【2023年版】住宅の省エネ強化が鮮明に。2023年の補助金や税制優遇はどうなる?

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世界的なインフレやウクライナ情勢により不動産価格が上昇を続けた2022年。年明けからは金利上昇懸念も加わり、住宅購入の環境はやや厳しくなっています。そんな中で2023年の住宅政策はどう変わるのか。補助金や税制優遇を活用するにはどうすればよいのか解説します。

目次

1、2023年の住宅政策のキーワードは「省エネ強化」と「子育て支援」

具体的な政策や支援制度を解説する前に、まず今年の住宅政策の大きな流れをおさらいしておきましょう。2023年の住宅政策は前年までの政策を引き継ぎ、それほど大きな変化は見られませんでした。

テーマとしては「省エネ強化」と「子育て支援」です。前年の「こどもみらい住宅支援事業」の後継として「こどもエコすまい支援事業」が新設され、省エネ性能の高い住宅に対し一律100万円の補助金交付が打ち出されています。一方で、補助対象となる省エネ性能が「ZEH水準(※)」に引き上げられるなど、省エネ強化がより鮮明になっています。

また、岸田首相が年頭の記者会見で「異次元の少子化対策をおこなう」と表明したように、少子化対策は我が国の喫緊の課題であることから、住宅政策においても、子育て中の世帯、若者夫婦世帯を対象に手厚い支援が打ち出されています。

※ZEH(ゼッチ)とは:「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」の略。高い断熱性能や高効率設備、さらに太陽光発電などの創エネ設備を組み合わせることで、実質的なエネルギーコストがゼロになる住宅のことです。

2、税制で注意が必要なのは住宅ローン減税と資金援助

2022年12月に公表された「令和5年税制改正大綱」によれば、今年の住宅関連の税制改正は、前年に大きな改正があったこともあり、さほど大きな変更はありませんでした。

むしろ、これから住宅を購入される方に知っておいていただきたいのは、前年に改正された以下の2点です。

2-1. 住宅ローン減税は2024年以降、控除額が縮小

住宅ローン減税は、2022年の改正で期間が2025年末まで延長されました。しかしその改正の中で、「居住年」が2024年以降になる場合、ローン上限額、控除額が縮小されることが決まっています。下表の通り、ローン上限額が最大1,000万円、控除額が最大133万円も減少しますので、住宅ローン減税を最大限活用したいという方は2023年末までの入居を目指しましょう。

■ 【新築】住宅ローン減税の控除期間と控除額(赤字は居住年が2024年以降になる場合)

※新築住宅または不動産会社が販売する中古再販住宅の場合

※1万円未満 四捨五入

■認定住宅とは:「長期優良住宅」または「低炭素住宅」の認定を受けた住宅のこと。
長期優良住宅は、耐震性・省エネルギー性・劣化対策等に優れ、長期にわたり良好な状態で使用できる住宅。低炭素住宅は、省エネルギー性が高く、CO2の排出を抑えるための対策がとられた住宅で、ともに国の定める認定基準をクリアする必要がある。
■省エネ基準適合住宅とは:現行の省エネ基準(断熱等級4かつ一次エネ等級4)を満たす住宅。省エネルギー性能は、ZEH住宅や認定住宅の方が高い。

なお中古住宅の場合は、以下の通り、新築よりも控除額・期間とも縮小されますが、居住年による違いはありません。

■【中古】住宅ローン減税の控除期間と控除額

2-2. 住宅取得資金贈与の非課税特例は2023年末で一旦終了

住宅購入に際し、親や祖父母から資金援助を受けた場合に贈与税が軽減される「住宅取得資金贈与の特例」の期限が2023年末に迫っています。この制度はこれまで延長が重ねられてきたものの、反対の声も根強く、非課税限度額が年々縮小されています。

今のところ2024年以降の延長は未定ですが、仮に延長されたとしても限度額が縮小される可能性が高いと思われます。この特例を適用するためには、2023年末までの贈与と2024年3月までの入居が条件となります。資金援助を予定している方は、早めに検討を進めたほうがよいでしょう。

■住宅取得資金贈与の特例による非課税限度額

3、補助金の目玉は3省連携による「住宅省エネキャンペーン」

続いて、2023年に実施される住宅購入にかかわる補助金・優遇制度について見ていきましょう。

3-1. 住宅省エネ2023キャンペーン(3省連携)

2023年の住宅政策の目玉が、住宅省エネ2023キャンペーンです。国土交通省、環境省、経済産業省が連携し、以下①~③の事業が実施され、予算は計2,800億円と過去最大規模の事業となっています。

①こどもエコすまい支援事業(国土交通省・予算1,500億円)

こどもエコすまい支援事業では、子育て世帯・若者夫婦世帯を対象に、ZEH水準の省エネ性能をもつ新築住宅(分譲住宅・注文住宅)を購入した方に対して、一律100万円の補助金が交付されます。またリフォームでは、窓や外壁などの断熱改修やエコ住宅設備の設置などに対して、子育て(若者夫婦)世帯には最大60万円、その他の世帯には最大45万円の補助金が交付されます。

