土地を買って家を建てるときの流れを知ろう

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一戸建ての購入を検討する方にとって、建売を買うか、土地を買って注文住宅で建てるかは迷うところです。建売はプランも価格も決まっているので、分かりやすいですが、土地&注文住宅となると、どこから手をつければいいのかわからないという方も多くいらっしゃると思います。そこで、土地を買って注文住宅を建てたい方に、知っておいていただきたい基本的な流れをご説明します。

目次

1、土地を探すためには、まず建てたい家をイメージしてみよう

土地を買って家を建てるときには、まず自分が建てたい家のイメージを描いてみるところからスタートします。住みたい家のイメージを固めていくことによって、土地探しの基本情報である「場所(エリア)」「広さ」「予算」を整理することができます。

 

1-1. 建物の部屋数と広さ

まず始めに、住みたい家の部屋数と部屋の広さをイメージしてみましょう。例えば、2階建て4LDKの一戸建ての部屋数と広さは、おおよそ次のようなイメージになります。

■(例)一戸建て(2階建て4LDK)の部屋数・広さイメージ

部屋 広さ
LDK 15畳
主寝室 10畳
居室1 6畳
居室2 6畳
居室3 6畳
階段 2畳
お風呂・洗面 4畳
トイレ(2ヶ所) 2畳
玄関・廊下等 6畳
クローゼット・パントリー等 3畳
合計 60

 

上記の家の部屋の広さを合計すると60畳になります。1畳の広さは約1.65㎡ですから、この家の延床面積は1.65㎡×60畳=99㎡(約30坪)となります。仮に、この家を総二階(1、2階が同じ面積の建物)で建てるとすれば、建築面積(建坪)は半分の49.5㎡(約15坪)ですね。

こうして部屋の数と広さをイメージしてみると、ぼんやりしていた家の形がぐっと具体的になってくるのではないでしょうか。

※ 1畳の大きさは中京間 (1.6562 ㎡ = 910×1820mm) として計算
※ 1坪=約3.3㎡

 

1-2. 庭や駐車場

家に庭や駐車場が必要であれば、その分もプラスして考えてみましょう。

標準的な駐車場1台分の大きさは2.5m×5m =12.5㎡ ですから、建物と駐車場で49.5㎡+12.5㎡=62㎡の土地が必要であることがわかります。

さらに庭(20~30㎡程度)、アプローチや自転車置き場(5~10㎡程度)、建物周囲の空地などを加えると、おおよそ100~110㎡程度の土地が必要になることがわかります。

 

1-3. 立地と周辺環境

土地の広さとともに考慮しなければならないのが、立地と周辺環境です。駅や学校などからの距離や、スーパーなどの買い物便についても、希望があれば書き出しておきましょう。また、幹線道路や繁華街などが近くにあると、車や人通りなどで落ち着かない環境になりますので、そのあたりの希望もまとめておくとよいでしょう。

 

1-4.予算

予算はなかなか見当がつかないかもしれませんが、自分の貯蓄額や年収などから、頭金や毎月の返済可能額などを計算しておくと考えやすくなります。銀行のホームページや不動産情報サイトなどの、「住宅ローンシミュレーター」を使えば、月々の返済額から借入可能額を算出することができます。そして、おおよその総予算(借入額+頭金)が算出できれば、土地と建物にどのように予算を振り分けるかなど具体的な検討に進むことができます。

 

 

2、土地を買うにはどんな方法があるの?

一般の方が購入することができる土地には、大きく分けて2つのパターンがあります。

 

2-1.不動産会社が販売している土地(分譲地)

ひとつは、不動産会社やハウスメーカーが売主として販売している土地です。広い土地を仕入れ、開発・分譲するケースが多いので、複数の区画が販売されているケースが多いです。また一戸建てを建てる前提で販売されているので、道路や上下水、電気、ガスなどのライフラインも整備されており、比較的買いやすい土地と言えます。

 

2-2. 個人が売り出している土地

もうひとつは、個人が所有する土地を、仲介会社を通じて売り出しているケースです。このような土地は、原則として現況取引(現状ありのまま引き渡すこと)なので、どのような状態で売り出されているかをしっかり調査する必要があります。(通常は仲介業務を行なう不動産会社が調査します)。また、この場合には仲介会社に対して仲介手数料を支払う必要があります。

 

 

