子育て・若者世帯に100万円の補助金!「こどもエコすまい支援」がスタートします

不動産売買_関連 市場/相場_関連 暮らし/法律/その他 注文建築_関連 資金/ローン/税制_関連
子育て・若者世帯に100万円の補助金!「こどもエコすまい支援」がスタートします

予算規模は過去最大の1,500億円。いよいよ住まいの省エネ化が本格的にスタートします。今回は子育て世帯・若者世帯を対象に100万円の補助金が交付される「こどもエコ住まい支援」について詳しく解説します。

目次

1、予算1,500億円。過去最大規模の「こどもエコすまい支援」がスタート

2022年11月8日、第2次補正予算案が閣議決定されました。年内の成立を目指すこの補正予算に組み込まれたのが「こどもエコ住まい支援」事業です。

1-1. 住まいの省エネ化支援を強化「こどもエコすまい支援」とは

この事業の目的は、「家庭における省エネ投資を規制・支援一体型で促進し、住宅の断熱性の向上や高効率給湯器の導入などの住宅の省エネ化への支援の強化」と位置づけられており、2022年度に実施された「こどもみらい住宅支援」事業の予算規模をさらに拡大し、子育て世代、若者世代に対する住宅取得支援と住まいの省エネ化を強力に推し進めるものです。

補助金額や要件、予算規模などから見て、政府がかなり「本気」で住まいの省エネに取り組み始めたと言える政策です。

1-2. 政府が住まいの省エネ化を強化する背景

政府が住まいの省エネ化を強化する理由は、2020年に菅政権が打ち出した「2050年カーボンニュートラル実現」という政策目標です。そして2021年4月には「2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年比)」という具体的な目標も提示されました。これらの大きな目標達成に進められてきた省エネ化ですが、ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の急上昇や、温暖化による豪雨災害の多発などもあり、まさに「待ったなし」の状況となっているわけです。

そうした背景のもと、一般住宅でも省エネ基準の見直しと義務化、省エネ住宅に対する補助金や金利・税優遇など、これまでにないスピード感で具体策が打ち出されており、政府がかなり本気でこの課題に向き合っていることがうかがえます。

1-3. 今回から補助対象が「ZEH水準」に一本化

そしてもうひとつ、今回の事業では、新築住宅の建築・購入でこれまで補助対象となっていた、「現行の省エネ基準(H28年基準)」が対象外となり、「ZEH(ゼッチ)水準」(※)に一本化されました。つまり、政府は新築住宅に求める省エネ性能を、早期に「ZEH(ゼッチ)以上の水準」に引き上げようとしているわけです。

※ZEH(ゼッチ)とは「Zero Energy House」の略で、エネルギー消費量が現行の省エネ基準から20%以上削減され、太陽光発電などと合わせて、実質的なエネルギー消費量がゼロになる住宅を言います。

■一般住宅の省エネ基準

断熱等級基準
等級7HEAT20 G3 基準 相当
等級6HEAT20 G2 基準 相当
等級5ZEH(ゼッチ)基準 相当
等級4平成28(2016)年基準
等級3平成4(1992)年基準
等級2昭和55(1980)年基準
等級1無断熱

しかし政府の意向はさておき、実際に家を購入する消費者から見て、ZEH(ゼッチ)を選ぶメリットはあるのか、補助金は本当にトクになるのかなどの疑問は残ります。

今回のコラムでは、これから住まいを購入する方がZEH(ゼッチ)を選ぶ具体的なメリットや判断基準などなどについて解説します。

2、ZEH住宅はなぜトクなのか?4つのポイントから検証

それでは早速、ZEHの具体的なメリットを見ていきましょう。大きく4つのポイントから解説します。

2-1. 光熱費の削減

まず、ZEHのもっとも大きなメリットは言うまでもなく光熱費の削減です。

【世帯当たり年間用途別CO2排出量】冷暖房によるCO2排出量は「住まい」全体の1/4

※出典:環境省「家庭からの二酸化炭素排出量の推計に係る実態調査」

上図の通り、住宅のエネルギー消費量の約半分は冷暖房と給湯で占められます。ZEH住宅では、建物の断熱性・気密性を高めることで冷暖房効率を高め、高効率給湯器などを設置することで給湯にかかるエネルギーを削減します。さらに太陽光発電などの「創エネ」設備を設置することにより、エネルギーコストを実質ゼロにすることが可能なのです。

