ZEH?高断熱?省エネ住宅を建てるときの会社選び

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省エネ住宅を建てるときの会社選び

一般住宅でも省エネ基準への適合が義務化され、にわかに注目が高まっているのがZEHなどの省エネ住宅。しかし省エネ住宅を建てる際にどんな会社に依頼すればいいのか悩む方も多いと思います。そこで今回は省エネ住宅を建てる際の会社選びのポイントについて解説します。

目次

1、2022年は住まいの省エネ元年。今なぜ省エネ住宅が注目されているのか?

まず、近年省エネ住宅が注目されるようになった背景について知っておきましょう。

1-1. そもそも省エネ住宅とは?

省エネ住宅とは、その名の通り電気やガスなどのエネルギー消費量が少ない住宅を言います。具体的には、住宅の「断熱性」や「気密性」を高めることによってエネルギー消費を抑える「省エネ」と、太陽光発電などで自らエネルギーを創り出す「創エネ」を組み合わせた住宅で、ZEH(Zero Energy House)基準の住宅では、実質的なエネルギー消費量をゼロにすることも可能となっています。

1-2. 近年、省エネ住宅が注目される背景

そして近年省エネ住宅が注目される大きな理由は、世界的な「カーボンニュートラル(脱炭素)」の流れです。我が国でも菅政権が「2050年カーボンニュートラル実現」、「2030年度温室効果ガス46%排出削減」という政策を打ち出し、2022年6月、新築住宅の省エネ基準への適合義務づけが決定されました。その結果、2025年以降は現行の省エネ基準(等級4)に満たない住宅は建てられなくなります。

■ 住宅の省エネ基準の見直しと適合義務化

住宅の省エネ基準の見直しと適合義務化

こうした流れに加え、ロシアのウクライナ侵攻にともない電気代、ガス代などエネルギー価格が上昇し、消費者側の意識も高まったことで、エネルギーコストの安い住宅へのニーズが急速に高まっているわけです。

1-3. 電気代、ガス代だけじゃない、省エネ住宅のメリット

省エネ住宅のメリットは、言うまでもなく電気、ガスなどの光熱費が安くなることですが、健康面や経済面でも様々なメリットがあります。

まず健康面で申し上げると、室内の温度差によって起こる「ヒートショック」です。ヒートショックによる脳卒中や心疾患により、年間1万7,000人もの方が亡くなっており、これは交通事故よりもはるかに多い数字です。また、断熱性の低い住宅で発生する「結露」は、カビ・ダニなどのアレルギーの原因になることもわかっています。

また経済面で申し上げると、ZEH等の省エネ住宅にはグレードに応じて補助金や優遇制度があります。最大100万円を超える補助金や、住宅ローン控除の限度額拡大、住宅ローンの金利優遇などを受けることができます。

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1-4. 省エネ義務化が何度も見送られた理由とは

そもそも日本の住宅の断熱性は、諸外国と比べ著しく低い状態が続いており、省エネ基準への適合義務化は業界の長年の課題でした。しかし、義務化は過去2度にわたって見送られ、2022年6月にようやく法制化されたという経緯があります。義務化が見送られた理由は「中小事業者への配慮」です。つまり、日本の住宅事業者の大部分を占める中小工務店が、「断熱」や「気密」の知識・経験に乏しく、義務化により淘汰されてしまうことを懸念したわけです。

したがって、早い時期から省エネ住宅に取り組んで来た会社と、義務化を機にこれから取り組みを始めようという会社では、省エネ住宅についての知見に大きな差があるわけです。

そこで今回のコラムでは、省エネ住宅を検討される方がどんな会社に依頼すればよいのか、会社選びのポイントを解説します。

2、ハウスメーカーと工務店の違いとは?住宅事業者の種類と特徴

まず、家を建てる際の依頼先について、一般的な事業者の種類や特徴について知っておきましょう。

2-1. ハウスメーカー

ハウスメーカーとは、全国を対象に年間数千~数万棟の住宅を供給する事業者を指します。テレビCMでよく見る会社や、住宅展示場に出展している会社をイメージすればわかりやすいでしょう。各社が独自の仕様で商品開発をおこない、自社工場で一貫生産しているため品質が安定しています。省エネ住宅にもいち早く取り組み、供給実績も多いのが特徴ですが価格はやや高めになります。

