新築マンションが高くて買えない!ますます戸建志向が高まる背景と3つの買い方

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地価と建築費の上昇で、新築マンションの高騰が止まりません。23区の新築マンションはすでに1億円超え。物件の供給も減る中で、広くて価格も手頃な戸建がいいという方が増えています。今回は、新築戸建を購入する際の3つの買い方について解説します。

目次

1. 戸建志向が高まっている要因はマンション市場の変化

まず首都圏の新築マンションの動向を振り返りながら、新築戸建が人気となっている要因を確認してみましょう。

1-1. マンション価格の上昇率は戸建の約5倍

ここ数年の地価と建築費の上昇による影響で、マンション価格は上昇を続けています。2010年の価格水準を100とした不動産価格指数(2024年6月)は、マンションが201.4、戸建住宅が119.2となっており、マンションの上昇率は戸建住宅の約5倍以上となっています。

出典:不動産価格指数(国土交通省)

1-2. 新築マンションの供給数は年々減少、都市部の主要エリアがメインに

新築マンション価格が上昇する要因のひとつは、供給戸数の減少です。首都圏の新築マンション発売戸数は10年で約40%も減少しており、供給エリアは地価の高い大都市やターミナル駅周辺にかたよる傾向が進んでいます。

■首都圏の新築マンション発売戸数

 2014年2023年増減率
東京23区20,774戸11,909戸-43%
東京都下4,425戸2,269戸-49%
神奈川県10,121戸5,962戸-41%
埼玉県4,473戸3,030戸-32%
千葉県5,120戸3,703戸-28%
首都圏計44,913戸26,873戸-40%

出典:不動産経済研究所「新築分譲マンション市場動向」より作成

その結果、販売価格は10年間で約60%も上昇。中でも23区は平均1億円を超え、一般の方には手の届きにくい「高嶺の花」となってしまいました。

■首都圏の新築マンション販売価格

 2014年2023年上昇率
東京23区5,994万円1億1,483万円+92%
東京都下4,726万円5,411万円+14%
神奈川県4,384万円6,069万円+38%
埼玉県3,930万円4,870万円+24%
千葉県3,879万円4,786万円+23%
首都圏計5,060万円8,101万円+60%

出典:不動産経済研究所「新築分譲マンション市場動向」より作成

1-3. 新築マンションの専有面積は年々縮小

また、新築マンションは価格が上昇するだけでなく年々狭くなっています。不動産経済研究所の資料によれば、首都圏の新築マンションの平均専有面積は、2014年に71.16㎡だったものが、2023年には66.10㎡に、約5㎡縮小しています。ちなみに、66㎡はおよそ40畳分の広さとなり、2LDKなら余裕がありますが、3LDKだとやや窮屈な間取りになります。

一方、首都圏の新築戸建の建物面積は平均99.8㎡で、マンションの約1.5倍になります。(出典:東日本不動産流通機構2024年8月度の成約レポート)

戸建は階段や廊下がマンションより多いので単純比較はできませんが、約100㎡の戸建であれば、4人家族でも余裕をもって暮らせる広さと言えます。

1-4. 広くてリーズナブルな郊外の新築戸建に需要がシフト

このように、今首都圏で新築マンションを買おうとしても「物件がない」、「高くて買えない」、「狭い」という言わば三重苦の状況に陥ってしまうわけです。近年の戸建志向の高まりは、こうしたマンション市場の変化が背景にあります。

戸建の価格も上昇はしているとは言え、マンションほどではありませんし、自分の好きなエリアに土地を買って、間取りも広さも自分好みに建てられる新築戸建の魅力が高まっているのです。

そこで今回は、新築戸建を買う時に知っておきたいポイントと3つの買い方について解説していきたいと思います。

2. 新築戸建を買う前に知っておきたい基礎知識

2-1. 新築戸建の種類と契約形態

新築戸建には大きく分けて以下の3つの買い方があります。

①注文住宅

②建売(分譲)住宅

③建築条件付土地

この3つのタイプの特徴やメリット・デメリットを理解しておくことで、物件探しの幅が広がり、自分の理想の住まいを購入できる可能性が高まります。

2-2. 3タイプごとの契約形態の違い

戸建は言うまでもなく「土地」と「建物」が一体となったものですが、3つのタイプによって買い方(契約形態)が異なります。

初めて戸建を買う方(=土地をお持ちでない方)を例にとると、土地・建物それぞれを「誰から」「どのように」購入するかをまとめたのが下の表です。

■戸建購入の3つのタイプと契約形態

タイプ対象誰から買うか契約形態
①注文住宅土地

建物
個人または不動産会社

ハウスメーカー
売買契約

請負契約
②建売住宅土地+建物不動産会社売買契約
③建築条件付土地土地

建物
ハウスメーカー

ハウスメーカー
売買契約

請負契約

※売買契約とは:買主が代金を支払い、売主から商品等を譲り受けることを約束する契約

※請負契約とは:発注者が代金を支払い、請負者に仕事を完成させることを約束する契約

上表の通り、①注文住宅と③建築条件付土地では、土地と建物が別々の契約になるのに対し、②建売住宅は「土地+建物」で1本の契約となります。

また、誰から買うか(契約の相手)は、①注文住宅では土地と建物が別々になるケースが多いのに対し、③建築条件付土地では、土地の売買契約と建物の請負契約を同じ会社(ハウスメーカー等)と結ぶことになります。

