住宅性能評価の交付が過去最高に。住宅の性能を「見える化」するメリットとは?

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住宅性能評価書の交付が4年連続で過去最高となっています。住宅性能の「見える化」とも言われるこの制度、利用数が伸びているのはなぜなのでしょうか。制度の概要とメリットについて詳しく解説します。

 

1、住宅性能評価の交付が4年連続で過去最高を更新

 

1-1. 住宅性能表示制度の概要

住宅性能評価とは、2000年4月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく「住宅性能表示制度」による評価制度です。この制度の大きな目的としては、国内で供給される住宅の質を上げることと、それまで各ハウスメーカーや工務店が独自の基準で公表していた住宅の「性能」を、統一された基準により「見える化」し、誰にでもわかりやすく表示することです。

住宅性能評価の交付件数は年々増えており、2019年度は着工件数の約3割に迫っています。交付割合は4年連続で過去最高となり、今後さらに増えていくものと予想されます。

 

■住宅性能評価交付件数の推移

出典:国土交通省 2020年6月30日 報道資料より作成

 

1-2. そもそも住宅の「性能」ってなに?住宅性能評価の10分野とは

それでは、具体的にどのような「性能」が評価の対象となるのでしょうか。品確法では、一戸建の性能を以下の10分野により評価することとしています。

 

■住宅性能表示制度における評価項目

評価される分野 必須 等級 主な評価内容
①構造の安定

耐震等級、耐風等級、耐積雪等級 耐震性、地盤、基礎の構造
②火災時の安全 耐火等級 耐火性、警報機の設置
③劣化の軽減

劣化対策等級 建物の耐久性
④維持管理・更新への配慮

維持管理対策等級 配管の独立性、点検・補修のしやすさ
⑤温熱環境

断熱等性能等級、一次エネルギー消費量等級 断熱性
⑥空気環境 ホルムアルデヒド対策、換気
⑦光・視環境 開口率、開口比
⑧音環境 透過損失等級 床衝撃音、騒音に対する遮音性
⑨高齢者等への配慮 高齢者等配慮対策等級 バリアフリー性
⑩防犯 開口部の侵入防止対策

この10分野のうち、①③④⑤は「必須」とされ、必ず評価を受けなければならない分野、それ以外は希望する人が評価を受けられる「選択」分野とされています。評価対象ごとに様々な「等級」が定められており、この等級により住宅性能の優劣がわかりやすく表示されるわけです。また等級の基準は全国共通で、誰でも簡単に比較できるようになっています。

 

1-3. 住宅性能評価取得の流れ

住宅性能評価は、国土交通大臣により登録された第三者機関である登録住宅性能評価機関が行います。また新築住宅の性能評価には、設計段階の評価(設計住宅性能評価書)と建設工事~完成段階の評価(建設住宅性能評価書)の2種類があり、評価書の取得にあたっては、評価機関が原則として4回現場に立ち入って検査を行ないます(3階建て以下の住宅の場合)。このように、単なる机上の評価ではなく、現場検査を行った上で公正な評価を受けられるのがこの制度の大きなポイントです。

出典:「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」(国土交通省)

 

 

2、住宅性能評価を取得するメリット

住宅性能表示制度の概要が分かったところで、具体的なメリットについて見ていきましょう。

 

2-1. 品質の高い住宅を購入することができる

住宅性能評価を取得するもっとも大きなメリットは、「品質の高い住宅を購入できる」ということです。取得にあたっては、とかく金銭的な損得に目が行きがちになりますが、むしろ耐震性、断熱性、耐久性といった住宅の基本性能が上がることが一番のメリットだと言えます。こうした住宅の基本性能は、後から変えることができない反面、快適性や安全性に大きく影響するので、公的な設計基準に従って建てられた高品質な住宅を購入できるのは大きなメリットです。

 

