~シニアの住み替えを考える①~ シニア世代が都心から郊外に住み替えるメリット

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子どもが独立し定年退職も視野に入る50~60代は「住み替えの適齢期」です。夫婦ふたりのセカンドライフの準備として、また老後資金の確保のためにも住み替えは有効な手段となります。今回は都心部から郊外に住み替える様々なメリットについて解説していきます。

目次

1. ライフスタイルが変化する50~60代は「住み替えの適齢期」

50代~60代は、子どもの独立や定年退職などライフスタイルが大きく変わり、セカンドライフに向けた住み替えの好機となります。その理由を見ていきましょう。

1-1. 子どもの独立にともない住まいと暮らしが合わなくなる

子どもが独立して夫婦2人だけの暮らしになると、それまで暮らしていた住まいが広すぎると感じるようになります。あまり気にならなかった階段の昇り降りが煩わしくなったり、使っていない部屋の掃除が面倒になったりと、住まいと暮らしが合わなくなってきます。また築年数が経過すると老朽化による修繕にお金がかかるようになります。

1-2. 働き方の変化や定年退職による通勤頻度の低下

50代後半になると働き方にも少しずつ変化が訪れます。会社によっては雇用形態が変わったり、関連会社に転籍になったりして、出勤の頻度や勤務時間が変わることも少なくありません。毎日通勤していたときには便利だった都心の住まいも、通勤頻度が低くなるにつれその必要性は薄れてきます。

1-3. 体力の低下と行動範囲

50代以降は、暮らし方や働き方の変化とともに、体力の衰えを感じ始める時期でもあります。若いときは楽しみだった旅行やスポーツなどもしだいに億劫になり、行動範囲が自宅周辺へと狭まってきます。

1-4. 収入と支出のバランス

そしてもっとも大きいのが経済的な変化です。仕事をリタイアすれば、退職金や年金が収入の柱となり、使えるお金がぐっと少なくなります。リタイア後に仕事を続ける人も増えていますが、収入に見合った生活への見直しが求められます。

一方で「人生100年時代」と言われるように、日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳と世界有数の長寿国です。仮に60歳で仕事をリタイアしたとしても、その先の人生は20~30年もあるのです。50~60代はそんなセカンドライフを楽しむための環境を整える時期だと言えるでしょう。

もちろん、今の住まいに住み続けながら、老朽化した部分をリフォームするといった方法もあります。しかし、住む場所と住まいを同時に一新したいなら、思い切って住み替えするのも選択肢のひとつとなります。

今回は、セカンドライフに向けた住まいの一新と、老後資金の確保をテーマに、シニア世代が都心から郊外に住み替えるメリットについて考えていきます。

2. 都心部から郊外エリアに住み替えるメリット

まずシニア世代が都心から郊外に住み替えるメリットとは何なのでしょうか。

2-1. 都心部の不動産価格の上昇

まず前提となるのが、近年の不動産価格の上昇です。国土交通省の「不動産価格指数」によれば、直近10年で東京都のマンション価格は約1.7倍、戸建は約1.3倍に上昇しています。

今から25年前の2000年当時は、東京23区でも新築マンションが4,000~5,000万円で販売されていましたが、現在、築25~30年となった中古マンションも4,000~5,000万円、つまり25年前の販売価格とほぼ同価格で流通しています。

つまり近年の価格上昇により、25年前に購入した新築マンションが、買ったときとほぼ同額で売却できる可能性があるわけです。もし35年ローンならまだ10年の返済が残っていますが、売却時に残債を一括返済して、手元に数千万円の売却益が残れば、これを自己資金として住み替えが可能になります。

2-2. 価格の安さと老後資金の確保

このように、都心の住まいを売却して得た資金で住み替える場合、郊外エリアの住宅価格の安さは大きな魅力となります。住宅ローンを組まずに購入できれば、退職金をまるまる老後資金として残すことができますし、定年までの期間で短期のローンを組むこともできます。

