2026年度の補助金を大予測!概算要求からみる来年度の住宅政策とは?

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2025年8月、国の来年度予算を決めるたたき台「概算要求」が各省庁から提出されました。この概算要求には、来年度の住宅取得支援策や補助金制度の方向性も示されており、今後の政策動向を読み解く手がかりとなります。

目次

1. 2026年度予算の概算要求が出揃う。住宅取得支援策はどう変わる?

まず、概算要求とは何なのか、住宅政策を決める省庁などについて知っておきましょう。

1-1. 政府の来年度予算のたたき台「概算要求」とは?

住宅購入支援などをはじめとした国の政策は、すべて年度ごとの予算に盛り込まれています。予算の概算要求とは、来年度の予算作成に向けて各省庁が重点政策をリストアップし、それぞれの政策についてどのくらいの予算が必要なのかという見積もりを財務省に提出するものです。例年8月末までに提出され、これをベースに来年度の予算が作成されることになります。つまり、この概算要求を見れば、各省庁が重視する政策や、それにともなう補助金制度などがある程度予想できるわけです。

1-2. 住宅政策を決めるのはおもに国土交通省、環境省、経済産業省

一般の方が住まいを購入する際の支援や補助金など、住宅政策をつかさどるのは主に国土交通省です。しかし近年では住宅をはじめとする建築物の省エネ(=脱炭素)が国の重要政策となっているため、省エネに関連する予算は環境省や経済産業省でも計上されています。

今年度もこの3省が合同で「住宅省エネキャンペーン」が実施されており、新築住宅のみならず、中古購入やリフォームなど幅広く住宅の省エネに対する支援がおこなわれています。

今回は、8月に提出された概算要求から、2026年度の住宅支援と補助金制度を予測しみたいと思います。

2. 国土交通省、環境省、経済産業省。主要3省の重点政策とは?

それではまず、この3省の重点政策の柱を見ていきましょう。住宅購入に関連する項目からピックアップしてご紹介します。

2-1. 国土交通省は「住まいの安全」と「災害対策」を軸に、前年方針を踏襲

国土交通省(住宅局)の概算要求では、重点施策として以下の4点が挙げられています。

出典:国土交通省住宅局 令和8年度予算概算要求概要

重点施策の1と2は前年とほぼ同じ内容となっており、地震や水害など自然災害に対する対策、既存住宅の流通促進と空き家対策などが上位に位置づけられています。

注目すべきは、昨年度第3の柱として掲げられていた「脱炭素」というキーワードが見出しから消え、代わって「持続可能な社会」という広い概念の中に統合された点です。これは政策の後退ではなく、CO2削減を含む取り組みが「持続可能な社会づくり」の一要素として包括的に位置づけられたとみるのが妥当でしょう。 また、3番目には前年とほぼ同じ内容で「誰もが安心して暮らせる多様な住まい」が挙げられており、子育て世帯に加え、高齢者や貧困世帯などを含めたセーフティネットが想定されています。総じて申し上げると、細かいキーワードの違いはあるものの、前年の重点政策をほぼ踏襲した形となっています。

2-2. 環境省は「脱炭素」と「2050年カーボンニュートラル」の推進を継続

続いて、環境省の概算要求を見てみましょう。

出典:令和8年度(2026年度)エネルギー対策特別会計概算要求 全体概要(環境省)

環境省の重点政策はすべて「脱炭素」と「2050年カーボンニュートラルの実現」を軸とした、ほぼ前年と同じ内容になっています。

住宅関連では、新たに「住宅の脱炭素化促進事業」が創設され、90億円の予算要求が計上されています。新築住宅のZEH化や既存住宅の省CO2改修を支援するもので、国土交通省・経済産業省と連携しながら住宅分野の脱炭素化を後押しする内容です。

※出典:環境省 令和8年度概算要求

2-3. 経済産業省はGXと連動した住宅設備支援

最後に経済産業省を見てみましょう。経済産業省は産業競争⼒の強化・経済成⻑等を使命としているため、住宅の省エネだけを目指しているわけではありませんが、他の2省と連携し、「脱炭素」、「GX(グリーントランスフォーメーション)」を重点政策のひとつに掲げています。

重点政策のトップに挙げられる「新たな付加価値を生む成長投資促進のための構造改革」という項目の中でGX 分野、再生可能エネルギー等に関する事業があり、住宅分野では

・高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金

・再生可能エネルギー導入拡大に向けた系統用蓄電池等の電力貯蔵システム導入支援事業 などに予算が計上されています。

この3省の概算要求から、住宅政策の柱としては、地震や水害などの「災害対策」と、2050年カーボンニュートラルの実現に向けての「脱炭素」が、引き続きその中心に位置づけられていると考えられます。中でも「脱炭素」については、エネルギー消費を減らす「省エネ」という考え方から、再エネや蓄電を含めた「自立的なエネルギーマネジメント」という考え方にと進化しています。

3. 2026年度概算要求から来年度の補助金政策を大予測

各省庁の大方針がわかったところで、具体的な支援策や補助金などを予測してみましょう。

3-1. 【新築】ZEH化支援補助金は継続の見込み

まず新築住宅については、3省ともに「脱炭素」が重点政策として掲げられており、環境省の資料には以下の通り、具体的な支援内容が記載されています。

このように、新築住宅の省エネに対する補助金は来年度も継続される可能性が高く、予算額は90億円となっています。ただし、前年と比べるとZEH、ZEH+ともに補助金額は若干引き下げられており、断熱性能が高い住宅に、太陽光発電などの再エネ設備を設置し、さらに蓄電池、HEMS等を設置した場合に、より多くの補助金が交付される仕組みとなっています。

