少子高齢化社会に備える(第3回)~相続した実家をどうする? 不動産を「負」動産にしないための実家の活用法とは~

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近年、高齢化にともない「実家」に関するトラブル、相談が増えていると言われます。空き家となった実家にも固定資産税や維持費などのコストがかかり、財産だったはずの不動産が「負」動産になってしまうケースも少なくありません。実家の相続はどうすればいいのか、生前に準備できることは何なのか、など実家の相続、活用についてまとめてみました。

1、全国の空き家数は846万戸。タダでも売れない実家が「負」動産になる理由

総務省統計局発表による「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は846万戸、空き家率は13.55%となり、今後ますます増えていくことが予想されています。このような状況の中、古くて立地の悪い住宅は、売却はおろか、タダでも引き取り手を探すのは難しく、空き家のまま放置されることが多くなっています。このような家はもはや財産ではなくコストだけがかかる負債です。空き家にかかるコストについて見ていきましょう。

 

1-1. 固定資産税・都市計画税

不動産には毎年1月1日の所有者に対し、固定資産税(市街化区域内ではあわせて都市計画税)が課税されますので、利用されていない不動産にかかる固定資産税はすべて所有者(相続人)が負担することになります。建物の敷地となっている土地については、固定資産税が最大1/6に軽減される優遇措置がありますが、2015年に空き家対策特別措置法が施行され、危険な空き家からは固定資産税の優遇措置が外されることになりました。優遇措置がなくなれば、税額は最大6倍になりますので、より一層重い負担となります。

 

1-2. 維持費

誰も住まなくなった家は、すぐに傷んでしまうため、定期的に窓を開けて空気を入れ替えたり、掃除をしたりする必要があります。また庭や敷地内の草刈りなどを業者に依頼すればその分のコストもかかり、電気やガスの契約を続けていれば、使用してなくても基本料金がかかります。またマンションであれば管理費・修繕積立金、遠方であれば、そこに行くための交通費などもかかります。誰も住まなくなった家には様々な維持費がかかるのです。

 

1-3. 修繕・解体費

建物を維持していくためには、定期的なメンテナンスが必要です。例えば屋根や外壁が傷んでくれば雨漏りなどにつながりますし、給排水の配管なども傷んでくれば交換が必要です。

また、建物が老朽化して危険な状態になったときには解体して更地にする必要が出てきます。解体費用は一般的な木造一戸建でも、100万円以上かかる場合もあり大きな負担となります。

 

2、「とりあえず相続」はやめよう。実家を相続するかどうか決めるポイントとは

相続が発生したときに、もらえるものはもらっておこうと考える方が多くいます。相続には期限があるため、じっくり考える時間がないことも要因のひとつですが、「とりあえず・・」ではなく、まず相続するかどうかをしっかり判断しましょう。判断基準となるポイントは以下の通りです。

 

2-1. 相続した後の利用目的は明確か

実家を引き継いだ後、具体的な利用目的や活用方法がない場合には、相続するかどうかを考え直した方がいいかも知れません。利用目的のない家は結果として放置されることになり、前述のようなコストだけがかかる「負」動産になる可能性が高くなります。

 

2-2. 相続人間の調整・合意ができているか

実家の相続を考える上でもうひとつ重要なポイントは、相続人間の調整・合意ができているということです。相続人とは通常「配偶者と子ども」ですが、配偶者がすでに他界している場合には、子どもが相続人になります。相続人が複数いる場合には、すべての相続人がどのように遺産を配分するかを合意し「遺産分割協議書」を作成しなければなりません。

不動産の相続では、この遺産分割協議書に基づき所有権移転登記がおこなわれますので、相続人の合意がないと相続が完了できないわけです。また相続税がかかる場合には相続発生を知った日から10ヶ月以内に申告・納税しなければなりませんので、相続人間の話し合いは早め早めに着手することをおすすめします。もし、当事者同士で話がまとまらない場合には、弁護士など第三者に入ってもらい調整する方法もあります。

※遺言がある場合には原則として遺言にしたがって分割・相続されます。
※相続、納税等に関する詳細は、弁護士、税理士等にご確認ください。

 

