少子高齢化社会に備える(第1回) ~今こそ二世帯住宅を真剣に考える~

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少子高齢化や共働きの増加を背景に、二世帯住宅が再び注目されています。国も同居・近居の促進を政策として打ち出しています。改めて二世帯住宅のメリットと知っておきたいポイントをまとめてみました。

 

1、日本の少子高齢化はこれからが本番。2036年には3人に1人が高齢者に

 

1-1. 高齢化の推移と人口の将来見通し

統計的に高齢者とは65歳以上の人を言います。そして総人口に占める高齢者の割合が高齢者率です。日本では1970年に7%だった高齢者率が、1994年には14%を超え、2017年には27.7%に達しています。一方、生産年齢人口と言われる15~64歳の人口は、1995年に8,716万人でピークを迎えた後減少に転じ、2013年には7,901万人と32年ぶりに8,000万人を下回りました。総人口が減少する中で高齢化率は上昇を続け、2036年には3人に1人が高齢者となると予測されています。日本の少子高齢化は急速に進んでおり、いよいよこれからが本番と言えるのです。

※出典:内閣府 平成30年版高齢社会白書

 

1-2. 公的年金も先細り。国の報告書に「自助」が盛り込まれる

少子高齢化が進む中、私たち生活者はどのような影響を受けるのでしょうか。つい先ごろ金融庁は、人生100年時代に向け、金融資産の不足を生じさせないための提言を盛り込んだ報告書を発表しました。報告書では、老後に資産の不足を生じさせないために公的年金だけに頼らず、個人年金や投資など「自助」による資産形成を促しています。また、最終報告書からは削除されたものの、原案段階では公的年金の給付水準について「今までと同等と期待することは難しい」などの記述もあり、マスコミなどで大きくとりあげられました。

つまりこの報告書は、今後少子高齢化が進めば、税収の減少と社会保障費の増大により、今の若年層はこれまでと同様の「公助(公的年金等)」を受けるのは難しくなりますよ、今から自分で備えをしておいてくださいね。というメッセージを伝えているわけです。

 

2、国が「同居・近居」を促進。その狙いとは?

 

2-1. 国が促進する3世代同居・近居。狙いは子育てしやすい環境づくり

国は少子化対策の観点から2015年3月に「3世代同居・近居の促進」を打ち出しました。親・子・孫が同居する、言わば「サザエさん」のような世帯を増やそうという政策です。

背景としては、親と同居している夫婦は出生率が高いということがあります。つまり親子の同居を促進し、家事や育児を支え合うことで、共働きや子育てがしやすい環境をつくり、少子化に少しでも歯止めをかけようという国の意図が見えてきます。さらに親が年老いていけば通院や介護の問題もでてくるでしょう。その時は子どもが親のサポートをしながら、それぞれの負担を減らすこともできるというわけです。

また財政面で見れば、今後増大が予想される社会保障費(年金、医療、子育て支援等)の抑制は大きな課題でもあります。3世代同居が増え世帯の中での支え合いが増えることによって、子育てや介護にかかる社会保障費を少しでも抑えたいという意図もあるとも考えられます。

 

3、少子高齢化と同居促進で再び注目される二世帯住宅

少し前置きが長くなりましたが、このような少子高齢化と同居の促進という社会的背景のもとで、二世帯住宅が再び注目されています。これから住宅を取得される子育て世代の方は選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。

 

3-1. 二世帯住宅のメリット

二世帯住宅を検討するにあたり、そのメリットを改めて整理しておきましょう。

 

①建築費、光熱費などが安くなる

親世帯と子世帯が別々に家を建てるよりも、建築費が安くなるというメリットがあります。親世帯の家を二世帯住宅に建て替えるケースであれば土地代がかかりませんし、建物も2棟別々に建てるよりも建築費は安くなるので、老朽化した実家と子世代の住宅取得を一挙に解決できる可能性があります。また2つの世帯が同じ家に住むことにより、水道、電気、ガスなどが共用できるので、エネルギーコスト(光熱費)が安くなります。近年の住宅は断熱性・気密性が高いため、太陽光発電等を組み合わせることによって、「光熱費ゼロの家」を実現することも可能ですし、冬暖かい家は高齢者の健康面でも大きなメリットがあります。

 

②子育てや家事の分担による負担軽減

小さな子どもがいる子育て世帯にとって、いつも近くに親がいて、留守中に子どもの世話をしてくれたり、遊んでくれたりするのはとても心強いものです。家事も分担すれば親世帯、子世帯ともに負担を軽減することができます。特に共働きの夫婦にとっては保育園の送り迎えや急な病気のときなど、大きなメリットと言えるでしょう。

 

③相続税、所得税など税制上のメリット

2015年から相続税の基礎控除が縮小され、相続人が「配偶者と子ども2人」の場合、資産総額が4,800万円を超えると相続税の課税対象になりました。このことにより、都市部に一戸建てを所有する世帯では、相続税対策が課題になってきました。そして、資産のうち大きな割合を占めるのが「土地」ですが、この土地の資産評価を最大80%減額できる制度が「小規模宅地の特例」制度です。この特例を適用するための要件のひとつに「土地を同居していた親族が相続をする場合」という条件があるため、二世帯住宅に住むことそのものが相続税対策につながることがあるのです。

また所得税の面では、同居する親を扶養家族として申告することにより「老齢扶養控除」が受けられることがあります。その年の12月31日現在で親の年齢が70歳以上、年間所得金額が38万円以下、生計が同じであること等の条件をクリアすれば、58万円の所得控除を受けることができます。

※相続税(小規模宅地の特例)、所得税(老齢扶養控除)の詳細については税務署、税理士等にご確認ください。

 

