建売住宅を買う前に知っておきたいこと② ~建売住宅の物件選び 3つのポイント~

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前回のコラムでは、近年建売住宅の供給数が伸びているというデータをご覧いただきました。では実際に建売住宅を選ぶ際にはどのようなことに気をつければよいのでしょうか。

2回目の今回は「立地」、「性能」、「価格」の3つのポイントから解説していきたいと思います。

【前回コラム】はこちら → https://www.jutakujohokan.co.jp/article/2023/07/01/ready-built-house1/

目次

1)人気が高まる建売住宅。物件を選ぶときの3つのポイント

住宅選び 3つのポイント

いざ家を買おうと物件探しをはじめ、たくさんの物件を見ていくと、デザインや間取り、価格など特定の項目だけに意識が向いてしまい、家を買う目的や叶えたい要望などを忘れてしまうことがあります。家を買うときに意識しておきたいポイントをおさらいしておきましょう。

1-1.家族が安心して暮らせる、便利で快適な住まい

建売住宅に限ったことではありませんが、マイホーム購入では、家族が安心・安全・快適に暮らせることが大前提となります。毎日の通勤・通学や買い物はもちろん、小さなお子様がいる家庭では、保育施設や病院なども物件選びのポイントとなります。

また、地域全体の治安や生活環境、近年増加する自然災害に対するリスクなども考慮しておく必要があります。

1-2. 資産性が維持できる住まい

そしてもう一つの観点は、住まいの「資産性」です。住まい=資産と考えれば、「将来いくらで売れるか」ということも重要なポイントです。最近、都市部では不動産価格の値上がりで、購入時より高い価格で売れるケースも多く見られますが、エリアや物件によっては購入時の半額でも売れないケースもあります。資産性を維持できるかどうかは、将来のライフプランにかかわる大きなポイントになってきます。

では、実際に建売住宅の物件探しを進めていく際にはどのような点に気をつければよいのでしょうか。3つのポイントを挙げるとすれば、「立地」・「性能」・「価格」です。今回はこの3つの視点から建売住宅の物件選びについて解説していきます。

2)【ポイント1】住まいの価値を決める最大の要因は「立地」

1つ目のポイントは「立地」です。不動産の価値は「立地」で決まると言っても過言ではありません。立地には沿線や市区町村などの街選びと、住宅の敷地という2つの観点があります。

2-1. 沿線・駅などの街選び

住まいの購入にあたってまず検討するべきは、どのエリア(街)に買うかということです。

エリア選びのポイントは、通勤・通学などの交通アクセス、買い物などの生活利便性、子育て世帯であれば学校や塾などの教育環境、病院など医療施設、自然環境や治安などが挙げられます。しかし、すべて100点満点というエリアはなかなかありませんので、それぞれのライフスタイルに合わせて、妥協できるポイントとできないポイントを分け、優先順位をつけながらエリア選びを進めていきましょう。

また資産性を考える上では、街の将来性も重要なポイントです。人口や世帯数、自治体の財政状況などをチェックしておきましょう。一般的に、人口減少が続いているエリアや、高齢化が著しいエリア、財政が逼迫している自治体などはあまりおすすめできません。

2-2. 子育て支援など自治体の行政サービス

子育て世帯の方には必ずチェックしていただきたいのが行政サービスです。保育園や学童などへの入りやすさはもちろん、保育園への送迎サービスや延長保育など、子育て支援は自治体により大きな差があります。また、医療費の助成や各種支援金などは直接家計に影響しますので、できるだけ子育て支援に力を入れている自治体を選ぶことをおすすめします。特に共働きのご家庭は、行政サービスの充実した街を選びましょう。

2-3. 敷地の災害リスクやインフラ

次に住宅の敷地について検討してみましょう。敷地を見る上で最初に確認しておきたいのは災害リスクです。河川の近くや低地では、豪雨による水害のリスクがあり、山や崖の近くでは土砂崩れの危険性もあります。こうした災害リスクは、市区町村が公表している「ハザードマップ」等で確認することができます。災害危険(警戒)区域などに指定されている地域は避けるようにしましょう。

また、建売住宅ではそれほど心配はいりませんが、上下水道・ガス・電気などの公共インフラが整っているかどうか、道路や隣地との境界が明確になっているか等も念のため確認しておきましょう。

