自然災害に備える住宅購入③  ~火災保険・地震保険の基礎知識と加入するときのポイント ~

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シリーズでお伝えしてきた「自然災害に備える住宅購入」の最終回は、保険について解説します。近年増加する台風や豪雨、そして地震に備えるためにはどんな保険に入ればいいのでしょうか。

 

1、なぜ住まいに保険が必要なのか。火災保険の基本を知っておこう

まずは、住宅になぜ火災保険が必要なのか?その理由を知っておきましょう。

 

1-1. 火災保険が必要な最大の理由とは

明治三十二年法律第四十号(失火ノ責任ニ関スル法律)

民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

住宅に掛ける保険と言えば最初に浮かぶのは火災保険です。火災保険は文字通り火災が発生したときに建物や家財の損害を補償するものですが、この保険が必要になる理由は「失火責任法」という法律にあります。明治32年に制定された古い法律ですが現在も有効です。

原文では何を言っているのかわかりにくいですが、この法律では過失によって火災を発生させた場合でも、民法上の損害賠償責任を負わないことが定められています(ただし重大な過失があった場合を除く)。したがって、隣家からのもらい火で自分の家が燃えてしまった場合でも、火元である隣家の住人に損害賠償を請求することはできないのです。つまり、自分の家や家財は、自分のお金で再築・購入しなければなりません。これが火災保険に加入する最大の理由です。

そして現在、火災保険は火災だけでなく自然災害や突発的な事故もカバーする保険へと変化しています。しかしそれらを総称して「火災保険」と呼ばれることが多いため、「自分は火事を起こす心配はないから保険に入る必要はない」などの勘違いをしている方が多くおられます。本来、火災保険は自分に過失のない損害や事故、つまり隣家からのもらい火や自然災害などで損害を被ったときに、速やかに家の再築や修繕をおこない生活基盤を立て直すためのものなのです。もし自分の家が全焼したり倒壊したりした場合に、保険に加入していなければ、最悪の場合、生活基盤を失うことにもなりかねません。自然災害が増えている昨今、保険に加入する意味はますます大きくなっていると言えるでしょう。

 

1-2. 火災保険と家財保険は同じもの?

もうひとつ、一般の方がよく勘違いしやすいものとして「火災保険」と「家財保険」があります。「火災保険」は前述の通り、住宅で起こる様々なリスクに備えるための保険ですが、火災保険は「建物」に対する保険と「家財」の2つに分かれています。つまり、家財保険は火災保険の一部であり、家の中にある衣服、家具、家電などの財産に対して掛ける保険だと理解しておけばよいでしょう。

 

1-3. 住まいの保険は「火災保険」と「地震保険」

住まいに掛ける保険は大きく分けて「火災保険」と「地震保険」で、対象となるのはそれぞれ「建物」と「家財」です。自然災害に備えるという意味では、この2つの保険に加入することが原則になりますが、火災保険だけに加入し地震保険には入らいないことも可能です。また、建物だけ、家財だけという加入方法もあります。マンションの場合、居住者が加入する保険の対象は専有部のみで、共有部の保険は管理組合が加入することが多いようです。

 

 

2、住まいの保険の基本「火災保険」の概要と加入時の注意点

まず、住まいの保険の基本となる「火災保険」について詳しく見ていきましょう。

 

2-1. 火災保険の概要

火災保険はもともと、火災に備える保険として普及しましたが、しだいに火災以外のリスク(自然災害や盗難など)を含む総合的な保険へと変化してきました。自然災害が頻発する昨今では、むしろ災害対策の方が重要になったと言っても過言ではありません。

また、自動車保険などと同様、インターネットで契約できるダイレクト型の保険や、必要な補償だけを選んでカスタマイズできる、自由度の高い保険も出てきています。それだけに、多くの保険商品を比較して、自分に合ったものを選ぶためには、正しい保険の知識が重要になってきます。

 

2-2. 火災保険で補償されるもの、されないもの

それではどのようなケースで火災保険の補償が受けられるのかを見ていきましょう。保険会社やプランによっても異なりますが、主に火災保険の補償対象となるのは以下のようなケースです。

 

①火災、落雷、破裂、爆発

②風災・雹(ひょう)災・雪災

③水災(豪雨や洪水による浸水)

④水漏れ(配管の破裂やホース外れなどによる水濡れ)

⑤盗難

⑥物体の落下、飛来、衝突(外部からの車の衝突等)

⑦破損・汚損(家具を移動中にドアにぶつけて破損した等)

 

一方で、次のようなケースは火災保険の補償対象外です。

 

①地震、噴火またはこれらによる津波による損害

②故意、重大な過失、法令違反が原因の損害

③建物や設備の経年劣化や施工不良が原因の損害

 

