家を買う目的や要望がまとまってくると、物件のイメージがだいぶはっきりしてきます。次の段階では、市場にイメージ通りの物件があるのか、実際にどのくらいの価格で売られているのかを知るために物件情報を集めてみましょう。
目次
1、そもそも物件の情報収集をする目的とは
検討初期段階で、物件の情報収集をする目的は大きく2つあります。一つずつ見ていきましょう。
1−1. 希望エリアの相場観を知る
情報収集の目的の1つは、希望エリアの相場を知ることです。言い換えれば自分の目を養うため。
不動産は過去に取引された価格をベースに相場が形成されていますので、現在売出し中の物件と価格を見れば、おおよその相場観を知ることができます。自分が考える予算と希望エリアの相場がかけ離れていれば、もう一度エリアや広さなどを見直す必要が出てきます。
1−2. エリアに強い不動産会社を探す
もう一つの目的は、エリアに強い不動産会社を探すことです。
不動産会社は、主に会社(もしくは店舗)周辺のエリアの物件をメインに取り扱っていますので、取り扱い物件が多ければそのエリアに強い会社と見ることができます。またその会社が扱っている物件を見れば、新築分譲が得意なのか、中古の仲介物件が得意なのかも知ることができます。自分の希望に合いそうな会社を何社かピックアップしておくと、実際に来店して相談する際の目安になります。
2、物件探しの検討段階に合わせて効率的に情報収集するコツ
それでは、検討段階に合わせて効率的に情報収集するにはどのようにしたらよいのでしょうか。
情報収集の初期段階ではインターネット、だいぶ相場観がつかめてきてからは展示場や不動産会社を訪問してみるのがよいでしょう。
2-1. インターネット
現在、不動産広告の主流はインターネットです。
SUUMO、HOME’Sなど、いわゆるポータルサイトには、新築・中古、マンション・一戸建て等、種別ごとにたくさんの物件が掲載されており、エリア、間取り、価格帯等から検索したり、さらに細かい条件で絞り込むこともできますので、初期の情報収集には最適です。また、不動産会社のホームページにもその会社が扱う物件情報が掲載されていますので、合わせて見てみるとよいでしょう。気になる物件には「資料請求」して詳しい情報を取り寄せることができます。
2-2. 情報誌・チラシ
不動産広告の主流がインターネットになったことにより、情報誌はフリーペーパーになり、チラシの数もすっかり減りました。しかし新築物件については依然としてフリーペーパーやチラシが配布されていますので、新築を検討している人は、こちらも気にしておくとよいでしょう。
紙の広告は紙面の都合上、情報量が限られますので、気になる物件があれば、直接問い合わせるか、物件サイトにアクセスして詳しく調べてみることをおすすめします。
2-3. 住宅展示場・モデルルーム・ショールーム
注文住宅を検討していて、ハウスメーカーや工務店に関する情報収集をしたい場合には、住宅展示場や各社のモデルルームなどを活用する方法があります。一番のメリットは、その会社が建てた建物を見られることです。実際に建物を見ることで、それまで頭の中でぼんやりと描いていたイメージが鮮明になります。ただし、予め理解しておきたいのは、住宅展示場に建築されているモデルハウスは、多くが商品として「見せるための建物」であって、通常の地域に建築する場合には、少なからず何かしらの制限がでてくる場合がある、と言うことです。モデルハウスが気に入って家を建てたが、実際に完成した家は考えていたイメージとだいぶ違っていた・・などと言った話もしばしば聞かれます。
2-4. 不動産会社・建築会社
中古の仲介物件を検討している人は、直接不動産会社に行ってみるのも一つの方法です。不動産会社に行くメリットは、インターネットに掲載されていない物件情報が見られることや、疑問点・不安要素等がその場で解決することです。不動産会社は「REINS(レインズ)」という一般には公開されていない業者間の情報流通システムに加入しているので、市場で売り出されている仲介物件のほとんどを見ることができます。
初めから注文建築を検討している場合は、直接、建築会社で話を聞いてみるという手もあります。建築会社というと、家の建築が専門と思われがちですが、近年は土地の提案から請け負ってもらえる会社も増えており、建物デザインや建築工法などの話を併せて聞いてみたい方にはおすすめです。
