2020年基準地価発表。地価上昇にブレーキ、コロナで地価はどう動いた? (関東・東北編)

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9月29日、令和2年(2020年)基準地価が発表されました。コロナ後、初めての地価発表となりますが、ここ数年上がり続けてきた地価はどう動いたのでしょうか。関東・東北エリアの地価の動きを探ってみました。

 

 

1、全国平均は3年ぶりの下落。商業地・住宅地とも大きな変化が

基準地価の全国(全用途)平均は、2017年以来3年ぶりに下落に転じ、住宅地の下落幅が拡大しました。また、商業地も2015年以来5年ぶりに下落に転じるなど、新型コロナウイルスの影響により、大きな変化が見られました。

 

1-1. そもそも基準地価とは

基準地価とは、国土利用計画法に基づき、全国約2万1,500地点(基準地)の7月1日時点の土地価格を都道府県が調査し、毎年9月下旬に公表される地価指標です。都道府県などが価格審査の基準として用いるほか、一般の土地取引の目安にもなっています。

今回は、新型コロナウィルスの影響を反映した最初の地価発表でもあり、動向が注目されていました。

 

1-2. 三大都市圏でも住宅地は下落に転じ、商業地も上昇幅が縮小

三大都市圏の住宅地では、東京、大阪圏が2015年以来、名古屋圏が2014年以来の下落に転じました。商業地も東京、大阪圏で上昇幅が大幅に縮小し、名古屋圏では下落に転じています。また、地方4市(札幌・仙台・広島・福岡)は、住宅地、商業地ともに上昇を継続したもの、上昇幅が縮小し、それ以外の地方圏では、下落幅が拡大しました。

 

■2020年基準地価の変動率(単位:%)

全用途

住宅地

商業地

2019年

2020年

2019年

2020年

2019年

2020年

全国

0.4

▲0.6

▲0.1

▲0.7

1.7

▲0.3

三大都市圏

2.1

0.0

0.9

▲0.3

5.2

0.7

地方四市

6.8

4.5

4.9

3.6

10.3

6.1

その他地方圏

▲1.0

▲1.4

▲0.7

▲1.0

▲0.2

▲1.0

出典:国土交通省

 

1-3. 新型コロナの影響を受け、ここ数年の地価上昇にブレーキ

低金利とインバウンド増加などにより、ここ数年、地価は順調に回復していましたが、2020年2月ごろから新型コロナウィルスの影響により訪日客は減少、東京オリンピックも延期になるなど、商業地の地価上昇に大きなブレーキとなりました。また、外出自粛などの影響で景気が悪化するとの見通しから、住宅市場にも様子見ムードが広がり、住宅地においても下落傾向が強まりました。

 

 

2、首都圏エリアの住宅地は上昇幅が縮小

住宅購入に最も影響があるのは「住宅地」の地価です。今回は首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、北関東(群馬・栃木・茨城)、東北(福島・宮城)の3エリアの住宅地に絞って詳しく見てみましょう。

 

2-1. 首都圏で上昇を継続した市区町村は3割強。前年から大きく減少

首都圏エリアを市町村(政令指定都市は区)別に見てみると、前年比で上昇・下落しているエリアは次の通りです。

首都圏では、依然として全体の34%が上昇しています。しかし、昨年は6割以上のエリアが上昇していましたので、上昇エリアが半分程度に減ったことになります。

 

2-2. 人気の高いエリアでも上昇幅は縮小

それでは、首都圏で上昇しているエリアと下落しているエリアのトップ10を見てみましょう。

※基準地価は市区町村ごとの住宅地の基準地価の平均で、㎡あたりの金額(円)です。(以下同様)

■2020年基準地価 上昇率・下落率ランキング(首都圏)

