
近年、共働き世帯や子育て世帯の家づくりで注目されているキーワードが「家事ラク」。家事を少しでもラクに、時短できる間取りや設備の人気が高まっています。今回はその背景と家事ラク設備導入のポイントについて解説します。
目次
1. なぜ家づくりで「家事ラク」が重視されるのか
近年、家づくりのテーマとして急速に注目されているのが「家事ラク」です。日々の家事を少しでもラクにしたい背景には何があるのでしょうか?
1-1. 共働き世帯の増加
まず挙げられるのが共働きの増加です。総務省の調査によれば、日本の共働き世帯は全体の約72%に達し年々増加しています。中でも両親ともフルタイムで働く世帯では、家事ができる時間は出勤前と帰宅後に限られているため、時短や効率化のニーズが非常に高まっています。
1-2. IoTやAIの進化
次に挙げられるのが、IoTやAIといった情報技術の進化です。インターネットに接続できる家電や、AI(人口知能)の進化により、掃除や洗濯、料理といった手間のかかる家事の自動化できる時代になりました。暮らしを支えるテクノロジーが「家事ラク」を強力に後押ししています。
1-3. 子育て支援補助金
最後に、政府が推進する子育て支援も要因のひとつです。住まいの購入には様々な補助・優遇がありますが、子育て世帯に対する支援は手厚く、新築なら住宅ローン控除や補助金の優遇、中古ならビルトイン食洗機や浴室乾燥機などへの交換リフォームに補助金が支給されます。
家事ラク設備の導入により1日30分の時短ができれば、年間に生み出される自由な時間は約182時間。その時間を子どもとの触れ合いや趣味に使えるとしたら、「家事ラク」はまさに暮らしの質を高める投資と言えるでしょう。今回は、そんな家事ラク設備について詳しく解説します。
2. 家事ラク設備「キッチン」編
それでは早速キッチンの家事ラク設備を見ていきましょう。
2-1. ビルトイン食洗機
キッチンでおすすめしたいのは食器洗い乾燥機(食洗機)です。食洗機には据置型とビルトイン型の2種類がありますが、キッチンにすっきり収まって容量も大きいビルトイン型がおすすめです。 また、ビルトイン型には「引き出し型」と「フロントオープン型」の2種類があります。現在、日本では引き出し型が主流となっており、多くの機種から選べる、食器の出し入れがラクといったメリットがあります。一方、フロントオープン型は一度にたくさんの食器が洗えるのがメリットですが、海外メーカーの製品が主流なので、価格は高めで機種もそれほど多くはありません。
■引き出し型(左)フロントオープン型(右)

幅60cmの大容量タイプなら、1日分の食器をまとめて洗浄できるので、食器洗いの負担を大幅に軽減できます。
2-2. 自動調理家電
自動調理家電とは、「材料を入れてほったらかし」で調理を完結できる家電の総称です。
例えば「自動調理鍋」は、材料を入れてスイッチを押すだけで自動的に調理してくれる鍋で、煮物、炒め物、スープ、カレー、お菓子など数百種類のレシピに対応しています。
朝材料を準備して鍋に入れ、スイッチを入れておけば帰宅時間に出来たての料理が食べられる。そんな使い方ができる家電です。 また、鍋以外にもグリルやオーブン、スチームオーブンレンジなど、自動調理に対応している家電を使って手間のかかる料理を時短することができます。
2-3. 掃除しやすいコンロやレンジフード
キッチンの家事で手間がかかるのが掃除です。特に油汚れがつきやすいコンロやレンジフードは、掃除のしやすさが導入の決め手と言っても過言ではありません。
コンロはガスコンロとIHヒーターの2種類がありますが、掃除がしやすいのは天板がガラスでフラットなIHヒーターです。ガスコンロにする場合は、天板がガラスでフラットなタイプや、五徳を簡単に取り外せるものなどを選ぶとよいでしょう。また、魚焼きグリルの洗いやすさも決め手のひとつです。
■ガラストップのガスコンロ