関東エリアの一般的な一戸建だと、光熱費が月15,000~20,000円ほどかかりますので、年間18~24万円も安くなることになります。

■ZEH住宅のイメージ

ZEH(ゼッチ)住宅のイメージ

※出典:経済産業省/資源エネルギー庁資料

2-2. 金利・税金の優遇

もうひとつ見逃せないのが住宅ローン金利や税の優遇です。

フラット35では、ZEH水準の住宅向けに金利優遇をおこなっており、通常のフラット35の借入金利から当初5年間は年0.5%、6年目から10年目まで年0.25%の金利引き下げが受けられます。

また、年末のローン残高の0.7%がその年の所得税から控除される「住宅ローン控除」でも、ZEH住宅では、通常の「省エネ基準適合住宅」よりローン残高の上限額が500万円引き上げられています。

2-3. 建築費の増加分は元が取れるのか?ZEH住宅の購入シミュレーション

では実際に購入することをイメージしながら、ZEH住宅と現行の省エネ基準適合住宅を比較してみましょう。ここでは取得費3,500万円、ZEH対応費+300万円、住宅ローン(フラット35S)の借入額は総取得費の9割として試算します。詳細は後述しますがZEH住宅は「こどもエコすまい支援」で100万円の補助金が受けられますので、それを考慮してシミュレーションしてみましょう。

  省エネ基準 ZEH
取得費  3,500万円 3,500万円
ZEH対応費 300万円
補助金 ▲100万円
総取得費 3,500万円 3,700万円
ローン借入額
(総取得費の9割)
3,150万円 3,330万円
ローン金利 フラット35S(Bプラン)
当初5年間1.29%
6年目以降1.54%
フラット35S(ZEH)
当初5年間1.04%
6~10年目1.29%
11年目以降1.54%
月々返済額 当初5年間 9.4万円
6年目以降9.7万円
当初5年間 9.5万円
6~10年目 9.9万円
11年目以降 10.1万円
総返済額 4,036万円 4,185万円
年間光熱費 (1.5万円×12ヶ月)18万円 0万円
35年間累計 630万円 0万円

※ローンは基準金利1.54%(固定)・元利均等・35年返済で試算

※諸費用(手数料・税金等)は考慮しておりません

上表のように、ZEH住宅はZEH対応費用として300万円取得費が増えますが、光熱費の削減分(年18万円)で、約16年で回収できます。

さらに補助金100万円とフラット35Sの金利優遇を受けることによって、月々返済額の差はわずか数千円となり、光熱費の削減を加味すれば十分プラスになります。

つまり、ZEH水準の住宅が、実質負担ゼロ(むしろプラス)で購入できると考えてもよいでしょう。今後、電気代などが上がればメリットはさらに大きくなります。

2-4. 将来的な資産価値

ここまで金利や税制優遇など、直接的なメリットについて見てきましたが、省エネ性能の差は将来的な住まいの価値にも影響を与える可能性があります。今後、ZEHのような高性能住宅が普及すると、相対的に性能の低い住宅の評価は下がることになり、相場より低い価格でしか売れなくなる可能性があります。

