少子高齢化社会に備える(第2回) ~シニア世代の住み替えを成功させるポイントとは?~

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日本は平均寿命が男女とも80歳を超える世界有数の長寿国で、現在も高齢化が進んでいます。高齢化により老後の期間が長くなり「人生100年時代」に向けて、50~60代の住み替えニーズがますます高まることが予想されます。シニア世代の住まいと住み替えについて知っておきたいポイントをまとめてみました。

 

1、「人生100年時代」の住まいとのつき合い方

 

1-1. 平均寿命は男女とも80歳を超え、老後の住まいが重要に

下表の通り、日本の平均寿命は男性81歳、女性87歳と、世界でも有数の長寿国です。しかし日本では「家は一生で一度の買い物」と言われるくらい住み替えの頻度が低く、一度購入するとその家にずっと住み続ける傾向が強いようです。

 

■平均寿命の年次推移

 

平均寿命が60歳~70歳代だった時代には、多少不便で老朽化していても長年住み慣れた家で最期を迎えたいと考えるのもある意味当然だったかもしれません。しかし今後さらに平均寿命が伸び、「老後」の時間が長くなるにつれ、その期間をいかに快適で健康に暮らせるかは非常に重要な問題になってきます。

 

1-2.「暮らしやすさ」の基準は年齢やライフステージによって変わる

住まいは家族や仕事の基点となるものですから、家族構成や仕事、そして健康状態などによってフレキシブルに変えていくのが合理的と言えます。ここではひとつの例として「夫婦+子ども」というファミリー世帯をイメージしながら、年代別に暮らしやすい家とはどんなものかを考えてみましょう。

  • 20~30代

結婚当初、共働きで仕事が生活の中心である夫婦にとっての暮らしやすさとは、会社への近さ、夜遅くまで買い物できるスーパーやコンビニなど通勤と生活の利便性でしょう。一方、家の広さなどはさほど重視されず、結果として都心・駅近のマンションなどが選ばれるケースが多くなります。

  • 30~40代

子どもが産まれ、仕事と子育ての両立が必要になってくると、通勤や利便性もさることながら、子供部屋や広めのLDKなど家そのものの広さ(間取り)も重要になってきます。また保育園や学校などの教育環境、大きな公園などの自然環境も住まい選びの基準となり、郊外の広めのマンションや一戸建が選択されることが多くなります。

  • 50~60代

子どもが成長し、就職・結婚などで独立する時期になると、それまでの広い家はそれほど必要なくなってきます。むしろ体力や健康状態によっては、生活動線が長く、維持管理が大変な、老朽化した広い一戸建はだんだん暮らしにくくなってくるでしょう。また年齢の高い人ほど生活圏が狭くなってくるので、家の近くで買い物や余暇が楽しめ、コンパクトに暮らせる駅近のマンションや小さめの一戸建などが好まれるようになってきます。

 

あくまでこれは一例ですが、年齢や家族構成、また健康状態などによって、暮らしやすさの基準は変わってくるということがお分かりいただけるかと思います。そして、その環境が大きく変化するのが子育てを終えたシニア世代(50~60代)であり、長い老後の住まいと暮らしを考える絶好のタイミングになるということなのです。

 

1-3. 余裕をもって住み替えたいなら50代前半から検討を始めよう

シニア世代が住まいを考え直すきっかけは大きく3つあると言われています。

①子どもの独立

子どもが独立して夫婦2人の生活になったとき、広すぎる一戸建は暮らしにくく、維持管理にもコストがかかります。

②家の老朽化

木造住宅は築15~20年くらいから老朽化による大規模な修繕・リフォームが必要になってきます。その中でも構造や断熱など家の性能に関わるリフォームには大きな費用がかかるので、住み替えてしまおうかと考えるケースも多くあります。

 

③健康面の不安や病気

体力の衰えや病気をきっかけに、階段のないワンフロアのマンションや、バリアフリーの家に住み替えたいと考える方も多いようです。

 

これ以外にも、「定年退職」「住宅ローン完済」「親の介護」などが住み替えのきっかけになることも多く、そのほとんどが50~60代です。もちろんタイミングは人によって異なりますが、余裕をもって住み替えたいなら、50代前半くらいから検討をスタートするのがベストだと思います。

 

1-4. まずは今の住まいの「不満」を洗い出してみよう

50代から検討をスタートしようと言っても具体的にどう進めればいいかはなかなか難しいところです。そんなときはまず今の住まいに関する不満を書き出してみましょう。例えば、「駅から遠く移動や買い物が不便」「断熱性が低く冬寒い」「自分だけの書斎がほしい」など、将来の家族構成や生活パターンをイメージしながら、書き出してみるとよいでしょう。

 

