
断熱等級は何等級を選べばいいの?省エネ住宅が注目される中でこうした悩みをもつ方も少なくないと思います。そこで今回は、これから家を建てる人が、どのレベルの省エネ性能を目指すべきなのか、また、省エネ性能の差が、将来どのような影響をもたらすのかについて解説します。
目次
1. 断熱等級4・5・6・7はどのくらい違う?
まず、断熱等級とは何なのか、また性能にどのくらいの差があるのかを知っておきましょう。
1-1. 断熱等級とUA値とは
断熱等性能等級(以下、断熱等級)は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいて決められた、住宅の断熱性能を表す全国共通の指標です。
現在、等級は1~7まであり、数字が大きいほど断熱性能が高くなりますが、2025年の法改正により、新築住宅では等級「4」以上が原則必須となっています。 また、断熱性能を判断する代表的な数値が「UA値(外皮平均熱貫流率)」と呼ばれるもので、値が小さいほど住宅から熱が逃げにくいことを表します。
1-2. 断熱等級4~7の位置づけと性能の違い
断熱等級4~7の位置づけと具体的な性能の違いは以下の通りです。等級が上がるほどUA値は小さくなり、断熱性能が高くなります。
| 等級 | 位置づけ・性能 | UA値 |
|---|---|---|
| 等級7 | 現在の最高等級。等級4よりも冷暖房エネルギー消費量▲40% | 0.26 |
| 等級6 | GX ZEH水準。等級4よりも冷暖房エネルギー消費量▲30% | 0.46 |
| 等級5 | ZEH水準 | 0.60 |
| 等級4 | 1999年制定の「次世代省エネ基準」。現在の新築住宅での最低基準 | 0.87 |
| (参考) 等級3 |
等級3は1992年の基準。新築住宅は原則として建築不可 | 1.54 |
※UA値は「地域区分6(東京等)」の基準
等級4は「次世代省エネ基準」とは言うものの、1999年に制定されたもので、近年普及が進んでいるZEH住宅などと比較すると、その性能の低さは否めません。現在は、等級5~6を標準仕様としている住宅メーカーが多く、国もこの水準を補助金交付の要件としています。
2. 等級が違うと、暮らしやコストはどのくらい変わる?
では等級が変わると、暮らしやコストにどのくらいの違いが生じるのか具体的にみていきましょう。
2-1. 断熱等級による冬の室温の違い
断熱性能の差は、特に冬の室温に表れます。HEAT20の試算(※)では、東京などが含まれる地域(地域区分6)で、断熱等級4程度の住宅は、冬の最低室温がおおむね8℃以上なのに対し、断熱等級6程度の住宅では約13℃以上、断熱等級7程度では約15℃以上を指標としています。
つまり高断熱になるほど、家全体が暖かくなることに加え、リビングだけでなく、廊下や洗面脱衣室なども寒くなりにくく、家の中の温度差を小さくしやすくなります。
高断熱住宅は、低室温による高血圧や心疾患といった病気の予防、温度差によるヒートショックの予防にも役立ちます。
※HEAT20:一般社団法人 みらい 建築・住宅研究機構
※一定の暖房条件などを設定した指標であり、実際の室温は地域や暖房の使い方などによって異なります。
2-2. 冷暖房コストの違い
環境省の試算によれば、東京23区にある120㎡の戸建ての場合、年間の冷暖房光熱費は、断熱等級4で約8万8,000円、等級5で約6万1,000円、等級6で約5万5,000円です。つまり、等級4と6では、冷暖房コストだけで年間約3万3,000円の差になります。
| 断熱等級 | 等級4 | 等級5 | 等級6 |
| 冷暖房費 | 87,652 円/年 | 61,305 円/年 | 55,093 円/年 |
また、国土交通省の試算によれば、省エネ基準(等級4)とZEH水準住宅(等級5)の光熱費の差は、年間約4万6,000円。さらに、ZEH水準住宅(等級5)と太陽光発電などの再エネ設備をつけた省エネ住宅(等級5)との光熱費の差が約4万円となります。
