バリアフリーのおもしろ事例から考えはじめる。将来に備えた住宅づくり

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高齢化の今、バリアフリーって大事です

2016年10月時点での日本に住む65歳以上の高齢者割合は27.3%(総務省推計)で、2036年には33.3%(3人に1人)になると予想されています。今後も高齢者に配慮したバリアフリー化は日本全体で重要なこととなってくるでしょう。

今は元気でもいずれは年を重ね、身体的機能が低下してしまいます。また、事故などでいつ・どこで障がいを負ってしまうかもしれません。そのため、誰もが使いやすい道具や設備、さらには住みやすいまちづくりが必要です。ハンディキャップがある人でもバリア(障壁)を感じないで生きるためにバリアフリーは今後より大事な考え方になっていきます。

 

面白いバリアフリーの事例

バリアフリーといえば、点字ブロックや車椅子対応のエレベーターなどの生活に密接しているものを思い浮かべる人が多いと思います。しかし今回はそういった身近なバリアフリーではなく、「これはすごい!」と考えた人のアイデアが光るバリアフリーの事例を2つご紹介します。

◆ 車椅子から1人で安全に入浴できる 「Seesaw Tab!」

  

1つ目は「レッド・ドッド・デザイン賞」というドイツで行われている国際的なプロダクトデザイン賞を2011年に受賞した「SeesawTub!」です。

(引用元:http://www.yankodesign.com/2012/02/20/seesaw-tub/)

名前の由来は「シーソー+バスタブ」で、つまりシーソーの仕組みを取り入れたバスタブです。車椅子からお風呂に入るためには、リフトを設置して身体や車椅子ごと持ち上がるか、手すりや他の人の手を借りて入浴することになります。ところがこのバスタブは、シーソーの仕組みで1人でも身体の負担なく入浴することが出来るようです。

入浴方法は、

  1. 車椅子から足を伸ばし、バスタブに足をかける
  2. 手すりを使って、バスタブ内のシートに身体を滑り込ませて座る
  3. バスタブにお湯を入れる
  4. お湯がバスタブに入るにつれてシーソーのように傾いて真っ直ぐになる

といったもので、別の器具や他の人の手を借りずに安全に入浴することが出来るようにデザインされています。電源も不要でお湯の重さで自然にバスタブが傾くように設計されており、自然にも優しい画期的なアイデアだといえます。

 

◆ トイレ自身が利用者をサポート 「solo toilet lift」

 

次に紹介するのは、なんと便座自体がリフトになっているトイレです。

(引用元:http://mountway.co.uk/gallery.php?s=solo-toilet-lift

トイレを使用する際の動作である腰を掛ける・立ち上がる動きを、便座リフトがサポートしてくれます。最近のトイレには手すりが付いていることも珍しくありませんが、このトイレはそれ以上に身体の負担を軽減してくれるものと言えるでしょう。また、バッテリー駆動のため、つまずくリスクになるケーブルなどが表にでない設計になっています。操作方法もわかりやすく、このリフト本体の手すりに付いたレバーだけで操作できるようです。

お風呂と同じくトイレはひとりで利用するものです。だからこそ他の人の手を借りずに、かつ安全に使用できるこのトイレは、利用者にとっては何よりも優しいアイデアかもしれません。

 

バリアフリーの背景や歴史とは

そもそも「バリアフリー」とは一体何なのでしょうか。まず、その歴史を遡ってみると、意外にもその歴史は浅く、第二次世界大戦が終わった後から徐々に世界に広まっていきました。

ここでは、どのようにしてバリアフリーという考え方が生ま、法律として整備されていったのか、そしてバリアフリーの先につながる考え方である「ユニバーサルデザイン」が生まれるまでを軽く紹介していきます。

 

■バリアフリー前史

バリアフリーの前身として、「ノーマライゼーション」という考え方が1950年代に北欧デンマークから出てきました。ノーマライゼーションとは、「障がい者や高齢者など社会的に不利を受けやすい人々が、社会の中で他の人々と同じように生活し活動することが社会の本来あるべき姿である」という考え方です。知的障がいを持つ子どもたちの親が運動を起こしました。そして彼らの主張は1959年にデンマークで「知的障害者福祉法」として実現しました。

 

■バリアフリーが初登場したとき

1974年、国際連合で行われた「国際連合障がい者生活環境専門家会議」の報告書として『Barrier Free Design』を発表したときに、「バリアフリー」という言葉が世界で初めて使われたときだとされています。この報告書は、建築という観点から障害のある人や高齢者の生活を物理的に阻むバリアを取り払うことを目的としてまとめられたものでした。1976年には、『国連第31回総会決議第123』によって1981年を「国際障がい者元年」として指定します。

1982年、前年に実施された「国際障がい者元年」を受けて、国連総会において『障害者に関する世界行動計画』が採択されました。この計画は、「障害者の予防」「リハビリテーション」「機会均等化」の3つの考え方が整理され、世界各国で今後なすべき課題についての具体的な提案が、201の項目にまとめられています。この計画の実施にあたり、1983年から1992年までを『国連・障害者の十年』とする宣言がされています。この計画に沿って、各国で障がい者の社会への施策が行われていきました。その中にはバリアフリーも含まれています。

バリアフリーをさらに発展させた考え方として、1985年に米ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏が提唱した「ユニバーサルデザイン」があります。その原則として、彼を中心にまとめられた7つの原則を紹介しましょう。