2-4. 周辺環境

住宅の敷地と合わせて周辺環境の確認も大切です。駅からの道のり、夜間の明るさや交通量、人通りなど、時間帯を変えて確認しておくとよいでしょう。また、周辺にパチンコ店、風俗店などの店舗や、騒音・悪臭などを生じさせる工場や施設がないかどうかなども合わせてチェックしておくとよいと思います。

3)【ポイント2】光熱費の上昇などで注目される住まいの「性能」

2つ目のポイントは住まいの性能です。家族の安全や健康にも影響し、後から変えることが難しい耐震・断熱などの基本性能は、住まいの資産性にも影響します。

3-1. 住宅の基本性能とは

住宅の基本性能とは、デザインや間取りなど目に見える部分ではなく、耐震性や省エネ性など建物がもっている基本的な性能を言います。基礎、柱、壁、屋根など住まいの主要構造部が決め手となるため、建てた後に変えることは難しく、住まいを選ぶ上で重要な要素になります。耐震性は家族の安全・安心に直結しますし、昨今では光熱費の上昇で、省エネ性能の重要性も増しています。

3-2. 重視するべきは「耐震性」と「省エネ性」

建物の基本性能の中で、特に確認しておきたいのは「耐震性」と「省エネ性」です。阪神淡路大震災や東日本大震災といった大災害を経て、建築基準法の耐震基準はこれまで何度か引き上げられてきましたが、現在では法律上の耐震基準よりもさらに上のレベルが求められるようになっています。具体的には、法律が求める「地震で倒壊しないレベル」ではなく、「複数回の余震に耐え、なお住み続けられるレベル」が標準となりつつあります。

また、これまで日本の住宅の省エネ性能は世界的に低いレベルにありましたが、菅政権が「2050年カーボンニュートラルの実現」を打ち出したことをきっかけに見直しが進み、住宅に求められる省エネ基準が大きく引き上げられました。また、太陽光発電などで自らエネルギーを創り出すことで、実質的なエネルギー消費をゼロにする「ZEH住宅」の普及も進んでいます。

3-3. 住宅性能表示がついている住宅を選ぼう

しかし、一般の方がこうした住宅の性能を評価するのは難しいことです。そこで参考にしていただきたいのが「住宅性能表示」です。住宅性能表示とは、耐震性、省エネ性など住まいの基本性能を、統一されたルールに基づいて「等級」で表示する国の制度です。等級の認定には国の指定機関による検査が入りますので、信頼性が高く、比較しやすい指標となっています。

■住宅性能表示の必須4分野

分野等級
構造の安定耐震等級[1~3]、耐風等級[1~2]、耐積雪等級[1~2]
劣化の軽減劣化対策等級[1~3]
維持管理・更新への配慮維持管理対策等級[1~3]
温熱環境断熱等性能等級[1~7]、一次エネルギー消費量等級[1~6]

建売住宅を購入する際には、この住宅性能表示による等級の有無を確認し、できれば各等級ともなるべく数値の高いものを選びたいところです。

関連記事:ご存知ですか?住まいの「等級」。今、住宅性能が注目される理由とは

しかし、現在この性能表示は義務ではないため、等級表示のない物件も多くあります。その場合には、「フラット35」が利用できるかどうかがひとつの目安となります。フラット35は対象の物件に独自の「建築基準」を設けているので、利用可能であれば一定の省エネ性や耐震性をクリアした建物であると言えます。

3-4. 基本性能が高い住宅はランニングコストが安くなる

基本性能が高い住まいはその分価格が上がることも多いのですが、購入後のランニングコストが安くなるメリットもあります。

①光熱費

もっとも効果が大きいのは光熱費の削減です。現在の省エネ基準(断熱等級4相当)の住宅でかかる光熱費は、年間約22万円と言われていますが、ZEH(ゼッチ)住宅ではこれを実質ゼロにできる可能性があります。