不動産会社・建築会社どちらにしても、自社で取り扱っている物件をインターネットなどに公開せず、来店したお客様だけに紹介しているケースもあるので、何社か訪問してみるのもよい方法です。
3、不動産広告の見方を知っておこう
インターネットでもチラシなど紙の広告でも、不動産広告を見るときにはいくつかのポイントがあります。不動産広告は「宅地建物取引業法」や「不動産の表示に関する公正競争規約」により、表示項目や表示方法が決まっていますので、そのルールを覚えておくと便利です。
3-1. 駅や施設からの所要時間
不動産広告で「○○駅 徒歩○分」と書かれていた場合、「1分あたり80m」が基準になります。例えば徒歩10分は距離にすると800mです。また、距離の計測は、物件に一番近い出入口(改札口ではない)から最短となる道のりを基準にしており、信号待ちの時間などは含まれませんので、実際にはもう少しかかると思ったほうがよいでしょう。学校、スーパーなどの周辺施設は「分」ではなく「m」で表示(または併記)する決まりになっています。
3-2. 取引態様
不動産会社がその物件にどのように関わっているかを表す項目です。その関わり方によって「仲介手数料」がかかるかどうかがわかりますので必ずチェックしてください。
取引態様 | 意味 | 仲介手数料 |
「売主」 | 不動産会社が自ら販売している物件。主に新築物件 | 不要 |
「代理」 | 売主と販売代理契約を結んだ不動産会社が販売している物件。契約の効力等は、売主と変わらない。主に新築物件 | 不要 |
「媒介」
「仲介」 |
不動産会社が自ら売買するのではなく、売主と買主の間に立って仲介する取引形態。「媒介」と「仲介」は同意。新築・中古ともにあり得る。 | 必要 |
3-3. 建築条件付土地
土地の情報では「建築条件付」と書かれた物件をよく見かけます。
「建築条件付」とは、土地の売買契約後、一定期間内に特定の会社と建築請負契約を締結する条件がついた土地販売の形態で、ハウスメーカーなどが分譲する土地によく見られます。
「建築条件」という言葉から、必ず請負契約しなければいけないと思われがちですが、本来は、契約する会社を限定しているだけで、契約そのものを強制しているわけではありません。もし契約の条件が合わず、「一定期間内に請負契約が成立しない場合には、土地の売買契約を白紙解約できる」という特約が付されるのが一般的です。
3-4. 誇大表現には注意
不動産広告では、消費者が実際のものより著しく「優良」「有利」と誤認する可能性がある表現は禁じられています。今どきはあまり見かけなくなりましたが、「お買い得」「二度と出ない」「完璧」などはすべてNGです。また「業界初」「○○一」「特選物件」等の表現にはその根拠を併記する必要があります。
このような表現を使っている会社があったら、ちょっと用心したほうがよいかもしれません。
4、いち早く新着物件の情報をキャッチするには
不動産市場では常に新しい売り物件が現れ、いい物件から売却されていきますから、物件探しにおいて重要なのは、新しく市場に出た物件(=新着物件)の情報をいち早くキャッチすることです。
では、どのようにしたらタイムリーに新着情報をキャッチできるのでしょうか。
4-1. ポータルサイトの「新着メール」などを利用
SUUMOやHOME’Sなどのポータルサイトには、新着物件をメールで教えてくれる機能があります。
エリアや価格帯などの条件を登録しておくと、物件情報の公開日〜翌日にはお知らせしてくれますので、非常に便利な機能です。ぜひ登録しておきましょう。
4-2. 不動産会社のサイトで会員登録して「未公開物件」にアクセス
不動産会社のWEBサイトでは、何らかの理由でポータルサイトなどには公開していない物件情報を、会員限定で公開している「未公開物件」があります。ほとんどの会社は無料で登録できますので、希望エリアの不動産会社のサイトで会員登録しておくとよいでしょう。
4-3. 営業マンから聞く「公開前」の情報
インターネットのサービスはとても便利なものですが、いろいろなサイトを見ているうちに、「あれ?この物件さっきも見た・・」ということが起こります。売却期間の長い物件は、不動産会社がいくつかのポータルサイトに掲載していることがありますし、同じ物件を複数の不動産会社で扱っていることもあるからです。
