本当にコスパのよい家を建てるポイントは「シンプル&高性能」

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昨今、インフレにともなう資材やエネルギー価格の上昇にあわせて建築費の高騰が続いています。今年は「建築業界の2024年問題」と言われる残業規制なども加わり、さらに人手不足や人件費の上昇が懸念されています。そこで今回は、コスパのよい家づくりについて考えてみたいと思います。

目次

1. そもそも住まいのコスパとは

まず、住まいのコスパとは何なのかを考えてみましょう。

1-1. 若者世代で高まるコスパ志向

コスパとは、ご存じの通り「コストパフォーマンス」の略で、直訳すれば費用対効果、転じて、品質がいいのに価格が安い、または価格は高いけれど得られるモノや体験の価値がそれ以上に高い場合などに用いられます。特に最近の若い世代でこのコスパ志向が高まっています。

1-2. 住まいのコストはイニシャルコスト+ランニングコスト

このように、コスパはコストとパフォーマンスの対比で評価されますが、住まいのコストは、大きくイニシャルコストとランニングコストに分けられます。

イニシャルコストとは、家を最初に購入する時にかかるコスト、つまり土地代や建築費、諸費用、広くとらえれば、購入にともなう内見や打ち合わせなどの手間や時間もコストと言えるでしょう。ランニングコストとは、住みはじめてからかかるコスト、つまり光熱費や修繕費、住宅ローンの利息や税金、保険料などが含まれます。この両者を合わせたものが住まいにかかるコストです。

1-3. 住まいのパフォーマンスは利便性や住み心地

一方、住まいのパフォーマンスは、その家の設備・性能や立地から得られる利便性や住み心地、安全性といったもので評価されます。また家を「資産」ととらえれば、将来の資産価値、つまり購入したときの価格以上で売れるかどうか、といった観点もパフォーマンスを測る指標と言えます。

今回は「コスト」を抑えながら、住み心地のよい家を建てるための考え方や手法について解説します。

2. 家づくりの「イニシャルコスト」を抑える方法

それでは早速、家づくりのイニシャルコストを抑える方法から見ていきましょう。

2-1. 建物の形状はシンプルに。間取りは広くし過ぎない

まず建物の基本的な構造や間取りは極力シンプルにすることを心がけましょう。

できるだけ四角形に近く、1~2階の外壁がまっすぐに繋がったいわゆる「総二階」と呼ばれる形状が、壁・屋根などの材料がもっとも少なく、施工の手間も少ない構造となります。

逆に、コの字型やL字型など凹凸の多い形状や、2階が1階よりも小さい「部分二階」の形状は、同じ面積でも外壁や屋根の材料が増える分コストアップにつながります。

総二階のシンプルな形状
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また、間取りを検討する上でも、リビングや子ども部屋を必要以上に広くせず、建物全体の面積をほどほどに抑えるのもコストを上げないひとつのコツです。

2-2. 建材・設備の選び方

次に建材や設備の選び方を見ていきましょう。

外壁や屋根に用いられる建材は、できるだけ耐久性が高く、塗装・葺替えなどのメンテナンス周期の長いものを選ぶのがポイントです。イニシャルコストだけを見れば、安い建材を使った方が有利ですが、後述するランニングコストが高くつくので、結局コスパは悪くなります。例えば金属サイディングやタイルなどはメンテナンス周期が長く、耐久性に優れた建材です。

水回りなどの設備は標準仕様の中からできるだけ機能がシンプルなものを選びましょう。例えば給湯器の最上位機種には、スマホで外からお風呂が沸かせる機能などが搭載されていますが、本当に必要かどうかはよくよく考えてみる必要があるでしょう。トイレやキッチンについても同様に、機能が多すぎるものはコストが上がり、故障のリスクも高くなります。

