
5月に入り初夏を思わせる陽気が続いています。そして6月に入ればジメジメした梅雨。梅雨が明ければ連日35度を超える猛暑がやってきます。そんな暑い夏を快適に過ごすためには住まいの断熱が欠かせません。今回は、最大200万円の補助金を使って住まいの断熱リフォームができる「先進的窓リノベ事業」について解説します。
目次
1. 先進的窓リノベ事業の概要
まずは、先進的窓リノベ事業の概要から見ていきましょう。
1-1. 窓の断熱リフォームに最大200万円の補助金。先進的窓リノベ事業とは
先進的窓リノベ事業とは、国が実施している「住宅省エネ2024キャンペーン」の4事業のひとつで、既存住宅の窓やドアを断熱性能の高いものに交換するリフォームに対して、最大200万円の補助金が交付される事業です。
昨年は、あまりの人気に年度途中で予算上限に達してしまったこともあり、2024年度は前年の1,000億円から1,350億円へ予算が拡大しています。
1-2. 国が住まいの断熱に力を入れる背景

このように、国が住まいの断熱に力を入れる背景には「2050年カーボンニュートラル(脱炭素)の実現」という大きな目標があります。エネルギー消費量の約14%を占める住宅の省エネ、その中でも冷暖房に関わるエネルギー消費を抑えることが大きな課題となっています。
こうした流れの中で、新築住宅は2025年4月から省エネ基準への適合が義務づけられることが決まっていますが、規制が難しい既存住宅では、冷暖房効率を上げるのに最も効果的とされる開口部(窓やドア)のリフォームに手厚い支援をおこなっているわけです。
1-3. 窓リフォームの住まい手にとってのメリットとは
先進的窓リノベ事業の背景には、こうした政策的な目標がありますが、実際にリフォームをおこなう住まい手にとっても様々なメリットがあります。
①快適な住み心地
四季のある日本では、1年の半分近く冷暖房を使って過ごしています。また近年では温暖化の影響で猛暑日を記録する日も増え、冷房を使う期間が長くなっています。 住まいの断熱性を高めることによって、そんな暑い夏、寒い冬を快適に過ごすことができます。冷房時に外部の熱の73%が入ってくると言われる「窓」の断熱性を高めることにより、冷房効率が上がり1日中快適に過ごせるようになります。

②光熱費の削減
また、窓の断熱により冷暖房効率が上がれば光熱費の削減にもつながります。窓の種類等によっても異なりますが、年間1~2万円ほど光熱費が削減できると言われており、10年、20年の期間には大きな差となります。
エネルギー価格の高騰を緩和するための政府の補助金も2024年5月分で打ち切られ、6月から電気代の値上げが実施されます。今後価格が上昇すれば、省エネの効果はより大きくなります。
③健康上のメリット
国土交通省の調査によれば、住まいの断熱性と健康には大きな関連があることがわかっています。冬の室温が低い家では、高血圧、心疾患、動脈硬化、睡眠障害などが起こりやすく、結露によるカビやダニのアレルギー等も発生しやすくなります。また、高齢者はいわゆるヒートショックによる死亡事故なども多く発生しています。
2. 補助金の対象となる住宅と工事内容とは
窓の断熱リフォームのメリットが分かったところで、事業の詳細を見ていきましょう。前年まで補助金の対象となるのは窓だけでしたが、今回からドアも対象となりました。
2-1. 補助金の対象となる住宅
補助金の対象となる住宅は既存住宅で、マンション、一戸建どちらも対象です。住宅の所有者またはその家族が、一定の性能を満たす製品を使ってリフォームする場合に補助金の対象となります。
2-2. 対象となる工事
次に補助金の対象となるのは以下の4つに該当する工事です。なお、補助金額の合計が5万円未満の場合は対象外となり、補助金の上限は1戸あたり200万円です。
①ガラス交換

「ガラス交換」とは、既存窓のガラスのみを取り外し、既存サッシをそのまま利用して、複層ガラス等に交換する工事をいいます。使用するガラスの種類と、既存サッシとの組み合わせにより、補助金の算出基準となる窓の性能区分が変わります。
②内窓設置

「内窓設置」とは、既存窓の内側に新たに内窓を新設する、または既存の内窓を取り除き新たな内窓に交換する工事をいいます。
③外窓交換
「外窓」とは、住宅の外皮部分(≒外壁)にある開口部に設置する建具のうち、屋外から施錠できない建具をいいます。外窓の交換には「カバー工法」と「はつり工法」の2種類があります。

