不動産の購入にあたり、必ず見ることになるのが「販売図面」「物件資料」と言われる物件資料です。不動産広告は、販売されている不動産がどのようなものかを表示するもので、情報誌やチラシなど紙の場合もありますし、インターネットのこともあります。専門用語が多くわかりにくいですが、実はとても重要なことが記載されています。ちょっとした知識とコツで販売図面を読みこなせるようになりますので、しっかり覚えておきましょう。
目次
1. 不動産広告の表示方法は、ルールによって統一されている
不動産会社が物件の販売・賃貸などで「販売図面」等に情報を表示する場合には「公益法人 不動産公正取引協議会連合会」が定める「不動産の公正競争規約」というルールにしたがって、正しく表示されなければならないと定められています。
嘘の情報や誇大表現などで不当に顧客を誘引したり、不動産という高額な商品の取引で消費者が不利益を被ることのないように、明記が必要な項目や、その表示方法について細かくルールが決められています。また、それに伴って不動産業者間の公正な市場競争も確保しているのです。
2. 不動産広告は情報を分類してみるとグッと分かりやすくなる
不動産の広告は、専門用語が多く、小さな文字でたくさんの情報が書かれているため、内容を理解するまでにはしばらく時間を要してしまいます。しかし内容を次の5つに分類して見ていくとグッとわかりやすくなるので試してみてください。
広告主に関する事項
|
広告主(=多くはその物件を取り扱っている不動産会社)の情報です。会社名、住所、免許番号などの基本的な項目に加え、その会社がどういう立場で物件に関わっているかを「取引態様」という項目で明記しなければなりません。
取引態様には「売主」 「媒介(仲介)」 「代理」の3つがあります。 |
物件の概要
|
物件の所在地や規模(販売戸数)、交通アクセスなどが記載されます。
|
土地に関する情報
|
土地の面積、地目などの登記情報に加え、建物の建築に影響する事項が記載されます。例えば、その土地が所在する地域の「都市計画」や、用途を定めた「用途地域」、また道路や上下水道、電気、ガスなどの生活インフラの状況などです。 |
建物に関する情報 | 建物の構造、面積、方位、完成年月、施工会社などが記載されます。また中古物件であれば、リフォームの履歴などについても記載されます。 |
お金に関する情報
|
分譲物件や中古物件であれば「販売価格」。賃貸であれば「賃料」などお金に関する情報が記載されます。負担金や地代など、購入後にかかる費用があればそれも合わせて記載されます。月々のローン返済額が記載されることもあります。 |
3. とっても重要な「都市計画」、「用途地域」と「道路」のこと
不動産広告を見ていると必ず出てくるのが、「市街化区域」や「第一種低層住居専用地域」などの専門用語。とっつきにくい言葉ですが、とても重要な項目ですので、ぜひここで覚えてしまいましょう。
3-1.都市計画区域
都市計画区域とは、都市計画法に基づき、都道府県が指定した「都市施設計画や土地利用の規制の対象とされる区域」を言います。
わかりやすく言えば、どこにでも好き勝手に宅地開発をしたり、建物を建てたりすることができないように、一定の規制をかけているエリアということになります。都市計画区域内には、次の3つの区域があります。
■市街化区域、市街化調整区域のイメージ
市街化区域
|
「既に市街地を形成している区域と、10年以内に計画的に市街化を進める地域」を言います。駅前の商業エリアや住宅地をイメージすると分かりやすいでしょう。 |
市街化調整区域
|
「農業・林業・漁業などに従事する方々が暮らしている地域や、その業務を行うために必要な建物以外の建築を抑制し、市街化を抑制するべき地域」とされています。
家があまり建っていない、郊外の農村や漁村のイメージが当てはまります。 |
非線引区域
|
都市計画区域内で、市街化区域にも市街化調整区域にも指定されていない地域のことを「非線引区域」と言います。 |
つまり、一般的に住宅が売買されるのは、ほとんど「市街化区域」ということになります。
■都市計画区域の考え方
3-2.用途地域
市街化区域内では、さらに細かく「用途地域」が定められています。用途地域とは、市街化区域内を「駅前の商業地」、「閑静な住宅街」、「工業地域」などに分け、それぞれの地域にある土地がどんな用途に利用できるか(できないか)を定めたものです。
例えば、2階建て以下の一般的な住宅が多いエリアには高さ制限を設け、タワーマンションなどの高い建物が建てられないようにしたり、大きな工場が林立するエリアには学校がつくれないようにするなど、地域ごとに建てられる建物の規模と、用途を定めているのです。買った土地に目的の建物が建てられない、などということがないように、しっかりチェックしておきましょう。
■用途地域の種類と用途の制限
第一種低層住居
専用地域 |
低層住宅のための地域です。
小規模なお店や事務所をかねた住宅や、小中学校などが建てられます。 |
第二種低層住居
専用地域 |
主に低層住宅のための地域です。
小中学校などのほか、150m2までの一定のお店などが建てられます。 |
第一種中高層住居
専用地域 |
中高層住宅のための地域です。
病院、大学、500m2までの一定のお店などが建てられます。 |
第二種中高層住居
専用地域 |
主に中高層住宅のための地域です。
病院、大学などのほか、1,500m2までの一定のお店や事務所など必要な利便施設が建てられます。 |
第一種住居地域 | 住居の環境を守るための地域です。
3,000m2までの店舗、事務所、ホテルなどは建てられます。 |
第二種住居地域 | 主に住居の環境を守るための地域です。
店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどは建てられます。 |
準住居地域 | 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域です。 |
近隣商業地域 | まわりの住民が日用品の買物などをするための地域です。
