2024年の公示地価は33年ぶりの上昇!郊外エリアの上昇が加速 (関東・東北編)

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3月26日、令和6年(2024年)の公示地価が発表されました。コロナ明けから上昇が続いていた地価は、全国平均で+2.3%と33年ぶりの高い上昇率となりました。今回は関東・東北エリアの地価動向を詳しく見ていきましょう。

目次

1. 全国平均(全用途)は住宅地・商業地とも3年連続で上昇が加速

2024年公示地価の変動率は、全国平均(全用途)で前年の1.6%から2.3%へと上昇幅を拡大しました。用途別に見ても、住宅地(1.4% → 2.0%)、商業地(1.8% → 3.1%)とも大きく上昇し、コロナ前の水準を回復しています。

住宅地では、景気の緩やかな回復、低金利の継続、住宅取得支援施策などの背景のもと、都市中心部や、利便性・住環境に優れたエリアの住宅需要は依然として旺盛です。

また商業地も、観光・インバウンドなど人流の回復にともなう店舗需要、オフィス需要などに加え、再開発事業等が進展している地域での地価上昇も継続しています。

1-1. そもそも公示地価とは

公示地価とは、地価公示法に基づき、全国2万ヶ所以上の基準値の標準価格を、不動産鑑定士が調査し公表するものです。毎年1月1日時点の価格を3月下旬に発表しています。都道府県地価(基準地価)と同様、適正な地価形成を目的とし、土地取引の指標となる価格として活用されています。

1-2.三大都市圏は上昇幅を拡大。地方四市の住宅地は上昇幅が縮小するも+7%超

次に圏域別に直近1年間の地価動向を見てみましょう。

■2024年公示地価の変動率                                        (前年比%)

※出典:国土交通省

三大都市圏(東京圏・名古屋圏・大阪圏)は、全用途平均で前年の2.1%から3.5%に上昇幅を拡大しています。用途別に見ると、住宅地が1.7% → 2.8%、商業地は2.9% → 5.2%と商業地が大きく上昇しています。

一方、地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)では、住宅地が8.6% → 7.0%に上昇幅が縮小しましたが、それでも三大都市圏を凌ぐ高い上昇率を維持しており、商業地は8.1% →9.2%と上昇幅を拡大しています。

コロナ明けから3年連続の上昇となった地価は、バブル以来の高い上昇率を記録しました。その中でも、人流の回復にともなう商業地の上昇率が大きく伸びているのが2024年の特徴と言えるでしょう。

1-3. 半年ごとの動きでは2023年後半に上昇が加速

また2023年の地価動向を前半・後半に分けて見ると、住宅地・商業地とも、地方圏の一部を除き、前半よりも後半の上昇率が高く、上昇の勢いが加速していることがわかります。

■ 公示地価の半年ごとの変動率推移                                   (前年比%)

※出典:国土交通省

前半:2023年1月1日~2023年7月1日の変動率

後半:2023年7月1日~2024年1月1日の変動率

また地点ごとの上昇率を見ると、上昇率の高い地点の上位に郊外エリアが多数含まれることから、上昇の波が都心部から郊外に移っていることがわかります。

圏域ごとの上昇率上位を見ると、東京圏は1~6位を千葉県流山市が独占、7~10位もすべて千葉県(市川市・柏市)となっています。

大阪圏の1位は、奈良市西大寺国見町で+9.4%、2位は京都市上京区、3位は大阪府箕面市でした。トップ10のうち、大阪市は6位(城東区中央)と8位(福島区福島)のみで、他には高槻市、堺市など、郊外の街がランクインしています。

名古屋圏のトップは、名古屋市中区上前津で+16.2%、1~3位はいずれも名古屋市となっていますが、4位以下には知立市、東海市がランクインしています。

2. 首都圏の公示地価ランキング。地価上昇が近郊から郊外に広がる

次に、住宅購入に最も影響がある「住宅地」の地価について詳しく見ていきましょう。

今回は首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、北関東(群馬・栃木・茨城)、東北(福島・宮城)の3エリアの住宅地について解説します。

※公示地価は市区町村ごとの住宅地の公示地価の平均で、㎡あたりの金額(円)です。

※「前年比(%)」は、市区町村ごとの住宅地の平均地価で算出しています。地点ごとの前年比を平均したものではありません。

2-1. 首都圏の上昇エリアは全体の79%。前年の72%から続伸

首都圏エリアを市町村(政令指定都市は区)別に見てみると、前年比で上昇・下落しているエリアは次の通りです。

首都圏では、上昇エリアが前年の171エリア(72%)から188エリア(79%)へとさらに広がり、約8割が上昇しています。一方、下落エリアは前年の53エリア(22%)から34エリア(14%)へと減少しました。

