自然災害に備える住宅購入② ~災害に強い家ってどんな家? 検討するべき3つのポイントとは~

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前回のコラムでもお伝えした通り、地震・台風などの自然災害が頻発する昨今、住まい選びに「防災」の視点をもつことがますます重要になっています。2回目の今回は、災害に強い家とはどんな家なのか、購入時に検討するべきポイントは何かについてお伝えします。

 

 

1、優先的に備えるべき災害とその目的とは

一口に「災害に強い」と言っても、災害の種類は地震、台風、雷、大雪など様々です。その中で特にどのような災害に備えるべきなのでしょうか。また、災害対策の目的についても確認しておきましょう。

 

1-1. 激甚災害の多くは「地震」と「水害」

災害の中で特に被害の大きかったものは、法律に基づき「激甚災害」に指定されます。近年の激甚災害の指定は2018年に4件、2019年に3件ありましたが、2018年は暴風雨(豪雨)が3件、地震が1件。2019年はすべて暴風雨(豪雨)です。それ以前の傾向も同様に、ほとんどが地震と暴風雨(豪雨)による水害です。こうした傾向を踏まえると、住まいの防災は、まず地震と水害への対策を優先的に検討していくべきと考えられます。

 

1-2. 災害対策の2つの目的

住まいの災害対策を検討する上では、2つの大きな目的があります。1つ目は災害による直接的な被害を最小限にすること。2つ目は被害を受けた後でも通常の生活が続けられることです。例えば地震であれば、大きな揺れによる建物の倒壊や家具の転倒などから命を守ることが1つ目の目的。地震後に停電や断水が続いても通常の生活を送れることが2つ目の目的となります。

 

■住まいの災害対策の目的

こうした前提に立つと、災害に強い家とは、主に地震と水害による直接的な被害を受けにくく、災害発生後も通常の生活が送れる家ということになります。

 

 

 

2、災害に強い家を建てる(買う)ための3つの要素

 

どのような点に気をつければ、このような災害に強い家を建てる(買う)ことができるのでしょうか。家を建築・購入する際に、3つの要素に分けて検討してみるとよいと思います。

 

2-1. 立地

立地とは、家が建っている場所、つまりその土地の地形や地盤などを意味します。具体的には、河川が近くにあるかどうか、周辺よりも高い(低い)かどうか、建物を支える地盤の固さはどうか、などを指します。

 

2-2. 構造

2つ目は建物の構造です。構造とは木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの工種、主要構造部(基礎・柱・壁・屋根等)がどのように造られているかなどを意味します。それに加えて、建物の高さや形状などによっても災害に対する強さが変わってきます。

 

2-3. 間取り・設備

間取り・設備は、主に建物の内部に関するもので、建物そのものの強度よりも、災害後の生活に影響します。水道、電気などのライフライン、食料の供給が長期間止まることを想定しながら検討していきましょう。

 

■ 災害対策を検討する上での3つのポイント

 

3、地震や水害に強い立地とは

それでは、まず立地から考えてみましょう。地震や水害に強い立地とはどのようなものなのでしょうか。

 

 

3-1. 地震に強い立地とは

地震に強い(弱い)立地とは、主にその土地の「地盤」の良し悪しを言います。一般的に低地や沼地、埋立地などは地盤が柔らかく、地震に弱いとされています。地盤が柔らかい土地は、地盤が固い地域よりも震度が大きくなることが分かっており、液状化現象が発生する可能性もあります。地震対策としては、より地盤の硬い立地を選ぶことをおすすめします。

現在、建築時の地盤調査は義務化されており、十分な地耐力(地盤が重みに耐えられる強さ)がないと判断されれば、一定の地耐力を確保するための「地盤補強工事」を行なうことになります。

 

地盤のデータはインターネットで公開されていますので、確認してみるとよいでしょう。

 

参考:「地盤サポートマップ」ジャパンホームシールド株式会社

 

3-2. 水害に強い立地とは

水害に強い立地とは、河川の氾濫や洪水で被害を受けにくい土地かどうかを言います。一般的に海・河川の近くや低地などが危険と言われますが、最近では、豪雨により市街地の排水が間に合わなくなる「内水氾濫」が頻発しており、必ずしも河川の近くだけが危険とは言えなくなってきました。こうした水害などの危険度を地図上に表したものが「ハザードマップ」で、洪水・土砂災害・津波等のリスク情報をまとめて確認することができます。

 

関連記事:住まい選びに「防災」の視点を。ハザードマップで災害リスクをチェックしよう

参考:ハザードマップポータルサイト(国土交通省)

 

 