2-3. 相続税の納税の見通しが立っているか

相続にともない相続税が発生する場合には、その納税についても考えておく必要があります。不動産とともに現金や預金なども相続できれば、そこから納税することができますが、不動産だけを引き継いだ場合には、売却するか手元の現金で納税するしかありません。相続税は現金での一括納付が原則ですが、それが困難な場合は、延納(分割払い)や物納(不動産で納税)を選択できる場合もあります。ただし、相続税の延納には一定の条件があり、利子税が発生します。また、物納許可を受けるためにもいくつかの要件があり、いずれも専門的な知識が必要ですので、事前に税理士等にご相談することをおすすめします。

 

※適用要件などの詳細は国税庁ホームページをご確認ください。

No.4211 相続税の延納 ( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4211.htm )

No.4214 相続税の物納 ( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4214.htm )

 

 

2-4. 相続しないという選択「相続放棄」とは

以上のようなことを検討した上で、相続しないという選択をすることもできます。これを「相続放棄」といいます。相続放棄をする場合、空き家だけを放棄することはできず、すべての相続財産を放棄しなければなりません。例えば、実家のほかに財産がない場合、実家を売却できる見込みもなく、自分で住むつもりもないというケースであれば、相続放棄することも現実的な選択肢となります。相続放棄をする場合、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述を行う必要がありますので、早めに司法書士または弁護士に相談してみることをおすすめします。

なお、相続放棄が行われた場合でも、空き家の管理責任がなくなるわけではなく、次に管理する人が決まるまで「管理責任」は相続人にあるとされていますので注意しましょう。

 

3、売却か賃貸か、引き継いだ実家の具体的な活用方法とは

前述の相続後の利用目的を検討する上でどのような選択肢があるのか具体的に見ていきましょう。

 

3-1. 売却

まず最もイメージしやすいのが売却です。建物が比較的新しければ中古住宅として売却することができますし、老朽化していれば解体して土地として売却することもできます。このあたりは不動産会社に相談してから決める方がよいでしょう。

注意点としては、売却は3年目までが目安になります。なぜなら、住まなくなってから3年目の年末までに売ると、譲渡益3,000万円までは課税されないという特例があるからです。

つまり、1,000万円で購入した不動産を相続した後に3,000万円で売却した場合、通常は利益の部分(3,000万円-1,000万円=2,000万円)に対して譲渡税が課税されますが、この特例を適用すると利益3,000万円までは非課税となるため、譲渡税がゼロになります。

 

※適用要件などの詳細は国税庁ホームページをご確認ください。

No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 ( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm )

 

また売却によって得たお金をきょうだいで分ける予定がある場合には、相続時の名義に気をつけましょう。例えば、長男が単独名義で相続した不動産を売却し、得たお金をきょうだいに分けた場合には、長男からきょうだいへの贈与があったとみなされ、贈与税が課税される場合があります。

 

3-2. 賃貸

相続した実家を売却しないで活用する方法としては、賃貸物件として貸し出し、家賃収入を得るという方法が考えられます。しかし、賃貸物件として貸し出すには、賃貸ニーズのある地域だということが前提になりますし、内装のリフォームなど初期投資がかかります。したがって、地域の不動産会社などに相談し、周辺ニーズ(家賃相場など)をしっかり調べてから判断することが大事です。また、最近では一般の賃貸ではなく、シェアハウスや旅行者向けの宿泊施設(いわゆる民泊施設)として運用する方法もあります。

いずれにしても、家賃収入を得られる一方で、修繕費や管理費、所得税、固定資産税などのコストがかかりますし、入居者が退去してしまえば一定期間収入がゼロになることもあり得ます。収入と支出をしっかりとシミュレーションし「収支計画」を立てた上で判断しましょう。

また、一度貸してしまうと前述した「居住用財産(空き家)を売ったときの特例」は使えなくなりますので慎重な検討が必要です。

 

3-3. 自己利用

最後は売却も賃貸もせず、自分で使うという方法です。自宅として住むことはもちろん、セカンドハウスとして使う、店舗等に改装して何かビジネスを始めてみる。などが考えられます。自宅として住む場合、「小規模宅地等の特例」を適用することができれば、土地の評価を最大8割減できるので、相続税対策として非常に有効です。

 

※適用要件などの詳細は国税庁ホームページをご確認ください。

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm )

 

このように、実家の活用方法は大きく分けて「売る」「貸す」「自分で使う」の3つです。どんな活用が合っているのかは、立地や建物のコンディションなどによって大きく変わってきますので、地域の不動産会社などに相談してみるとよいでしょう。

