
「保育園落ちた日本死ね」という投稿が流行語大賞となったのが2016年。それから10年がたち、子育て支援のあり方も大きく変化してきました。子育て世帯のマイホーム購入では、価格や間取りもさることながら、自治体の子育て支援も重要な判断材料となります。
今回は、日経BP社の「2025年 共働き子育てしやすい街ランキング」から、子育て支援の新潮流や、子育てしやすい街の特色を解説します。
目次
1. 2025年版ランキングに見る「子育て支援」の新潮流
まず2025年の「共働き子育てしやすい街ランキング」のトップ10を見てみましょう。
1-1. 2025年「共働き子育てしやすい街ランキング」結果
全国総合トップ10は以下の通りです。トップの品川区は前年の39位から大きく順位を上げ、初の全国1位となりました。一方、2位の福生市、松戸市、4位の宇都宮市は、本ランキングの常連で、独自の子育て支援が高く評価されている自治体です。

1-2. 待機児童ゼロは当たり前。「子育て支援」4つの新潮流
本ランキングでは、保育園の入りやすさだけでなく、学童保育の利用のしやすさ、行政手続きの効率化、女性のキャリアを支援など、共働き子育て世帯を支援するための取り組みを幅広くスコア化しています。かつて主流だった「待機児童対策」は当たり前になり、より広く、かつ細やかなニーズに応えられる新しい取り組みが評価されています。 ランキング上位の自治体の子育て支援の一例を見ていきましょう。
①親の「時間」を創出し、共働きを支援する取り組み
例:駅から保育園への送迎・おむつなどの宅配・延長保育・病児保育など
②「小1の壁」の克服
例:学童保育の拡充・食事の提供・朝の小学生の居場所対策など
③子育ての負担が増える「第2子」への対応
例:2人目からの保育料無償化・産後ケアの拡充など
④経済的負担を軽減する助成制度
例:保育料、医療費等の助成・子育てサポートの無償化・おむつ、学用品などの配布など
1-3. 家選びより先に考えたい「街選び」
マイホーム購入では、とかく価格や間取り、駅からの距離といった、いわば物件そのもののスペックを重視しがちですが、共働きで子育てをする世帯にとって本当に大事なのは、子育てと仕事を無理なく両立できる「自治体の制度」や「行政の考え方」です。
そこで今回は、主に首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)を対象に、ランキング上位に選出された自治体に見られる特徴的な制度、自治体選びのポイントなどを解説します。
2. 首都圏ランキングと上位の街の特徴
首都圏で上位にランキングされた街の子育て支援の特徴をみていきましょう。
2-1. 「2025年 共働き子育てしやすい街ランキング」首都圏版
2025年「共働き子育てしやすい街」首都圏ランキングは以下の通りです。

上位には東京23区と千葉県北西部の街が多くランクインしています。一方、神奈川県は14位に横浜市、21位に厚木市、埼玉県は23位にさいたま市と、比較的下位となっており、いわゆる「住みたい街ランキング」とは若干異なる結果となっています。
逆に言えば、これまであまり人気のなかった郊外の街が、若い世代を惹きつけるために独自の子育て支援に本気で取り組んだ結果とみることもできます。
2-2. 上位の街にみられる特徴的なサービス
本ランキングの常連である松戸市では、「待機児童9年連続ゼロ」に加え、バスで指定の施設まで送り迎えしてくれる「送迎保育ステーション」、子どもの体調が悪いときでも安心して預けられる「病児・病後児保育施設」、小学生を放課後でも預けられる「放課後児童クラブ」、妊婦に3,000円のタクシー料金を補助する「妊産婦タクシー利用料補助」など独自の子育て支援が行われています。