上昇率トップ10 下落率トップ10
市区町村 基準地価 変動率 市区町村 基準地価 変動率
千葉県君津市 29,161 2.8% 神奈川県山北町 42,250 ▲3.8%
東京都荒川区 552,667 2.6% 神奈川県真鶴町 51,567 ▲3.7%
東京都新宿区 752,182 2.6% 神奈川県中井町 43,967 ▲3.7%
千葉県袖ケ浦市 49,138 2.6% 神奈川県南足柄市 56,425 ▲3.6%
埼玉県川口市 217,390 2.5% 神奈川県二宮町 80,580 ▲3.5%
東京都港区 1,938,000 2.3% 神奈川県大磯町 105,520 ▲3.4%
東京都北区 495,833 2.3% 東京都青梅市 86,406 ▲3.4%
埼玉県蕨市 248,000 2.2% 神奈川県大井町 61,400 ▲3.0%
東京都文京区 941,833 2.2% 神奈川県箱根町 36,383 ▲2.9%
埼玉県戸田市 258,875 2.1% 神奈川県三浦市 67,975 ▲2.8%

 

上昇エリアトップ10は、東京23区および近郊エリアと、アクアライン経済圏がランクインしています。上昇率を昨年と比較すると、「君津市10.2% → 2.8%」、「荒川区 16.7% →2.6%」、「新宿区6.0% → 2.6%」など大幅に縮小しています。エリアとしての人気は依然として高いものの、一時的な買い控えの影響を受けていることがわかります。

一方、下落エリアトップ10はほとんどが神奈川県西部エリアですが、東京都では唯一、青梅市がランクインしています。いずれもコロナ前から緩やかな下落傾向が続いているエリアで、下落率はコロナ前後でそれほど変わっていせん。

 

2-3. 首都圏の都道府県別 上昇率トップ5

さらに、都道府県別に上昇率トップ5をピックアップすると以下のようになります。

 

都道府県 全体の変動率

(カッコは前年)

上昇率上位の市区町村 基準地価 変動率
東京都 1.1%(3.9%) 荒川区 552,667 2.6%
新宿区 752,182 2.6%
港区 1,938,000 2.3%
北区 495,833 2.3%
文京区 941,833 2.2%
神奈川県 ▲0.3%(0.9%) 横浜市中区 351,500 1.9%
横浜市神奈川区 262,800 1.8%
相模原市緑区 104,739 1.5%
横浜市西区 255,333 1.2%
横浜市港北区 330,118 1.0%
埼玉県 0.1%(1.6%) 川口市 217,390 2.5%
蕨市 248,000 2.2%
戸田市 258,875 2.1%
さいたま市浦和区 328,111 2.0%
さいたま市南区 242,636 1.4%
千葉県 0.2%(1.1%) 君津市 29,161 2.8%
袖ケ浦市 49,138 2.6%
木更津市 31,165 1.7%
一宮町 22,750 1.7%
千葉市中央区 123,465 1.4%

 

神奈川県以外は全体として上昇を維持したものの、上昇率は低下し、ほぼ横ばいの状況となっています。上位には、各都道府県の中心都市や、都心部へのアクセスがよいエリア、アクアラインなど独自の経済圏を形成している街がランクインしています。

 

 

 

3、北関東エリアの多くは下落傾向

次に北関東エリア(茨城、栃木、群馬)の住宅地の動向を見てみましょう。

 

3-1. 北関東エリアは9割超が下落。上昇はわずか7市町村

北関東エリアの上昇・下落の割合は以下の通りです。全体の9割超が下落しており、上昇しているエリアはわずか7市町村しかありません。上昇率も0.1~0.4%台と低水準で、ほぼ横ばいと言っていい状況です。

 

3-2. 北関東の上昇エリアは主要都市と都内への通勤圏のみ

次に北関東エリア(住宅地)の上昇・下落率トップ10は以下の通りです。

 