2-2. 上昇率トップは千葉県市川市。トップ5はすべて千葉県の近郊~郊外エリア

それでは、首都圏の上昇エリアと下落エリアのトップ10を見てみましょう。

■2024年公示地価 上昇率・下落率ランキング(首都圏・住宅地)

上昇率では、トップが千葉県市川市、2位は流山市となりました。昨年2年連続のトップだった浦安市は3位にダウンし、上昇率も前年の9.7%から9.9%とそれほど伸びていません。4~5位も常磐線沿線の柏市、我孫子市となっており、1~5位までを千葉県が独占しています。

6位以下には23区から豊島区、目黒区など住宅地として人気の高いエリアがランクインしていますが、神奈川県、埼玉県はすべてランク外となっており、23位の戸田市、25位の茅ヶ崎市がそれぞれトップとなっています。こうしたことから、一般的な購入者のニーズが、価格が安い千葉県に移ってきていることがわかります。

一方下落率トップは、2年連続で千葉県銚子市でした。例年上位だった神奈川県の県央~西部エリアが下落から上昇に転じたことで、トップ10には、千葉県の房総エリアや埼玉県の秩父エリアが増えています。

2-3. 首都圏の都道府県別 地価上昇率トップ5

さらに、都道府県別に上昇率トップ5をピックアップすると以下のようになります。

都道府県ごとに見ると、すべての都県で上昇幅を拡大しており、特に千葉県の上昇率が高くなっています。神奈川県では、都内からの移住者に人気の湘南エリアから茅ヶ崎、葉山、藤沢の3市町がランクイン。相鉄線の都心乗り入れで人気となっている大和市の上昇率も高くなっています。埼玉県からは、東京に隣接する戸田、蕨、川口が上位となっています。

都県ごとに見ても、都心部や政令指定都市ではなく、利便性の高い郊外エリアの上昇率が高いことがわかります。

3. 北関東はTX沿線で地価上昇が継続。全体として回復傾向だが「二極化」が進む

次に北関東エリア(茨城、栃木、群馬)の住宅地の動向を見てみましょう。

3-1. 北関東エリアの上昇エリアは17%から23%に増加

北関東エリアの上昇・下落の割合は以下の通りです。上昇エリアが17%から23%に増え、回復傾向にありますが、全体としては依然として約7割が下落しており、上がるエリアと下がるエリアがはっきりと分かれています。

3-2. 北関東トップは3年連続で守谷市。上昇・下落とも顔ぶれはほぼ変わらず

次に北関東エリア(住宅地)の上昇・下落率トップ10を見てみましょう。

■2024年公示地価 上昇率・下落率ランキング(北関東・住宅地)

北関東の上昇率トップは、3年連続で茨城県守谷市でした。2~3位にもTX沿線からつくば市とつくばみらい市がランクインし、トップ3は昨年と同じ顔ぶれとなりました。

4位以下には、子育て支援で定評のある茨城県阿見町、鹿嶋市と隣接する工業地帯を有する神栖市、栃木県の県庁所在地である宇都宮市、新幹線で都内に通える移住先として人気の小山市などがランクインしています。この4位以下のランキングも昨年と変わっておらず、北関東エリアの上昇しているエリアはほぼ限られています。なお、群馬県トップは14位の高崎市となっています。

一方、下落率上位エリアもあまり変わらず、栃木県、群馬県の町村部が多くランクインしています。

3-3. 北関東の都道府県別 上昇率トップ5

北関東エリアの都道府県別に上昇率トップ5をピックアップすると以下のようになります。

各県とも回復傾向ではあるものの、茨城県以外はマイナスが続いており、上昇しているエリアはごく一部であることがわかります。この県別ランキングも、つくば市とつくばみらい市が入れ替わった以外は、昨年とまったく同じ順位となっており、地価が上がるエリアと下がるエリアがはっきりと分かれる「二極化」が進んでいることがわかります。

ちなみに、ランキングがほぼ変わらない中で、前年の「下落」から今年「上昇」に転じたエリアは、茨城県龍ケ崎市・かすみがうら市・取手市、栃木県壬生市、大田原市の5エリアです。これから住まいを探す方は注目してみてもよいかも知れません。