このような買い方の違いも頭に入れながらそれぞれのメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

3. 注文住宅のメリット・デメリットと向いている人のタイプ

注文住宅とは、シンプルに言えばオーダーメイドで建てられる戸建のことです。建物のデザインや間取りなどを、ひとつひとつ打ち合わせしながら決めていくタイプの戸建を言います。

3-1. 注文住宅のメリット・デメリット

注文住宅の最大のメリットは、設計の自由度が高いことです。デザイン、間取り、設備、インテリアなどを自由に決められますので、好みや予算に応じて世界でひとつだけのこだわりのマイホームを建てることができます。

また、どの会社で建てるか、土地を誰から購入するかについても制限はなく、自分が気に入った土地に、好きなハウスメーカーで建てることができるので、建売住宅の供給がないエリアでも新築戸建を購入することが可能です。こうした自由度の高さが注文住宅の大きなメリットと言えるでしょう。

一方デメリットとしては、自由度が高い分、手間と時間がかかることです。土地探しからはじまり、ハウスメーカー選び、設計打ち合わせ、着工、完成まで、1~2年かかることもざらにあります。また打ち合わせなどに時間がかかる分コスト高になることが多く、建物の設計が完了するまで予算が確定しないので、資金計画が立てにくいというデメリットもあります。

3-2. フルオーダー型注文住宅と規格型注文住宅

自由度が高いという注文住宅のメリットを活かしつつ、時間や手間を軽減したのが「規格型注文住宅」と言われる手法です。規格型注文住宅は、ハウスメーカーがあらかじめ標準的なデザイン・間取り・設備などの仕様を決め、施主はその中から好みのものを選ぶ形で家づくりを進めていきます。フルオーダー型の「自由設計」注文住宅がゼロから図面を引いて設計していくのに対して、規格型はパターンの「組み合わせ」で設計するという特徴があり、こだわりを実現しつつも、短期間でプランを確定できるのが特徴です。

もともと注文住宅は、フルオーダー型が主流でしたが、現在ではリーズナブルに質の高い注文住宅を提供できる「規格型」が主流となっており、ほとんどのハウスメーカーで採用されています。

3-3. 注文住宅に向いている人のタイプ

注文住宅に向いている人のタイプは、住まいにとことんこだわりたい人、例えば「リビングは吹き抜けのある大空間にしたい」、「家具はすべてデザインを統一した作り付けにしたい」など、標準的な間取りやデザインでは満足できないという方に向いています。また、設計や仕様の打合せに多くの時間を要しますので、そうした家づくりのプロセスを積極的に楽しめる方が注文住宅に向いていると言えるでしょう。

4. 建売(分譲)住宅のメリット・デメリットと向いている人のタイプ

建売住宅は、分譲住宅とも呼ばれ、不動産会社が所有する土地に建物を建て、土地と建物をセットで販売するタイプの戸建をいいます。建物の仕様は不動産会社が決めるので、自分好みにカスタマイズすることはほとんどできません(完成前であれば、インテリアの変更や、設備のアップグレード等ができることもあります)。

一般的に購入ニーズの高いエリアで供給され、1~2棟の小規模な物件もあれば、数十棟にもおよぶいわゆる大規模分譲地もあります。

4-1. 建売住宅のメリット・デメリット

建売住宅のメリットは、土地と建物がセットなので、価格がシンプルでわかりやすく、資金計画が立てやすいことです。また、購入から入居までの期間が短いのも大きなメリットです。

一方デメリットは、デザインや間取り、設備などが標準的で個性がないことです。注文住宅のように自分のこだわりを反映できる部分はほとんどありません。また、供給されるエリアや時期が限られているため、希望エリアにタイミングよく物件が出たときにしか買えないのも建売住宅のデメリットと言えます。

4-2. 建売住宅を買う時の注意点

建売住宅は、数棟~数十棟まとめて建築・販売されるため、スケールメリットがはたらきやすく、一般的に価格が安いと言われます。しかし土地面積が狭い建売では、土地の価格が周辺に比べて割高になっているケースもしばしば見られます。建売住宅は土地・建物の合計金額で販売されるので、比較・検討する際には土地と建物の価格を分けて、周辺の土地価格(㎡単価)からかけ離れていないかどうかを確認しましょう。場合によっては、土地を購入して注文住宅を建ててもそれほど変わらないということもあり得ます。