上昇率トップ10 下落率トップ10
市区町村 基準地価 変動率 市区町村 基準地価 変動率
茨城県鹿嶋市 20,242 0.4% 群馬県上野村 3,700 ▲3.9%
茨城県神栖市 16,720 0.3% 群馬県南牧村 5,500 ▲3.8%
栃木県宇都宮市 56,763 0.2% 茨城県大子町 9,200 ▲3.7%
栃木県下野市 43,575 0.2% 群馬県下仁田町 14,700 ▲3.5%
栃木県小山市 39,144 0.1% 群馬県長野原町 8,835 ▲3.2%
茨城県守谷市 86,686 0.1% 栃木県茂木町 14,400 ▲3.1%
茨城県つくば市 65,535 0.1% 群馬県中之条町 13,717 ▲2.8%
群馬県みなかみ町 15,000 ▲2.7%
栃木県那須烏山市 12,867 ▲2.6%
栃木県市貝町 12,700 ▲2.6%

 

北関東エリアでは、茨城県つくば市・守谷市、栃木県小山市など都内への通勤が可能なエリアと、鹿嶋市、宇都宮市などの地方都市がランクインしています。一方、下落率上位には、栃木県、群馬県の町村部が多くランクインしています。

 

3-3. 北関東の都道府県別 上昇率トップ5

北関東エリアの都道府県別に変動率トップ5をピックアップすると以下のようになります。

 

都道府県 全体の変動率

(カッコは前年)

市区町村 基準地価 変動率
茨城県 ▲0.6%▲0.3% 鹿嶋市 20,242 0.4%
神栖市 16,720 0.3%
守谷市 86,686 0.1%
つくば市 65,535 0.1%
境町 20,700 0.0%
栃木県 ▲1.2%▲0.7% 宇都宮市 56,763 0.2%
下野市 43,575 0.2%
小山市 39,144 0.1%
高根沢町 27,574 ▲0.5%
野木町 33,050 ▲0.8%
群馬県 ▲1.2%▲0.9% 高崎市 46,021 ▲0.1%
大泉町 31,850 ▲0.1%
太田市 36,874 ▲0.2%
玉村町 33,500 ▲0.3%
伊勢崎市 33,696 ▲0.4%

 

北関東はすべての都道府県で、下落率が前年を上回っています。またトップ5と言っても、栃木県で上昇しているのはわずか3エリア。そして群馬県ではすべての市区町村が下落しており、横ばいを維持するのがやっとという状態です。

 

 

4、東北エリアは宮城県の都市部で上昇

最後に東北エリア(宮城県・福島県)の住宅地について見てみましょう。

 

4-1. 東北エリアは約7割が下落。上昇エリアは仙台市と周辺エリアが上位に

東北エリア(宮城県・福島県)の上昇・下落エリアは以下の通りです。

 

4-2. 仙台市では大幅な上昇が継続。周辺エリアにも力強い動き

東北エリア(住宅地)の上昇・下落率トップ10は以下の通りです。

 

上昇率トップ10 下落率トップ10
市区町村 基準地価 変動率 市区町村 基準地価 変動率
宮城県仙台青葉区 140,633 5.8% 宮城県蔵王町 11,525 ▲4.8%
宮城県名取市 64,500 5.6% 宮城県丸森町 9,490 ▲4.6%
宮城県仙台市太白区 102,883 5.1% 宮城県川崎町 11,300 ▲3.8%
宮城県大和町 36,820 4.0% 福島県相馬市 25,900 ▲3.4%
宮城県岩沼市 43,600 3.9% 宮城県色麻町 8,617 ▲3.3%
宮城県富谷市 35,250 3.8% 福島県矢祭町 11,457 ▲3.3%
宮城県仙台市若林区 125,320 3.3% 宮城県山元町 11,000 ▲2.9%
宮城県仙台市宮城野区 99,045 3.2% 宮城県気仙沼市 16,958 ▲2.5%
宮城県仙台市泉区 71,250 2.8% 宮城県七ケ宿町 3,975 ▲2.5%
福島県富岡市 15,800 2.3% 福島県石川町 15,560 ▲2.3%