2-2. 第三者機関の中立・公正な「お墨付き」を得られる

2つ目のメリットは、第三者機関による中立・公正な評価が受けられることです。ハウスメーカーや工務店は、耐震性や断熱性に関して、それぞれ独自の工法や技術を採用しているので、家を建てる際には「当社は○○工法なので耐震性が高い」とか、「当社は〇〇の技術を使っているので断熱性が高い」という説明を何度も耳にすることになります。しかし、あくまでも自社の工法・技術を自社で評価しているわけですから、いわゆる「手前味噌」な評価になりがちですし、客観的な比較もできません。

一方、住宅性能評価は、国に登録された中立・公正な第三者機関が、全国共通の基準である「等級」を使って評価するので、信頼性・客観性の高いものになります。言わば「住宅性能評価書」は、その家に対する公的機関の「お墨付き」であり、将来にわたりその価値を証明する書類となります。

 

2-3. 住宅ローン金利や保険料などの優遇

住宅性能評価を取得する経済的なメリットとしては、住宅ローンの金利優遇や、地震保険料の割引が挙げられます。

住宅金融支援機構の、質の高い住宅向け住宅ローン「フラット35S」では、省エネルギー性、耐震性などが一定以上の評価を受けている住宅に対して、当初10年間(または5年間)、年▲0.25%の金利優遇を受けられます。また、他の金融機関でも、独自に住宅ローンの金利引き下げを行っている場合があります。

 

■フラット35S の金利優遇

金利引下げプラン 引き下げ期間 引き下げ幅
金利Aプラン 当初10年間 年 ▲0.25%
金利Bプラン 当初 5年間

※2020年9月現在  ※詳細はフラット35 公式サイトをご確認ください

 

また、地震保険料は耐震等級により10%~50%の割引になります。

 

■ 耐震等級による地震保険料の割引

耐震等級3 50%割引
耐震等級2 30%割引
耐震等級1 10%割引

 

2-4. 万一のトラブルに紛争解決機関を格安で利用できる

万一、購入した住宅に関して、建築会社や不動産会社とトラブルになった場合、建設住宅性能評価書が交付された住宅については、指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)に紛争処理を申請することができます。評価書の内容だけに限らず、請負契約・売買契約に関する当事者間のすべての紛争処理を扱い、手数料は1件あたり1万円です。

 

2-5. 住宅性能評価を取得するデメリット

このように、多くのメリットがある住宅性能評価ですが、デメリットにも触れておきましょう。デメリットの1つはプラン(間取りやデザイン)の自由度が下がるということです。例えば、耐震性を高めるためには、一定量の壁が必要になるので、大きな吹き抜けや柱や壁のない大空間などは作りにくくなります。もう1つは取得にかかる費用です。費用には大きく分けて、性能向上にかかる建材費や施工費と、申請や検査にかかる事務的な費用があります。前者については、費用を掛けた分、相応の性能向上が見込めますが、後者については純粋なコスト増となります。

 

このようなメリットとデメリットを踏まえ、性能評価を取得するべきかどうか、さらに検証を進めてみましょう。

 

→ 住宅情報館 性能評価表示制度のページ(https://house.jutakujohokan.co.jp/performance/

 

3、住宅性能評価は「元が取れる」のか? その経済的メリットを検証

住宅性能評価を取得するかどうかを判断する上で、費用を掛けた分の「元が取れる」のかどうかは、多くの方が気にされるところだと思います。そこで、評価取得によりどのくらい「トクになるのか」を具体的に検証してみようと思います。

 

3-1. 住宅ローン金利優遇

まず、住宅ローンの金利優遇について見てみましょう。

フラット35Sでは、以下の(1)~(4)のいずれかに該当する住宅について、当初10年間0.25%の金利引き下げを行っています。

 

■フラット35S 金利Aプラン(当初10年間 年▲0.25% 金利引き下げ)

省エネルギー性 (1)一次エネルギー消費量等級5
耐震性 (2)耐震等級3
バリアフリー性 (3)高齢者等配慮対策等級4以上
耐久性・可変性 (4)長期優良住宅

※2020年9月現在  ※詳細はフラット35 公式サイトをご確認ください

 