簡単に交換できない外壁や屋根は多少コストがかかっても耐久性の高いもの、比較的簡単に変えられる設備などは機能を絞るなど、メリハリをつけた選択がポイントです。

2-3. 土地選びと建物のプランニング

次に土地選びと建物のプランニングについて見ていきましょう。

まず、土地の選び方については大きく2つの方法があります。 1つ目は個人が所有する土地を、仲介会社を通して購入する方法です。この場合、現状での引き渡しが基本となりますので、未利用地の場合には、草木の除去や境界ブロックの設置、上下水道・ガスなどの引込み、場合によっては造成費用などが必要になります。

2つ目は、不動産会社が造成した宅地を購入する方法です。この場合、上下水道などのインフラはあらかじめ引き込まれていることが多く、境界も確定していますので、追加の費用はほとんどかかりません。また売主から直接購入すれば、仲介手数料もかからないので、コストが大幅に削減できます。

また、建物のプランニングについては、いかに打ち合わせに要する時間を短縮できるかがポイントです。注文住宅のプランニングは、いわゆる完全自由設計といわれる「フルオーダー」と、規格型といわれる「セミオーダー」の2つがあります。フルオーダーの場合は、間取りやデザイン、設備、仕様などをひとつひとつ決められるのがメリットですが、打ち合わせに相当な時間がかかります。一方セミオーダーは、住宅メーカーがもつ数百種類の間取りパターンから、気に入ったものを選び、設備・仕様もある程度決まったパターンから選択する形となるため、打ち合わせや仕様決めにかかる時間を大幅に短縮できます。結果として、設計費用が抑えられ、工期も短くなるので、コスパを重視するなら規格型セミオーダーでのプランニングをおすすめします。

プランを元に一定のカスタマイズが可能な企画型住宅
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2-4. 国や自治体の補助金を活用

住まいの購入や建築に対しては、国や自治体の補助金制度を上手に活用しましょう。

2024年度は、子育て世帯や若者夫婦を対象とした「子育てエコホーム支援事業」で、新築住宅では最大100万円、中古住宅を買ってリフォームする方も、最大60万円の補助が受けられます。また都市部からの移住や、三世代同居などに補助金を交付している自治体も多くあります。様々な条件はありますが、こうした補助金を活用することで、イニシャルコストを大きく下げることができますので、ぜひ積極的に検討してみましょう。

(参考)【2024年最新版】2024年の住宅税制と補助金はどうなる?

3. 住み続ける限りかかる「ランニングコスト」を抑える方法

次に住まいのランニングコストを抑える方法です。ランニングコストは、住み続ける限りかかってくるコストなので、30年、40年と長いスパンで見ると、イニシャルコストよりも重要になります。

3-1. 住まいのランニングコストとは

住まいのランニングコストとは、主に建物の維持・修繕にかかるコスト(ライフサイクルコスト)や光熱費、住宅ローンの利息や税金、保険料などが含まれます。

3-2. ライフサイクルコストを抑える方法

まず、ライフサイクルコストを抑えるためのポイントは、修繕サイクルの長い建材を選ぶことです。一般的に外壁や屋根は10年に1回程度の塗り替えが必要と言われますが、最近のガルバリウム鋼板や金属製サイディングなどは20年に1回のメンテナンスで済むものもあります。イニシャルコスト(オプション費用など)は多少上がりますが、メンテナンスの頻度が約半分になるので、40~50年という長いスパンで見るとコストダウンになります。内装も同様に、無垢材やタイルなどを用いるとメンテナンスサイクルが長くコスト軽減につながります。

また、もうひとつのポイントは、メンテナンスしやすい構造にしておくということです。例えば、屋根裏や床下に十分なスペースをとり点検口を設けたり、給水配管は、水漏れしにくく部分的に交換できる「さや管ヘッダー工法」を用いたりするなどが挙げられます。