つまり、「等級4」と「等級5(再エネあり)」では、年間約8万6,000円、20年で約172万円もの大きな差になります。
※「地域区分6(東京等)」の場合

実際のコストは、住宅の広さや設備、生活スタイルなどによっても変わりますが、断熱性能を上げ、再エネ設備を設置することで、家全体の快適性を向上させるとともに、光熱費を抑えることが可能になります。今後、電気代などのエネルギー価格が上昇すれば、そのメリットがさらに拡大することが見込まれます。
2-3. 断熱性能を上げることによる建築費の上昇
一方、断熱等級を上げるためには、断熱材や窓・サッシなどの性能を高める必要があるため、一般的に建築費も上昇します。具体的な金額は住宅メーカーの標準仕様などによって異なりますが、建材費で数十万円~数百万円の差が生じることもあります。また、採用する工法や建材によっては工期が延び、コスト増につながる場合もあります。
2-4. 間取りやデザイン上の制限
断熱等級6などの高性能住宅では、希望する間取りやデザインとの両立にも工夫が必要です。大きな窓や吹き抜けのある開放的な間取りで断熱性能を確保するには、屋根や壁の断熱性能をさらに高めたり、より高性能なトリプルガラスの窓などを採用したりする必要があります。また、夏の日差しを遮るために、窓の位置や大きさ、数、軒の出などに制限が出る可能性があり、外観のデザインにも影響する場合があります。
こうした追加費用は、光熱費の節約だけで回収できるとは限りませんので、メリットとコストのバランスを踏まえて検討しましょう。
3. これから家を買うなら何等級を選ぶ?
省エネ住宅のメリットはわかったものの、実際に何等級にするべきかは難しい問題です。ここでは、今後の住宅政策の方向性と、これから家を選ぶ際の省エネ性能の目安を解説します。
3-1. 2030年度までに、新築住宅の省エネ基準をZEH水準へ
まず、今後の住宅政策の流れについて確認しておきましょう。
2025年4月から、原則すべての新築住宅に省エネ基準(等級4)への適合が義務付けられました。しかし、これはあくまで現在の最低ラインです。
国は遅くとも2030年度までに、新築住宅の省エネ基準を現在のZEH水準まで引き上げる方針を示しています。ZEH水準では、断熱等級5以上、一次エネルギー消費量等級6以上が求められます。つまり、新築住宅における断熱性能の最低ラインが、あと数年で等級4から5へ引き上げられる方向に進んでいるわけです。
3-2. 2027年度からZEH基準の引き上げ
さらに、ZEHそのものの基準も引き上げられます。2027年4月からは、現在のZEHより高性能な「GX ZEH」の運用が始まる予定です。GX ZEHでは、断熱等級6以上が求められます。また、一次エネルギー消費量の削減率(再エネ除く)は、従来の20%以上から35%以上へ引き上げられます。さらに戸建住宅では、蓄電池やHEMS(※)などを活用した高度エネルギーマネジメントも要件となります。
つまり国の政策は、断熱性能を等級4 → 等級5 → 等級6へと段階的に高めながら、「創エネ」「蓄エネ」を組み合わせ、住まいの「エネルギー自給率」を高める方向へと進んでいるのです。
※HEMS(Home Energy Management System)とは、家庭のエネルギー使用状況を「見える化」し、家電などの自動制御を通じて、エネルギーの効率的な利用を支援する仕組みです。
3-3. これから新築するなら等級5以上を目安に
こうした流れを踏まえると、これから新築住宅を購入・建築する方は、断熱等級5以上をひとつの目安にすることをおすすめします。
等級4は現在の基準を満たしていますが、2030年以降、等級5が新築住宅の標準となり、さらにGX ZEHの普及で等級6の住宅が増えていけば、近い将来に「ひと昔前の基準」になる可能性が高いと考えられます。 大切なのは、「今の最低基準を満たしているか」ではなく、「10年後、20年後にも十分な性能か」という視点です。コストと性能のバランスを重視するなら等級5、快適性や省エネ性、将来性まで重視するなら等級6が選択肢になります。一方、等級7まで必要かどうかは、地域や予算、暮らし方などによって判断が分かれるところです。