都心部と郊外の価格差を活用した老後資金の確保、これが都心から郊外に住み替えるもっとも大きなメリットと言えます。

■都心部の中古マンション平均価格

エリア平均価格
都心3区1億2,201万円
城東地区5,359万円
城南地区6,627万円
城西地区6,942万円
城北地区5,390万円

■郊外エリアの中古マンション平均価格

エリア平均価格
東京都 多摩地区3,938万円
神奈川県 県央地区2,468万円
神奈川県 湘南地区3,256万円
埼玉県 西部地区2,179万円
千葉県 常磐地区2,860万円

出典:レインズデータライブラリーより作成

2-3. 生活コストと利便性

郊外に住み替えるもう一つのメリットは日々の生活コストが安くなることです。郊外エリアは不動産価格が安いので、固定資産税や都市計画税などの税金が下がります。また、コンパクトな家に住み替えれば、光熱費や修繕費なども安くなります。また食料品や外食費なども都心部より安いので、日々の生活コストも下がります。 一方、生活利便性は都心部とそれほど変わらず、大型ショッピングモールなども多くありますので買い物などの不便はさほど感じません。デメリットは都心部への移動時間が伸びることですが、毎日の通勤がなくなればそれほど気にならないのではないでしょうか。

2-4. 余暇の楽しみ

郊外に住み替えることによって、余暇の楽しみ方も変わります。郊外エリアは自然が豊かで観光地にも近いので、都心からはちょっと行きにくい海や山、温泉などに気軽に行けるようになります。若いときは、都心の繁華街も楽しいですが、年齢を重ねるにつれ、自然の中でのんびり過ごす時間も楽しみになるはずです。自宅でガーデニングや陶芸など趣味や創作に打ち込むのもよいでしょう。

このように、50~60代はシニアといえまだまだ元気ですので、いわゆる「定年後の田舎暮らし」を目指すのではなく、利便性が高く生活コストが安い街に暮らしながら、たまには都心や観光地へも足を伸ばせる環境が理想です。しかし70代を過ぎれば行動範囲はさらに狭まり、何らかの支援が必要になる可能性もありますので、10年後、20年後を見越した街選び、物件選びが重要になります。

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3. シニア世代の住み替え。街選びのポイントとは

このように、シニア世代の住み替えでは50~60代のアクティブ期と70~80代の要支援期の両方を見据えた街選びが重要です。ポイントを見ていきましょう。

3-1. 公共交通機関

シニアの住み替えでは、電車やバスなど公共交通機関の発達した街を選びましょう。郊外には車での移動がメインとなるエリアもありますが、公共交通がないと、高齢となり車を手放したときに移動手段がなくなってしまいます。また、人口が減少している街では、電車やバスが廃線になったり、本数が減少したりすることもありますので、極端な高齢化や人口減少が進んでいるエリアは避けた方が無難です。

3-2. 病院などの医療機関

公共交通と同じくらい重要なのが医療機関です。定期的な通院が必要になることを考慮し、かかりつけとなるクリニックが徒歩圏にあるかどうか、公共交通機関で行ける総合病院があるかなどをチェックしておきましょう。

3-3. 買い物などの生活便

食料品や日用品の購入は地元のスーパーやドラッグストアなどが近くにあると便利です。郊外エリアでは、駅前やロードサイドに大型の商業施設あるケースが多いですが、日々の買い物は徒歩圏で済ませられるようにしましょう。また、丘陵地帯を開発した住宅地など、坂が多いエリアは徒歩や自転車での移動が大変です。できるだけ平坦で歩道が整備された街を選びましょう。

3-4. 地域のコミュニティ

シニア世代の住み替えでは、地域での人間関係も大事な要素になります。地域にサークル活動やボランティア活動などがあると、地域に溶け込みやすくなります。また仕事を続けるなら、ある程度規模の大きい自治体の方が求人は多くなります。将来的に1人になったときのことも考慮し、地域に溶け込みやすい環境を作りましょう。そうした意味では生まれ育った街へのUターンや、子ども家族との近居などもよい選択肢と言えます。

