6年ぶりの下落に転じた2021年公示地価。上がる地域と下がる地域がより鮮明に (関東・東北編)

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3月23日、令和3年(2021年)公示地価が発表されました。コロナ後の地価としては、2020年9月発表の基準地価で下落傾向が確認されましたが、今回の公示地価はどう動いたのでしょうか。関東・東北エリアの地価動向を探ってみました。

 

 

1、全国平均(全用途)は6年ぶりの下落。下落幅は地域や用途により異なる

2021年の公示地価は、全国平均(全用途)で6年ぶりに、住宅地で5年ぶりに、商業地で7年ぶりに下落となり、コロナの影響による下落傾向は続いていることが確認されました。しかし全体として弱含みでありながらも、変動幅は地域や用途によって異なり、上がる地域と下がる地域がより鮮明になってきたとも言えるでしょう。

 

1-1. そもそも公示地価とは

公示地価とは、地価公示法に基づき、全国約2万6,000地点の1月1日時点の土地価格を不動産鑑定士が調査し、毎年3月下旬に公表される地価指標です。自治体などが価格審査の基準として用いるほか、一般の土地取引の目安にもなっています。

 

1-2. 三大都市圏は下落に転じ、地方4市は上昇を維持。商業地の下落幅が大きい

三大都市圏では、東京圏、大阪圏、名古屋圏のいずれも、8年ぶりに下落に転じました。中でも店舗やホテルの需要が縮小した商業地で下落幅が大きくなっています。

一方、希少性の高い住宅地や、交通利便性等に優れた近郊の住宅地では上昇が見られますが、上昇地点は昨年より少なくなっています。また、地方4市(札幌・仙台・広島・福岡)では、上昇が継続していますが、上昇幅は小さくなっています。

 

■2021年公示地価の変動率

※出典:国土交通省

 

1-3. コロナで地価は全体的に弱含み。都市圏での下落幅は拡大傾向に

コロナ後の地価としては、2020年7月時点の地価である「基準地価」がすでに発表されていますので、変動率を比較してみましょう。

 

■ 2020年基準地価と2021年公示地価の変動率比較                (前年比 %)

※出典:国土交通省
※基準地価は7月1日時点、公示地価は1月1日時点

 

上表の通り、1回目の緊急事態宣言後の7月時点の地価と比較しても下落傾向が続いていることがわかります。傾向としては、全国(全用途)で下落率は横ばい、住宅地はやや改善し、商業地は下落が加速しています。三大都市圏では、住宅地・商業地ともに下落が加速。地方4市は上昇していますが上昇幅が縮小しています。

総じて言えば、コロナの影響が大きいのは都市圏であり、特に商業地において下落率が拡大していると言えそうです。

 

 

2、首都圏の住宅地は上昇率トップ10から23区が消えた

ここで、住宅購入に最も影響がある「住宅地」の地価について見ていきましょう。

今回は首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、北関東(群馬・栃木・茨城)、東北(福島・宮城)の3エリアの住宅地について解説します。

 

2-1. 首都圏の上昇エリアは全体の21%。前年の1/3に減少

首都圏エリアを市町村(政令指定都市は区)別に見てみると、前年比で上昇・下落しているエリアは次の通りです。

上昇 50エリア
下落 179エリア
変化なし 9エリア

首都圏では、依然として全体の21%が上昇しています。しかし、昨年は62%のエリアが上昇し、下落は34%しかありませんでした。つまり上昇エリアが1/3程度に減り、下落エリアが2倍以上に増えたことになります。

 

2-2. 上昇率トップ10から東京都が消え、郊外エリアが躍進

それでは、首都圏で上昇しているエリアと下落しているエリアのトップ10を見てみましょう。

※公示地価は市区町村ごとの住宅地の公示地価の平均で、㎡あたりの金額(円)です。(以下同様)

 

■2021年公示地価 上昇率・下落率ランキング(首都圏)

上昇エリアトップ10は、なんと東京都がすべてランク外となり、千葉県のアクアライン経済圏と郊外都市がずらりとランキングされています。昨年はトップ10のうち9エリアを東京23区が占めていましたが、コロナの影響で都心部が大きな影響を受け、郊外の人気が高まっていることがうかがえます。

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一方、下落エリアトップ10は神奈川県西部エリアと奥多摩エリアとなっています。神奈川県西部エリアは、コロナ前から緩やかな下落傾向が続いており、東京都の2エリア(あきる野市・日の出町)は、今回下落幅が拡大しました。

 

2-3. 首都圏の都道府県別 上昇率トップ5

さらに、都道府県別に上昇率トップ5をピックアップすると以下のようになります。

かろうじて横ばいを維持した千葉県以外はすべて下落に転じています。上位には都内へのアクセスがよい近郊エリアや、アクアラインなど独自の経済圏を形成している街がランクインしています。東京都の上昇率上位はこれまで23区で占められていましたが、今回、市部から3エリア(稲城市・調布市・府中市)がランクインするなど、興味深い結果となっています。

 

 

3、北関東エリアは多くの地域で下落傾向が強まる

次に北関東エリア(茨城、栃木、群馬)の住宅地の動向を見てみましょう。

 

3-1. 北関東エリアは9割超が下落。上昇はわずか7市町村

北関東エリアの上昇・下落の割合は以下の通りです。全体の9割超が下落しており、上昇しているエリアは7エリアしかありません。昨年は上昇17エリア、下落77エリアでしたので、さらに下落傾向が強まったと言えます。上昇率も0.4%以下と低水準で、ほぼ横ばいと言っていい状況です。

 

上昇 7エリア
下落 88エリア
変化なし 2エリア

 