住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられます。 |
商業地域 | 銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域です。
住宅や小規模の工場も建てられます。 |
準工業地域 | 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域です。
危険性、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられます。 |
工業地域 | どんな工場でも建てられる地域です。
住宅やお店は建てられますが、学校、病院、ホテルなどは建てられません。 |
工業専用地域 | 工場のための地域です。
どんな工場でも建てられますが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられません。 |
3-3.建ぺい率・容積率
用途地域が指定されているエリアでは、その用途によって建ぺい率と容積率が決められており、建物を建てる際に制限がかかります。
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積(建坪)の割合のことで、「%」で指定されます。例えば建ぺい率60%の地域で、敷地面積が100㎡の場合、建築面積は最大で60㎡までとなります。
容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことで同じく「%」で指定されます。例えば、容積率200%の地域で、敷地面積が100㎡の場合、延床面積は最大で200㎡までとなります。
※建築面積 : 建物を真上からみたときの投影面積
※延床面積 : 建物の各階の面積の合計
3-4. 土地と道路の状況
土地や中古一戸建ての購入を検討する方は、「道路」についても知っておきましょう。
建築基準法上、建物を建てるためには「幅4m以上の道路に2m以上接している」必要があります。
幅4m未満の道路は「法律上の道路」と認められないため、原則として建物を建てることはできません。しかし、建築基準法の施行前からある道路で、行政が認めたもの(「みなし道路」といいます)については、敷地を道路中心線から2m後退させることで(「セットバック」といいます)、建築が認められる場合もあります。
このように、土地と道路の関係によって、何らかの制限が生じる場合、不動産広告には「要セットバック(セットバック面積◯◯㎡)」、「再建築不可」等と明記されます。セットバック部分には建物が建てられないばかりでなく、門扉やブロックも設置できませんので、その内容に応じて、相場よりも安い価格で取引されるのが通例です。
■セットバックとは
将来的に4mの道路幅を確保するために、道路の両側の敷地をそれぞれ道路中心線から2mずつ後退させること。
・私道負担
上記のような土地で、すでにセットバック部分が道路になっている場合には「私道」として扱われます。私道とは簡単に言えば「個人所有の道路」で、土地を売買するときには合わせて売買されます。私道をともなう土地の売買では、不動産広告上「私道負担あり(◯◯㎡)」と表記しなければなりません。
・路地状部分のみで接する土地(敷地延長・旗竿地)
「路地状部分のみで接する土地」とは、下図のように道路から奥まった土地が、路地で道路に接している形状の土地を言い、「敷地延長」、「旗竿地」とも言われます。
路地状の部分が土地面積のおおむね30%以上を占める場合、不動産広告では、「路地状部分◯◯㎡を含む」と表記されます。
・傾斜地を含む土地
傾斜地の部分が土地面積のおおむね30%以上の場合には、不動産広告では「傾斜地◯◯㎡含む」または「傾斜地◯◯%含む」と明記しなければなりません。
・高圧電線路下の土地
いわゆる高圧線の下にある土地には、電力会社の権利(地役権といいます)が設定されているため、建物の建築ができない等の制限があります。このような場合、不動産広告では、「土地面積には高圧線路下◯◯㎡を含み、線路下部分は建築不可」と記載されます。
4. 簡単なようで実は深い、不動産用語の使用基準
不動産広告では、専門用語ではなく、一般的な言葉も多く使われていますが、意外にその使用基準は知らない方が多いようです。
4-1.「徒歩◯分」
不動産の交通アクセスは、一般的に「最寄駅」からの徒歩分で表示されます。最寄駅が遠く、バスを利用できる場合には、「駅から最寄バス停までの所要時間+最寄バス停からの徒歩分」で表示されることもあります。この場合、バスの待ち時間などは含まれません。
そして、覚えておきたいのは、徒歩分の考え方です。不動産表示では「徒歩1分=80m」というルールにもとづいて表示されますので、徒歩10分であれば800mということになります。ちなみに駅からの距離は、物件から最も近い出入口(改札口ではない)から最短ルートを通った場合の道のりになります。
4-2.「新築」
新築とは、建物の完成から1年以内かつ未使用のものを言います。つまり完成から1年以内でも一度入居した物件や、未使用でも完成から1年を超えた物件は「新築」と表示することはできません。
4-3.「最多価格帯」
複数の住戸(または区画)を販売する物件において、物件の価格を100万円刻みでみたときに最も物件数が多い価格帯のことを言います。
4-4.DK、LDK
間取りを表す「DK(ダイニングキッチン)」 「LDK(リビングダイニングキッチン)」についても、最低必要な広さについて規定があります。なお、1畳あたりの広さは、1.62㎡以上と決められています。
居室(寝室)数 | DK | LDK |
1部屋 | 4.5畳 | 8畳 |
2部屋以上 | 6畳以上 | 10畳以上 |
※出典:不動産公正取引協議会連合会「不動産の公正競争規約」
不動産広告を見るときのポイント、ご理解いただけましたでしょうか。
もっと詳しく知りたい方は、「不動産の公正競争規約」で細かいルールを調べることもできますが、かなりボリュームが多いので、広告主である不動産会社に直接聞いてみるとよいでしょう。