高く売りたいなら1~3月が狙い目?不動産を売却する時のポイントと心構え

不動産売買_関連 市場/相場_関連

1~3月は不動産取引がもっとも活発になる「活況期」です。住宅ニーズが高まるこの時期は、購入だけでなく売却する人にとっても絶好のタイミング。今回は誰もがあまり経験のない不動産の売却について、基本的な流れやポイントなどを解説します。

目次

1. 不動産はそろそろ売り時か?売却を考えるなら「活況期」が狙い目

これまで上昇を続けてきた不動産価格ですが、今後日銀の利上げをきっかけに、下落に転じる可能性もあります。近い将来に売却を考えるなら、2025年1~3月の活況期は狙い目となるタイミングです。

1-1. 不動産価格の上昇で、住まいの売却には絶好のタイミング

メディアでも盛んに取り上げられている不動産価格の上昇。国土交通省の不動産価格指数によれば、2010年と比較して、マンション価格は約2倍、戸建・土地は約1.2倍まで上昇しています。まだまだ上がると見る向きも多いですが、ひとつ気になるのは金利の動きです。

現在の住宅ローン金利は、日銀の利上げにもかかわらず、0.5%前後(変動)の低水準を維持していますが、来年2025年にはさらなる利上げが見込まれています。

一般的に、不動産価格と金利は逆相関の関係にあり、金利が下がれば不動産価格は上がり、金利が上がれば不動産価格は下がる傾向があります。もし、来年利上げがおこなわれれば、住宅ローン金利の上昇にともない、不動産価格には下落圧力がかかることとなり、これまでの上昇から一転、下落に向かうことも考えられます。そうした意味では、今年から来年は住まいの売却を検討する上でいいタイミングと言えるでしょう。

1-2. 不動産取引がもっとも活況なのは1~3月

そして、売却を考える上で重要なのが季節要因です。不動産取引がもっとも活況となるのは1~3月。多くの方が新年度に向けて住まいを探すこの時期に、市場には多くの物件が流通し価格も上昇します。

下のグラフは、2023年7月~2024年6月までの、首都圏の中古戸建の成約状況を示したものですが、1~3月は成約件数、価格ともに大きく伸びていることがわかります。住まいを少しでも高く売りたいなら、この時期を狙って売却活動をスタートしましょう。

出典:レインズデータライブラリー(東日本不動産流通機構)より作成

今回は、2025年1~3月をターゲットに不動産の売却を進めたい方向けに、売却の手順や心構えなどを解説します。

2. 不動産を売却する時の基本的な流れ

まず、住まいを売却する際の流れを見ていきましょう。

2-1. 住まい売却の事前準備

住まいを売却する場合には、売却の目的に応じて「売却希望金額」と「期限」を設定することが大切です。例えば、目的が買い替えの場合には、新居への入居に合わせ一定の期限までに売却を完了しなければなりませんし、売却後にいくら手元に残したいかをもとに売却金額を決める必要があります。一方、ローンのない実家の売却などでは、時間をかけても高く買ってくれる人を探したいというケースもあるでしょう。

一般的に、不動産の売却において「早く」と「高く」は両立しにくく、売り急げば価格は下がり、高く売ろうとすれば時間がかかります。売却の目的に応じて、「いつまでに」「いくらで」売りたいのかをしっかり検討しましょう。

2-2. 不動産会社への売却相談と価格査定

おおよその希望金額と期限が決まったら、不動産会社に売却の相談をします。できれば複数の不動産会社を訪れて、相場感や具体的な売却方法などを聞いてみましょう。類似物件の取引事例などをもとに、おおよその価格を算出してもらえますが、最終的な査定額は、実際の住まいを見てから算出することになります。

なお、不動産を売る方法には大きく分けて、「仲介」と「買取り」があります。仲介とは、不動産会社が仲介者として買主を探す方法。買取りは不動産会社が自ら買主として購入する方法です。仲介のメリットは、相場に近い価格で売却できることですが、買主を探し成約に至るまでには相応の時間がかかります。一方、買取りの場合は不動産会社が直接購入するので、売却スピードが非常に早いというメリットがありますが、価格は相場よりも低くなる傾向にあります。どちらも一長一短がありますが、時間をかけても高く売りたい場合は仲介、多少安くても急いで売りたい場合は買取りというように、状況に応じて検討してみましょう。

2-3. 媒介契約の3つのパターン

売却(仲介)を依頼する不動産会社が決まったら正式に媒介契約を締結します。媒介契約とは売却を依頼する条件等を取り決めたもので以下の3種類があります。

媒介契約の種類

媒介契約の種類他の不動産会社
へ重ねての依頼
自ら探した買主
との直接契約
契約期間の
上限
売主への
状況報告義務
①専属専任媒介契約3ヶ月1週間に1回以上
②専任媒介契約3ヶ月2週間に1回以上
③一般媒介契約制限なしなし