3-2. 北関東の上昇エリアは住宅地の開発が進む茨城県神栖市とTX沿線などがランクイン

次に北関東エリア(住宅地)の上昇・下落率トップ10は以下の通りです。

上昇率1位には、茨城県南部の工業都市で、近年住宅地の開発が進む神栖市がランクイン。2位以下は、茨城県守谷市・つくば市などのTX沿線や、栃木県小山市など新幹線で都内への通勤が可能なエリア、宇都宮市、高崎市などの地方都市がランクインしています。一方、下落率上位には、栃木県、群馬県の町村部が多くランクインしています。

 

3-3. 北関東の都道府県別 上昇率トップ5

北関東エリアの都道府県別に上昇率トップ5をピックアップすると以下のようになります。

北関東はすべての都道府県で、下落率が前年を上回っています。また上昇率トップ5と言っても、栃木県で上昇しているのは宇都宮市と小山市のみ、群馬県で高崎市と吉岡町のみとなっており、全体として下落傾向が進んでいることがわかります。

 

 

4、東北エリアは宮城県を中心に上昇を継続するが上昇幅は縮小

最後に東北エリア(宮城県・福島県)の住宅地について見てみましょう。

 

4-1. 東北エリアは34%が上昇を維持。上昇エリアは仙台市と周辺エリアが上位に

東北エリア(宮城県・福島県)の上昇・下落エリアは以下の通りです。東北エリアでは、全体の34%が上昇を維持していますが、昨年の44%からは減少しています。また上昇を維持したエリアでも、上昇率が昨年の5~8%から1~5%に下がっており、少なからずコロナの影響を受けていることがわかります。

上昇 27エリア
下落 47エリア
変化なし 5エリア

 

4-2. 上昇エリアは仙台市と周辺エリア。山間部・沿岸部では下落傾向

東北エリア(住宅地)の上昇・下落率トップ10は以下の通りです。

東北エリアでは仙台市と周辺のベッドタウンの上昇率が高くなっています。1位の大和町、2位の大衡村は互いに隣接する仙台市の北部に位置する街です。大衡村にあるトヨタ自動車東日本が東富士工場(静岡県裾野市)の閉鎖にともない、生産を宮城の工場などに集約することを受け地価が上昇しています。一方、東日本大震災で大きな被害を受けた沿岸部のエリアでは、住宅の移転需要が落ち着いたこともあり下落傾向となっています。

 

4-3.都道府県別上昇率トップ5

東北エリアの県別上昇率トップ5を見てみましょう。

宮城県は、仙台市と周辺エリアで2~5%台の上昇が見られるものの、県全体では、前年の1.4%から0.1%とほぼ横ばいに転じました。福島県では、避難指示区域から解除されたことにより上昇している富岡町・浪江町を除きほぼ横ばいで、県全体では下落に転じています。

 

 

5、コロナの影響はしばらく続きそう。慎重なエリア選びを心がけよう

首都圏、北関東、東北エリアの2021年公示地価の動向、いかがでしたでしょうか。

2020年はコロナの影響を受け、全国的に地価上昇にブレーキがかかりましたが、2021年4月現在においても、第4波の流行が懸念されており、その影響はしばらく続きそうです。このような状況の中、住宅購入を検討している方はどのようなことに注意すればよいでしょうか。

 

5-1. 希望エリアの需給バランスに注意。品薄により価格が上昇するケースも

地価はしばらく下落傾向が続くと思われますが、実際の住宅購入にあたっては、物件の需給バランスに注意しましょう。地価の下落は不動産価格を下げる要因にはなりますが、最終的に不動産価格は需給で決まります。2020年以降、コロナによる景気悪化を懸念して新築マンションや新築一戸建の供給は減少しており、地域によっては品薄により価格が上昇しているケースも見られます。また、新築物件が減少すると中古物件の価格も上昇しますので、エリア全体の相場が上昇することもあります。

地価が下がっても、必ずしも不動産価格が下がるわけではないことを前提に、希望エリアにどのくらい物件が流通しているかを意識しておきましょう。

 

5-2. 住宅ローン減税の延長、長引く低金利など、購入環境は引き続き良好

コロナの影響で、地価が下がり新築物件の供給が減る一方、購入環境としては非常によい状況が継続しています。住宅ローン減税(13年間)は、当初「2020年末までに入居」という条件がありましたが2022年末までに延長されました。最大50万円が給付される「すまい給付金」も同様に入居時期が2022年末まで延長され、さらに両制度とも対象となる住宅が、「50㎡以上」から「40㎡以上」に緩和されています。

住宅ローン金利も、固定金利が1.37%(フラット35 / 返済期間21年~35年 / 2021年4月現在の最低金利)と、低金利が継続しています。

景気の先行きにやや不安はあるものの、住宅購入のタイミングとしては決して悪くないと言えるでしょう。

 

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5-3. コロナ禍が落ち着けば相場は一気に回復に向かう。エリアの見極めをしっかりと

2021年の公示地価はコロナの影響を強く反映し、下落傾向が鮮明になりました。しかし、下落の要因ははっきりしており、コロナが終息に向かい、インバウンドなどの経済活動が再開すれば、相場は一気に回復に向かいます。そうした観点で言えば、今回の下落局面は逆に購入のチャンスとも言えます。将来性のあるエリアなら値上がりも期待できるでしょう。いずれにしても、コロナ後に上がるエリア、下がり続けるエリアの見極めがますます重要になります。

公示地価のような公的な指標は、年に1回しか発表されませんので、日々の値動きを捉えることはできません。これから住宅購入を検討される方は、不動産会社などプロの意見を聞きながら、早め早めの情報収集を心がけましょう。

 

本記事のランキングに含まれないエリアの地価や相場情報などは、お近くの住宅情報館までお気軽におたずねください。