3、土地を見るときのチェックポイント

おおよその要望や予算をまとめたら、インターネットや不動産会社で情報収集してみましょう。不動産会社に行くときは、要望を書き出して持参すれば、それに合う土地をいくつか紹介してくれるはずです。気になる土地があれば現地を見に行くこともできます。

インターネットや不動産会社で紹介してもらう土地を見る上で、注意するポイントは以下の通りです。

 

3-1.用途地域

市街化区域内の土地には、ほとんどの場合「用途地域」が指定されています。用途地域とは、そのエリアにどのような用途の建物が建てられるかを定めたものです。下表の通り、工業専用地域以外であれば住宅を建てることができますが、建てられる建物の高さなどに制限がかかる場合があります。また用途地域によって住環境が大きく変わってきますので注意しましょう。

■用途地域の種類と用途の制限

第一種低層住居

専用地域

低層住宅のための地域です。

小規模なお店や事務所をかねた住宅や、小中学校などが建てられます。

第二種低層住居

専用地域

主に低層住宅のための地域です。

小中学校などのほか、150m2までの一定のお店などが建てられます。

第一種中高層住居

専用地域

中高層住宅のための地域です。

病院、大学、500m2までの一定のお店などが建てられます。

第二種中高層住居

専用地域

主に中高層住宅のための地域です。

病院、大学などのほか、1,500m2までの一定のお店や事務所など必要な利便施設が建てられます。

第一種住居地域 住居の環境を守るための地域です。

3,000m2までの店舗、事務所、ホテルなどは建てられます。

第二種住居地域 主に住居の環境を守るための地域です。

店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどは建てられます。

準住居地域 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域です。
近隣商業地域 まわりの住民が日用品の買物などをするための地域です。

住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられます。

商業地域 銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域です。

住宅や小規模の工場も建てられます。

準工業地域 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域です。

危険性、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられます。

工業地域 どんな工場でも建てられる地域です。

住宅やお店は建てられますが、学校、病院、ホテルなどは建てられません。

工業専用地域 工場のための地域です。

どんな工場でも建てられますが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられません。

※出典:国土交通省サイト(http://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/03_mati/04/index.htm

 

3-2. 建ぺい率・容積率

建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積(建坪)の割合のことで、「%」で指定されます。例えば建ぺい率60%の地域で、敷地面積が100㎡の場合、建築面積は最大で60㎡までとなります。

容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことで同じく「%」で指定されます。例えば、容積率200%の地域で、敷地面積が100㎡の場合、延床面積は最大で200㎡までとなります。

建ぺい率の高い地域では、建物が敷地いっぱいに建てられるので、土地を有効に使うことができますが、周囲の建物との間に空地が少なくなるので、日当たり、通風などに問題が出る可能性があります。また容積率の高い地域では、比較的狭い土地でも3階建て、4階建てなど中高層の建物が建てやすくなります。

※建築面積 : 建物を真上からみたときの投影面積
※延床面積 : 建物の各階の面積の合計

 

3-3. 前面道路と間口

土地を見る上で、道路との関係は非常に重要です。土地がどのような道路に何メートル接しているのか、また道路がどの方角(東西南北)にあるのかにより、建物のプランに影響してしまうからです。

一般的に間口(道路と接している長さ)が広い土地や2方向に道路が接している土地(いわゆる角地)などは、プランの自由度が高くなります。また、道路が土地の南側にある場合は、敷地ギリギリに建てても採光が確保できますが、北側にある場合は南側に一定の距離を取らないと採光が確保しにくくなります。

 

 

 

 

 

3-4. 上下水道、電気、ガス

建物を建てる時には、必ず飲用水、排水、電気、ガスなどの配管を敷地内に引き込まなければなりません。都市部では、このようなライフラインはあらかじめ前面道路や電柱などに敷設されていることが多いので、簡単な引き込み工事だけで済みます。しかし、前面道路に水道、下水、ガスなどがない場合には、井戸や浄化槽が必要になったり、遠くの道路から敷地まで配管を延長したりしなければならず、多額の費用がかかる場合があります。

※浄化槽:トイレの汚水や生活排水を無害化して放流するための浄化設備

 

3-5. 古家あり

個人所有の土地では、しばしば「古家付き」や「古家あり」として売られている土地があります。これは売主所有の古い家が残っているという意味です。建物としての価格はゼロですが、土地と合わせて売却され、解体費用は買主の負担になります。

 

3-6. 地盤

海や河川に近い土地、または昔、田んぼや畑として使われていた土地は、地盤が弱いケースがあり、地盤調査の結果、何からの地盤改良工事が必要になる可能性があります。一般的に、ハウスメーカーが販売している土地は、分譲地として開発する際に地盤調査をおこなっているケースが多いので安心です。購入前に営業マンに確認してみるとよいでしょう。