(関連記事)建売住宅の物件選び 3つのポイント

4-3. 建売住宅に向いている人のタイプ

建売住宅に向いているのは、住まいにさほどこだわりがなくコスパを重視したい人です。

かつては建売住宅=質が悪いというイメージがありましたが、今はそのようなことはありませんので、標準的なデザイン・間取りの住まいをリーズナブルに購入するにはよい選択肢と言えます。また、子どもの入園や入学など、転居の時期が決まっている方は、買ってすぐに入居できる建売住宅が向いていると言えるでしょう。

5. 建築条件付土地のメリット・デメリットと向いている人のタイプ

建築条件付土地とは、戸建を建てることを前提とした土地の販売形態で、土地を購入する条件として、一定期間(多くは3ヶ月)内に、特定の会社に戸建の建築を発注することが条件となっているものです。ハウスメーカーが自社で土地を販売し、同じ会社が建築を請負う形が一般的です。

5-1. 建築条件付土地のメリット・デメリット

建築条件付土地のメリットは、建築の依頼先が限定される分、土地の価格が比較的安いということです。言い換えれば、ハウスメーカーは建築工事を確実に受注できるため、土地の価格を抑えめに設定しているわけです。

土地と建物がセットという意味では建売住宅の一種と見ることもできますが、建売よりも設計の自由度は高く、ある程度のこだわりは実現できます。また、土地と建物の契約が同じ会社になるので予算の管理がしやすく、ローンの手続きなども進めやすいというメリットがあります。

一方デメリットとしては、好きなハウスメーカーで建てられないこと、3ヶ月という短期間で設計を進めなければならないことです。

5-2. 建築条件付土地を買う時の注意点

建築条件付土地は、建築を依頼する会社が決められていますので、その会社の家が自分の希望に合っているかどうかが最大のポイントになります。また3ヶ月という短い期間で設計を進める必要があるので、土地の購入を検討する時点で、建てる家の間取りや予算の目処はつけておいた方がよいでしょう。

万一、何らかの事情で期限までに請負契約が結べなかった場合には、土地の売買契約は白紙解約(なかったこと)となり、支払い済みの手付金等があれば返金されます。こうした条件が契約書にきちんと記載されているかどうかを確認しましょう。

5-3. 建築条件付土地に向いている人のタイプ

建築条件付土地が向いているのは、注文住宅と建売住宅のいいとこ取りをしたい人です。

注文住宅のように、ある程度のこだわりは実現したいけれど、そこまでの予算はかけたくないし、打合せに多大な時間をかけたくないという方に向いています。

建売住宅とさほど変わらない予算で、ある程度のこだわりは実現できるので、ハウスメーカーのデザインや仕様が気に入っていれば、コスパのよい選択肢と言えるでしょう。

戸建住宅の3つの買い方、いかがでしたでしょうか?最後に比較表をまとめておきます。

■戸建購入の3タイプ比較表

 注文住宅建売住宅建築条件付土地
購入するエリア◎好きなエリアに土地を買って建てられる△購入ニーズの高いエリアに限られる△購入ニーズの高いエリアに限られる
設計の自由度◎デザイン・仕様などの自由度が高い△自由度は低い◯規格プランが多いが、多少の自由度はある
建築の依頼先◎自由に選べる✕選べない✕選べない
入居までの早さ△設計から完成までが長い◎完成物件ならすぐ入居できる◯土地が決まれば比較的早い
打合せの負担△大きい。家づくりの過程を楽しめる人向き◎ほとんどない◯注文住宅と建売住宅の中間
価格△高めだが「規格型」は比較的リーズナブル◯一般的にリーズナブル◯標準的な仕様ならリーズナブル
資金管理のしやすさ△フルオーダーは設計完了まで予算が確定しない◎土地・建物の合計で販売されるので価格が明瞭◯土地・建物が同じ会社なので比較的管理しやすい
どんな人向き?住まいにとことんこだわりたい人あまりこだわりがなくコスパ重視な人こだわりはあるが、予算を抑えたい人

価格の高騰が続く新築マンションですが、今後もこの傾向は続くと見られ、供給のないエリアでは中古マンションの価格も上昇が続いています。一方、郊外エリアの戸建は、広さも十分にあり価格もリーズナブル。子育て環境もよいので、これからますます人気が高まりそうです。「マンションが高くて買えない・・」とお悩みの皆様は、ぜひ新築戸建にも目を向けてみてはいかがでしょうか?

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