのことが明らかになりました。

 

①夏と冬の室温の差が少ない家ほど、季節ごとの血圧の変動が少なく安定している


②居間と寝室など、部屋間の温度差が大きいほど血圧が高くなる


③断熱改修による室温の上昇で、居住者の血圧が低下する

断熱改修前後の測定で血圧の変化を分析した結果、断熱改修後に最高血圧が3.5mmHg、最低血圧が1.5mmHg低下しました。断熱改修による室温上昇がその一因と考えられます。

※出典:国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」より作成・引用

 

つまり断熱化された住宅は、室温が上がるだけでなく、季節ごとの室温の差を小さくし、家全体を暖かくすることができるため、血圧の上昇や変化を抑えることができるわけです。

 

1-2. 室温と夜間頻尿との関係

夜間頻尿とは、就寝中に1回以上排尿のために起きる症状で、2回以上が治療の対象となります。夜間頻尿によって睡眠の質が低下し、トイレに行くために寒く真っ暗な室内を移動することで転倒・骨折、循環器系疾患などが発生しやすくなると言われています。

今回の調査では、就寝前の居室室温が18℃以上を基準とした場合、室温12℃~18℃では1.6倍、室温12℃未満では3倍、夜間頻尿になる確率が高いということが分かりました。

※出典:国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」より作成

1-3.室温とコレステロール値、心電図異常との関係

今回の調査では健康診断による様々なデータも追跡調査しており、室温が血中コレステロール値や心電図異常の発生率に関係していることが分かりました。寒冷住宅(18℃未満)は温暖住宅(室温18℃以上)と比較して、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)値が基準値を超える確率が1.6倍、総コレステロール値では2.6倍、心電図異常の所見は1.9倍になると推計されています。

※出典:国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」より引用

 

1-4. 室温と身体活動量との関係

直接的な病気の原因ではありませんが、身体活動(いわゆる運動)は、糖尿病や循環器疾患等の予防の観点から重要と言われています。今回の調査では断熱改修後に、1日平均の住宅内活動時間が、男性では65歳未満で約23分、65歳以上で約35分、女性では65歳未満で約27分、65歳以上で約34分増加したという結果が出ています。

断熱改修によって居間や脱衣所の室温が上がり、コタツや脱衣所の暖房が不要となったことにより住宅内での活動量が増加したと考えられます。

 

1-5. 室温とその他疾病・症状との関係

ここまで見てきた以外にも、室温の低い住宅では温暖な住宅と比較して、様々な疾病・症状を有する人が1.3倍~1.6倍も多いということが分かりました。まさに「寒さは万病の元」ということが建築的・医学的な観点から裏付けられたと言えるでしょう。

※出典:国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」より作成

 

1-6. 健康に暮らすために住まいの断熱化が効果的な理由とは

このように室温と健康には大きな関係があり、温暖な環境で暮らすほど病気になりにくいということが分かってきました。住まいを断熱化することは体感的な「暖かさ」「涼しさ」だけでなく、健康的な暮らしのためにとても重要なことだと言えそうです。

 

■断熱性の高い住宅が健康にもたらすメリット

①冬の室温が上昇するとともに、年間を通じて室温が安定する。(夏冬の温度差が少なくなる)

②居間と寝室など、部屋ごとの温度差が小さくなる。

③家全体が暖かくなることで、コタツ等が不要になり身体活動量が増加する。

 

2、高断熱化された家は「お金」を生み出す。断熱の経済的メリットとは?

