子育て世代は都心から郊外へ? 首都圏の人口移動トレンドを読み解く

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首都圏で年少者(0~14歳)の人口が郊外で増加していることが明らかになりました。総務省から発表された「住民基本台帳 人口移動報告2018年」をもとに、その理由と住宅購入で注目されるエリアを探ってみました。

 

目次

1、2018年の人口移動報告が発表。子育て世代の住み替えは郊外へ?

 

1-1. 住民基本台帳 人口移動報告とは?

人口移動報告とは、市区町村が管理する「住民基本台帳」に基づき,月々の国内における人口移動の状況を明らかにしたものです。日本国内における世代別の転入・転出、転入出前の居住地などが集計され毎月発表されています。

本コラムでは、2019年1月31日に発表された「住民基本台帳人口移動報告 平成30年(2018年)結果」のデータをもとに、2018年における首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の人口移動について考察します。

 

1-2. 2018年人口移動報告の全体トレンド

まず人口移動について全体のトレンドを見てみましょう。

全国で転入超過(転出より転入が多い)の都道府県は、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、愛知県、福岡県、大阪府、滋賀県の8都府県、残りの39道府県はすべて転出超過となっています。首都圏を市区町村別に見ると、以下のグラフのように東京都では転入超過の市区町村が転出超過の約3倍となっており、人口流入が多かったことが分かります。一方、千葉県は県全体では転入超過だったものの、市区町村ごとに見ると転出超過が上回っています。

※東京都区部と政令指定都市は区ごとに集計

 

1-3. 15歳未満の年少者人口は、都心で減少し郊外で増加している

そして今回注目したいのは、年少者(0~14歳)の人口移動です。この世代は出生から中学校卒業までの世代ですが、この世代の人口移動に他の世代とは違ったトレンドが見られます。「労働力人口」と呼ばれる15歳~64歳の人口移動は、東京23区が大幅な転入超過となっているのですが、この年少者人口については、主に東京近郊の郊外エリアで転入超過となっており、東京23区では転出超過となっているエリアもあります。なぜそのような結果が見られるのか、データとともに見ていきましょう。

 

2、トップ10はすべて郊外。子育て世代は郊外エリアへの住み替えに積極的

世代別の人口移動について、ランキング形式でまとめてみました。世代ごとにトレンドが大きく異なることが分かります。

 

2-1. 首都圏の転入超過数ランキング(市区町村別・マイナスは転出超過・単位:人)


全世代で見ると、東京23区がトップ10のうち7エリアを占め、都心部への人口移動が多かったことが分かります。

 

一方で、驚くべきことに0~14歳では、トップ10に東京23区は1つも入ってきません。逆にワースト10に大田区、墨田区、板橋区など東京の7区がランクインしており、都心部では転出超過、郊外では転入超過の傾向が見て取れます。

 

労働力人口と呼ばれる15~64歳世代では、トップ10すべてが東京23区で、年少者世代とは対照的な結果になっています。都心の人口増加はまさに労働力人口の増加と言えそうです。

 


そして仕事をリタイヤするタイミングの65歳以上の世代では、再び郊外エリアがトップ10に名を連ね、ワースト10には23区がずらりと並びます。

 

この年令区分によるランキングを見る限り、親と同居する年少者は郊外に住み、大学進学や就職を機に都心に出て、仕事をリタイヤするタイミングで再び郊外へ。そんな動きがあるようにも思えます。

 

2-2. 子育て世代は都心回帰していない?「0-14歳 転入超過数マップ」

こちらのマップは、首都圏の全市区町村の0~14歳の転入超過数をマッピングしたものです。

※「○」は転入超過、「×」は転出超過。色が濃いほど転入超過数が多い。

 

このマップから分かる通り、東京23区は転入超過がわずか4区(千代田区、文京区、世田谷区、北区)のみで、ほとんどが大幅な転出超過です。一方、東京の市部や近郊エリアでは転入超過のエリアがかなり広い範囲に及んでいることが分かります。

もちろんこのデータには、「都心から都心」「郊外から郊外」への移動も含まれますので、必ずしも「都心から郊外に人口が流出している」とは言い切れませんが、近年、都市回帰が進んでいると言われる中でも、小さな子どもをもつ世帯(子育て世代)は都心に回帰せず、郊外で暮らすことを選択しているようです。

 

3、なぜ子育て世代は都心回帰せず郊外に暮らすのか

では、なぜ子育て世代は都心ではなく郊外に暮らしているのでしょうか?もう少し細かく見てみましょう。

 

3-1. 郊外へ住み替えるタイミングは住宅購入?