 

東北エリアでは仙台市と仙台市周辺のベッドタウンの上昇率が高く、一部では5%を超えるなど首都圏を凌ぐ上昇率となっています。しかし前年と比較すると、仙台市青葉区(8.3% → 5.8%)、名取市(7.8% → 5.6%)、仙台市太白区(5.4% → 5.1%)など、上げ幅は縮小しており、ここでもコロナの影響が見て取れます。一方、下落しているのは山間部・沿岸部のエリアが多く、都市部とは対照的な結果となっています。

 

4-3. 都道府県別 上昇率トップ5

東北エリアの県別上昇率トップ5を見てみましょう。

 

都道府県 全体の変動率

(カッコは前年)

市区町村 基準地価 変動率
宮城県 2.0%(3.2%) 仙台市青葉区 140,633 5.8%
名取市 64,500 5.6%
仙台市太白区 102,883 5.1%
大和町 36,820 4.0%
岩沼市 43,600 3.9%
福島県 ▲0.4%(0.4%) 富岡町 15,800 2.3%
福島市 42,271 1.1%
郡山市 48,937 1.0%
大玉村 13,850 0.8%
須賀川市 22,364 0.7%

 

宮城県は、仙台市中心部で5%台の上昇、県全体でも2%の上昇を維持するなど、コロナ後においても力強い動きが見られます。福島県は、県全体で下落に転じました。原発事故の影響を受けた富岡町が、2017年に避難指示区域から解除されたことなどにともない2%超の上昇となっていますが、それ以外では1%前後と、ほぼ横ばいとなっています。

 

 

5、地価はしばらく不安定な動きとなりそう。こまめな情報収集を心がけよう

首都圏、北関東、東北エリアの2020年基準地価の動向、いかがでしたでしょうか。

このように、2020年7月現在の地価は、新型コロナの影響を受け、全国的に上昇にブレーキがかかりました。特に商業地においては、インバウンドの回復にまだ時間がかかることなどから、当面横ばい~下落傾向が強まるものと思われます。一方で、住宅地においては、一時的な様子見ムードが見られたものの、エリアによっては急速に回復の兆しも見えており、しばらくは予断を許さない状況が続きそうです。このような状況の中、住宅購入を検討している方はどのようなことに注意すればよいでしょうか。

 

5-1. 回復の兆しを見逃さないよう早め早めの情報収集を

まず、今まで以上に早めの情報収集を心がけましょう。基準地価のような公的な指標は、年に1回程度しか発表されませんので、日々の値動きを捉えることはできません。地域をよく知る不動産会社に希望条件などを伝えておき、定期的に情報交換してみることをおすすめします。また、不動産価格と関連のある経済指標、例えば日経平均株価や長期金利などにも敏感になっておきましょう。

 

5-2. 資産価値の観点から、エリア選びはより慎重に

新型コロナで暮らし方や働き方が大きく変わり、これまで人気だった都心の駅近マンションから、広くてリーズナブルな郊外の一戸建などに関心が集まるなど、住まい選びにも変化が起こっています。また今回上昇にブレーキがかかったことによって、地価はますます二極化の傾向を強めると思われます。つまり、今後ますます上昇するエリアは限定され、コロナが落ち着いた後も平均的に回復していくことはないということです。

しかし、そうした観点で言えば、今回の下落局面は購入者にとってチャンスとも言えます。これまで価格的にあきらめていたエリアが検討対象に入ってくるかも知れませんし、希望エリアがより安く買える可能性もあります。将来性のあるエリアなら購入後の値上がりも期待できるでしょう。逆に将来性に乏しいエリアでは、購入後も回復の波に乗ることは難しく、資産価値を落としてしまうことにもなりかねません。

 

これから住宅購入を検討される方は、地域の不動産会社などプロの意見を聞きながら、慎重にエリア選びをおこなうことをおすすめします。