3-4. 「断熱+創エネ+蓄エネ」をセットで検討する
また前述の通り、政策の流れとしては単なる「断熱」から「住まい全体のエネルギー効率」へとシフトしています。つまり、断熱性能を高めてエネルギー消費量を「減らす」。太陽光発電で電気を「つくる」。そして、蓄電池にためて必要なときに「使う」という組み合わせが重要になります。

GX ZEHでは、断熱性能だけでなく、再生可能エネルギーや蓄電池、HEMSも要件となっています。これからの住宅は、「断熱+創エネ+蓄エネ」の組み合わせがスタンダードになっていくと考えておくとよいでしょう。
4. 省エネ性能の違いは、将来の負担や資産価値にも関わる
省エネ性能の違いは、住み始めてからの光熱費や快適性だけでなく、購入時の優遇や将来の資産価値にも影響する可能性があります。ここでは、具体的にどのような差が生まれるのか見ていきましょう。
4-1. 光熱費・暮らしやすさの差
断熱性能が高い住宅ほど、冷暖房に使うエネルギーを抑えやすく、家の中の温度差も小さくなり、1年を通じて快適で健康的な住まいが実現しやすくなります。さらに、太陽光発電や蓄電池を組み合わせれば、電気代などのエネルギーコストも抑えられます。こうした差は、20年、30年と住み続ければとても大きなものになります。
4-2. 補助金・税制・住宅ローンの差
前述の通り、国の住宅政策は、省エネ性能の高い住宅を優遇する方向に進んでいます。
例えば「みらいエコ住宅2026事業」では、新築住宅に対して、GX志向型住宅は110万円、長期優良住宅は75万円、ZEH水準住宅は35万円の補助金が交付されます(地域区分5~8の場合)。なお、GX志向型住宅はすべての世帯が対象ですが、長期優良住宅・ZEH水準住宅は子育て世帯または若者夫婦世帯が対象です。
また、住宅ローン減税でも、住宅性能が高いほど控除限度額が大きくなり、フラット35でも高性能な住宅は金利引き下げの対象となります。 このように、住宅性能の違いは、住宅を購入するときの補助金や、住み始めてからの負担にも大きな差を生む可能性があります。
4-3. 将来の資産価値の差
今後、省エネに関する基準が引き上げられ、高性能な住宅が増えていけば、省エネ性能そのものが住まい選びの重要な比較項目になっていくと考えられます。同じ立地や築年数の住宅でも、省エネ性能が高く、その性能を客観的に示せる住宅の方が選ばれやすくなるからです。一方、現在の最低基準で建てた住宅は、10年、20年後には性能面で見劣りし、売却価格や売れやすさに影響する可能性もあります。
つまり、省エネ性能は、住んでいる間の快適性や光熱費だけでなく、将来の資産価値にも影響する可能性があるのです。
住宅の断熱・省エネ性能は、設備や内装のように後から簡単に変更できるものではありません。断熱材や窓などの性能を高めようとすると、大掛かりな改修が必要になることもあります。だからこそ、家を建てる・購入する段階で、10年後、20年後まで見据えて考えることが大切です。建築士などプロのアドバイスも受けながら、自分たちに合った性能をしっかり選びましょう。
住宅情報館では、すべての注文住宅で「住宅性能評価書」を取得。GX志向型住宅、ZEH住宅、長期優良住宅などの高性能住宅にも対応しています。ご相談はお近くの店舗までお気軽にお問い合わせください。
執筆者プロフィール
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住宅・不動産ライター
四宮 雅樹(ビギニング株式会社)
不動産・建築業界で約11年の実務経験を積んだ後、不動産情報メディア運営会社で営業、事業開発、経営企画などに約13年間従事。
業界実務と不動産メディア運営の知見をもとに、住まい・不動産・注文住宅・リフォームなどの専門的なテーマを、読者にわかりやすく伝わるコラムとして執筆している。
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