では、通常のフラット35とフラット35S(10年間金利引き下げ)で返済額等がどのように変わるかシミュレーションしてみましょう。

 

■借入額3,000万円の場合のシミュレーション

返済期間 金利 返済額(月) 総返済額 総返済 差額
フラット35 全期間 1.32% 89,233円 37,477,683円

▲720,674円

フラット35S

金利Aプラン

当初10年間 1.07% 85,667円

36,757,009円

11年目以降 1.32% 88,256円

※借入額3,000万円(融資率9割以下)、元利均等35年返済(ボーナス返済なし)、金利年1.32%の場合

※総返済額には、融資手数料、物件検査手数料、火災保険料などは含まれません

 

このように、住宅性能評価により金利の引き下げを受けられれば、総返済額が約70万円下がることがわかります。

 

3-2. 地震保険料の割引

次に地震保険料の割引について見てみましょう。地震保険は、火災保険とセットで加入する必要があり、補償額は火災保険の30~50%と決められています。例えば、建物2,000万円・家財1,000万円の火災保険に加入した場合、地震保険は最大で建物1,000万円・家財500万円まで加入することができます。

前述の通り、耐震等級3の建物は地震保険料が50%割引になりますので、耐震等級を取得しなかった場合の保険料と比較してみましょう。

※1981年(昭和56年)6月1日以降に新築された建物には、築年数割引(▲10%)が適用されます。

 

■地震保険料の比較

地震保険の補償額

A 耐震等級なし(10%割引) B 耐震等級3(50%割引) B-A 年間保険料の差額 30年間の差額
建物(1,000万円) 35,010円 19,450円 ▲15,560円 ▲23,340円×30年

▲700,200

家財(500万円) 17,505円 9,725円 ▲7,780円
合計 52,515円 29,175円 ▲23,340円

※2020年9月現在  ※保険料は概算です

※東京都、非耐火構造(ロ構造)、保険期間1年・一時払、Aは築年数割引ありで試算

 

このように、耐震等級3を取得し地震保険料の50%割引を受けると、保険料が1年間で約2万3,000円、30年間で約70万円下がることがわかります。なお、地震保険料は2021年1月に全国平均5.1%の値上げが予定されています。今後も保険料の値上がりが続くとすると、割引の効果はより大きなものになります。

 

3-3. 光熱費の削減

次に光熱費の削減について見てみましょう。住宅性能評価を取得するかどうかに関わらず、住宅の断熱性能が上がると、主に冷暖房にかかる光熱費が大幅に下がります。国土交通省の資料によると、断熱性能の違いによる光熱費の差は以下の通りです。

 

■断熱性能による光熱費の違い(東京23区 [地域区分6] の場合)

断熱性能 年間の光熱費 年間光熱費の差額 30年間の光熱費の差額
平成4年基準(断熱等級3相当) 283,325円 ▲61,008円

61,008円×30年

▲1,830,240円

平成28年基準(断熱等級4相当) 222,317円

※出典:「なるほど省エネ住宅」(国土交通省)より作成

 

このように、断熱性能の違いによる光熱費の差は年間約6万円、30年間で約180万円と非常に大きなものになります。なお、現在では断熱等級4よりもさらに上位の「等級5」「ZEH基準」なども作られており、太陽光発電などと組み合わせることにより「光熱費ゼロ」の住宅も現実のものとなっています。

 

3-4. 建物のメンテナンスコスト

その他に、経済的なメリットがあると思われるのが建物のメンテナンスコストです。建物は年数の経過により劣化しますので、定期的なメンテナンスが必要になります。しかし、新築時に建物の耐久性を高め、メンテナンスしやすい構造にしておくことによりメンテナンスコストを削減できます。それが住宅性能評価の「劣化対策等級」と「維持管理対策等級」です。建物の劣化は、使用環境等で大きく異なるため、参考として等級の基準のみご紹介します。

 

■劣化対策等級

劣化対策等級のランクは3等級で表され、等級が高ければ高いほど建物は長持ちします。

等級3 75~90年程度、大規模な改修工事が不要となるよう劣化対策を行う
等級2 50~60年程度、大規模な改修工事が不要となるよう劣化対策を行う
等級1 建築基準法 相当