3-2. 二世帯住宅のデメリット

一方、二世帯住宅のデメリットとしてどのようなものがあるのでしょうか。

 

①世代間の生活習慣や価値観の違い

いかに親子とは言え、同じ屋根の下に2つの家族が生活するわけですから、生活習慣や価値観の違いによるトラブルもあり得ます。お互いが違いを認め合い、ほどよい距離感で生活できればよいのですが、それがうまくいかないとストレスになることがあります。できるだけストレスにならない間取りや、生活上のルールづくりがうまく暮らしていくためのポイントです。

 

②売却のしにくさ

もし何らかの理由で家を売却しなければならなくなった場合、地域によっては二世帯住宅のニーズが少ないため、やや売りにくい傾向があります。しかし今後少子高齢化が進み、同居のニーズが高まってくれば、二世帯住宅の価値が見直される可能性は十分にあります。また、後述する「完全独立型」の間取りであれば、売却しないで一方の世帯を貸し出して家賃収入を得るという選択肢もあり得ます。

 

4、二世帯住宅を建てるときに知っておきたいポイント

 

4-1. 二世帯住宅の間取りパターン

二世帯が同じ屋根の下でうまく暮らしていくには、お互いが干渉し過ぎないことが大事といわれますが、そのためのポイントが「間取り」です。代表的な3つのパターンをご紹介しましょう。

 

①完全独立型

玄関、リビング、キッチン、浴室、トイレ、居室など、すべてがそれぞれの世帯に付属する、完全に独立した2世帯の住まいです。干渉はほとんどなくなりますが、設備が2世帯分必要になるのでこの3パターンの中では最も建築費が割高になります。

 

②一部共有型

玄関と浴室は共用するが、キッチン、リビング、居室は別々など、生活空間の一部を共有する間取りです。暮らし方により、キッチンやリビングも共用するなど、いろいろなパターンが考えられます。二世帯住宅のメリットとコストのバランスが取れたパターンだと言えます。

 

③同居型

居室を以外の玄関、キッチン、リビング、浴室、トイレなどすべてのスペースを共用するパターンです。ほとんど同居に近い暮らし方となります。二世帯住宅らしさはなくなりますが、建築費はもっとも安くなります。

 

二世帯住宅は、この間取りをどうするかが最も重要なポイントになります。どのパターンにも一長一短がありますが、それぞれの世帯の生活習慣や要望などを書き出し、経験豊富な設計者に相談してみることをおすすめします。

 

4-2. 住宅ローンの組み方と金利優遇

二世帯住宅をローンで購入する場合、大きく2つの組み方があります。ひとつは「リレーローン」もうひとつが「ペアローン」です。リレーローンは、当初は親がメインで返済を負担し、後に子どもが引き継ぐ方法で、親子の収入を合算することができるので、単独でローンを組むよりも借入可能額が大きくなる、返済期間が長くなる等のメリットがあります。

一方ペアローンは、親と子それぞれが住宅ローンを組み、返済していく方法です。例えば費用3,000万円に対し、親が1,000万円、子が2,000万円というように別々の住宅ローンが組まれる形になります。ローンが2本になるので抵当権設定等に関わる登記費用が増えますが、返済条件等を別々に設定することができ、住宅ローン控除をそれぞれに受けられるというメリットがあります。

 

4-3.自治体の補助金と住宅ローンの金利優遇

国が同居・近居を促進していることは前述の通りですが、それを受けて自治体(市区町村)では「近居・同居 住宅取得補助金」などの補助金を交付しています。自治体によって異なりますが、親と同居・近居する子育て世帯の住宅取得、リフォーム、引っ越しなどに、数10万円~100万円程度の補助金を受けられることがありますので、確認してみるとよいでしょう。また住宅金融支援機構は、こうした補助金を交付している自治体と連携して、3世代同居の住宅購入に、当初5年間の金利を ▲0.25%優遇する「フラット35子育て支援型」という住宅ローンを提供しています。民間でも同様の金利優遇等を行なっている金融機関がありますので、詳しくは不動産会社や住宅メーカーの担当者に確認してみるとよいでしょう。

 

4-4. 二世帯住宅の登記に注意。贈与税が課税されることも

建物を新築した場合には、その所有者を登記する必要がありますが、二世帯住宅の所有権登記には2つの方法があります。ひとつは「区分所有登記」もうひとつは「共有持分登記」です。区分所有登記は、完全独立型の二世帯住宅で、各世帯を完全に別の住戸として登記する方法で、共有持分登記はひとつの住戸をそれぞれの持分割合で登記する方法です。いずれのケースでも、資金の負担分に応じた割合で登記することが重要で、負担分以上の所有権を登記すると、贈与があったものとみなされ課税されるリスクがありますので注意しましょう。登記の仕方を間違えると、住宅ローン控除、贈与税、相続税などに影響が出る場合がありますので、必ず事前に税理士、ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談することをおすすめします。

 

4-5. 親の介護や相続など、親族間の話し合いをしておこう

そして最後に最も重要なのが、親族間の話し合いをしっかりしておくということです。

特に親の土地に二世帯住宅を建てる場合には、基本的に同居する子世帯がその家を引き継ぐことになりますので、きょうだい間での遺産分割や、親が年老いたときの介護等についてもよく話し合い、合意しておくことが重要です。

親が元気なうちはちょっと話しにくいことですが、二世帯住宅を建てることをきっかけとして話し合いの場を設けてみてはいかがでしょうか?

 

少子高齢化や共働きの増加を背景に再び注目されている二世帯住宅。様々なメリットがあると同時に、プランニングや資金計画などの難易度が高く、成功させるにはプロの経験とノウハウが不可欠です。ぜひ一度不動産会社や住宅メーカーで相談してみることをおすすめします。