  1. Equitable Use (誰でも公平に使えること)
  2. Flexibility in Use (使う上での自由度が高いこと)
  3. Simple and Intuitive (使いかたが簡単で、直感的に理解できること)
  4. Perceptible Information (必要な情報がすぐに見つかること)
  5. Tolerance for Error (うっかりミスや危険につながらないこと)
  6. Low Physical Effort (身体への負担が軽く、楽に使えること)
  7. Size and Space for Approach and Use (接近したり、利用するために十分な大きさと広さが確保されていること)

ユニバーサルデザインとは、ひとことでいえば「できるだけ多くの人が利用可能であるようなデザインにすること」が基本コンセプトであり、対象を障がい者や高齢者に限定していない点がバリアフリーとは異なっています。今後はバリアフリーを超えて、「ユニバーサルデザイン」が世の中の標準に変わっていくでしょう。

 

家を建てる時に考えたいバリアフリー

さて、バリアフリーの面白い事例や歴史を振り返って来ましたが、家を建てる時に真っ先に考えたいのは自宅を「バリアフリー」にすることです。今はまだ若くて健康でも、将来歳を取ったときや万が一の障害に備えて、あらかじめバリアフリーな住宅を建設することがとても大切です。ここでは、バリアフリーな家選び・家造りをするために、注目すべき設備やポイントを紹介します。

 

■手すり

 

手すりには大きく分けて「歩行補助手すり」と「動作補助手すり」の2種類があります。

「歩行補助手すり」は、階段・廊下やスロープに設置し移動するときに使用するものです。これにより階段の昇り降りや廊下の移動が楽になり、移動中に転んでしまうリスクも下げることができます。

「動作補助手すり」は、浴室・トイレ・玄関などに設置され、主に立ったり座ったりする動作を補助するものです。高齢者には辛いとされる座った状態から立ち上がる動作のときに、手で支えることができるので足腰の負担を軽くすることができます。

利用する人によって必要な手すりの高さや形状が異なるので、どういったものにするかはプロと相談する必要があります。

 

■段差

 

家の中にはある段差を無くす・小さくすることもバリアフリーの大事なポイントです。健常なうちは見過ごしがちですが、玄関や階段、あるいは部屋と廊下の境にもほんのわずかですが段差があります。こうした段差は、高齢者のみならず、小さいお子様がつまずいて転倒する可能性につながり、車椅子で移動する際には段差を乗り越えるたびに大きな負担となります。

 

■床

御身体が不自由な方や小さなお子様が、部屋や廊下を歩いている際にふとしたきっかけで足を滑らせて転んでしまうこともあります。その対策として、床をフローリングからカーペットやコルクのような滑りにくい素材に変更することもあります。これらの素材であればクッション性も高いため、万が一転倒してしまった場合でも怪我をしにくいとされています。

 

■扉

家の中の扉は、多くの場合和室などを除くと開き戸になっており、身体の動きを大きくしないと開閉しづらいため、高齢者や身体の不自由な方には使いにくさがあります。そこで、引き戸や折り戸、アコーディオンカーテンなどの身体を大きく動かさなくても開閉できる扉へ変更することで負担を軽くすることができます。

また、年齢につれて握力が下がってしまうため、ドアノブを掴んで回すことがおっくうになってきます。そこでノブに手をかけて開閉するレバーハンドルタイプにすることもバリアフリー化の助けになります。

 

■トイレ

トイレは、歩く・しゃがむ・扉を開け閉めするといった行動がすべて集約されている場所のため、バリアフリー化を考える際には、これまで出てきた内容を総合的に使うことになります。つまり、段差を小さくして、手すりをつけて、床を滑りにくくし、扉を開きやすくする、といったことです。

和式便座だった場合にはそれを洋式に変えたり、和式便座の上に腰掛けられるような器具を設置することも必要となります。

 

■浴室

浴室は、水濡れ、石鹸、洗面器などのせいで転倒してしまう可能性があることに加え、衣服をつけず無防備な格好であることや、一人で利用することが多いことからも、特に安全性に配慮する必要がある場所です。さらに、冬場に暖かい居室から寒い浴室への出入り、また、熱い浴槽へという急激な温度差が脳や心臓に負担をかけてしまう事によって起こる「ヒートショック」で亡くなる方もかなりの数で、メーカーも浴室暖房や脱衣所エアコンなどの対策商品を出しています。

浴室をバリアフリーにするには、転倒を防ぐために、出入り口の段差を小さくし、床材はとにかく滑りにくいものを選ぶ、そして手すりを設置することが考えられます。浴槽への出入りを楽にするために浴槽の縁の高さを調節することもあります。また、前述のヒートショック対策として暖房器具を導入するのもバリアフリーと言えるでしょう。

 

■照明

照明のバリアフリー化も大事なポイントです。

人は年を重ねると身体機能が徐々に低下していき、それは視覚も例外ではありません。視覚が低下することで、段差でつまずきことが増えたり、逆に明かりが眩しく感じてしまったりということがあります。こうした事態を改善するために、明るい家になるように照明の配置や壁の色や素材を選んだり、間接照明にして眩しく感じないようにしたりすることで、ある程度視覚の補助が出来るようです。

 

「バリアフリー」な家選び。

新しく建てるお家を終の棲家とすることを考えると、最初からバリアフリーにすることで後から追加で設置したり、大規模なリフォームをする手間を掛ける必要がなくなります。

家を建てるのであれば、最初からバリアフリーを考慮して検討することもひとつのポイントとなります。そのためには、経験豊富でしっかりと相談に乗ってくれる工務店やハウスメーカーを選ぶことが大切です。