50代から考えるシニアのリフォーム。優先順位・費用相場・補助金を解説

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50〜60代は住まいのリフォーム適齢期。バリアフリーや断熱などシニアにおすすめのリフォームと優先順位、費用相場、使える補助金などをまとめて解説します。

目次

1. 50~60代は住まいのリフォーム適齢期

住まいを購入してから20~30年が経過する50~60代はリフォームの検討に最適な時期です。その理由は大きく3つあります。

1-1. 建物や設備の老朽化と修繕費

新築で購入した住まいも、築20年を過ぎるとさまざまな部位に不具合や傷みが見られるようになります。床や壁の日焼け・汚れ、キッチンやトイレなどの水まわり設備の老朽化に加え、故障や水漏れなどが発生するたびに修繕費がかさみます。

1-2. 家族構成の変化

50~60代は、子どもの就職や結婚などで家族構成が変わりやすい時期です。 子どもが独立して夫婦2人の暮らしに戻ると、住まいが広すぎると感じたり、使わない部屋の管理が負担になったりと、現在の暮らし方と住まいが合わなくなることがあります。

1-3. 体力の衰えと老後の生活への備え

50~60代は少しずつ体力の衰える時期です。それまで何でもなかった階段の上り下りが億劫になり、布団の上げ下げや、洗濯物の取り込みなどが面倒に感じ始める時期です。 また、筋力の低下により転倒リスクも高まるため、ワンフロアで暮らしやすく、怪我をしにくい住まいへのニーズが強くなります。

今回は、50代から検討したいシニア向けリフォームの優先順位、費用、補助金について解説します。

2. シニア世代リフォームの優先順位は「健康」「安全」「暮らしやすさ」

シニア世代のリフォームでは、老後の生活に備え、健康と室内の安全性を優先的に検討することが重要です。

2-1. 室内での事故を防ぐ「バリアフリー化」

年齢とともに転倒リスクが高まるため、バリアフリー化は最も重要なリフォームのひとつです。

つまずきの原因となる段差の解消や、すべりにくい床への交換、夜間用のフットライト設置、玄関・廊下の手すり設置、外階段をスロープ化するなどが代表例です。 さらに車椅子が必要になったときに備えて、玄関・廊下の幅を広げる、トイレ・浴室のスペースを拡張するなどのリフォームもよくおこなわれます。

2-2. 病気を予防し、死亡事故から身を守る「断熱リフォーム」

近年の研究で、室温と健康の関係が明らかになっています。冬の室温が18度を下回る家では、高血圧や心疾患、呼吸器疾患などの発生率が上がり、寒さで活動量が低下する(体を動かさなくなる)ため、体力の衰えにも影響します。 また、ヒートショックが原因とみられる入浴中の死亡者数は、年間約1万9,000人と推計され、交通事故死を大きく上回っています。一般的に、築20~30年の建物は断熱性能が低く「夏暑く・冬寒い」ことが多いため、断熱リフォームは優先的に検討したいポイントです。

2-3. 耐震性向上と自宅避難に対する備え

住まいの安全という観点で検討したいのが耐震補強です。木造住宅は2000年6月の法改正以降、耐震基準が大きく向上しているため、それ以前の建物は耐震診断の上、必要に応じて補強工事を検討しましょう。

また、災害時の停電・断水、在宅避難などに備え、太陽光発電設備の設置や、水・食料などの備蓄スペースの確保などを同時に検討するのもおすすめです。

2-4. 生活動線と家事のしやすさを改善

夫婦2人の生活になると、日々の生活に必要なスペースは狭くなります。2階にあった寝室を1階に移動したり、2階に干していた洗濯物を1階に干せるようにしたりすると、上下階の移動が減り、とても暮らしやすい家になります。 加えて、トイレを寝室の近くに移動する、リビングに大型の収納を設置する、部屋のドアを引き戸に変更するなど、ワンフロアで暮らしやすい間取りを検討してみましょう。

3. リフォームで老後の生活コストを抑える方法

50~60代はリタイアなどにともない収入が減少する時期ですので、リフォームで住まいの寿命を伸ばし、生活コストを抑える工夫も重要です。

3-1. 建物のメンテナンスコストを抑えるリフォーム

建物の老朽化にともない、修理・修繕などのコストは増加していきます。こうしたコストを抑えるためには、大きな修理が必要になる前に、適切なメンテナンスをおこなうことが重要で、特にチェックしておきたいのが外壁、屋根、シロアリ、配管です。