個人所有の土地については、売主が調査データを持っていれば一番確実ですが、インターネットでその地域の地盤情報を調べることもできます。

また、道路や隣地と極端な高低差のある土地では、建物を建てる時に地盤の高さを調整するための「盛土」や「すき取り」、地盤が崩れるのを防ぐための「擁壁」などが必要になる場合があります。

 

3-7. 登記情報と測量図

最後に、土地の登記情報についても知っておきましょう。登記とは、土地や建物の「所有権」(持ち主)や、「抵当権」(不動産に対する担保設定)などの権利について書かれた公的な書類で、法務局に備えられています。登記情報は、簡単な手続きで誰でも閲覧することができます。

登記情報には、不動産の現況を記載した「表題部」と、権利関係を記載した「権利部」があり、「表題部」に土地の所在地、地目、面積などが記載されています。

・地目

地目とは土地の用途を表すもので、「宅地」「田」「畑」などがあります。地目は、必ずしも現況と合っているわけではなく、古いままになっていることも多くあります。地目が農地(「田」「畑」など)になっていると、売買時に農地転用および地目変更登記が必要になります。

※農地転用:農地を売買または農地以外に転用する際に、農地法の規定にもとづき、都道府県知事等の許可を得る手続きのこと。

・地積

地積とは土地の面積のことで「㎡」で表記されます。地積は土地家屋調査士などの資格者による測量に基づいて登記されますので、通常は法務局に資格者が押印した「測量図」が備えられています。しかし、まれに測量図がないケースもあり、こうした場合には、登記上の面積と実際の面積が合っていないこともありますので注意が必要です。測量図のない土地を購入するときには、改めて測量と隣地との境界確認をおこなった方がよいでしょう。

■土地を見るときのチェックリスト

項目 チェックポイント
用途地域 住環境はどうか?希望する高さ・用途の建物が建てられるか?
建ぺい率・容積率 希望する広さの建物が建てられるか?
前面道路 前面道路との接道状況。間口は十分か?方位は?
ライフライン 上下水道、電気、ガスは前面道路に敷設されているか?
古家の有無 古家ありの場合、解体費用はいくらくらいか?
地盤 補強工事が必要か?道路・隣地との高低差はあるか?
登記情報 地目は?測量図はあるか?隣地との境界は明示されているか?

 

 

4、購入する土地が「建築条件付」だった場合についても知っておこう

4-1. 建築条件付土地とは

「建築条件付土地」とは、土地の購入後、一定期間内に特定の会社と建築請負契約を締結する条件がついた土地販売の形態で、ハウスメーカーなどが分譲する土地によく見られます。

「建築条件」という言葉から、必ず契約しなければいけないと思われがちですが、本来は、契約する会社を限定しているだけで、契約そのものを強制しているわけではありません。

請負契約の条件が折り合わなかったときのために、「一定期間内に請負契約が成立しない場合には、土地の売買契約を白紙解約できる」という特約が付されるのが一般的です。

 

4-2. 建築条件付土地のメリット・デメリット

建築条件付土地は、販売する会社側からみれば、土地と建物をセットで販売できますので、土地の価格は比較的低く抑えられているというメリットがあります。また、土地の購入から建物の引き渡しまでをひとつの会社でおこないますので、契約や住宅ローンの申込みなどもスムースに進みます。

建売住宅の場合、プランの変更等はできませんが、建築条件付土地であれば、自由設計で建てられるのが大きなメリットです。

一方、デメリットは建築会社を自由に選べないということです。建築条件付土地の購入を検討する場合には、その会社が建てた建物を見学して、デザインや仕様が自分に合うかどうかを確認しておいた方がよいでしょう。

 

 

5、できれば購入前に建築のプロに見てもらおう

家を建てるための土地探しは、立地や周辺環境もさることながら、希望する建物が建てられるかどうかが重要なポイントになります。分譲地や建築条件付土地を購入する場合はさほど心配いりませんが、個人所有の土地を購入する場合には、仲介する不動産会社に建築の知識がないと、その判断が正しくできないことがあります。

このような場合は、建築の知識がある方にアドバイスをもらうか、もし建築会社が決まっているのであれば、購入する前に一度土地を見てもらって、希望する建物が建てられるかどうかをチェックしてもらうことをおすすめします。