また、レンジフードは頻繁に掃除するものではありませんが、ファンに油がつきにくいタイプ、簡単に脱着して洗えるタイプがおすすめです。最近ではファンを自動洗浄できるタイプも販売されています。
2-4. 収納・パントリー
キッチンまわりの収納計画は家事ラクの大きなポイントです。「切る」「調理する」「片付ける」という一連の動きがスムースになるように、冷蔵庫や収納を配置するのがポイントです。キッチン家電の置き場所やコンセントの位置にも気をつけましょう。
またキッチンの近くに、購入した食材やペットボトルなどをストックしておけるパントリーを配置すると、まとめ買いにも対応しやすいすっきりしたキッチンになります。
3. 家事ラク設備「洗濯」編
次に手間のかかる洗濯をラクにしてくれる設備です。
3-1. ドラム式洗濯乾燥機
まずおすすめしたいのがドラム式洗濯乾燥機です。1台の機器で「洗う・干す・取り込む」という3つの工程を自動化できるので、限られたスペースで洗濯の時間を大幅に削減できます。朝スイッチを入れておけば、帰宅時には乾燥まで終わっているといったイメージです。
また、天候に左右されず花粉や梅雨の時期でも安心して使えるのも大きなメリットです。最近では、AIを搭載して洗濯物の量や汚れに応じて最適な洗い方を判定し、洗剤や柔軟剤を自動投入してくれるモデルもあります。

3-2. 縦型洗濯機+ガス衣類乾燥機
ドラム式洗濯乾燥機は、洗って干して取り込むまでを自動化してくれますが、デメリットとしては乾燥に時間がかかること、乾燥中は洗濯ができないことなどが挙げられます。 そうしたデメリットを解消するなら、縦型洗濯機とガス乾燥機の組み合わせもおすすめです。強力なガス温風で、短時間でふんわり仕上がるので、時短を重視する方にはおすすめです。ただし、洗濯機と合わせて2台分のスペースとガス配管や排気口などが必要なので、設計段階からの検討が必須です。
省スペースで全自動を目指すならドラム式、複数回の洗濯を効率よくこなしたいならガス乾燥機がおすすめです。
3-3. 浴室乾燥機
浴室乾燥機は、余分なスペースをとらずに、雨の日や花粉の時期にも洗濯を干せるというメリットがあります。また、乾燥機が使えないウールやシルクなどの衣服を干す場所としても便利です。しかし、干せる量は限られますし、「干す・取り込む」という工程は自動化できないので、洗濯メインで考えるならドラム式やガス乾燥機の方がおすすめです。
一方、浴室乾燥機は、乾燥だけでなく浴室暖房としても使えるので、冬の時期のヒートショック予防にもなります。総合的にメリットがあれば検討してみましょう。
3-4. ランドリールーム+ファミリークローゼット
家事の中でもっとも手間のかかる洗濯をラクにするには、「洗う」「干す」「取り込む」「たたむ」「しまう」という工程をできるだけ近い場所でできるようにするのがポイントです。
そのためには、洗濯・乾燥、室内干し、アイロンがけなどが一度にできるランドリールームを設置するのがおすすめです。また、ランドリールームの近くに家族の衣類をまとめて収納できるファミリークローゼットを設置すれば、「たたむ」→「しまう」の工程がさらに効率化できます。