屋根や外壁の老朽化による雨漏りやシロアリの食害は、建物の構造体を傷めてしまう恐れがあるので、リフォームのタイミングでしっかりとチェックし対策しておきましょう。

また給排水の配管の老朽化は、詰まりや水漏れの原因になります。水回りのリフォームに合わせて洗浄や交換などの対処をしておくと安心です。

いずれにしても、雨漏りや水漏れが発生してからでは多額の費用がかかりますので、予防的に対処しておくことが大切です。

3-2. 水道光熱費を削減するリフォーム

もうひとつの観点が電気・ガス、水道といったエネルギーコスト。エネルギーコストを抑えるには、建物の断熱性と設備機器がポイントになります。

窓を断熱性の高いペアガラスや2重サッシなどへ交換する、外部に接する壁・屋根に高性能な断熱材を入れるなど、建物の断熱性を高めることで省エネが期待できます。

また、省エネ型給湯器、LED照明、節水型トイレ、保温力の高い浴槽などを組み合わせることによって消費エネルギーを抑えることができます。

さらに、太陽光発電や蓄電池の導入により電力の自給自足が可能になれば、コスト削減効果はより大きくなります。

4. 部位別リフォーム予算と利用できる補助金

このようにシニア世代のリフォームでは、健康、安全性や住まいにかかるコストダウン等をふまえてリフォームプランを検討していくことがポイントとなります。リフォーム部位ごとの費用の目安と補助金について見ていきましょう。

4-1. バリアフリーリフォーム

まずバリアフリーリフォームです。一般的な木造住宅の段差解消や手すり設置などにかかる費用の目安は以下の通りです。(※費用は一般的な目安であり、実際の工事金額と異なることがあります)

①バリアフリーリフォームの費用の目安

②バリアフリー工事で利用できる補助金

バリアフリーリフォームには介護保険の補助金が利用できます。介護保険の要支援または要介護認定を受けた人が、バリアフリー工事をおこなう場合、工事費用の最大9割(20万円まで)が補助されます。

4-2. 断熱リフォーム

断熱リフォームにかかる費用の目安は以下の通りです。断熱リフォームは、天井だけといった部分的な工事では効果が限定的で、壁・床・天井・窓をまとめて行うことで、家全体の性能が大きく向上します。

①断熱リフォームの費用の目安

②断熱リフォームで利用できる補助金

断熱リフォームでは、窓やサッシの交換に「先進的窓リノベ事業」、壁や床の断熱に「子育てグリーン住宅支援事業」や「既存住宅の断熱リフォーム支援事業」など様々な補助金が利用できます。実際の工事費の1/3~1/2と補助率も高いので必ず検討しましょう。

4-3. 外壁・屋根のリフォーム

外壁・屋根のリフォームは、工法と耐久性がポイントとなります。塗り直しが一般的ですが、既存の壁・屋根に新しい建材を重ね張りする「カバー工法」というやり方もあります。耐久性と費用のバランスをしっかり検討しましょう。

①外壁・屋根リフォームの費用の目安

②外壁・屋根リフォームで利用できる補助金

外壁や屋根のリフォームで利用できる補助金はほとんどありませんが、省エネ効果のある「遮熱塗料」を用いた場合には補助金を利用できることがあります。また、屋根リフォームと同時に太陽光パネルを設置する場合には、補助金を受けられることがあります。居住地の自治体のホームページ等で確認してみましょう。

4-4. 水回りのリフォーム

水回りのリフォームは、キッチン・バス・トイレの3点セット、洗面台を加えた4点セットなどでお得にリフォームできることがあります。合わせて、給湯器やコンロの交換も検討してみましょう。

①水回りリフォームの費用の目安

②水回りリフォームに利用できる補助金

水回りリフォームに特化した補助金はありませんが、断熱リフォームと同時に、省エネタイプの給湯器、節水型トイレ、節湯水栓などを設置した場合は補助金の対象になります。また、子育て支援として、家事負担の軽減につながるビルトイン食洗機、掃除しやすいレンジフード、浴室乾燥機なども補助金の対象となっています。

5. シニア世代が住まいをリフォームする際の注意点

最後にシニア世代がリフォームする際の注意点を解説します。

5-1. リフォームは一度にまとめて効率的に

リフォームしたい箇所が複数ある場合には、まとめて一度に工事することで費用を抑えられることがあります。

例えば、足場が必要な外壁・屋根の塗り替えは、別々にやるよりまとめてやったほうが、足場代が安くなり工期も短く済みます。またキッチンまわりのリフォームは、床や壁の貼り替えをともなうことが多いので、LDKのリフォームとまとめてやった方が効率的です。 リフォーム会社と相談しながら効率的にリフォームしましょう。

5-2.ローンはできるだけ使わずに

リフォームローンは住宅ローンより金利が高く、返済期間も短いのが一般的です。

シニア世代は収入が減少する時期に入るため、可能な範囲で現金での支払いを優先し、ローン利用時は返済計画を慎重に検討しましょう。

5-3. 補助金や介護保険を活用する

下記の通り介護や省エネに関わるリフォームには様々な補助金が利用できます。自治体独自の補助金がある場合も多いため、必ず最新情報を確認しましょう。

5-4. 住み替えや建て替えとの比較も視野に

耐震・断熱を含む大規模リフォームは、数百万円~1,000万円を超えることもあります。リフォーム費用が高額になりそうな場合は、建て替えや住み替えも合わせて検討してみましょう。

建て替えであれば、性能や設備は最新のものになり、保証期間も長く、低利のローンが利用できることもあります。また、今の住まいを売却して駅近のマンションなどに住み替えれば、移動や買い物などの利便性も大きく改善します。

「人生100年時代」と言われる時代、リタイア後の20年以上の暮らしを見据え、健康で安心して過ごすためのリフォームを検討してみませんか?

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