 

4、実家の相続前にできる対策を知っておこう

ここまで、実家の相続や相続後の活用について見てきましたが、相続が発生する前、つまり親が元気なうちにできることもあります。生前に対策することによって、現在の暮らしが改善されると同時に、相続税対策や老後の収入対策になることもあります。

 

4-1. 売却して資産性の高い物件に買い替える

相続してから売却するのではなく、親が元気なうちに売却して買い替えてしまうという選択もあります。特に家が老朽化していたり、駅から遠かったりして不便な暮らしをしているなら、早めに売却して駅近のマンションなどに買い換えるのもよい方法です。

現在の暮らしが改善されると同時に、相続後の活用もしやすくなるなどのメリットがあります。

また、自宅の買い替えには「3,000万円特別控除」という特例があり、売却利益3,000万円までは譲渡税がかかりません。このような特例をうまく使いながら、暮らしやすく資産性の高い物件に買い替えていくのがよいでしょう。

 

※適用要件などの詳細は国税庁ホームページをご確認ください。

No.3302 マイホームを売ったときの特例 ( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm )

 

※関連記事:シニア世代の住み替えを成功させるポイントとは?

https://www.jutakujohokan.co.jp/article/2019/07/20/low_birthrate_and_aging_2/

 

 

4-2. 土地を一部売却して自宅を建替え

実家の敷地が広く、建物の老朽化が進んでいる場合には、土地の一部を売却して、残した土地に新築することもできます。売却した資金で建て替えればローンを組む必要はありませんし、今の暮らしに合わせたコンパクトな家にすることができます。相続が発生した場合でも、新しい家なら活用の幅が広がるでしょう。

 

4-3. 解体して自宅併用マンションなどに建替え

敷地が広く、賃貸ニーズのある地域であれば、建物を解体して自宅併用の賃貸住宅に建て替えるという方法もあります。この方法はうまくいけば、自宅の建替え、家賃収入、そして相続税対策という3つのメリットを享受できる可能性がありますが、建築費が大きくなるので借入が必要になることが多く、また賃貸には空室リスクもありますので、実績のあるパートナーと特に慎重に検討することが必要です。

 

4-4. 生前贈与

最後に生前贈与です。生前贈与とは、親が元気なうちに子どもに贈与することを言います。

贈与税は相続税よりも税率が高いため、不動産にはあまり使われませんが、将来的に評価が上がる可能性の高い不動産に関しては、「相続時精算課税制度」を利用して、「生前贈与」しておくと節税メリットを享受できます。相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母もしくは祖父母から20歳以上の子どもや孫に財産を贈与する際に、2500万円までの特別控除が受けられる制度です。ただし、先に説明した「小規模宅地等の特例」とは併用できませんので注意しましょう。

 

※適用要件などの詳細は国税庁ホームページをご確認ください。

No.4103 相続時精算課税の選択 ( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm )

 

5、まとめ

ここまで見てきたように、相続した実家は活用の仕方によって資産にもなれば、負債にもなります。実家をうまく活用するために以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

 

5-1. 検討は早め早めに。きょうだい間の話し合いが重要

実家をどうするか、まして相続の話となると親が元気な時にはなかなか話しづらいものです。しかし、様々な選択肢から親ときょうだいの意向を踏まえて結論を出すにはかなり長い期間がかかります。検討スタートは早ければ早いほどよいと思います。当事者同士でうまく話し合いができない場合には、税理士や相続コンサルタントなど第三者を入れて検討してみるのも有効です。

 

5-2. 今の実家にこだわらない

長年暮らした家には誰しも愛着がありますし、住み慣れた場所から離れたくないという気持ちもあるでしょう。しかし、親の高齢化と家の老朽化は同時進行していきます。あまり今の家に執着せず、元気なうちに住み替え、建替えにより、より暮らしやすい家に変えていくこともひとつの方法かと思います。

 

5-3. 専門家に相談を

実家をどうするかと考えた時に、なかなか検討がすすまないのは、不動産、建築、相続、税務など多岐にわたる知識が必要になるからです。親子、きょうだいで話し合ってもなかなか結論がでないときには、迷わず専門家に相談してみましょう。

最初から税理士や弁護士はちょっとハードルが高いと感じたら、お近くの不動産会社のスタッフに相談し、必要に応じて専門家の紹介などを受けるとよいと思います。