これまで見てきた人口移動の年齢層をもう少し細かく見ていくとそのヒントが見つけられそうです。年少者(0~14歳)の流入超過数トップ10のエリアで、転入する人の年齢をもう少し細かく見てみましょう。

上表の通り、年少者の転入超過数トップ10エリアでは、すべてのエリアで転入時の子ども年齢が「4歳未満」がダントツのトップ、親年齢は「25-29歳」が最も多くなっています。つまり、子どもの誕生~入園前までが住み替えピークであり、その時の親の年齢は20代後半というケースが最も多いということが分かります。

そしてこの「入園前」の時期は、一般的な住宅購入のタイミングとも重なってきます。幼稚園や小学校に進んでからの転園・転校はなるべく避けたいと考える親が多いからです。今回のデータから、住み替え先の住まいが賃貸なのか持ち家なのかは判別できませんが、子どもの誕生を機に住宅購入を検討しはじめ、入園前のタイミングで郊外に引っ越すという方が相当数いるのではないかと推測されます。

 

3-2.転入の多いエリアに共通する特徴とは?

では、子どもの誕生を機に住宅購入を検討しはじめる子育て世代は、どんな基準で住まいを選んでいるのでしょうか。人気エリアに共通する特徴について見ていきましょう。

 

(1)交通アクセス

まず、交通アクセスを見てみましょう。転入超過トップ10エリアは、概ね都心まで30~40分となっています。子育て世代の会社員にとって通勤時間は住まい選びの重要な条件ですので、郊外でも通勤に便利なエリアの人気が高くなります。


(2)生活利便性

そして、トップ10エリアに共通するもう一つの要素は生活利便性です。どのエリアも駅前や幹線道路沿いに商業施設やショッピングモールなどがあり、日々の買い物が近くで済ませられること、子どもと一緒にお出かけできるスポットや飲食店が多いのも重要なポイントになっています。

 

(3)子育て環境

そして子どものいる家庭にとって重要なのが「子育て環境」です。転入超過数トップの流山市は「母になるなら流山市」のキャッチフレーズで、子育て支援にとても力を入れている市です。保育園や子育て支援センターの数や入りやすさ。保育費や医療費の補助など行政サービスはもちろん、緑や公園などの自然環境、治安の良さなども重要なポイントとなっています。

 

 

3-3. やはりお金は大きな判断基準。不動産価格の比較

そして、住まいの購入で最も重要なのが「お金」の問題、つまり不動産の価格です。

年少者の転入超過トップ5エリアについて不動産価格相場を調べてみました。

※REINS東日本 2019年4月データより集計

(1)中古マンション

中古マンションの価格相場は、印西市を除きほとんどが2,000万円台前半~半ばくらいが相場のようです。㎡単価で比較してみると、町田市と藤沢市が約40万円、流山市と柏市が約30万円となっています

 

(2)一戸建

一戸建についてはマンションよりもばらつきが大きく、新築だと町田市と藤沢市は4,000万円を超えているのに対して、柏市では3,000万円を切っています。一戸建の場合には、販売価格のうち土地価格の占める割合が大きいので、新築でも中古でもさほど価格差がなく、築年数よりも立地と土地の広さにより価格が決まってくるケースが多いようです。

 

(3)土地

土地については、町田市と藤沢市で㎡あたり20万円前後、柏市、流山市は10万円前後となっています。印西市は平均㎡単価が10万円を切っており、都心へのアクセスがあまりよくない分、非常にリーズナブルに土地が購入できるエリアです。

 

4、子育て世代の住まい探しの平均像は、通勤30〜40分で価格は2,000〜3,000万円台

 

ここまで2018年の人口移動データをもとに、年少者と子育て世代の住宅購入について見てきました。年少者の流入が増えているエリアの特徴としては、概ね都心への通勤が30~40分、価格は2,000〜3,000万円台であると言えそうです。

 

近年、金融緩和の影響により都心部の価格は上昇を続けており、平均的な会社員には手が届きにくいところまで来ています。また、それまで共働きで比較的リッチだった夫婦も子どもが生まれ、休職や時短により収入が減ったり、子どもの教育費などにお金がかかるようになったりします。そんな中でローンを無理なく支払い、自然豊かな環境でのびのびと子育てをしたいと考える方にとって、郊外エリアはとても魅力的な選択肢だと思います。

そして、現在の低金利がしばらく続くとすると、郊外の人気エリアの価格は今後上昇してくる可能性が高いです。子どもの入園(入学)前に住宅購入を考えている方は、希望エリアの相場情報などの情報収集を始めてみてはいかがでしょうか。

※出典:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 平成30年結果」