 

■維持管理対策等級

等級3 a)共同住宅等で他の住戸に入らずに専用配管の維持管理を行うための対策

b)躯体(※)を傷めないで点検及び補修を行うための対策

c)点検等のための開口や掃除口が設けられていること

等級2 等級3のa)とb) を実施したもの
等級1 建築基準法 相当

※躯体(くたい):基礎、柱、外壁、屋根などの主要構造部分

 

3-5. 資産価値の維持

最後に、住宅性能評価を取得することによる資産価値の向上について触れておきましょう。

資産価値とは、単純に言えば「いくらで売れるか」ということです。一般的に建物は年数の経過とともに価値が下がっていきますが、これまで中古住宅は、性能や劣化の程度が判定しにくく、実態よりも価値が低く評価されてきた側面があります。しかし、第三者による公正な「評価書」の付いた住宅では、売却時にも正当な評価がされやすくなると考えられます。

また2020年6月、国土交通省は「住宅の省エネ性能の光熱費表示検討委員会」を設置し、住宅の省エネ性能を光熱費で表示する仕組みの検討に着手しました。言い換えれば、車などと同様に「住宅の燃費表示」を義務づける検討がスタートしたわけです。まずは新築分野での導入を目指していく方針で、2021年度末に新築マンション、2022年度初旬に新築戸建に導入を進めるとしています。将来的に、省エネ性能だけでなく耐震性や耐久性などの表示も義務づけられるとすると、性能評価書のある住宅は、より正当な評価を受けやすくなるでしょう。

 

■住宅性能評価取得の経済的メリット

※本コラムのシミュレーションはあくまで試算であり、結果を保証するものではありません

 

 

4、住宅性能評価は取得するべきか。その本当の目的と注意点とは

 

4-1. 今後、住宅性能の「見える化」は当たり前のものに

ここまでご説明してきた通り、住宅性能評価書の取得は年々増えています。それは金利の引き下げや保険料の割引といった経済的メリットに加え、耐震性や省エネなど住宅性能そのものに対する関心が高まっているからでしょう。そして近い将来、省エネ性能については表示が義務づけられる見込みとなっており、資産価値の観点からも十分「元が取れる」制度になりつつあると思います。今後、住宅性能評価をはじめとする住宅性能の「見える化」は当たり前のものになっていくでしょう。

 

4-2. 住宅性能評価の本当のメリットは、家族の「健康」と「安心」

そして「元が取れる」かどうかもさることながら、住宅性能評価を取得する本当のメリットは、質の高い住宅を購入することで得られる家族の「健康」と「安心」ではないでしょうか。

暑い夏、寒い冬でも快適に過ごせる家、カビや化学物質によるアレルギーの心配がない家、地震や台風などの災害に強い家、さらに光熱費が安く、メンテナンスしやすい家、高齢になっても暮らしやすく、子どもや孫の代まで住み継げる家。こうした高品質な住宅を購入することで得られる「健康」や「安心」が、この制度を利用する本来の目的です。経済的メリットと合わせて、評価取得の判断材料としていただければと思います。

 

4-3. どのレベルを目指すかはプロと相談しながら慎重に検討を

最後に、住宅性能評価を取得する際の注意点をお伝えします。

住宅性能評価はその多くが「等級」で表されています。等級が高ければ性能も高いのは確かですが、すべて最高等級を目指すべきかと言えばそうではありません。それは、高い等級を目指すほどプランの自由度は下がり、コストが上がるからです。同様に、評価対象10分野の中で、どの評価を取得するかも十分な検討が必要です。

性能評価を取得するために建てたい家が建てられなくなってしまっては本末転倒です。どの評価を取得するか、どのレベル(等級)を目指すかは、専門家のアドバイスを受けながらしっかり検討しましょう。

→ 住宅情報館 性能評価表示制度のページ(https://house.jutakujohokan.co.jp/performance/