また福生市でも、子育て世帯が気軽に相談できるチャットボットの導入、市内の協賛店でお得なサービスを受けることができる「子育て支援カード」、外国籍の保護者向けに「テレビ電話多言語通訳サービス」、小中学校の給食費無償化、学童保育や放課後子ども教室など「放課後の居場所」の提供など、独自の子育て支援に取り組んでいます。
そして今回1位に躍進した品川区では、産後ケアの利用料を第1子で最大60時間、第2子以降は最大180時間まで補助、ウエアラブル端末を活用した専属助産師とのオンライン面談、月1回育児用品を手渡ししながら見守りをおこなう「見守りおむつ定期便」、学童保育で夏休み中の昼食の提供、中学校の制服や修学旅行の無償化など、他の自治体にはない先進的な取り組みが行われています。
2-3. 子育て支援が多様化する中、自分に合うかどうかが大きなポイントに
以前は、ほとんどの自治体で「保育園の入りやすさ」と「経済的援助」が子育て支援の中心だったため、わかりやすく比較しやすいものでした。しかし、近年では送迎、学童保育、食事提供、オンライン相談などサービスが多様化していることに加え、支援の期間も幼児期だけでなく、中学生、高校生まで伸びる傾向にあります。
そのため街選びにおいては、制度そのものよりも自分の家族や暮らし方に合っているかどうかがより重要になります。両親の働き方や収入、子どもの年齢などによって必要となる支援は変わってくるのです。一般的な評価だけでなく、自分たちのライフスタイルを振り返りながら検討していくことが大切です。
3. ライフスタイル別、子育て支援のチェックポイント
ここではライフスタイル別にどのような支援が向いているのかを見てみましょう。
例えば、親のキャリア形成と子育ての両立を目指すのか、子どもが小さいうちは子育てに専念するのかによっても求める支援は大きく変わります。今だけでなく「5年後、10年後」の生活を想像しながら「自分たちは何を重視したいのか」を考えてみると良いでしょう。
3-1. 「経済的な支援」を重視
子育て支援でもっともシンプルでわかりやすいのが「お金」の支援です。保育料や医療費、おむつ代など直接的な支援だけでなく、妊娠・出産時のお祝い金、通院時のタクシー代補助、子ども向け施設の無償化、給食費の無償化など様々な形の助成があります。
比較する際には、医療費であれば何歳まで助成されるか、自己負担はあるか、所得制限はあるか。また保育料などについては、対象になるのが第3子なのか第2子からなのか、などがポイントになります。子どもの数や年齢に応じて検討してみましょう。
3-2. 「手間の解消・時短」を重視
通勤や残業で時間が足りない。できれば「お金」よりも「時間」を重視したいという方は、経済的支援よりも「時短支援」の充実した自治体が向いているかもしれません。
例えば、松戸市、流山市、市川市などで導入されている「駅前送迎ステーション」は、毎日の送り迎えの時間を削減できる上、家から離れた保育園にも登園できるので、保育園の選択肢が大きく広がります。
また、最近導入が広がっているのが「おむつサブスク」という制度です。毎日名前を書いて保育園に持参する必要のあった「おむつ」や「おしりふき」を、月々定額で保育園に届けてくれるサービスで、保育園への「持参」・「在庫管理」・「持ち帰り」という3つの手間とストレスを一気に解消してくれます。
また、こうしたサービスの申込みや予約手続きがアプリ等で完結できるかどうかも重要です。最近では、お金の支援に加えて、手間や時間を軽減するサービスへのニーズも高まっています。
3-3. 「預けやすさ」を重視
保育園から小学校まで、切れ目なく子どもを安心して預けられる環境を重視したいという方は、以下のようなポイントをチェックしておくと良いでしょう?。 まず、保育園や学童への入りやすさです。待機児童ゼロはもちろん、病児保育や病後児保育が充実しているか、エリア内の小学校すべてに学童施設があるか、19時~20時までの延長預かりは可能か、などがポイントです。また、最近では夏休みなどの休暇期間に昼食を提供する自治体も増えており、親の負担が増える夏休みでも安心して子どもを預けることができます。
3-4. 「親子の居場所・相談しやすさ」を重視
共働きでなく、家で子育てをしている世帯では、時短や効率よりも、「孤独感」や「リフレッシュ」などが課題となることもあります。専門職(助産師・保育士)による家庭訪問や相談会、親同士のサークル活動、時間単位で子どもを預かってくれる「一時預かり」、親子で遊びに行ける「親子ひろば」や「児童館」などがチェックのポイントとなります。
3-5. 「両親と同居・近居」する世帯への支援
共働きか在宅育児かにかかわらず、親との同居・近居は最大の子育てサポートとなります。
首都圏には、高齢者の孤立防止と子育て支援を兼ねて「三世代同居・近居」に対する住宅費用の補助制度を設けている自治体が多くあります。
例えば、千葉市では一定の要件を満たせば、1年目に最大100万円、2~3年目にも固定資産税や家賃を最大15万円まで補助してくれる制度があります。他にも船橋市、松戸市、厚木市、春日部市などにも似た制度がありますので、細かい要件については、各自治体のホームページ等で確認するとよいでしょう。
4. 子育て支援からみた「自治体選びチェックリスト」
最後に、ここまで解説してきた子育て支援の内容をタイプ別にチェックリストにまとめてみました。ひとつの参考として街選びにお役立てください。

ここに挙げたのは一例ではありますが、自治体による子育て支援は、日々多様化・進化しています。それぞれのご家庭のニーズに合わせて比較・検討してみることをおすすめします。
5. 実際の住まい選びでは、住宅コストと支援のバランスをしっかり検討しよう
どれほど自治体の支援が手厚くても、住まいそのものの価格が高すぎて生活を圧迫しては本末転倒です。街選びの最終ステップとして、「家計における住宅コスト」と「受けられる支援」のバランスをシミュレーションしてみましょう 。
5-1上位エリアの住宅コスト比較
首都圏ランキングで上位に位置する街の、住宅コストの相場は以下の通りです。

5-2. 子育て支援の「家計へのインパクト」
上表の通り、都心の品川区と郊外の福生市や厚木市では、住宅コストに2倍〜3倍の開きがあります 。
郊外エリア(福生・厚木など)で、給食費や医療費、学用品の助成など月1〜2万円相当の支援を受けた場合、それは住宅コストの1〜2割に相当しますので、家計には大きな助けとなります。一方、都心エリア(品川・浦和など)では、もともとの住宅コストが高いため、相対的に支援の経済的インパクトは低くなります。ここでは金額そのものよりも、サービスの質や利便性を重視する視点が必要です。 実際の住宅コストと、受けられる支援のバランスを考慮しながら街選びを進めることをおすすめします。
共働き世帯が増え「子育ては親だけでなく地域全体でするもの」という意識が高まっている今、街選びは、言わば「子育てのパートナー選び」と言っても過言ではありません。
間取りや価格だけでなく、その自治体の制度や考え方が、自分たちのライフスタイルに合っているか。また、その支援が家計の中でどれほどの助けになるかという視点が大切です。
後から「隣の市にしておけばよかった」と後悔しないよう、しっかり情報収集を進められると良いでしょう。