2-5. 家族の健康・快適性・災害

そして最後に健康や快適性のメリットです。住まいの断熱性(暖かさ)と健康には大きな関連があることが分かっており、寒い家での「ヒートショック」による死亡者は年間約1万7,000人にのぼります。また、国土交通省と(一社)日本サステナブル建築協会の長期にわたる追跡調査によれば、断熱性の低い住宅では、結露によるカビ・ダニが原因で起こるアレルギー、血圧の上昇、脳血管疾患などの発生率が高くなることも分かっています。

断熱性の高い住まいは室内の温度変化が小さく、一年中快適に過ごせる上、災害による停電時にも太陽光発電を使って、ほぼ普段通りの生活を送ることができます。家族の健康と安全という面でも大きなメリットがあります。

相談してみる

3、こどもエコ住まい支援の補助金額と申請手続き

それでは、こどもエコ住まい支援の適用条件や補助金額、申請手続きなどについて見ていきましょう。

3-1. 補助対象は「新築」「購入」「リフォーム」の3つ

本事業の補助対象となるのは「注文住宅の新築」「新築住宅の購入」「リフォーム」の3つです。

3-2. 補助対象者と対象となる物件・工事

補助対象となるのは、子育て世帯または若者世帯ですが、リフォームにはこの制限がありません。

■こどもエコ住まい支援の補助対象者

注文住宅の新築
新築住宅の購入
子育て世帯または若者世帯(※)
リフォーム 世帯の条件なし

※子育て世帯とは:申請時点において、子(2022年4月1日時点で18 歳未満。すなわち2004年4月2日以降出生の子)を有する世帯

※若者世帯とは:申請時点において夫婦であり、2022年4月1日時点でいずれかが39歳以下(すなわち1982年4月2日以降出生)の世帯

こどもエコ住まい支援の補助対象となる物件・工事は以下の通りです。

■補助対象となる物件・工事(抜粋)

注文住宅の新築
新築住宅の購入
・ZEH住宅(NearlyZEH、ZEHReady、ZEHOriented含む)または、2022年10月1日以降に認定申請をした認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、若しくは性能向上計画認定住宅
・延べ面積が50㎡以上
・土砂災害特別警戒区域に立地しないもの
リフォーム

①〜③いずれか必須
④~⑧は任意

①開口部の断熱改修
②外壁、屋根・天井又は床の断熱改修
③エコ住宅設備の設置
④子育て対応改修
⑤防災性向上改修
⑥バリアフリー改修
⑦空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置
⑧リフォーム瑕疵保険等への加入

3-3. こどもエコ住まい支援の補助金額

注文住宅の新築と、新築住宅の購入の補助金額は一律100万円です。

リフォームは、省エネ性能のレベル(ZEH or省エネ基準)と工事箇所によって細かく補助額が決められており、それらを積み上げて算出します。例えば開口部(窓・ドアなど)の断熱改修であれば、ZEHレベルで1箇所あたり9,000~45,000円、省エネ基準レベルで6,000~34,000円などです。これらを足し合わせた合計補助額に対して、下記の通り上限が設けられており、子育て世帯、若者世帯により手厚い内容となっています。

■ リフォームの補助金の上限額

世帯の属性 既存住宅購入の有無 上限補助額
子育て世帯または
若者世帯
既存住宅を購入しリフォームを行う場合 60万円
上記以外のリフォームを行う場合 45万円
その他の世帯 安心R住宅(※)を購入しリフォームを行う場合 45万円
上記以外のリフォームを行う場合 30万円

※安心R住宅とは:国土交通省の告示にもとづき、建物状況調査(インスペクション)を実施し、構造上の不具合及び雨漏りが認められず、耐震性等の品質を備えた既存住宅のこと

3-4. こどもエコ住まい支援の申請手続き

最後の申請手続きです。新築・購入・リフォームともに、申請手続きは事業者がおこないます。契約から申請、補助金受領までの大まかな流れは以下の通りです。なお、補助金の交付予算には限りがあり、期間内でも早期終了する可能性がありますので注意しましょう。