背景には、国が求める省エネ性能が年々引き上げられていることがあります。数年前までは「省エネ基準に適合」していることが重視されていましたが、2025年度からこれが法律で義務化されたことにより、今後は国が求める最低基準が「省エネ基準適合」から「ZEH水準」に引き上げられ、さらに将来的には「ZEH+」レベルの断熱性能と、蓄電システム等が求められることになると予想されます。

3-2.【リフォーム】「先進的窓リノベ」「省エネリフォーム支援」は継続見込み

次にリフォームについて見ていきましょう。

今年度と同様に、省エネリフォーム(改修)に対する支援も継続される見込みです。

環境省の資料によれば、既存住宅のZEH化リフォームに、費用の3分の1相当(上限250万円/戸)の補助金が、断熱リフォームや窓・ドアなどの改修にも、3分の1相当(上限120万円/戸)の補助金が交付される見通しです。 また、国土交通省の資料によれば、省エネ基準適合レベルで30万円/戸、ZEHレベルで70万円/戸の補助金を来年度も継続するとしています。

このように、家全体の断熱リフォームはもちろん、窓やドアなどの部分リフォームについても引き続き手厚い補助が受けられそうです。

3-3. 【災害対策】既存住宅の「耐震化」と「水害対策」に補助金

こうした省エネに対する補助金以外にも、国土交通省が掲げる「災害対策の強化」に対する補助金もあります。内容としては「耐震化」と「水害対策」です。

耐震化については「住宅・建築物耐震改修事業」において、昭和56年6月以前に建てられた、いわゆる旧耐震基準の建物に対し、改修費用の補助をおこなう(補助率11.5%等)としています。

また、水害については「住宅市街地総合整備事業」において、災害対策区域や浸水被害防止区域など、水害に関する建築制限がある区域に建っている既存不適格住宅に対し、改修工事費の23%または100万円/戸(工事費の8割を上限)の補助金を交付するとしています。

3-4. 【省エネ設備】高効率給湯器や蓄電池など省エネ設備の補助も継続見込み

経済産業省の概算要求では「省エネ、クリーン・エネルギーの拡大、購入補助などのGX 市場創造等の取組み」の中で、給湯器や蓄電池に対する補助金が記載されています。

このことから、今年度に引き続きヒートポンプ型給湯器(エコキュート)、ハイブリッド給湯器、家庭用燃料電池(エネファーム)など、高効率給湯器への補助金は継続される見通しです。

また、太陽光発電などの再生可能エネルギーは、売電から自家消費へと大きく舵を切っていることから、自家消費率を高めるための蓄電池の設置、およびエネルギーマネジメントシステム(HEMS)等の導入支援のための予算が増えています。

これら3省の概算要求を見る限り、各省とも重点政策に大きな変化は見られないことから、2026年度の補助金制度も、ほぼ前年並みになるものと予想されます。 なお、2025年度の「子育てグリーン住宅支援事業」は、2024年度の補正予算で実施されているため、2026年度の概算要求には含まれていませんが、2025年度の補正予算で継続される可能性が高いでしょう。継続されれば今年度と同様に3省合同のキャンペーン形式で実施されると予想されます。

■住宅省エネ2025キャンペーン

4. 住宅購入の補助金に関する今後の動きと注意点

最後にこのような補助金制度や税制優遇に対する今後の動きと注意点を解説します。

4-1. 省エネに対する補助金は年々厳しく

省エネ住宅に対する補助金は、国の「2050年カーボンニュートラルの実現」という大目標に向けた政策であり、政府はこれを達成するために、2030年に新築住宅のZEH義務化、2050年に、既存住宅を含めた平均でZEH化をというロードマップを描いています。

出典:国土交通省概算要求

こうした流れの中で、省エネ住宅に対する基準は年々上がっており、今後は2030年のZEH義務化に向けて、補助金対象となる省エネ基準が「GX志向型住宅(断熱等級6)」レベルに引き上げられるでしょう。また、太陽光発電や蓄電システム等の設置も必須化されるかも知れません。

4-2. 住宅ローン控除は2026年度以降も継続と予想するが要件は厳しく

住宅ローン控除については、一旦2025年末で終了となりますが、2026年以降も継続されると予想されます。しかし対象となる住宅は、補助金と同様にZEHが最低要件となり、さらに高いレベルの基準が示される可能性があります。

また、少子化対策の目的で今年度実施されている「子育て世帯等の優遇」は、もともと2024年度で終了する予定だったものが1年延長されたという経緯があるため、このタイミングで見直される可能性があります。

少子化対策は国の大きな課題ではあるものの、こうした子育て世帯の優遇が少子化の解消につながっているのかを疑問視する声もあり、来年度どうなるかが注目されます。

4-3. 住宅購入の際には、性能とコストのバランスをよく検討しよう

概算要求から見る来年度の住宅取得支援、いかがでしたでしょうか。

地価・建築費が年々上昇する中で、高性能の住まいをリーズナブルに購入するためには、こうした補助金を上手に活用するのがポイントとなります。

しかし、高性能な住宅は建築コストもかかりますので、補助金と建築費のバランス、節約できる光熱費とメンテナンスコストなど、メリット・デメリットをしっかり検討するようにしましょう。

また、こうした制度は例年4月ごろに申込みが始まり、予算が終了すると受付が締め切られます。今年度、子育てグリーン住宅支援事業のGX志向型住宅(補助金額160万円/戸)はわずか3ヶ月で受付終了となっていますので、補助金を活用する場合には、タイミングを逃さないようしっかり準備を進めておきましょう。

住宅情報館は「子育てグリーン住宅支援事業」、「先進的窓リノベ事業」の認定事業者です。 補助金を活用した住宅購入、リフォームなどはお近くの店舗までお気軽にご相談ください。

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