②地震保険料

近年値上げが続いている地震保険料は耐震等級が「3」なら通常の50%割引、「2」なら30%割引を受けられます。

③住宅ローン控除

持家の大きなメリットである「住宅ローン控除」でも高性能な住宅ほど控除額が大きくなり、最大控除額の差は180万円以上になります。

④住宅ローンの金利優遇

フラット35では、性能の高い住宅に利用できる「フラット35S(エス)」で、0.25~0.5%の金利優遇が受けられます。

このように、光熱費や保険料だけでなく、税金や金利の面でも大きなメリットがあります。

4)【ポイント3】最終的な購入判断の決め手はやっぱり「価格」

3つ目のポイントは「価格」です。購入の最終判断には、物件の価格が妥当かどうか、またローンの返済計画などが重要になります。

4-1. 販売価格の妥当性

建売住宅は、土地と建物の合計額で販売されているため、価格の妥当性がわかりにくいのですが、土地と建物それぞれの価格に分けてみると判断しやすくなります。建売住宅は建物に消費税がかかりますが、土地は非課税なため、価格に含まれる建物の消費税額から逆算することができます。

例えば、販売価格が5,000万円(うち消費税200万円)だとすると、

 200万円 ÷ 0.1(10%) = 2,000万円 (税抜の建物価格)
 5,000万円 - 2,200万円(税込の建物価格)= 2,800万円(土地価格)

というように、土地と建物の額を分けることができます。

建物は、木造であれば、㎡あたり17~19万円くらいが標準的な工事費(外構工事等は除く)となりますので、延床面積に掛け合わせて標準的な建物価格を算出してみましょう。また土地は、下記のサイト等で公表されている公示地価などを参考に比較してみるとよいでしょう。ただし公示地価は実勢価格の約80%とされているので、比較の際には「公示地価 ÷ 0.8」として、実勢価格に近い数字に修正してください。

(参考)土地総合情報サイト(国土交通省)

こうして算出された額と、販売価格がかけ離れていなければ、価格はある程度妥当だと言えます。ただし、土地、建物ともに敷地の広さや条件、グレード等によって価格に幅がありますので、あくまでひとつの目安とお考えください。

4-2. 資金計画と住宅ローン

価格について納得感が得られたら、次は返済計画について検討してみましょう。検討には、年収に占める返済額の割合(返済比率)を目安にします。

例えば年収500万円、返済額が年120万円なら返済比率は120 ÷500 = 24%となります。一般的に金融機関のローン審査では、返済比率30~35%くらいが上限となります。

4-3. 補助金・助成金

最後に補助金や助成金です。前述の通り、性能の高い住宅には様々な補助金制度がありますが、2023年の目玉は「子どもエコ住まい支援事業」です。

子育て世帯、若者世帯を対象に、省エネ性能の高い住宅には、一律100万円の補助が受けられます。こうした補助金は、支給の条件が決められているので、物件選びの際は補助金の対象になる住宅かどうかをしっかり確認しましょう。また、補助金には予算があり、年度途中でも予算に達した時点で申請が打ち切られてしまうこともあります。

5)建売住宅を購入する際の物件の探し方

建売住宅の選び方3つのポイント、ご理解いただけたでしょうか。最後に物件の探し方についても触れておきましょう。

5-1. まずはインターネットで情報収集

実際に物件を探す際には、まずインターネットでおおよその相場感をつかんでおきましょう。希望の沿線・駅やエリアなど条件を設定して物件を検索し、いくつか物件を見てみると、エリアごとの相場の違いや、そのエリアで強い不動産会社などがわかってきます。気になる物件があれば、サイトから問い合わせてみましょう。

5-2. 気になる物件は販売会社のサイトでも確認

希望エリアで物件を多く掲載している会社があれば、会社のホームページなども合わせて確認してみましょう。不動産会社は必ずしもすべての物件を情報サイトに掲載しているわけではないので、見たことのない物件にも出会える可能性があります。気になる物件があれば、実際に物件を見てみることをおすすめします。

5-3. 最新の情報は営業マンに直接聞いてみよう

インターネットで、なかなかよい物件に出会えない場合は、直接不動産会社の店舗で営業マンから話を聞くのがよい方法です。不動産会社はネットに掲載している物件以外にも多くの物件を取り扱っており、中にはこれから販売する予定(まだネットに載せられない)の物件もあります。

そうした最新の情報は、営業マンからしか聞けませんので、特にエリアを絞って探している方などは、早いタイミングで自分の希望条件を伝えておくなどコミュニケーションをとっておくとよいと思います。

建売住宅は、供給されるエリアが限られるため、物件探しが長期化する可能性があります。タイミングを逃さないためにも、あらかじめ希望エリア、希望条件などを整理して、地域に強い不動産会社に依頼しておくことをおすすめします。