 

次に、住宅の高断熱化がもたらす経済的なメリットについて見ていきましょう。これまで経済的なメリットというと、とかく「光熱費」だけにフォーカスされがちでしたが、実はそれだけではなく、ローン金利や税金など様々なメリットがあるのです。

 

2-1. 光熱費が安くなる

国土交通省の試算によると、小規模住宅(120㎡以下の戸建住宅)で、断熱等性能等級を「3」から「4」に上げることにより、年間約2万5,000円の光熱費が低減されます。光熱費はその家に住み続ける限りずっとかかり続けるものですから、長い目で見れば大きな差になります。

※出典:国土交通省資料 「住宅の省エネ性能の実態等に関する追加分析」

 

2-2. 住宅ローン金利の優遇

住宅金融支援機構が提供する固定金利の住宅ローン「フラット35」では、省エネルギー性、耐震性など質の高い住宅を取得する場合に、一定期間金利を引き下げる「フラット35S」という制度を提供しています。

■フラット35S による金利優遇 (省エネルギー性能)


2-3. 住宅ローン控除の限度額拡大

住宅ローン控除は、住宅ローンを使って住宅を購入した人に対して、所得税を控除する制度ですが、省エネルギー性の高い「低炭素住宅」については、一般住宅よりも控除額が最大100万円拡大されます。

 

■住宅ローン控除の控除額


2-4. 住宅取得資金の贈与に関する非課税枠の拡大

贈与税の非課税枠とは、住宅を取得するための資金を、父母や祖父母などから援助してもらう場合に、一定額までは非課税で贈与を受けられるという制度です。こちらも「質の高い住宅」は最大3,000万円まで非課税枠が拡大されます。

 

■贈与税の非課税枠(住宅取得等資金贈与の特例を適用した場合)

※「質の高い住宅」とは、断熱等性能等級「4」若しくは一次エネルギー消費量等級「4」以上、長期優良住宅、低炭素住宅 等

2-5.登録免許税の軽減

建物を登記するときにかかる登録免許税についても省エネルギー性能の高い住宅には税率の優遇があります。

■登録免許税の税率

3、住まいを高断熱化するにはどうすればいいのか

このように、健康面、経済面から様々なメリットがある住宅の高断熱化。それでは具体的にどのようにすれば断熱性能の向上が図れるのでしょうか。

 

3-1. 住まいの断熱・省エネ性能を上げるには

住まいの断熱性能を上げるには、建物の外皮、つまり外気と接する部分の断熱が特に重要になります。具体的には、窓・ドア等の開口部や床下・壁・屋根などです。窓については高断熱サッシと複層ガラス、断熱ドアなどを使用し、床や外壁には高性能グラスウールやポリスチレンフォームなどをすき間なく充填し、家全体をすっぽりと覆うことで、建物から外部への熱の流出を防ぎます。

また、給湯器や冷暖房器具についても高効率機器を導入することにより、エネルギー消費量を抑え、さらに太陽光発電やHEMS(Home Energy Management System)を導入することにより「低炭素住宅」の認定を受けられる可能性があります。

※出典:(一社)日本サステナブル協会「エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要」

 

3-2. 省エネルギー性能の評価基準とは

住宅ローンの金利優遇や税制優遇を受けるためには、省エネルギー性能に関する第三者の評価が必要になりますが、その評価基準とはどのようなものなのでしょうか。これまで何度か法改正が行われていますが、現在の基準をまとめると以下のようになります。

※国土交通省資料より作成

 

ローン金利の低減など、経済的メリットを享受できるのは等級「4」以上です。

国は「等級4(平成25年基準)」を、今後新築される建物の標準レベルにしたいと考えており、将来的には、さらに上の一次エネルギー消費量等級「5」(=低炭素住宅)レベルを目指していると言えるでしょう。

 

4、住まいの断熱性能は今後ますます重要になる。建てる前にしっかり検討を

これまで見てきたように、住宅の高断熱化は住む人の健康や経済面で大きなメリットがあるだけでなく、国全体の省エネルギー(CO2削減)の観点からも非常に重要なトピックになっています。しかし日本では、会社によって断熱性に関する知識や取り組みにばらつきが大きく、世界的に見ると日本の住宅性能はまだまだ低いと言わざるを得ません。したがって、おそらく近い将来、新築住宅に対する省エネルギー基準はさらに厳しいものになると予想され、その反面、質の高い住宅にはさらに優遇が図られるかもしれません。

これから家を新築・購入される方は、毎日の快適な暮らしと家族の健康、そして経済的な観点からも、ぜひ住宅の断熱や省エネルギーに関心をもっていただき、物件選び、会社選びに活かしていただけたらと思います。