4. 家事ラク設備「掃除・空調」編
次に掃除や室内の温度管理をラクにしてくれる設備です。
4-1. ロボット掃除機
食洗機、ドラム式洗濯乾燥機と並んで「共働き三種の神器」とも言われるのがロボット掃除機です。最近では吸引と水拭き、さらにゴミの自動収集機能などが搭載されたモデルも販売されています。出かけている間に掃除をしてくれるので、日々の掃除の手間をほぼゼロにすることも可能です。
4-2. 掃除機能付き浴室
掃除の中でも浴室の掃除はもっとも面倒なもののひとつです。最近では入浴後にボタンひとつで浴槽や床に洗剤や除菌水を噴射し、カビや汚れが蓄積するのを防ぐ「自動お掃除機能」を搭載したものがあります。また、あまり触りたくない排水口も、汚れがつきにくく簡単に掃除できるタイプがあります。面倒なお風呂掃除から開放されたいという方は検討してみるとよいと思います。
4-3. 全館空調システム
全館空調システムは、家全体を一つのシステムで冷暖房する空調設備のことで、家全体をほぼ均一な温度に保つことができます。家事をラクにする機能ではありませんが、快適性がアップし、ヒートショックなどの予防にもなります。導入コストはやや高めですが、高気密・高断熱の住宅で空調設計がしっかりしていれば、個別エアコンと比べてもランニングコストは大きく変わらない場合があります。なお、全館空調は各部屋へのダクトの配管などが必要なので、設計段階での検討が必須となります。
5. 家事ラク設備「エクステリア・セキュリティ」編
最後に、エクステリアとセキュリティに関する設備です。家事がラクというよりは、便利で安全な設備が多くなっています。
5-1. 宅配ボックス
不在時に荷物が受け取れる宅配ボックスは、盗難の心配も少なく再配達の手間もゼロ。もはや共働き世帯の必須アイテムです。据え置き型・壁埋め込み型など様々なタイプが販売されていますので、ぜひ検討してみましょう。

5-2. スマートロック
スマートロックは、スマートフォンやカードなどで開閉できる鍵をいいます。最近では顔や指紋など生体認証タイプのスマートロックも販売されており、セキュリティ向上だけでなく、両手がふさがっているときの開閉なども便利です。また、スマートフォンと連動して外出先から鍵を開閉できるので、閉め忘れや来客の際にも安心です。

5-3. 防犯カメラ・モニター付きインターフォン
防犯カメラやモニター付きインターフォンは、設置してあるだけで防犯効果が期待できますし、外出先から家の様子が確認できるので子育て世帯にはぜひ導入したい設備です。設置する位置や配線など、設計段階でしっかり検討しておきましょう。

6. 家事ラク設備を導入するときのポイント
家事ラク設備を導入する際に気をつけるポイントを解説します。
6-1. 動線設計
家事ラクな住まいを実現するためには、今回ご紹介した設備機器だけでなく、適切な動線設計が不可欠です。家事をする際の人の動きや経路を「家事動線」といいますが、キッチンとダイニングテーブル、洗面脱衣室とランドリールームなどをどう配置するかで、家事の効率は大きく変わってきます。プランニングの際には、設計士などプロに相談しながら「家事動線」もしっかり検討しておきましょう。
(関連記事)家事がラクになる住まいをつくるための3つのポイント
6-2. 設備導入の予算と優先順位
家事ラク設備の導入にあたっては、予算と優先順位をしっかり検討しましょう。
例えば、全館空調やビルトイン食洗機、ガス乾燥機などは専用のスペースや配管が必要になりますので、新築時に導入する方が望ましいといえます。一方でロボット掃除機などは電源さえあればよいので、家を建ててからでも簡単に導入が可能です。予算に応じた優先順位をつけながら検討していきましょう。
6-3. 完成後に後づけする場合は配管や電源の確保を
建物が完成してから設備を導入する場合には、あらかじめ電気やガスなどの配管をしておくことが重要です。これを忘れると導入時に多額の工事費がかかることもあります。配管やコンセントの位置など、設計時にしっかり検討しておきましょう。
家事ラク設備の導入のポイント、いかがでしたでしょうか。
冒頭に申し上げたように、家事をラクにすることは贅沢ではなく、家族と一緒に過ごす時間を作り出すための投資です。テクノロジーと工夫を取り入れて、効率的で快適な住まいを実現しましょう。
共働き・子育て世帯の強い味方「家事ラク」設備。ぜひ積極的に導入を検討してみてはいかがでしょうか?