4、地震や水害に強い建物の構造とは

次に地震や水害に強い建物の構造について見ていきます。

 

4-1. 地震に強い構造と耐震等級

建物の耐震性は構造によって決まると言ってもよいでしょう。一般的には木造よりも鉄筋コンクリート(RC)造などの方が耐震性は高くなりますが、RC造の一戸建は非常に高額となり、あまり一般的ではありませんので、ここでは木造を中心にお伝えします。

基礎は全面にコンクリートを敷設する「ベタ基礎」以上が望ましく、屋根はスレートやガルバリウム鋼板などの軽量のものの方が、家全体の重心が低くなり、耐震性が高まります。また、揺れに対する壁の強さは「壁倍率」という数値で表され、一般的に、柱と筋交いで作られた壁よりも、柱と合板などの面材で作られた壁の方が、壁倍率が高く、揺れに強い構造となります。建物の形状としては、凹凸のない正方形に近い形の方が揺れによるねじれに強いと言われています。木造一戸建用の「制振装置」「免震装置」なども耐震性を高めるためには有効です。

 

こうした建物の構造や形状による耐震性をわかりやすく表示したのが「耐震等級」です。

 

■耐震等級の基準

耐震等級1 耐震等級2 耐震等級3
建築基準法の耐震基準と同等の強度。

震度6強~7程度に対して倒壊や崩壊しない。

建築基準法の耐震基準の1.25倍の強度。

主に学校や病院などの耐震性能。

建築基準法の耐震基準の1.5倍の強度。

主に消防署・警察署など防災拠点の耐震性能。

 

耐震等級1では「倒壊しないこと」が基準とされていますが、これは地震から命を守るための最低基準と考えましょう。復旧にかかるコストや、地震後の生活を考えると、耐震等級2以上(できるなら3)が望ましいでしょう。

 

 

4-2. 水害に強い構造とは

水害に強い家とは、言い換えれば「浸水」しにくい構造の家と言えます。浸水には「床下浸水」と「床上浸水」がありますが、床上浸水した場合には、床や壁の全面貼り替え、断熱材の交換、室内の殺菌・消毒などが必要になり、床下浸水に比べ、復旧期間も費用も桁違いに大きくなります。水害対策を考える上では、床上浸水しにくい構造・形状を優先的に検討するべきだと思います。

床上浸水しにくくするためのシンプルな方法は、床を高くすることです。具体的には敷地全体を「かさ上げ」する方法と、建物の基礎を高くする「高床(高基礎)」という方法があります。どちらも床上浸水を防ぐためには有効ですが、道路から建物への階段が必要になる、建築コストが上がるなどのデメリットもあります。

他にも防水性の塀で建物を囲む、防水性の外壁を設けるなどの方法がありますが、コスト面から見てもあまり現実的ではないでしょう。

出典:「水害対策を考える」4-1-3 浸水の予防・人命を守る家づくり(国土交通省)

 

道路より低い位置につくる半地下のガレージなどは豪雨時に水が流れ込む可能性がありますし、一度浸水するとなかなか水が引きませんので、水害対策という点から見るとあまりおすすめできません。

 

 

5、地震や水害に強い間取り・設備とは

次に地震や水害に強い間取りや設備について見ていきます。

 

5-1. 地震に強い間取りとは

一般的に、建物は壁(耐力壁)が多い方が地震に強くなりますので、大きな吹き抜けや、柱・壁のない大空間は、耐震性という点から見ると不利になります。もちろんしっかりと構造計算された間取りであれば問題ありませんが、壁がバランスよく配置された間取りが好ましいと思います。また、外観上1階よりも2階が大きくせり出した家、1階の一部がピロティ構造になっていて壁がない家などは耐震性が低くなる可能性があります。

また、阪神・淡路大震災では、家具の転倒による圧死や怪我が多く発生しました。収納スペースはできるだけ造り付けとし、大型の家具を置かないようにしましょう。冷蔵庫や食器棚は倒れたり中身が散乱したりして避難経路をふさいでしまう恐れがあります。いざという時に戸外に避難できるよう家具や家電の配置にも注意しましょう。

 

5-2. 水害に強い間取りとは

次に水害に強い間取りについて見ていきましょう。ポイントは1階が浸水した場合でも2階で通常に近い生活が継続できるかどうかです。2階にキッチンやリビングなどの生活スペースを設けると、万一、1階が浸水した場合でも、2階で通常に近い生活が送れる可能性が高まります。同様に3階建で1階をガレージ、2階~3階を居住スペースとするのも有効です。また、電気系統が水に浸かると電気が使えないばかりか、漏電火災などにつながる可能性もありますので、コンセントや室外機などはできるだけ高い位置に設置しましょう。分電盤(ブレーカー)を1階と2階に設置し、電気系統を分けておくのも有効です。

