共働きファミリーの住宅購入で、自治体の「子育て支援」に注目するべき理由

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近年、共働きの世帯が増加したことにより、住宅を購入するときの「子育て環境」がますます重視されています。しかし子育て支援の内容は自治体によって様々。買ってから後悔しないように子育て支援と子育てしやすい街について知っておきましょう。

 

目次

1、なぜ今「子育て支援」が住宅購入者に注目されているのか

少子高齢化の対策として語られることが多い「子育て支援」。なぜ今これほどまでに注目されるのでしょうか。

 

1-1. 共働き世帯は年々増加し、1,100万世帯超えに

子育て支援が重視される背景として、共働き世帯が年々増加していることが挙げられます。平成9年に、共働き世帯がいわゆる専業主婦世帯を上回って以降、年々その数は増え続けています。

※出典:平成30年 男女共同参画白書 概要版(内閣府)

 

そして、共働き世帯が子育てしながら仕事を続けるためには、保育、医療などの公的支援が不可欠です。2019年10月から幼児教育・保育の無償化がスタートし、幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3歳から5歳児クラスの子供たちの利用料が無料になるなど、国全体として子育て環境の改善に力を入れており、また各自治体でも、地域の少子化対策として、保育施設の増設や独自の制度で子育て世帯をサポートしています。

 

1-2. 子育て支援の内容は自治体によって大きく異なる

少子高齢化は国だけでなく、自治体にとっても大きな課題です。そこで各自治体はそれぞれ独自の子育て支援制度を設け、若い世代の流入・定住を図っています。その結果、支援の手厚い自治体は「子育てしやすい街」として、住宅購入者に注目されることになったわけです。

 

1-3. 子育てしやすい街に住むことのメリット

では「子育てしやすい街」に住むメリットとは何なのでしょうか。

最も大きなメリットは「無理なく働き続けられること」と言えます。保育園等に子どもを預けられるだけでなく、延長保育に対応してくれたり、子どもが病気のときにサポートしてくれたりする施設があれば、今までと同じ職場で働き続けることができます。これは収入面においてもキャリアアップの面においても大きなメリットと言えます。もうひとつのメリットは金銭的な助成です。保育費、医療費などの助成が大きい街に住めば、その分家計にゆとりが生まれます。子どもが生まれ独り立ちするまでは20年前後、少しの違いが大きな違いになるのです。

 

 

2、子育て支援の良し悪しはどうやって比較すればいい?

では子育て支援の良し悪しは、どのように比較すればいいのでしょうか。いくつかのポイントをご紹介します。

 

2-1. 育休後の復職に欠かせない未就学児の保育環境

共働き子育て世帯にとって一番の課題は、就学前の子どもを預ける施設があるかどうかです。また当然ですが、預けられればどこでもよいわけではなく、送り迎えがしやすい場所にあるか、延長保育などに対応してくれるか、また費用の負担なども重要です。単に保育園に入れるかどうかではなく、希望する施設に入りやすいかどうかが、街を選ぶ上でのポイントと言えるでしょう。特に0~2歳児は施設が不足する傾向にありますので、各自治体の年齢別待機児童数や、今後の増設計画などが比較の目安となります。

 

2-2. 「小1の壁」を乗り越えるための学童保育

子どもが小学校に入るといわゆる「小1の壁」という問題が発生します。小学校の下校時間は保育園よりも早く、夏休み・冬休みも長いため、むしろ保育園時代よりも働くことが難しく、ここで仕事を諦めざるを得なくなるケースも多いようです。

ここでのポイントは、放課後の学童保育です。多くの自治体で学童保育が実施されていますが、定員、時間、費用などは自治体によって異なります。比較のポイントは、費用の安い公立の学童保育が利用できるかどうか、何時まで預かってくれるのか、食事のサポートはあるかなどをチェックするとよいでしょう。

 

2-3. 医療費助成は何歳まで受けられるか

保育と並んで重要なのが医療のサポートです。一般的に子どもは大人よりも病気にかかりやすく、夜間や救急の診療も多いので医療費がかかります。多くの自治体では、子ども(概ね中学卒業くらいまで)の医療費を助成していますが、自治体によって所得制限があったり、自己負担があったりと細かな違いがあります。また最近では対象を高校生まで広げる自治体も増えつつあります。

 

 

3、子育て支援の充実している街はどこ?