1-5. 住まいの不満を解消する3つの選択肢

不満を洗い出したらどのようにそれを解消できるかを考えてみましょう。一般的に3つの選択肢があります。

①住み替え

今の住まいを手放し、新しい住まいに住み替えるという選択肢です。家そのものの老朽化や間取りだけでなく、住む場所に不満がある場合は住み替えが有力な選択肢になります。

②リフォーム

住んでいる場所に大きな不満がない場合には、不満のある箇所を中心にリフォームすることが可能です。水回りなど部分的なリフォームならそれほど費用をかけずに行うことができます。

③建替え

間取り変更などを含む大規模なリフォームでは、建替えと同じくらいの費用がかかることもあります。また、基礎や構造に原因があるなど、どうしてもリフォームでは解決できない問題があり、今の場所に住み続けたい場合には建替えが有力な選択肢になります。

 

まずこの3つの選択肢の中から最も自分に合いそうなものを選び、物件探しの相談に行ってみたり、見積もりをとってみたりすると、より具体的なイメージがつかめるでしょう。それぞれのメリット・デメリットや費用の比較などをしながら検討していくとよいと思います。

 

2、シニアの住み替えを成功させるポイント

上記3つの選択肢のうち、最もハードルが高いのが「住み替え」です。リフォームや建替えは、自分の家(土地)に対して行なうものですが、住み替えは新たな住まい探しと自宅の売却を並行して進めなくてはならないからです。ここからでは住み替えに絞って、そのポイントを整理しておきましょう。

 

2-1. シニア世代の物件選びはまず立地の検討から

シニア世代の物件選びのポイントは、体力が衰えたり、病気になったりしたときでも快適に暮らせるかどうかということです。シニアとは言え60代ならまだまだ元気な方も多いのですが、高齢になってからの住み替えは難しいものです。毎日の買い物が近くで済ませられるか、行きつけの病院に無理なく通えるか、子どもの住まいには近いかなどをチェックしておきましょう。坂の多い場所や車がないと移動しにくい場所などは避けた方が無難です。

 

2-2. 都市部がいいのか郊外がいいのか

立地について検討する上で、都市部か郊外か迷われる方も多いと思います。これはご家族が叶えたい要望にもよりますが、前述のような利便性を考慮すると、商業施設や公共交通の充実した都市部の方がよいのではないかと思います。しかし必ずしも都心である必要はなく、地方の県庁所在地などでもよいでしょう。多少不便でも自然に囲まれて暮らしたいという方はあえて郊外を選んでもよいと思います。

 

2-3. 一戸建かマンションか

一戸建かマンションか、これも多くの方から寄せられる質問ですが、それぞれに一長一短があります。マンションはワンフロア・バリアフリーで暮らしやすい反面、管理費・修繕積立金などのコストがかかり、一戸建は耐震性やセキュリティ面で劣る一方、管理費などがかからず、屋外空間も含めすべて自分の好きなように使えるメリットもあります。ご家族の要望によって選択が分かれるところかと思います。

 

■ マンション・一戸建の比較

 

3、シニア世代の住み替えで大事なのは「資金計画」

今後、収入が減少してくるシニア世代にとって、「資金計画」はとても重要です。

資金計画の基本的な考え方について見ていきましょう。

 

3-1. 家計の見通しと住宅ローン

「資金計画」を考える上で確認したいのは、今後の収入の見通しと必要な生活費、そして貯蓄(自己資金)です。収入については、現在~リタイアまでとリタイア後の収入(退職金・年金など)を、また支出については毎月の生活費と、旅行や車などの一時的な支出を把握しておきましょう。貯蓄については預貯金だけでなく、現在の住まいを売却した時に手元に残るお金などを含めて算入します。

これらをしっかり把握することで、購入する物件の予算が見えてきます。キャッシュで購入する場合には「現在の貯蓄額+売却利益」が予算の上限になりますし、住宅ローンを利用する場合には、「収入の見込み-(毎月の生活費+一時的な支出)」が返済額の上限となります。50代以降に住宅ローンを組む場合は、返済期間が短くなる分、月々の返済額が大きくなりますので注意しましょう。

いずれにしても、老後は収入の増加を見込みにくいため、収入と支出のバランスを考えた無理のない資金計画が大切です。自分だけで考えるのが難しいと思ったら、不動産会社のスタッフなどに相談してみることをおすすめします。

 

3-2. 住宅ローンが残っている場合には

現在の住宅ローンがまだ残っているケースでは、売却後に残債が残るかどうかがポイントです。売却により住宅ローンを完済できる場合には、新たにローンを組むことができますが、売却してもローンを完済できない場合には自己資金から不足分を補填して完済する必要があります。住み替えを検討する際には、現在の住まいの売却相場とローン残高を意識しておく必要があります。売却相場については、地域の不動産会社に一度査定してもらうとよいでしょう。