 

5-3. 災害対策として導入したい住宅設備

最後に災害対策として導入したい住宅設備について見てみましょう。設備については、災害の種類に関係なく役立つ物が多いので、ここでまとめてご紹介します。

まず、設備を検討する上で重要なのは「在宅避難」という考え方です。大きな災害では避難所が設けられるケースが多いのですが、最近では感染症予防の観点から、在宅での避難を推奨することも増えてきました。

また、内閣府による首都直下地震等による東京の被害想定によれば、各ライフラインの復旧目標日数は、電気で6日、上水道で30日、ガスで55日となっています。この期間を在宅避難でどう乗り切るかが検討のポイントとなります。

 

① 備蓄庫(パントリー)

在宅避難でもっとも重要なのは水と食料の確保です。そこでおすすめしたいのが「備蓄庫(パントリー)」の設置です。家族が少なくとも1週間程度暮らせるだけの飲料水や食料、トイレットペーパーなどを備蓄できるスペースを作っておきましょう。もちろん災害時だけでなく普段から食材や日用品をストックしておくスペースとしても便利です。

 

② 太陽光発電と蓄電池

災害が発生して停電になると、照明はもちろんエアコンや冷蔵庫など、あらゆる家電が使えなくなり、熱中症などの二次被害にもつながりかねません。そこでおすすめしたいのが太陽光発電です。太陽光発電は損傷がない限り、災害時でも電気を使うことができます。また、日中発電した電気を蓄電しておけば、夜間も電気を使えるので、災害時には非常に心強い設備です。もちろん平常時にも省エネ(光熱費の削減)に有効ですので、ぜひ導入をおすすめします。

 

③ エコキュート

太陽光発電と合わせて検討したいのがエコキュートです。エコキュートは電気でお湯をつくり、貯湯しておける設備で、平常時にはキッチンやお風呂の給湯として使い、災害時にはタンクに貯めたお湯や水を取り出して生活用水として使うことができます。

 

④ IHクッキングヒーター

前述のように、災害時のライフラインの復旧は電気がもっとも早く、ガスが最後になりますので、災害対策の観点から見るとコンロはIHがおすすめです。ガスコンロを設置する場合には、防災用品としてポータブルIH調理器を常備しておくのもよいでしょう。

 

⑤ シャッター・飛散防止フィルム

地震・水害対策ではありませんが、台風などの暴風雨では飛来物による窓ガラスの破損が多く発生します。窓ガラスが破損すると、割れたガラスによる怪我だけでなく、強烈な風が直接室内に吹きつけ大変危険です。対策としてはシャッター(雨戸)の設置や、飛散防止フィルムが有効です。

 

 

6、災害対策の優先順位

ここまで、主に地震と水害に強い家についてご説明してきました。しかし、実際に家を建てる際には、災害対策だけを優先するわけにはいきませんし、予算の制限もあります。そこで、災害対策を検討する際の優先順位について考えてみます。

 

 

6-1. 後から変えられないものを優先する

前述の通り、災害に強い家は「立地」「構造」「設備」の3要素に分けられますが、家を建てる際には「後から変えられない」もの、つまり「立地」「構造」を優先的に検討しましょう。地盤の強さや建物の耐震性などは建てた時点で決まっているので、これを後から変えることは困難です。また変更に多額の費用がかかるもの、例えば太陽光発電やエコキュートなどは、設置だけでなく配管工事や機器の交換をともないますので、最初から導入しておいた方がコストも安く無駄がありません。それに対して、シャッターなどは、建ててからでも比較的簡単に追加することができます。

 

6-2. 日常生活にも有用なものを優先する

もうひとつの考え方は、災害時だけでなく「日常生活にも有用なもの」を優先するということです。例えばシャッターは強風時の飛来物から家を守ってくれますが、日々の防犯にも役立ちます。太陽光発電やエコキュートは、停電に備えるだけでなく、光熱費の節約にもつながり、パントリーは非常食の備蓄をしながら、日常の収納スペースとしても便利に使えます。

限りある予算を有効に使うためには、災害時だけでなく、日々の生活にも役立つ設備を優先的に導入していく発想が大事です。

 

災害に強い家、ご理解いただけましたでしょうか。地震や水害などの災害が頻繁に発生する昨今、災害対策はますます重要性を増しています。建築・設計のプロと十分に検討し、安心・安全な住まいづくりを心がけましょう。

次回は、災害と住まいの保険についてお伝えする予定です。