逆に人気エリアのリーズナブルな物件は、ネットに掲載される間もなく売れていきます。そのような鮮度の高い情報をどのようにキャッチするのかというと、やはり最後はヒト(営業マン)に頼るしかありません。
営業マンは販売だけでなく、分譲用地の仕入れや業者間の仲介などにも関わっていますから、将来どのエリアでどんな物件が売り出されるかはだいたいわかっています。しかし、その物件を「広告」としてネットに公開できるのは、「建築確認が下りてから」という法律上の決まりがあるので、消費者の目には触れにくい期間があるのです。
そのような情報をいち早く得るには、不動産会社の営業マンにしっかりと要望を伝え、要望に合う物件が出たらすぐ教えてくれるようお願いしておくのがもっとも確実な方法かも知れません。
5、不動産広告からおおよその相場観をつかむには
不動産はひとつとして同じものがなくそれぞれに価格が違うため、なかなか相場観がつかみにくいものです。インターネットの情報からざっくりと相場観をつかみ、さっと返済額の計算までできる方法をお伝えします。
5-1. 相場は「㎡単価」「坪単価」に変換して把握しよう
ざっくりとした相場観をつかむには、価格を面積(㎡または坪・1坪は約3.3㎡)で割った「㎡単価」または「坪単価」を使うとよいでしょう。
例えば75㎡(約22.7坪)のマンションで価格が4,000万円なら㎡単価は約53万円、坪単価は約176万円となります。土地についても価格を土地面積で割れば単価が算出できますし、注文住宅の建築費も価格を延床面積で割れば単価が算出できます。
異なるエリアの物件を比較したり、ハウスメーカーの価格を比較したりするにも便利な方法です。しかし、違う種類の物件(例えばマンションと一戸建て)を単価で比較することはできませんのでご注意ください。
5-2. 返済額の計算は償還率を使うと便利で早い
物件の価格が自分の予算に合っているのかどうかは、その都度返済額を計算しないとわかりません。しかし「ローンシミュレーター」や「電卓アプリ」を何度も開いて数字を入力するのは面倒なものです。そこで「償還率」を使って簡単に概算金額を算出できる方法をご紹介しましょう。
(手順1)まず、物件価格から概算の借入金額を算出します。
借入金額 = 物件価格 + 諸経費(新築なら5%、中古なら8%位が目安) − 頭金
(手順2)次に下の表から借入条件(金利・返済年数)に合う「償還率」を算出します。
償還率:金利1%、35年返済なら償還率は「0.002823」
ローン償還率表(元利均等・ボーナス払いなし)
金利 | 返済年数 | ||
25年 | 30年 | 35年 | |
0.50% | 0.003547 | 0.002992 | 0.002596 |
0.80% | 0.003679 | 0.003125 | 0.002731 |
1.00% | 0.003769 | 0.003216 | 0.002823 |
1.20% | 0.003860 | 0.003309 | 0.002917 |
1.40% | 0.003953 | 0.003403 | 0.003013 |
1.60% | 0.004047 | 0.003499 | 0.003111 |
1.80% | 0.004142 | 0.003597 | 0.003211 |
2.00% | 0.004239 | 0.003696 | 0.003313 |
(手順3)最後に、借入金額に償還率を掛けると、月々の返済額が求められます。
借入金額が3,000万円とすると、「3,000万円×0.002823」= 8万4,690円(月々の返済額)」となります。
実際に使うときには「借入金額100万円あたりの返済額 = 約2,800円」と頭に入れておくと、物件の価格を見ただけでさっと計算できるのでとても便利です。
逆に、月々の返済額から借入額を求める場合には、「返済金額(月)÷ 償還率」 で求めることもできます。
6、相場観がつかめたら、次はいよいよ内見へ
ここまでご紹介してきた情報収集の方法は、基本的にすべて無料でおこなえますので、積極的に活用してみてください。
おおよその相場観をつかみ、要望と予算に合いそうな物件がいくつか出てきたら、いよいよ不動産会社に出向き、物件を自分の目で見て、決断するタイミングになります。