ここで重要になのは、火災保険では「地震」に対する補償が受けられないことです。地震による直接の損害だけでなく、地震を原因とする火災、津波、土砂崩れなども補償されないことに注意しましょう。

 

2-3. 火災保険に加入するときのステップと注意点

次に実際に火災保険に加入するときのステップと注意点について見ていきましょう。

 

(ステップ1) 建物と家財の補償額を決める

火災保険に加入する際には、まず補償額を決める必要があります。一般的に建物と家財の両方の保険に加入しますが、どちらも「再調達価額」を基準に補償額を決めます。再調達価額とは、同等のものを再築・再購入するのに必要な金額のことで、建物では同等の建物を新築した場合の金額(土地代は含みません)、家財では新たに新品を買い揃えた場合の金額が目安となります。実際の購入額やローンの借入額ではないことに注意しましょう。

 

(ステップ2)保険期間を決める

次に保険期間を決めます。火災保険は1~10年の範囲で保険期間を設定できます。詳しくは後述しますが、保険期間が長いほど保険料は割安になります。また保険の開始日は「引越し日」ではなく、契約上の「引き渡し日」に合わせるようにしましょう。たとえ引っ越し前であっても、引き渡し後に起こった損害については、すべて所有者がリスクを負うことになります。

 

(ステップ3)補償内容と特約を決める

補償額と保険期間が決まったらいよいよ補償内容の検討に入ります。補償対象となる項目は前述2-2の①~⑦が基本になりますが、不要なものがあれば削除します。例えばマンションの高層階ならば洪水の被害を受けにくいので「水災」を削除する等が考えられます。

また、①~⑦以外の補償を「特約」としてプラスすることもできます。特約とはいわゆるオプション契約で、例えば以下のようなものがあります。

 

・個人賠償責任補償特約(日常生活で他人に損害を与えた場合の賠償)

・失火見舞費用特約(自分が火元となって隣家に損害を与えた場合の隣家への見舞金)

・弁護士費用特約(被害事故にあった際の法律相談や交渉にかかる弁護士費用)

 

他にも様々な特約が用意されているので、保険会社のホームページなどを見て検討するか、保険代理店などに相談してみるとよいと思います。

 

④複数の保険会社の見積もりを比較する

ここまでの条件が決まったらいよいよ見積もりに進みます。保険会社のホームページや保険比較サイトなどを使って複数の保険会社の保険料を比較してみましょう。必ず同じ条件で比較することに注意してください。

 

⑤申込み(契約)をして保険料を支払う

保険会社が決まったら申込み(契約)を行ないます。重要事項説明書、保険約款をよく読んで、不明点は保険会社や代理店に確認しましょう。申込みを終えても、保険料を支払うまでは保険は有効になりませんので、保険料の支払いは必ず保険開始日までに完了しましょう。最近ではほとんどの会社でクレジットカードや口座振替が利用できますので、ご利用をおすすめします。

 

 

3、いつ起こるか分からない大地震。できるだけ地震保険にも加入しておこう

専門家の試算によれば、今後30年以内にマグニチュード8クラスの地震が発生する確率は70%~80%とも言われています(※)。地震による被害は甚大かつ広範囲におよび、生活を一変させてしまう可能性があります。火災保険とともに地震保険への加入を検討しましょう。

※出典:地震調査研究推進本部事務局(文部科学省)の評価による

 

3-1. 地震保険の概要

地震保険は、地震による建物や家財の損害を補償する保険です。地震保険に加入するには、火災保険に加入していることが前提となります(地震保険だけ加入することはできません)。また、補償額は建物・家財とも、火災保険の補償額の30~50%の範囲と決められています(建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度)。したがって、もし家が全壊した場合、保険金だけで再築することはできませんが、保険会社によっては、不足する部分の補償を特約で上乗せできる場合もあります。いずれにしても、地震による損害を補償する保険は地震保険しかありませんので、万一に備えてできるだけ加入しておいた方がよいでしょう。

ちなみに2019年の地震保険の世帯加入率は全国平均で33.1%。東日本大震災から加入率は上昇し続けています。都道府県別に見ると、宮城県(52.0%)、愛知県(43.0%)、熊本県(42.8%)、岐阜県(38.5%)が上位となっています。(損害保険料率算出機構 調べ)

 

3-2. 地震保険で補償されるもの、されないもの

地震保険の対象は火災保険と同じく「建物」と「家財」ですが、建物は居住用に限られ、店舗や工場などは対象外となります。また門や塀のみが損害を受けた場合や、地震等が発生してから10日経過後に発生した損害も対象外となります。

火災保険と大きく異なるのは、保険金の支払いです。火災保険は実際に再築や修繕にかかる費用を補償するのに対し、地震保険は損害状況を以下の4段階に分けて評価し、あらかじめ決められた保険金が支払われます。一部損以上に該当しない場合には保険金は支払われません。