専属専任媒介契約は、もっとも拘束力が強く、売主が他社に重ねて媒介を依頼することも、自ら買主を見つけることもできません。専任媒介契約は他社への依頼はできませんが、自ら買主を見つけることは可能です。この2つの契約は、複数の会社に依頼できないのがデメリットですが、不動産会社は他社に契約を取られてしまう心配がないので、積極的に集客のための費用をかけやすくなるメリットがあります。

一方、もっとも拘束力が弱いのは一般媒介契約で、重ねて他社に依頼することも、自ら買主を探すことも可能です。複数の会社に依頼し、広く買主を探すことができるのがメリットですが、不動産会社にとって自社で契約できるとは限らないため、積極的に広告費用をかけにくいというデメリットがあります。また、複数の不動産会社とのやり取りは負担に感じられるかもしれません。 いずれにしても、どの契約を選ぶかは売主の意向ですので、こうしたメリット・デメリットをふまえて検討していきましょう。

2-4. 購入希望者の内見と購入申込み

内見は売却活動の中でもっとも重要なプロセスで、買主が購入を決める大きなポイントとなります。できるだけ綺麗な状態で見ていただけるように配慮しましょう。

内見後、購入の意思が固まったら「買付証明書」という書類で、正式に購入申込みがおこなわれます。買付証明書には、物件概要のほか、購入希望額や手付金、引き渡し時期などが記入されるのが一般的です。

2-5. 売買契約

買付証明書に対する売主からの意思表示は「売渡承諾書」という書面でおこないます。ここで買主から価格交渉が入ることもありますが、価格交渉を受けるかどうかは売主の判断ですので、不動産会社ともよく相談の上で決めるようにしましょう。

条件が折り合えば売買契約へと進んでいきます。契約は売主、買主とそれぞれを仲介している不動産会社の同席でおこなわれ、契約書への署名捺印、手付金の授受などをおこない契約が成立します。

2-6. 決済(引き渡し)

決済とは売買代金の授受と物件の引き渡しのことを言い、契約の1~2ヶ月後に設定されます。契約時に手付金を受領している場合、決済時には売買代金から手付金を差し引いた残金が買主から売主に支払われ、同時に物件の登記事項証明書(いわゆる権利証)、物件の鍵、その他書類などを引き渡し売却が完了します。

3. 住まいを高く売るためのポイントと心構え

売却の基本的な流れがわかったところで、住まいを少しでも高く売るためのポイントについて解説します。

3-1. ニーズの高い時期に売却する

前述の通り、住宅の購入には季節要因があり、新年度が始まる前の1~3月はもっともニーズが高まる時期となります。次にニーズが高いのが秋の住み替えシーズンと言われる9~10月、この2つの時期を狙って売却活動をおこなうのがポイントです。不動産会社への相談や査定などの期間を考慮すると1ヶ月くらい前から動き出すことをおすすめします。

3-2. 売出し価格を高くしすぎない

売却活動でもっとも大事なのが「売出し価格」です。最近不動産価格が上昇していることもあり、相場よりもかなり高い価格で売り出される物件も散見されますが、結果的に高く売れることはほとんどありません。逆に売出した後に値下げを繰り返すと「なかなか売れない物件」というネガティブなイメージを与える可能性もあります。

売主の立場からすると、愛着ある住まいを安売りしたくない気持ちも理解できますが、ネットでの物件探しが当たり前になった今、相場より高い物件は検索にすら引っかからなくなり、内見の数が減ってしまうことにもなりかねません。周辺の取引事例など、客観的なデータをもとに、適正な価格で売り出すことを心がけましょう。

3-3. 内見時には物件を魅力的に見せられるよう配慮する

買主が物件を購入するかどうかを判断する大きなポイントが「内見」です。少しでも魅力的に見せられるように配慮しましょう。室内の整理整頓やクリーニングはもちろん、不要な家具を処分するなど、室内が広くすっきりと見えるようにしましょう。特に水まわりは古さと生活感が出やすい部分なので、プロの業者に依頼してクリーニングしてもらうのもひとつの方法です。

3-4. 買主の立場を理解して丁寧な対応をする

売却活動がスタートすると、多くの方が内見に訪れます。売主からすれば、長年住んだ家を手放す寂しさもありますし、大切に住み継いでくれる人に売りたいと思うのは当然のことです。しかし、買主の立場に立ってみれば、少しでも希望に近い物件をいい条件で買いたいと思っているわけですから、その心情を理解することも必要です。