2-2. 地域ビルダー

地域ビルダーは、ハウスメーカーと同様に独自商品をもち、概ね2~3都道府県くらいの限られた地域で住宅を供給している事業者です。ハウスメーカーに比べると規模は小さい(年間数百~数千棟)ですが、地域に根ざして長く活動している会社が多く安心感があります。注文住宅だけでなく建売住宅や土地の分譲を手掛ける会社も多く、会社による差はあるものの、省エネ住宅にも積極的に取り組んでおり、ハウスメーカーと比べると価格はリーズナブルな場合が多い様です。

2-3. 工務店

工務店はより地域密着の小規模な事業者で、いわゆる棟梁と大工さんのイメージです。年間数棟~数十棟クラスの会社が多く、独自商品を持たず、施主との対話を通じてオーダーメイドに近い住宅を供給する会社が多くなります。木造在来工法を得意とする会社が多く、工場生産のような安定性には欠けますが、設計の自由度が高いのが特徴です。省エネ住宅への取り組みはまちまちで、断熱や気密の知識や経験に乏しい事業者も散見されます。

2-4. 建築家

建築家は、設計事務所という形態で活動している個人が多く、一般的に設計業務だけを受託し、施工は別の工務店がおこないます。ハウスメーカーなどでは対応しにくい狭小地や、個性的なデザインの家を建てたい方に向いていますが、うまくいくかどうかは建築家との相性によるところが大きく、施工品質は依頼する工務店に左右されます。省エネ住宅への取り組みも建築家によりまちまちです。

このように、同じ住宅事業者でも様々なタイプがあり、どのような会社に依頼するかは難しい判断になります。それぞれに長所・短所があり、一概にどれがいいとは申し上げられませんが、省エネ住宅に対する姿勢や実績を見る上で目安はあります。次章では省エネ住宅を建てる上での会社選びのポイントを見ていきましょう。

3、省エネ住宅を建てる上での会社選びのチェックポイント

会社選びを進める上では、省エネ住宅に対する会社の姿勢(取り組み方)と、知識・経験などを中心に検討していくとよいでしょう。比較する上での6つの項目をご紹介します。

3-1. 「ZEHビルダー」「ZEHプランナー」として認定されているか

ZEHビルダーとは、ZEH住宅を建てることを経済産業省に認定されたハウスメーカーやビルダー、工務店などを指し(設計事務所はZEHプランナーとして認定)、国からZEH住宅の普及に積極的な取り組みが求められます。また、ZEH住宅に関わる補助金の申請ができるのはZEHビルダー(プランナー)だけなので、省エネ住宅に積極的に取り組む会社は、ZEHビルダーへの登録・認定が不可欠です。逆に登録されていない事業者は、省エネ住宅にあまり積極的でない事業者だと推測できます。

※住宅情報館も、新築注文住宅のZEHビルダーとして2016年に登録されております。

3-2. ZEHが標準仕様の商品があるか

ハウスメーカーやビルダーなど、独自商品をもつ会社では、ZEHを標準仕様とする商品があるかどうかを、ホームページやパンフレットなどで確認してみましょう。こうした商品があるということは、ZEH(省エネ)に関する設計のノウハウ、それを建てるための技術力があると見ることができます。合わせて、ZEHや省エネに関する具体的な説明や取組姿勢などが書かれていれば参考にしてみるとよいでしょう。

ZEH(ゼッチ)とは

3-3. 住宅性能評価書を取得できるか

住宅性能評価書とは、法律に定められた一定の基準により「耐震性」「省エネ性」など住宅の性能を評価したものです。評価は国から委託された第三者機関の検査によって行われるため、客観性・信頼性の高い評価となります。この住宅性能評価書の取得に積極的な会社は、省エネ性を含めた「住宅の性能」を重視している会社と見ることができ、厳しい検査に対応できる技術力もあると考えられます。