それでは、実際に共働き子育てファミリーが安心して子育てできる街はどこなのでしょうか?日本経済新聞社と日経DUALが発表した「共働き子育てしやすい街ランキング2018」をもとに見ていきましょう。

 

3-1. 首都圏の共働き子育てしやすい街ランキング

日経DUALのランキングは、主要143自治体の回答をもとに独自の基準でランキングを行っています。主な基準は、認可保育園に入りたい人が入れているか、また利用者への助成があるか、保育士確保へ自治体独自の取り組みがあるか、学童保育が充実しているか、病児保育施設の充実度など全13項目にも及びます。今回は、このランキングの中から首都圏エリアに絞って見ていきたいと思います。

 

■共働き子育てしやすい街ランキング2018(首都圏のみ抜粋)

1 東京都新宿区 12 千葉県浦安市
2 神奈川県厚木市 12 東京都渋谷区
2 東京都千代田区 12 千葉県船橋市
4 千葉県松戸市 15 東京都武蔵野市
5 東京都板橋区 16 東京都品川区
5 東京都福生市 16 東京都羽村市
7 東京都荒川区 16 神奈川県大和市
7 東京都葛飾区 19 神奈川県東大和市
9 千葉県柏市 20 東京都国立市
9 東京都杉並区 20 東京都文京区
9 東京都豊島区

※同順位は評価点が同点であることを表しています

 

1位の新宿区は、0歳児と1歳児の保育園への入りやすさ、保育士に対する家賃補助、ファミリーサポート会員による病児・病後児のケア、さらに小学3年生までは希望者全員が学童に入れることなどが高く評価されています。

2位の厚木市も、0歳児の保育園への入りやすさと待機児童対策、また保育士資格の取得費用の助成などが高く評価されており、第二子以降の0歳児がいる世帯に対し、紙おむつを配送するなどユニークな制度も導入されています。

同じく2位の千代田区は、認可外施設の整備と認可保育所を利用した場合との差額への助成、学童保育への全入(最長で20時以降まで延長可)などが高い評価を受けています。また、子どもの医療費についても高校卒業まで助成しており、入通院費の自己負担分まで区が負担しています。

松戸市、柏市はともに待機児童ゼロを達成し、不足しがちな1歳児クラスの手厚さや今後の保育園の増設計画などが高評価となっています。

 

共働き子育てしやすい街の特徴としては、0歳~1歳児の保育充実や、病児・病後児のケア、待機児童ゼロに向けての保育施設や学童クラブの充実などが比較のポイントになりそうです。

※出典:日経DUAL(https://dual.nikkei.com/atcl/column/17/120400144/120400001/

 

3-2. 公的支援の比較

上記のランキングで上位10位までにランキングされた自治体の子育て支援策と、独自の制度について調べてみました。

 

■待機児童数(2019年4月現在)

東京都新宿区 2人
神奈川県厚木市 1人
東京都千代田区 0人
千葉県松戸市 0人
東京都板橋区 108人
東京都福生市 0人
東京都荒川区 45人
東京都葛飾区 54人
千葉県柏市 0人
東京都杉並区 0人
東京都豊島区 16人

多くの自治体が待機児童ゼロを達成しています。板橋区が108人と多くなっていますが、保育施設の増設が進んでおり、数年後には待機児童ゼロを達成できる見込みとなっています。

 