②先進的窓リノベ事業(経済産業省/環境省・予算1,000億円)

先進的窓リノベ事業は、省エネ効果が高いとされる開口部(窓)のリフォームを対象とした事業で、断熱性の高いガラスへの交換や、内窓の設置などに対して、1戸あたり最大200万円の補助金が交付されます。

また本事業は、子育て(若者夫婦)世帯でなくても利用できますので、居住中の住まいのリフォームや、中古物件の購入とリノベーションを合わせておこなう方にもおすすめです。

なお、こどもエコすまい支援との併用も可能ですが、同一の窓に対し、重複して補助金を受けることはできません。

③給湯省エネ事業(経済産業省・予算300億円)

給湯省エネ事業は、家庭のエネルギー消費で大きな割合を占める給湯分野について、エネルギー消費の少ない高効率給湯器の設置に対し補助金を交付する事業です。

新築住宅(分譲住宅・注文住宅)、リフォームいずれも対象となり、子育て(若者夫婦)世帯でなくても利用できます。なお、こどもエコすまい支援事業との併用はできません。

■給湯省エネ事業の補助金額

今回の3省連携事業では、「ワンストップ申請」という方法がとられ、これまで主管する省庁によりバラバラだった申請作業がひとつにまとめられました。これによりひとつの契約で複数の補助金を同時に申請することも可能になり、補助金の算出もしやすくなりました。

3-2. ZEH化等支援事業

ZEH化支援事業は経済産業省が主管となり、マンションや一戸建のZEH化を推進する事業で、概算予算要求では前年に引き続き2023年も実施される予定となっています(※)。

この事業では、ZEH水準の住宅(Nearly ZEH・ZEH Oriented含む)に対し55万円、さらに高性能なZEH+(Nearly ZEH+含む)に対し100万円の補助金が交付されます(2022年実績)。子育て(若者夫婦)世帯でなくても利用できるので、子どもエコすまい支援の対象にならない方はこちらを検討してみるとよいでしょう。

※令和5年度予算が可決された後に正式決定・公表される見通し

関連記事:ZEH住宅が今後の主流に?ZEHの種類と補助金を徹底解説!

3-3. フラット35 の金利優遇

住宅金融支援機構が運営する全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」では、省エネ性能等、質の高い住宅に対して金利の優遇(引き下げ)をおこなっています。固定金利が上昇の兆しを見せる中、金利優遇は住宅購入の大きな支援となります。

■フラット35の金利優遇プラン

4、省エネ強化がさらに加速?今後の住宅政策の流れとは?

次に2023年以降の住宅政策の流れについても見ていきましょう。

4-1. 省エネ基準への適合義務化(建築物省エネ法)

建築物省エネ法の改正により、2025年4月からすべての新築住宅に対し、現行の省エネ基準(断熱等級4)への適合が義務化されます。また、政府は2030年度以降に新築される建物について、ZEH水準の省エネ性能を確保するとしており、今後段階的に基準が引き上げられていく見通しです。

4-2. フラット35は、省エネ基準への適合を前倒しで義務化

こうした国の取り組みに先駆けて、2023年4月よりフラット35の融資要件が変更され、省エネ基準への適合が義務化されます。つまり、現行の省エネ基準(断熱等級4)に適合していない住宅はフラット35の融資が受けられなくなります。

このように、国は住宅の省エネ強化をこれまでにないスピードで進めており、今後10年くらいで、新築住宅の省エネ性能は大きく底上げされる見通しです。これからマイホームを購入する方は、補助金などを上手に活用しながら、省エネ性能の高い家づくりをめざしましょう。

5、税制優遇・補助金など、住宅取得支援制度を利用する際の注意点

2023年の住宅取得支援制度、ご理解いただけましたでしょうか。最後に、こうした制度を利用する際の注意点について解説します。

5-1. 補助金には予算の制限がある。年途中で申請が打ち切られることも

ここまでご紹介した補助金は、年間の予算が決められていますので、もし予算を超えれば年の途中でも申請が打ち切られる可能性があります。確実に補助金を受けたい方は、できるだけ早めに検討を進めましょう。

5-2. 申請手続きは登録事業者に限られる

住宅省エネ2023キャンペーン等の申請は、購入者自身ではなく、不動産会社や建築会社などが代行しておこないます。代行できるのはあらかじめ登録された「登録事業者」だけですので、契約する会社が登録されているかどうか確認しておきましょう。

5-3. 適用条件に注意し、専門家のアドバイスを受けながら検討しよう

そして最も気をつけなければいけないのは適用要件です。購入する物件の用途や面積、また対象となる人の年齢など細かく要件が決まっています。必ず不動産会社のスタッフなど専門家に相談しながら進めるようにしましょう。

2023年の住宅政策は、ほぼ前年並みの内容で継続されつつ、脱炭素社会の実現に向けて省エネ強化が図られました。新築住宅にもリフォームにも活用しやすく、子育て世帯や若者夫婦世帯にはかなり手厚い支援となっていますので、このチャンスを逃さないよう早めに検討を進めていきましょう。

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