結局、賃貸と持家はどっちがおトクなの?年間の住居費をシミュレーション

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住まいにまつわる永遠のテーマ「買うか・借りるか」。年明けからの引っ越しシーズンに向けて、改めて賃貸と持家の「住居費」を比較・検証してみました。住宅購入にまつわる通説のウソ・ホントにも迫ります。

 

目次

1、結局、賃貸と持ち家はどっちがおトクなの?

住まいにまつわる永遠のテーマ「買うか・借りるか」。何をどう比較するかで様々な見解があり、いまだ正解はありません。そこで今回は、「住みたい街」で上位にランキングされる神奈川県藤沢市の不動産相場をモデルに、賃貸、持ち家(新築一戸建、新築マンション)それぞれのコスト(住居費)についてシミュレーションしてみました。

 

1-1. そもそも住居費とは?家賃やローン以外にもお金はかかっている

そもそも住居費、すなわち住まいにかかるコストには何があるのでしょうか。家賃やローン以外に、賃貸の場合は「共益費(管理費)」や「駐車場代」、持ち家の場合は「固定資産税」や「マンションの管理費・修繕積立金」などがかかります。このような費用を合算したものが住居費です。

 

1-2. 住居費から差し引けるお金とは

持ち家では、一定の条件に該当すると税金の優遇や補助金の交付が受けられる場合があります。その代表的なものが「住宅ローン減税」。年末の住宅ローン残高の0.7%(最大35万円)が10~13年間にわたり、所得税(住民税)から還付される(戻ってくる)制度です(※)。このような還付されるお金は、住居費から差し引くことができます。その他に、住宅購入時に交付される「すまい給付金」や、高性能な住宅に対する補助金などもあります。

※2022年以降、控除率は1%から0.7%に引き下げられ、控除期間は最大10年から13年に延長、ローン残高の上限は住宅の環境性能に応じて3,000~5,000万円となる見込みです。

 

 

 

2、家賃やローン、税金や管理費など、賃貸と持ち家の住居費を年間比較

それでは早速見ていきましょう。神奈川県藤沢市をモデルとして、1年間にかかる住居費を比較してみました。

 

2-1. 賃貸・新築一戸建・新築マンションの住居費を比較

賃貸、新築一戸建、新築マンションの年間の住居費を比較したのが以下の表になります。比較するにあたって、建物の間取りは全て3LDKを想定し、家賃・物件価格は以下の通りです。

【賃貸】家賃 11万8,000円/月、共益費 6,000円/月、駐車場代 1万3,000円/月、更新料 2年毎1.5ヶ月分

【一戸建】物件価格 4,400万円(駐車場付)

【マンション】物件価格 4,700万円、管理費・修繕積立金 2万円/月、駐車場代 1万3,000円/月

なお、住宅取得に関わる諸費用(税金・仲介手数料・事務手数料・報酬等)はローン返済金額には含まれておりません。

 

■賃貸・新築一戸建・新築マンションの住居費比較(年間)

※住宅ローン減税は、年末のローン残高(上限4,000万円)×0.7%で試算

※家賃は「LIFULL HOME’S家賃相場」、物件価格は「REINS」等を参考に独自算出

※ローン借入額は物件価格と同額。返済期間35年・固定金利1.33%(フラット35の2021年12月最多金利)

※住宅ローン減税を受けるには一定の条件があります。また控除額はその年の所得等によって変動します

※本シミュレーションはあくまで概算です。

上表のように、家賃やローンなど直接的な住居費(小計)だけを見ると、賃貸と新築一戸建が年170万円強でほぼ同額なのに対し、新築マンションが年238万円と60万円ほど高くなっています。その理由は、昨今のマンション価格の高騰と、一戸建にはない「管理費・修繕積立金」などがかかるからです。また賃貸でも、家賃以外の更新料や駐車場代などに意外に大きなコストがかかっていることがわかります。

 

2-2. 持ち家は「住宅ローン減税」の恩恵が大きい!?

そして、賃貸と持ち家の大きな違いは「住宅ローン減税」の有無です。上表の合計欄、つまり住宅ローン減税による控除後の住居費を比較してみると、控除のない賃貸では年174万円なのに対し、新築一戸建では年149万円と25万円安くなっています。

持ち家最大のメリットは、この「住宅ローン減税」で、戻ってくる税金を加味すれば、実質的な住居費を賃貸より低く抑えることも可能になるわけです。

 

 

 

3、賃貸・持ち家のメリットとデメリット

ここまで「住居費」という金銭面での比較をしてきましたが、それ以外のメリット・デメリットについても触れておきたいと思います。

 

3-1. 賃貸のメリット・デメリット

賃貸の一番のメリットは「転居の自由度が高い」ということです。転勤や家族構成の変化に応じて、気軽に短期間で住み替えが可能です。また建物の管理や修繕は、原則オーナー負担ですので、そうしたコストがかからないのもメリットと言えます。

一方デメリットは、賃貸ならではの制約が多いことです。コロナ禍では「テレワークで落ち着いて仕事ができるスペースがない」、「家族がいる空間でオンライン会議はやりにくい」といった声が多く聞かれました。賃貸借契約で改装が禁止され、退去時の原状回復義務も課されている賃貸の「暮らし方の変化に対応しにくい」という弱点が、コロナ禍で顕在化したように思います。

また保育園や学校の休校により子どもの在宅時間も増え、特に小さなお子様のいる家庭では、隣室や下階の人にも気を遣うことが増えたと思います。このような制約の多さ、集合住宅ならではの気遣い、子どもが思いきり遊べる空間がないこと等が賃貸のデメリットと言えるでしょう。