 

4、住み替えにかかわる税金と3つの特例

不動産の購入・売却には物件価格以外に様々な諸費用がかかりますが、そのひとつが「税金」です。売却と購入を同時に行なう(買い替え)場合には、税負担が重くなりすぎないように税制上の特例が設けられていますので覚えておきましょう。

 

4-1. 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除

通常、不動産を売却して利益が出たときには、その利益(譲渡益)に対して所得税、住民税等が課税されます。しかし買い替えの場合には、譲渡益から3,000万円を控除できる特例があり、3,000万円以内であれば申告することにより課税はゼロになります。なお、3,000万円を超える譲渡益が発生した場合には、所有期間により約14%~約40%が課税されます。

詳細につきましては、下記の国税庁ホームページをご覧下さい。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

 

4-2. 特定の居住用財産を買い替えた時の特例

売却する住宅の居住期間が10年以上、所有期間が10年超、売却する住まいの価額が1億円以下などの条件に該当するときに適用される特例です。条件に該当する住宅を売却し、代わりの住宅に買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(非課税となるわけではありません)。課税の繰り延べとは、売却した年に課税されるのではなく、新たに購入した住宅を売却するときまで課税を待ってくれるということです。

詳細につきましては、下記の国税庁ホームページをご覧下さい。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm

 

4-3. 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

所有期間が5年超の住宅を売却し赤字(譲渡損失)が出た場合、一定の条件を満たせば、その年の他の所得と相殺すること(損益通算)ができます。それでもなお赤字が残るときは、最長3年間、この赤字を繰越控除することによって、所得税・住民税が軽減できます。つまり、住宅を売却して赤字になったら、給与などの所得からその赤字分を差し引いて税額計算することができるので、結果として所得税・住民税が軽減される(会社員の場合は還付される)わけです。

詳細につきましては、下記の国税庁ホームページをご覧下さい。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3390.htm

 

このように住まいの買い替えには税制上の特例がいくつか設けられています。どの特例を適用すれば最も得になるのか、適用条件に該当するのかなどは、自分だけで判断せず不動産会社のスタッフや税理士等の専門家に確認するようにしてください。

 

5、今の家をどうするべきか?

住み替えの際に、今の住まいをどうするかは重要な問題です。自宅を活用する3つの方法を見ていきましょう。

 

5-1. 中古物件として売却する

最もスタンダードなのは、住み替え時に売却するという選択です。不動産は所有しているだけで固定資産税などのコストがかかりますし、人が住まない家は傷みも早いので住み替えと同時に売却するのが合理的です。前述の税制特例も、売却と購入を一定期間内におこなうことが要件となります。売却と購入を同時並行で進めるのは難易度が高いので、売買に強い経験豊富な不動産会社に依頼することをおすすめします。

 

5-2. 賃貸物件として貸し出す

立地のよい物件であれば、賃貸物件として貸し出すという選択もあります。うまく入居が決まれば毎月の家賃収入が得られるというメリットがありますが、貸し出すためのリフォーム費用や毎月の管理費等の負担がかかります。また空室になるリスクもありますので、ローンが残っている場合にはあまりおすすめできません。

また自宅を賃貸することによって住宅ローンの取扱いが変わり、金利が上がる可能性もありますので、必ず金融機関に確認しましょう。

 

5-3. 子どもに引き継ぐ

最後は子どもに引き継ぐという選択です。生前に親が子どもに自宅を譲る場合には、「贈与」と「売却」という2つの方法がありますが、それぞれ贈与税や譲渡所得税がかかることがあります。また、所有者は親のまま子どもに貸すという方法もあります。無償で貸すこともできますし、家賃をもらって貸すこともできます。

それぞれにメリット・デメリットがあり、どの方法がいいかはケースバイケースですので、必ずプロのアドバイスを受けることをおすすめします。いずれにしても子どもに住まいを譲る場合には、後々の相続でトラブルにならないよう、親子、きょうだいでしっかり話し合い、合意を得ることが重要です。

 

6、まとめ

シニア世代の住み替えポイント、いかがでしたでしょうか?

人生100年時代を迎え、老後の20~30年を過ごす住まいはますます重要になってきています。子どもの独立や家の老朽化を機にバタバタと考え始める人が多いのですが、成功のポイントは、何と言っても「早め早めの検討」です。早い時期から定年後のライフプランを描き、住みたいエリアや物件のイメージを固めておくとスムースによい住み替えができると思います。

またシニア世代の住み替えは、不動産(売却・購入・ローン)、税金(税制特例)、相続(遺産分割・相続税)など幅広い知識が求められる分野でもありますので、売買の経験豊富な不動産会社に相談してみることをおすすめします。