すぐ買う?頭金を貯めて買う? 住宅購入のベストタイミングとは

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一生で一番高い買い物とも言われる住まいの購入。そのタイミングに悩んでいる方も多いのではないでしょうか?そこで最近の住宅購入者の傾向から、家を買うタイミングと判断基準などについて解説します。

目次

1、令和の住宅購入は「頭金なし」の「長期ローン」が主流に?

まず2021年に三井住友トラスト・資産のミライ研究所がおこなった調査結果から、最近の住まい購入の傾向について見ていきましょう。

1-1. 住宅購入の動機トップは「家賃がもったいない」

本調査によれば、住宅を購入した動機として最も多いのは「家賃を払うなら、自分のものになったほうがいい」が19.6%でトップでした。つまり何年払っても自分の資産にならない賃貸の家賃がもったいないと感じている方が非常に多いということです。

■住まいの購入動機

また、購入年齢は30~34歳が28.8%、35~39歳が22.0%と30代が中心となっていますが、この年代では結婚や子どもの誕生も大きな動機となっています。

■住まいの購入年齢

出典:「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(三井住友トラスト・資産のミライ研究所)

1-2. 20~30代では「頭金ゼロ~1割」の割合が60%超え

また同調査では、30代の住宅購入者の9割弱(88.2%)が住宅ローンを利用しており、頭金ゼロで購入する割合も全年代平均で約3割いることがわかります。さらに20~30歳代では「頭金ゼロ~1割程度」で購入する方が約6~7割いるという結果が出ています。

■物件購入価格に対する頭金の割合

出典:「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(三井住友トラスト・資産のミライ研究所)

1-3. 住宅ローンの借入期間と完済年齢

最後に住宅ローンの借入期間を見てみましょう。全世代平均では25年~30年が約4割と最も多くなっていますが、住宅購入の中心層である30代では4割超が35年以上で、長期ローンを組む人の割合が全世代平均の約2倍となっています。

■ローン設定時の返済期間

出典:「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(三井住友トラスト・資産のミライ研究所)

1-4. 住宅ローンの組み方が大きく変化している

これまで住宅ローンは「頭金2割以上」「借入期間は短く」するのがよいという風潮がありましたが、近年その傾向に変化が起こっています。つまり、「頭金を貯めるよりすぐ買いたい」「できるだけ長期で借りたい」というニーズが高まっているわけです。

今回のコラムでは、「すぐ買う」と「頭金を貯めて買う(待って買う)は、果たしてどちらがトクなのか?またそれぞれのメリット・デメリットなどについて解説していきたいと思います。

2、「すぐ買う」、「頭金を貯めて買う」どっちがトクなの?

上記の通り、多くの方が「もったいない」と感じている賃貸の家賃。頭金を貯めて買うケースとすぐ買うケース、どちらがトクになるのか検証してみましょう。

2-1. 家賃+ローンの「総住居費」をシミュレーション

それでは早速2つのケースをシミュレーションしてみましょう。AさんとBさんはともに35歳、現在の家賃は月12万円、物件価格4,000万円の住まいの購入を検討中です。購入にかかる諸経費(手数料や税金等)は自己資金から支払うものとします。

【シミュレーション条件】

Aさん:頭金ゼロですぐ購入

Bさん:5年間で800万円(2割)の頭金を貯めてから購入

※総住居費に諸経費は含まず ※千円未満四捨五入

上表の通り、すぐに買ったAさんよりも5年間頭金を貯めて買ったBさんの方が、総住居費が524万円も高くなってしまうことがわかります。この最も大きな要因は頭金を貯めている期間の家賃です。一方、住宅ローンの月々返済額は2万4,000円、総返済額は約1,000万円、Bさんの方が安くなりますので、利息負担という意味ではBさんが有利になります。

なお、このシミュレーションは金利が変わらないことを前提としていますが、もし5年後に金利が2.75%になったとすると、AさんとBさんの月々返済額がほぼイコールになります。つまり、やや極端な例ですが5年間で金利が1.45%上昇すると、頭金を貯めた効果は相殺されてしまうということです。低金利が当たり前となった昨今ですが、その発端となった2013年の大規模な金融緩和(いわゆるアベノミクス)前は2~3%台で推移していましたので、今後の政策よって金利が上昇していくことは十分にあり得ます。

2-2. 頭金を貯めるのと繰上げ返済はどっちがトクなの?