「カバー工法」とは、既存窓のガラスを取り外し、既存窓枠の上から新たな窓枠を覆い被せて取り付け、複層ガラス等に交換する工事です。

「はつり工法」とは、既存窓のガラスおよび窓枠を取り外し、新たな窓枠を取り付け、複層ガラス等に交換する工事をいいます。
④ドア交換
ドア交換は、住宅の外皮部分にある開口部に設置する建具のうち、屋外から施錠できる建具を交換する工事です。玄関ドアの交換と考えれば分かりやすいでしょう。ドア交換にも「カバー工法」と「はつり工法」があります。

「カバー工法」とは、既存ドアの枠を残して取り除き、既存枠の上から新たな枠を取り付け、ドアを交換する工事をいいます。

また「はつり工法」とは、既存ドアを枠ごと取り外し、新たな枠を取り付け、ドアを交換する工事をいいます。
これらの工事内容と、住宅の建て方(一戸建かマンションか)に応じて、補助金の対象となる断熱性能(熱貫流率)の基準が決まっています。なお、Uw、Udは熱貫流率を表す単位で、数値が少ないほど断熱性能が高いことを表します。

3. 先進的窓リノベ事業の補助金の算出方法
リフォームを検討するにあたって、気になるのは補助金がいくらになるのかということです。いくつかの例をもとに補助金の算出をしてみましょう。
3-1. 補助金の算出方法
先進的窓リノベ事業の補助金は、住宅の「建て方」、「断熱性能」、「窓(ドア)のサイズ」の3つの要素によって決まります。複数の窓を工事する場合には、それぞれの補助金額を足し合わせて補助金の総額を求めます。

3-2.一戸建の例
一例として、一戸建の窓を以下の条件でリフォームした場合の補助金を求めてみましょう。
ちなみにP(SS)グレードはもっとも断熱性能が高い製品で、Uw1.1以下となります。
建て方(地域) | 戸建住宅(東京) |
工事方法 | 外窓交換(カバー工法) |
断熱性能 | P(SS)グレード |
サイズと数 | 大2 中4 小6 |
このケースですと、窓1箇所あたりの補助金が、大22万円、中16.3万円、小10.9万円となりますので、それぞれの枚数をかけ合わせると、合計は174万6,000円となります。
3-3. マンションの例
同様にマンションに内窓を設置する例も見てみましょう。AグレードはUw1.9以下の製品です。
建て方(地域) | 集合住宅4階建以上(東京) |
工事方法 | 内窓設置 |
断熱性能 | Aグレード |
サイズと数 | 大2 中2 小2 |
このケースですと、窓1箇所あたりの補助金が、大5.2万円、中3.6万円、小2.3万円となりますので、それぞれの枚数をかけ合わせると、合計は22万2,000円となります。
このように、窓のグレードや数によって補助金の額は大きく変わります。
なお、先進的窓リノベ事業の補助率は50%相当とされています。つまり、実際にかかるリフォーム費用の約半分を補助金でカバーできるということになります。もちろん、製品や工事内容により補助率は変わりますが、他の事業と比べてかなり補助率の高い事業であることは間違いありません。
※補助金額は、実際の工事内容や申請された内容などにより異なります。参考としてご利用ください。
※補助の要件、補助金額の詳細等は、先進的窓リノベ事業公式サイトをご参照ください
4. 先進的窓リノベ事業の申請方法と注意点
最後に、先進的窓リノベ事業の申請方法と注意点について見てみましょう。
4-1. 申請期間
先進的窓リノベ事業は2024年12月31日までに工事が完了するものが補助対象となります。また、申請は2024年12月31日までとなっていますが、予算上限に達するとその時点で受付が終了します。
4-2. 申請方法
先進的窓リノベ事業の補助金申請は、国に登録された「登録事業者」がおこないます。したがって、補助金を使ったリフォームは、登録事業者に依頼することになりますので注意しましょう。
4-3. 2024年5月現在の補助金申請は7%前後
昨年はあまりの人気に年度中に受付が終了してしまった本事業ですが、2024年5月現在の申請額は予算の7%前後となっており、すぐに終了することはなさそうです。しかし、これから暑い夏に向かって、申請が増えてくる可能性もありますので、リフォームを検討している方は少し急いだ方がよいかも知れません。
住まいの快適性が格段に向上し、電気代の節約にもなる窓リフォーム。工事費の約半額、最大200万円の補助金が受け取れるまたとないチャンスかと思います。「エアコンが効きにくい」、「電気代が高い」などのお悩みをもつ皆様はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
住宅情報館は、先進的窓リノベ事業の登録事業者となっています。補助金を活用したリフォームのご相談・お見積りなどはお近くの店舗までお気軽にお問い合わせください。