4.  シニア世代の物件選びと資金計画の注意点

最後に物件選びと資金計画のポイントを解説します。

4-1. マンションか一戸建か

シニア世代の住み替えで最初に迷うのが、マンションか一戸建かという点です。

マンションは駅近エリアに多く、耐震性やセキュリティが高い。ワンフロアで暮らしやすいなどの利点がありますが、住んでいる限り、管理費や修繕積立金といったランニングコストがかかります。一方、戸建は広い庭でのガーデニングやペットとの暮らしなどを自由に楽しめる利点がありますが、駅からはやや遠いエリアがメインになります。 どちらも一長一短がありますが、移動や買い物の利便性を重視するならマンション、静かで自由な暮らしを重視するなら一戸建がおすすめです。

4-2. コンパクトでバリアフリーな暮らしやすい家を

シニア世代の住み替えでは、できるだけコンパクトな家を目指しましょう。

広すぎる家は掃除やメンテナンスに手間がかかり、高齢になるほど負担になります。住み替え時点ではなく、10年後、20年後を見据えてできるだけコンパクトな住まいを目指しましょう。 また、高齢者の住宅で大事なのが「バリアフリー」です。転倒などによる怪我を防ぐためにも玄関や階段などの段差をなくし、廊下を車椅子が通れる幅にする、玄関、トイレ、浴室などに手すりを設置するなどの工夫をしましょう。高齢になっても暮らしやすい設計が重要です。

4-3. 住宅ローンはできるだけ少なく、無理のない資金計画を

次に資金計画です。シニア世代の住み替えでは、できるだけ住宅ローンを利用せず、自己資金での購入をおすすめします。もし利用するなら収入の安定している在職時に返済できる程度の金額に留めましょう。 また手元資金がどうしても足りない場合には、住宅金融支援機構が提供するシニア向け住宅ローン「リ・バース60」などを利用する方法もあります。「リ・バース60」は、毎月の返済が利息だけで、元金は、契約者が亡くなった際に、相続人が一括返済するか、担保物件(住宅および土地)を売却して返済する住宅ローンです。

関連記事:人生100年時代!シニア世代の住み替えと「リ・バース60」の活用法

いずれにしても、家にお金がかかりすぎてセカンドライフを楽しめなくなってしまっては本末転倒です。住み替え時点でのローンの残債を確認した上で、今の住まいがいくらで売れるのか、手数料などの諸費用はいくらかかるのかなどを調べ、老後資金をある程度残しておけるよう、無理のない資金計画を心がけましょう。

4-4. 売却と購入は同じ会社でおこなうのがベター

住み替えの一番難しい点は、旧居の売却と新居の購入を同時並行でおこなわなければならない点にあります。

一般的に売却を先行させると、焦って売る必要がないため、希望価格で売れやすく資金計画が立てやすいと言われますが、売れたタイミングでよい物件が見つかるとは限りません。逆に購入を先行させると、希望の物件に出会える確率は上がりますが、資金に余裕がない場合は売りを急ぐことになります。 このように、住み替えは売却と購入を両睨みで進めなければならず、契約やローンの手続きも煩雑になりますので、できれば同じ会社でサポートしてもらうのがベターです。地域の相場に詳しい不動産会社に依頼することをおすすめします。

そして、シニア世代の住み替えは、早めに検討を始めることが重要です。60~70代になってからの住み替えは、資金面からも体力面からもハードルが上がりますし、自宅の老朽化が進み売却金額が下がってしまうことになります。子どもが独立し、定年が視野に入る50代から検討を始めるのがベストです。

最新の相場情報やシニア向け住宅ローンなどのご相談は、ぜひお近くの住宅情報館までお問い合わせください。

次回は最新の人口データから「シニア世代の移住者が多い街」を解説する予定です。

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