■学童保育

東京都新宿区 3年生までの希望者は全入。4年生以降は審査。19時まで。
神奈川県厚木市 市内23小学校等で運営。審査により決定。19時まで。
東京都千代田区 希望者は全入。19時まで。一部は21時まで延長可能。
千葉県松戸市 市内45箇所でNPO等が運営。平日は19時まで。
東京都板橋区 区内全51小学校で実施。希望者は全入。平日17時までは無料。19時まで延長可能。
東京都福生市 市内11箇所で実施。審査により決定。19時まで延長可能。
東京都荒川区 放課後子ども教室は全児童利用可。17時(一部18時)まで
東京都葛飾区 公立22箇所、私立66箇所で実施。19時まで延長可能。
千葉県柏市 市内42箇所で実施。審査により決定。平日は19時まで。
東京都杉並区 区内47箇所で実施。審査により決定。19時まで延長可能。
東京都豊島区 区内22箇所で実施。1~3年生は平日19時まで延長可能。

多くの自治体で19時までの延長が可能となっています。東京都千代田区では最大21時まで延長しており、小学生をもつ親には心強い制度となっています。また学童保育の利用には審査がありますが、全入できているケースも多いので、実際の入りやすさは各自治体に確認してみるとよいでしょう。

 

■医療費の助成(保険診療の自己負担分の助成)

東京都新宿区 15歳まで
神奈川県厚木市 15歳まで
東京都千代田区 18歳まで
千葉県松戸市 15歳まで(通院・入院1回200円自己負担)
東京都板橋区 15歳まで
東京都福生市 15歳まで (通院1回200円自己負担)
東京都荒川区 15歳まで
東京都葛飾区 15歳まで
千葉県柏市 15歳まで (通院・入院1回300円自己負担)
東京都杉並区 15歳まで
東京都豊島区 15歳まで

※上記すべての自治体で所得制限はありません

 

すべての自治体で、15歳(中学卒業)までの医療費助成をおこなっており、千代田区は18歳(高校卒業)まで助成を受けられます。高校生の医療費助成は他の自治体にも広がりを見せており、東京都北区・品川区、千葉県印西市・山武市などでも実施されています。

医療費助成を比較するときには、「対象となる年齢」、「所得制限の有無」、「自己負担の有無」の3つのポイントを押さえておくとよいでしょう。

 

■その他、自治体独自の制度

東京都新宿区 子育てファミリー世帯向け家賃補助
神奈川県厚木市 2人目以降の子どもに、紙おむつやおしりふきシート等を配送
東京都千代田区 生後7ヶ月~小6までの子どもに、一時預かりや送迎のサポート
千葉県松戸市 新卒保育士の家賃補助や勤続年数に応じた給料の上乗せ
東京都板橋区 私立幼稚園の入園料補助金として一律4万円
東京都福生市 病児・病後児保育利用料金が1日1,000円。小6まで利用可能
東京都荒川区 24時間365日育児相談「あらかわキッズ・マザーズコール24」
東京都葛飾区 第2子、第3子以降は保育料が減額または無料に
千葉県柏市 「LINE」を利用した子育て情報の配信
東京都杉並区 妊婦と未就学児家庭に「子育て応援券」を交付
東京都豊島区 出産された方全員に「誕生お祝い品」をプレゼント

上記は一例ですが、子育て支援に力を入れている自治体ほど、独自のユニークな制度をもっていることが多いようです。

 

 

4、共働き世帯は、子育て支援の充実した街に購入しよう

ここまで見てきたように、子育て支援は自治体により違いがあります。どこもたいして変わらないと感じるかもしれませんが、保育園に入れるかどうか、放課後に預けられる施設があるかどうかは、子育てしながら仕事を続けられるかどうかに直結しますので、実は大きな違いなのです。もし購入後に仕事を辞めざるを得なくなれば、ローンの返済などにも大きく影響します。

また、家を購入するタイミングは子どもが小学校に入る前が最も多く、就学後は転校をともなうため、引っ越しのハードルが高くなります。購入後に「隣の市に買っておけば・・・」と後悔しないよう、しっかり情報収集するようにしましょう。

今後ますます共働き世帯が増える中、子育て支援に力を入れている自治体の人気は高まっていくと思われます。物件探しの際には、ぜひ子育て支援制度や保育園の状況などにも注目してみてください。

わからないことがあれば、地域に詳しい不動産会社に聞いてみるとよいでしょう。