3-3. 光熱費を抑える

住まいのランニングコストで大きな割合を占めるのが光熱費です。特に冷暖房と給湯にかかる光熱費はランニングコストを抑える重要なポイントになります。

こうしたコストを抑えるには「省エネ」と「創エネ」の2つの方法があります。省エネで重要なのは、建物の断熱性を上げることです。国が定める現在の断熱基準は以下の通りですが、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2025年度以降はすべての新築住宅に等級4以上が義務化されます。また、国は2030年以降に新築されるすべての建物をZEH水準以上にすることを目指していますので、この先数年で日本の住宅の断熱レベルは大きく向上することになります。それに合わせ、様々な税制優遇や補助金の条件なども「ZEH水準以上」が求められるケースが増えていますので、これから家を建てる方は、できるだけ「ZEH水準(断熱等級5)以上」を目指してプランニングを進めるとよいでしょう。

住宅の断熱等級

また住宅設備については、エコキュートやエコジョーズなどの高効率給湯器、保温力の高い浴槽、節水型のトイレなど、省エネ型設備を導入することで、さらに省エネを図ることができます。

一方「創エネ」とは、太陽光発電などで自らエネルギーをつくり出し、蓄電池などを活用しながら、住まいのエネルギーを自給自足することをいいます。省エネと創エネを組み合わせることで、実質光熱費ゼロの住まいをつくることも可能です。

コストパフォーマンスを意識した注文建築
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3-4. 住まいに関わる税制優遇と住宅ローンの金利優遇

住まいの購入にともなう税制優遇でメリットの大きいのが「住宅ローン控除」です。住宅ローン控除は、毎年末の住宅ローン残高の7%が10~13年間にわたり所得税(住民税)から控除される制度で、トータルの控除額は最大455万円にもなります。

下表の通り、控除額は省エネ性能の高い建物ほど大きく、今年(2024年)は子育て支援政策の一環として、子育て世帯と若者夫婦世帯に対し、最大控除額が引き上げられています。

住宅ローン控除の控除額

・新築住宅または不動産会社が販売する中古再販住宅

・中古住宅

※認定住宅とは:長期優良住宅または低炭素住宅の認定を受けた住宅

※最大控除額の1万円以下四捨五入

また、住宅金融支援機構が運営する住宅ローン「フラット35」では、ZEH水準の住宅に対して当初5年間の金利を0.75%引き下げるなど、省エネ性能が高い住宅に対する優遇を行なっています。また最近では、民間の金融機関でもZEH住宅や創エネ設備を備えた「環境配慮型」の住宅に対する金利優遇が始まっています。

(参考)環境等配慮型住宅向けの特別金利プラン(りそな銀行)

3-5. 地震保険料・火災保険料

地震の多い日本では地震保険への加入が推奨されていますが、保険料が比較的高いことから加入率はあまり高くない現状があります。しかし以下の通り、耐震性の高い建物では保険料が最大50%割引になります。

耐震等級による地震保険料の割引
耐震等級3または免震建築物50%割引
耐震等級230%割引
耐震等級110%割引

また、火災保険料も耐火性能が高い「準耐火建物」、「省令準耐火建物」などは、保険料が約半額になります。このように、耐震性、耐火性の高い建物は、保険料の割引を通じて大きなコスト削減になると同時に、住まいの安全性を高めることにもつながります。

4. 住まいのコスパを高めるポイントは「シンプル&高性能な住まい」

住まいのコスパを高めるポイント、いかがでしたでしょうか。

ここまで見てきたように、住まいのコスパを高めるには、土地代や建築費などのイニシャルコストだけでなく、住んでいる限りかかり続けるランニングコストまで考慮することが重要で、一言で申し上げれば、できるだけ「シンプルで高性能な家」を目指すことです。

建物の構造やデザインをあまり凝ったものにせず、規格型のプランを上手にカスタマイズして、打ち合わせにかかる時間や工期を短縮する一方で、断熱性や耐震性、耐久性といった住まいの性能は一定以上を確保すること。性能を高めるための費用は惜しまず、コストアップ分は補助金などを使って賄えるようにプランニングしましょう。

また、高性能な住まいは冷暖房効率が高く住み心地がよい上、地震などに対する安心感も高まり、結果的に暮らしのパフォーマンスも向上します。

これから住まいを建築・購入する方はぜひ「シンプル&高性能」をひとつの基準として、プランニング、物件選びを進めてみてはいかがでしょうか。