■こどもエコ住まい支援の申請スケジュール

工事着手 2022年11月8日以降に、下記の対象工事に着手したものとなります
【新築工事】基礎工事より後の工程となる工事
【リフォーム】補助対象に該当するリフォーム工事
※2022年11月7日以前に着工した工事であっても、対象工事の着手が2022年11月8日以降で、交付申請時点でZEHレベルの性能を有する住宅である証明書が提出できるものは補助対象となる
交付申請 遅くとも2023年12月31日まで(※)
※事業者登録は交付申請、又は予約申請までに行う
審査~交付決定 順次審査。交付決定後、事業者に補助金が交付される
完了報告 工事完了~引き渡し後

※交付申請の時期は、新築・購入は補助金額以上の工事出来高に到達した時点、リフォームは工事完了後になります

相談してみる

4、住宅の省エネ化はかつてないスピードで進む。近い将来「ZEH」が標準に

冒頭にも申し上げた通り、住宅の省エネ化はかつてないほどのスピードで進んでいます。

その結果、近い将来には「ZEH」が日本の住宅の標準になるかも知れません。

4-1. 現行の省エネ基準はもはや「時代遅れ」に

2022年におこなわれた省エネ基準の見直しと適合義務化により、現行の省エネ基準(平成28年基準)は、それまでの最高水準から「最低限守らなければならない水準」に変わり、さらに上位の基準も制定されました。これに合わせて、フラット35や長期優良住宅の基準も一斉に引き上げられています。

■断熱基準(等級)の見直しと適合義務化

断熱基準(等級)の見直しと適合義務化

さらに今回のこどもエコ住まい支援では、補助対象が「ZEH水準」に一本化され、平成28年基準が補助対象から外されました。つまり、国が今後新築される住宅に「ZEH水準」の省エネ性能を求めているのは明らかで、現行の省エネ基準(H28基準)はもはや時代遅れになりつつあります。

住宅事業者もこの動きを先取りし、すでにZEHを超える省エネ住宅(断熱等級6~7レベル)の開発・販売を進めています。近い将来このレベルの普及が進むと、H28年基準は言わば「2世代前の家」ということになってしまいます。

4-2. 国民一人ひとりが地球環境に配慮する時代に

また、世界的に地球温暖化への懸念が高まる中、企業や個人でも脱炭素化の動きが進んでいます。環境省は2022年10月「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」として、国民一人ひとりのライフスタイル変革を推進する運動をスタートしました。

脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動(環境省)

昨今の電気代・ガス代の高騰も大きな問題ではありますが、少し長い目で、次世代にどのような環境を残したいか、その中でできることは何なのかを考え、住まいを検討する時代になったのかも知れません。

4-3. これからの住宅購入はZEH前提で検討。「ZEH+」なども視野に

ここまで申し上げた通り、時代の変化とともに、日本の住宅の省エネ基準は急速に変わってきています。逆に言えばこうした国の政策を上手に活用し、光熱費のかからない快適で健康的な住まいをリーズナブルに購入できる大きなチャンスとも言えます。特に子育て世帯、若者世帯の皆さんは、この波に乗らない手はないと思います。

これから家を新築・購入される方は、ZEHを前提に、また少し先を見越して、より性能の高い「ZEH+」なども視野に入れながら検討を進めてみることをおすすめします。

住宅情報館では、補助金を活用したZEHを含む省エネ住宅の新築・購入・リフォームをワンストップでサポートさせていただきます。お気軽にご相談ください。

当サイトでは住まいの省エネに関する記事を多数掲載しています。より詳しくお知りになりたい方は合わせてご覧ください。

関連記事

省エネ義務化で今までの最高等級が最低等級に!? 今後起こりうる『省エネ格差』とは

ZEH(ゼッチ)住宅が今後の主流に?ZEHの種類と補助金を徹底解説!

ZEH?高断熱?省エネ住宅を建てるときの会社選び

近くの住宅情報館を探してみる