 

3-2. 持ち家のメリット・デメリット

一方持ち家のメリットは、空間が広く、改装が自由にできることです。コロナ禍ではワークスペース需要の高まりから、一戸建に引っ越す方が多く見られました。リビングや個室を仕切ってワークスペースにしたり、隣室や下階への音を気にせず子どもを遊ばせたりできるのは持ち家(特に一戸建)ならではの大きなメリットと言えるでしょう。

また、持ち家は賃貸と比べて遮音性や断熱性が高く、内装や設備(キッチンやお風呂など)のグレードも高いため、住み心地が格段によくなります。賃貸ではめったに見られない「二重サッシ」や「床暖房」、「食洗機」や「IHヒーター」などが標準装備されている物件も多くあります。

さらに、世界的な「脱炭素」の流れの中で、2025年から新築住宅には省エネルギー基準への適合が義務づけられ、性能の高い住宅には補助金も交付されるようになります。建築時には補助金を上手に活用し、月々の光熱費を節約しながら地球環境にも貢献できる。今後そうしたメリットも生まれてくるかも知れません。

一方デメリットしては、賃貸ほど簡単には転居できないので、急激な生活の変化に対応しづらいことです。また住宅ローンの返済は長期間になりますので、お金を借りることに抵抗がある方は精神的な負担となる可能性もあります。

 

3-3. ウソ?ホント?持ち家に関する通説を検証

このように賃貸にも持ち家にもメリット・デメリットはありますが、ネットの情報などでは、誤解や誇張を含んだ通説がまことしやかに流れていることがあります。

 

通説①『家を買うと一生ローンに縛られる』

これは住宅購入をためらう理由としてよく聞かれます。確かに住宅ローンの返済は長期間になりますので、そうしたイメージを持たれる方も多いかも知れません。しかしいずれにしても、親との同居などを除けば、住居費は一生かかり続けます。極論ですが、家賃を払い続けるか、住宅ローンを払い続けるかの違いでしかないわけです。特に高齢となり収入が減ると、毎月の家賃は思った以上の負担になります。金利の低い時期にうまくローンを活用し、元気なうちに完済できれば、老後、住まいがかけがえのない資産となる可能性もあります。「ローンに縛られる」と考えるか「ローンをうまく活用する」と考えるかで答えは変わってくるでしょう。

 

通説②『住宅ローンは借りたお金の2倍を返済しなければならない』

これは、30年くらい前に住宅を購入した親世代からよく聞かれます。確かに当時の住宅ローン金利は4~6%と高く、総返済額が2倍くらいになるケースもありましたが、現在の低金利では、そのようなことはありません。下表の通り、きちんと計算すれば誤解であることが分かります。ちなみに、金利が4.5%になると総返済額が約2倍になります。

 

■住宅ローン金利と総返済額

借入額 4,000万円の場合

※元利均等35年返済

 

通説③『木造一戸建の価値は20年でゼロになる』

これは木造住宅の税務上の償却年数(法定耐用年数)が約20年であることから生じた大きな誤解です。確かに年数の経過とともに建物の価値は下がっていきますが、何年でゼロになるというような決まりはありませんし、市場価値がゼロになるわけでもありません。

ただし、市場価値を高く維持するためには定期的なメンテナンスが欠かせません。品質のよい建物を購入し、適切にメンテナンスすることが重要となります。

また、土地を含めた資産価値という点で言うと、エリア選びは特に重要です。交通便、生活便がよく、人気の高いエリアを選ぶようにしましょう。

 

通説④『地震や災害の被害はすべて自己負担になる』

これはある意味正しいですが、一般的に地震や災害のリスクは保険でカバーできます。すべてが保険で補償されるわけではありませんが、これまで大災害の際には、住宅ローンの減免などの救済措置も取られてきましたので、火災保険、地震保険に適切に加入していれば、家計が破綻するほどのリスクを負うことは少ないと思われます。

逆に賃貸でもまったくリスクがないわけではなく、ご自身の家財やご家族の安全については、保険に加入するなどリスクヘッジする必要があります。そうした面では、むしろ、最近の新築住宅は耐震性・耐久性が高いので、築古の賃貸よりも災害に対する安全性は高いとも言えます。

 

住宅購入にあたっては、とかくこうした通説やイメージに振り回されがちですが、大切なのは数字で検討することです。家賃や返済額、将来的な資産価値やローン残高、税金や保険料などをきちんと数値化し、イメージだけで判断しないように気をつけましょう。

 

 

 

4、「買うか」「借りるか」は、プロに相談しながらしっかり検討しよう

住まいにまつわる最大のテーマ「買うか・借りるか」。いかがでしたでしょうか。

ここまで見てきたように、賃貸と持ち家にはそれぞれメリットがあり、一概にどちらが正解とは言えません。また、住まいは家族の暮らしを支えるものでもありますので、単純にお金の損得だけで決められるものでもありません。そして、ここまで見てきたシミュレーションはあくまで一般論ですので、実際には一人ひとりの収入や、理想の暮らしに合わせた検討が望まれます。

もし自分だけで判断するのが難しい場合には、ぜひ不動産会社のスタッフなどプロの助言を受けてみてください。自分はどのくらいのローンが組めるのか、どんな物件が買えるのか、税金はどのくらい戻ってくるのか、などをきちんと計算したり、実際に物件を見てみたりすることで、より具体的で納得感のある判断ができると思います。

 

ご相談はお近くの住宅情報館までお気軽にお問い合わせください。