4. 東北エリアは仙台市と仙台近郊エリアを中心に上昇が続く

最後に東北エリア(宮城県・福島県)の住宅地について見てみましょう。

4-1. 東北の上昇・下落割合は昨年とほぼ変わらず

東北エリア(宮城県・福島県)の上昇・下落エリアは以下の通りです。東北エリアでは、上昇エリアが前年の46%から48%に増加、下落エリアが49%から46%に減少しましたが、それほど大きな変化は見られず、仙台市とその近郊エリアを中心に上昇が続いています。

4-2. 上昇率上位は仙台近郊。トップの大和市は11%の上昇

東北エリア(住宅地)の上昇・下落率トップ10は以下の通りです。

東北エリア上昇率トップ10はすべて宮城県で、トップは3年連続の大和市でした。こちらもトップ10の顔ぶれは昨年とほとんど変わらず、上昇率も昨年同様6~10%と非常に高くなっています。

大和市と2位の富谷市、4位の利府町は、いずれも仙台市の北側に位置するベッドタウン。6位の岩沼市と8位の名取市とは仙台市の南東側に隣接する街で、同じくベッドタウンとして人気の高い街です。今年トップ10入りした多賀城市は、仙台市宮城野区に隣接するベッドタウンです。

一方、下落率トップ10の顔ぶれはほとんど変わらず、人口減少や高齢化が進む沿岸部や内陸部などがランクインしています。

4-3.都道府県別上昇率トップ5

東北エリアの県別上昇率トップ5を見てみましょう。

宮城県は、仙台近郊エリアを中心に上昇が続いており、前年の3.9%から4.6%に上昇幅が拡大しました。福島県も上昇率が前年の0.5%から0.7%に伸びましたが、上昇率が高いのは、東京と郡山へのアクセスがよい「中通り」地域の鏡石町、矢吹町、須賀川市などで、沿岸部の「浜通り」地域や「会津」地域は、ほとんどのエリアで横ばいから下落となっています。

5. 2024年の公示地価は上昇を加速しつつさらに郊外化が進んでいる

首都圏、北関東、東北エリアの2024年公示地価の動向、いかがでしたでしょうか。

ご覧いただいた通り、地価は3年連続の上昇となり上昇率はさらに拡大しています。最後に、これから住宅購入を検討する方が気をつけたいポイントについて解説します。

5-1. 上昇が近郊エリアからさらに郊外へ波及している

今年の公示地価の特徴のひとつが、上昇エリアの拡大です。コロナ明けから地価の上昇が続いている中で、上昇の波が都心部から近郊エリアに広がっていることは本サイトでもたびたびお伝えしてきましたが、それがさらに郊外へと広がっている兆候が読み取れます。

首都圏では、昨年上位だった浦安市、戸田市、川口市などが順位を落とし、流山市、柏市、我孫子市など、やや外側のエリアが順位を上げています。また上位20位まですべて東京都と千葉県で占められており、神奈川、埼玉が大きく順位を落としています。さらに、長年下落が続いていた神奈川県中西部の秦野市、小田原市、箱根町、横須賀市などが、軒並み上昇に転じています。

こうしたことから、人気の高い神奈川エリアや東京隣接エリアの地価が、やや買いにくい水準まで上昇したことで、千葉県や神奈川県西部の郊外エリアに需要が広がっていることがうかがえます。

また、今年の大きな関心事だった金利については、3月に日銀がマイナス金利解除を決定し、政策金利を0.0~0.1%に引き上げました。しかし同時に「当面、緩和的な金融環境が続く」と発表されたことで、むしろ金利の先高観は後退しました。4月の住宅ローン金利を見ても、ほとんどの銀行で据え置き、一部には引き下げに動いた銀行もあり、購入環境としてはしばらくよい状態が続く見込みです。

したがって、地価は上昇が続く可能性が高く、さらに郊外へと広がっていくと思われます。今回上昇率が高かったエリアや、下落から上昇に転じたエリアなどで物件探しを進める場合には、少し早めに動き出した方がよいでしょう。

5-2. 地価はますます「二極化」が進む

もうひとつの特徴は地価の「二極化」が鮮明になっていることです。上昇の波が郊外に広がっているとは言え、各都道府県の上昇エリア・下落エリアの顔ぶれは毎年ほとんど変わっておらず、「上がる街」と「下がる街」ははっきりと分かれつつあります。これは地価の「二極化」と呼ばれ、全国の都市部で起こっている現象です。

つまり上昇が郊外に広がるとは言っても、上昇するのは交通アクセスがよく、商業施設の多い利便性の高いエリアや、再開発が進んでいるエリアなどごく一部ですので、今後ますますエリアの見極めをしっかりおこなうことが重要になってきます。

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