住宅性能評価とは

3-4. ZEH・省エネ住宅の補助金や優遇措置に詳しいか

前述の通り、ZEH住宅は様々な補助金を受けることができますが、制度が毎年変わる上に、申請方法やスケジュールがとても複雑です。こうした制度をしっかり理解し、施主の要望に合わせた提案ができる会社は、省エネ住宅についての知識・経験が豊富な会社と見ることができます。逆にこうした情報に疎い会社は、省エネ住宅に消極的な会社である可能性が高いと言えます。

相談してみる

3-5. 事業規模・経営の安定性

ここまでは省エネ住宅についての知識・経験などについて解説してきましたが、会社の事業規模や経営状態についても考慮しておきましょう。

もちろん、小規模の工務店でもいい会社はたくさんありますし、必ずしも大手と比べて技術が劣っているわけではありません。しかし、家は建てた後にも定期点検やメンテナンスなど長いお付き合いになりますから、会社としての継続性は重要なポイントとなります。

例えば、創業者が一代で築き上げたような会社は、後継者がおらず廃業したり、会社の財務基盤が弱い会社では、不景気による倒産したりすることも考えられます。

また完工棟数が多い会社は、新しい技術開発などにも取り組みやすく、建材等の仕入れでもコストダウンが図れる可能性が高くなります。

3-6. 省エネ性能と価格とのバランス

最後に価格とのバランスです。一般的に大手ハウスメーカーは展示場の出展やTVCMなど広告・販売活動に多額の費用をかけているため、住宅の価格も高くなる傾向にあります。もちろん品質面やアフターサービスなど、大手ならではの安心感もありますが、価格と住宅性能は必ずしも比例しませんので、イメージだけでなく性能等級など客観的なデータで比較することが大切です。住宅性能、会社の規模・ブランド、安心感など、何を重視するのかを検討し、ご自身の考え方や予算に合った会社を選ぶようにしましょう。

4、今後普及が進む省エネ住宅。会社選びは慎重に

最後に、省エネ住宅を建てる時の会社選び、検討を始める際に知っておきたい注意点をお伝えします。

4-1. 住まいの省エネ性能は建てた時点で決まってしまう

省エネ住宅で重要になるのが、壁・窓・床・屋根などの「断熱性」と「気密性」を高め、消費エネルギーを抑えるための「外皮性能」です。外皮性能の高い住宅では、室内の空気が逃げにくく安定した室温が保たれます。そして、この外皮性能を建てた後に改善するのは難しく、太陽光発電や蓄電などの創エネ設備も、後から追加するには多額の費用がかかります。したがって、住まいの省エネ性能は建てた時点でほぼ決まってしまうと言っても過言ではありません。住まいを建てる際は、とかく間取りやデザインに目がいきがちですが、省エネ性能についても、設計段階からしっかり検討しておきましょう。

4-2. 施主も断熱や省エネなどの知識を持とう

そして、省エネ住宅を建てる上で大切なのは、施主側も省エネや断熱などに関する知識をつけておくことです。住宅会社との打合せにおいても、建物の外皮性能を表す「UA値」や気密性を表す「C値」、また住宅性能表示制度の概要などを知っておくと、より具体的な比較ができますし、会社選びの納得感も高まります。

当サイトでも関連記事を掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください。

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4-3. 実際に建てた住宅を見せてもらうのも一つの方法

そして検討がある程度進んできたら「百聞は一見にしかず」の言葉通り、実際に建てた建物を見せてもらうのもよい方法です。断熱性・気密性の高い家は、古いマンションや一戸建と比べてエアコンの効きがまるで違います。打合せだけではわからない暖かさ(涼しさ)を体感することでより納得感の高い会社選びができるでしょう。

今後、新築住宅の主流になっていくと思われるZEH・省エネ住宅。建ててから後悔することのないよう、ポイントを押さえた会社選びを進めていきましょう。

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