我が家への愛着が強すぎるあまり、内見時によいところばかりを強調したり、買主の質問や指摘に否定的な受け答えをしたりすると、せっかく検討してくれている買主の心象を害してしまうこともあります。

これから家を買う買主にとっては大きな決断ですし、何をよいと思うかも人それぞれです。買い手の気持ちを汲み取りながら丁寧に接しましょう。

3-5. 不動産会社の選び方と依頼方法

最後に売却を依頼する不動産会社を選ぶときのポイントです。相談した会社の査定価格や売却方法に納得できれば、その会社に依頼するのがよいですし、もし気になる点があれば、複数の不動産会社にも相談して比較検討してもよいでしょう。 不動産会社を選ぶ際のポイントとなるのは「集客力」です。集客力は、店舗の数や立地、インターネットでの広告活動、来店促進のための様々な施策により大きな差が出ます。当然、集客力の高い会社の方が多くの購入希望者を集められるわけですから、会社選びにあたっては、具体的にどのような集客活動をしているのか聞いてみましょう。

4. 住まいの売却にかかる諸費用と税金

最後に、住まいの売却時にかかる諸費用や税金などについても知っておきましょう。

4-1. 売却時にかかる諸費用

①仲介手数料

不動産会社に売却の仲介を依頼した場合には、所定の仲介手数料がかかります。手数料の上限は法律で定められており、売買価格が400万円を超える場合の仲介手数料は「売買価格×3% + 6万円」(消費税別)です。

例えば、売買価格が4,000万円の場合は、4,000万円×3%+6万円=126万円(税込138.6万円)となります。

②測量費用

土地や戸建を売却する際には、売主側で隣地との境界を明示するのが一般的です。過去の測量図などが揃っていればさほど心配はいりませんが、境界がはっきりしていない場合などは、改めて測量が必要になることがあります。

③登記費用

売買の完了後、所有権を買主に移転する登記(所有権移転登記)の費用は買主が負担しますが、以下のようなものは売主の負担となります。

・抵当権抹消登記:売主の住宅ローンにかかわる抵当権を抹消するための登記

・住所変更登記:売主の住所が現住所と異なる場合、現住所に変更するための登記

・地積更正登記:測量の結果、地積(土地の面積)が登記面積と異なっていた場合、それを更生するための登記

4-2. 売却時にかかる税金

①不動産譲渡所得税

不動産譲渡所得税は、不動産を売却した時の「利益」に対してかかる税金で、以下の計算式に当てはめて計算することができます。

課税譲渡所得 × 税率 + 復興特別所得税(税額×2.1%)

課税譲渡所得とは、売買金額から取得費用(購入金額等)と譲渡費用(仲介手数料・登記費用等)を差し引いたものです。

また、税率は不動産の所有期間によって異なります。売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超える場合には「長期譲渡」、5年以下の場合は「短期譲渡」となります。

長期譲渡の税率は20%(所得税15%・住民税5%)、短期譲渡の税率は39%(所得税30%・住民税9%)です。また所有期間が10年を超える場合には、課税譲渡所得6,000万円以下の部分について税率が14%(所得税10%・住民税4%)、6,000万円超の部分については20%(所得税15%・住民税5%)に軽減されます。所有期間の計算は、売却した日ではなく1月1日時点ですので注意しましょう。

このように税額を算出した後に、所得税額に2.1%の復興特別所得税を加算したものが最終的な納税額となります。

②不動産譲渡所得税の特別控除

この譲渡所得税については「譲渡所得の特別控除」という制度があり、住んでいた自宅を売却するなど一定の条件に該当する場合には、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります。つまり、譲渡所得が3,000万円以下であれば税金はかかりません。 ただし買い替えで「3,000万円特別控除」を適用した場合、新たに購入した住まいの「住宅ローン控除」とは併用できませんので注意しましょう。

4-4. 売却した時に戻って来る費用

不動産を売却したときには、上記のような費用がかかる一方、支払済みのお金が戻って来るケースもあります。

①固定資産税・都市計画税

固定資産税、都市計画税は、1月1日現在の所有者に納税義務がありますので、本来は売主が納税しなければなりません。しかし、年の途中に売買がおこなわれた場合には、引き渡し日以降の日割り分を、買主から売主に支払い精算するのが一般的です。

②火災保険料・地震保険料

火災保険、地震保険を長期契約している場合には、解約手続きすれば経過日数分を差し引いた保険料が戻ってきます。

③ローン保証料

住宅ローンの保証料を支払っている場合には、完済までの経過日数分を差し引いた保証料が戻ってきます。

住まいを売却する時のポイントいかがでしたでしょうか?売却や買い替えを検討している方は、1~3月の活況期を逃さないよう、早めに動き出しましょう。

最新の相場情報、価格査定などはお近くの住宅情報館までご相談ください。