 

■地震保険の保険金の支払い

出典:「地震保険制度の概要」(財務省)より作成

 

3-3. 地震保険の加入時に注意すること

地震保険は原則として、火災保険と同じ保険会社で加入します。保険料や補償内容に保険会社による違いはありません。ただし、地震保険の上乗せ補償は、扱っている会社と扱っていない会社がありますので、火災保険加入時に確認しておきましょう。

保険期間は1~5年の範囲で選ぶことができます。最近、地震保険は頻繁に値上げされていますので、できるだけ長期で契約する方がよいでしょう。また、補償額については新築物件の場合には上限である火災保険の50%、中古物件の場合は、時価(経年による減価を差し引いた価格)に合わせて補償額を決めるとよいでしょう。

 

 

4、火災保険、地震保険の保険料を安くする方法

保険選びで最も気になるのは保険料。保険料を少しでも安くするにはどうしたらよいのでしょうか。

 

4-1. 建物の構造や地域によって保険料は変わる

火災保険、地震保険ともに、建物の構造(耐火性能)や地域によって保険料が変わります。例えば同じ一戸建でも、非耐火構造の保険料は、耐火構造よりも2倍以上高くなることがあります。マンションはほとんどが耐火構造ですが、一戸建は外見から耐火性能を判断することが難しいので、購入時に不動産会社やハウスメーカーに確認してみることをおすすめします。

 

■火災保険の構造級

構造級別 主な建物
M構造(マンション構造) コンクリート造、耐火建築物の共同住宅
T構造(耐火構造) コンクリート造、鉄骨造、耐火建築物、準耐火建築物、省令準耐火建物   ※共同住宅を除く
H構造(その他の構造) M構造およびT構造に該当しない建物

 

4-2. 各種割引制度を活用しよう

保険会社や商品によっても異なりますが、火災保険には様々な割引制度があります。例えば築年数が新しい物件に適用される「新築割引」や「築浅割引」などは比較的多くの保険会社で提供されています。また、住宅設備などによる割引制度がある保険もありますので、詳しくは保険会社、代理店などに確認してみるとよいでしょう。

 

また地震保険においては、住宅性能表示制度による「耐震等級」を取得していると大幅な割引が受けられます。

 

■耐震等級による地震保険の割引

耐震等級1 10%割引
耐震等級2 30%割引
耐震等級3 50%割引

 

上表のように、耐震等級3を取得している建物なら、地震保険料が半額になります。住まいの耐震性を上げることは地震に対する備えだけでなく、保険料の削減にもつながるわけです。

 

4-3. 保険期間はできるだけ長期に

火災保険は最長10年、地震保険は最長5年までの契約ができますが、保険期間が長期になるほど保険料は割安になります。2年以上の契約の場合には、1年分の保険料に「長期係数」を掛けて保険料を算出するため、下表の通り、例えば10年契約の火災保険なら8.5年分に相当する保険料で契約することができるわけです。ただし、最も保険料が割安になる「長期一括払い」だと一時的な支出が大きくなりますので、予算と相談しながら「年払い」や「月払い」なども検討するとよいでしょう。

 

■火災・地震保険の長期係数(例)

契約年数 火災保険 地震保険
1年 1.00 1.00
2年 1.85 1.90
3年 2.70 2.80
4年 3.55 3.70
5年 4.40 4.60
6年 5.20
7年 6.05
8年 6.85
9年 7.65
10年 8.50

※2020年12月現在 ※火災保険の長期係数は保険会社により異なります

 

火災保険は近年値上がりが続いていることもあり、できるだけ長期で加入することをおすすめします。なお、契約期間中に解約してもペナルティー等はなく、保険会社の規定により、未経過期間に対応する保険料は返還されます。

 

4-4. ダイレクト型の保険

保険はこれまで代理店を通して紹介・契約するケースが多かったのですが、近年インターネットで保険会社と直接契約するダイレクト型の火災保険も増えてきました。ダイレクト型の保険では、保険会社のコストが抑えられるため、保険料が安くなる傾向があります。また、商品によっては補償内容を細かくカスタマイズできるものもあるので、保険の知識がある方や少しでも保険料を安くしたい方は、こうした保険を活用してみるのもよいでしょう。

 

5、火災保険には必ず加入を。地震保険はできるだけ加入しよう

ここまで、自然災害に備える住まいの保険について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。近年、台風、ゲリラ豪雨、地震などの自然災害は増加の一途をたどっており、今後さらに増えていくことが予想されています。

これから住まいを購入される方は、必ず火災保険に加入し、大切な資産を守りましょう。また、地震による損害が火災保険で補償されないことを考えると、補償に上限はあるものの地震保険への加入もしっかり検討するべきだと思います。

わからないことがあれば、不動産会社のスタッフやファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談してみることをおすすめします。