ここで繰り上げ返済した場合の比較も見ておきましょう。頭金ゼロで購入したAさんが、5年後に800万円を繰上げ返済したらどうなるでしょうか。

※「返済額軽減型」で繰上げ返済した場合 ※千円未満四捨五入

このように、5年後に800万円繰上げ返済すると、月々返済額はBさんより安い9万2,000円となり、総住居費も4,814万円に減少します。また、繰上げ返済後の月々返済額を変えない「期間短縮形」ならば、借入期間が約8年短縮され(62歳時に完済)、総返済額は4,660万円に圧縮されます。つまり、家賃を払いながら5年間で800万円の頭金を貯めるなら、すぐに購入し5年後に同額を繰上げ返済した方が、総住居費ははるかに安くなるわけです。

2-3. 「すぐ買う」、「頭金を貯めて買う」メリット・デメリット

このように総住居費という観点で見ると、頭金ゼロですぐ買う方が有利に見えます。それぞれのメリット・デメリットを整理しておきましょう。

まず「すぐ買う」最大のメリットは、家賃支出が抑えられることです。また早く買った分ローンの完済年齢が早くなるのも大きなメリットです。さらに、金利の低い時期に固定金利でローンを組めば将来の住居費を確定できる、住宅ローン減税などの税制優遇を活用できる、団体信用生命保険への加入により、万一のことがあっても家族に家を残せるというメリットもあります。

一方、頭金を貯めるメリットとしては、月々の返済額を安く抑えられる、ローン審査が通りやすくなる、フラット35では金利が低くなる等が挙げられます。

※団体信用生命保険とは:ローン返済中に債務者が死亡した場合に、保険金でローンを完済できる制度。ほとんどの住宅ローンで加入が義務づけられており、保険料は通常の生命保険よりも安く設定されている。

※フラット35の金利: 融資率9割以下:1.35% 、融資率9割超:1.61%(2022年2月の最頻金利)

このように、すぐ買うか、頭金を貯めてから買うかという選択にはそれぞれにメリット・デメリットがあり一概にどちらが正解とは言えません。しかし「いずれはマイホームを」と考えながら賃貸に住み続けている間に、思いのほか多額の家賃を払っていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

3、住宅購入を先送りしてしまうリスクとは

頭金を貯めるという目的があるかどうかに関わらず、いずれマイホームを持ちたいと思いながらきっかけがつかめず、何となく先送りしてしまっている方は多いようです。こうした先送りのリスクについても知っておきましょう。

3-1. 住宅ローン金利の上昇

下表の通り、金利上昇は住宅購入における大きなリスクになります。現在の金利は、変動で0.5%前後、全期間固定でも1.3%前後という史上まれに見る低金利が続いていますが、これ以上下がる余地はほとんどなく、どこかのタイミングで上昇に向かうと思われます。

2022年に入り欧米では利上げが続いており、日本においても2月に大手金融機関が住宅ローン金利(10年固定)を一斉に0.05~0.1ポイント程度引き上げました。現在のところ上げ幅は小さいものの今後の金利動向には注意が必要です。

■借入額4,000万円の場合の金利と返済額の関係

※元利均等35年返済(ボーナス払いなし) 千円未満四捨五入

3-2. 物件価格の上昇

また、不動産の価格は常に変動していますので、購入を迷っている間に値上がりしてしまうリスクもあります。2013年ごろから、低金利に支えられた都市圏の不動産価格は上昇が続いていましたが、2020年からコロナ禍による供給減少や資材価格の上昇により、さらに上昇傾向を強めています。

※出典:国土交通省

3-3. 団体信用生命保険に加入できなくなる

住宅ローンを組む際には、ほとんどの金融機関で団体信用生命保険(団信)への加入が条件となっています。つまり、健康状態に問題があって団信に加入できないと住宅ローン審査が通らないということになります。一般的に、年齢が高くなるほど健康上の問題が発生する確率も上がりますので、先延ばしすればするほどリスクは高まります。

なお、フラット35は団信の加入が任意となっていますが、万一ローン返済中に死亡したときの家族の負担を考えると、民間の生命保険に加入するなどの対処が必須になるでしょう。

3-4. 税制優遇の縮小

現在、国は住宅購入支援政策として税制優遇などを実施しています。その代表的なものが「住宅ローン減税」と「住宅取得資金贈与の特例」です。住宅ローン減税は、年末のローンの残高の0.7%(年35万円(最大)×13年間)をその年の所得税(住民税)から控除できる仕組みです。また住宅取得資金贈与の特例は、両親や祖父母から住宅購入のための資金援助を受けた場合に、最大1,000万円まで贈与税が非課税になるという特例です。

これらの優遇制度は年々縮小傾向にあり、住宅ローン減税は2024年以降の入居だと控除額が年31.5万円(最大)に縮小されることが決まっています。また贈与特例についても、年々限度額が縮小されており2024年以降の存続はまだ決まっていません。

現行の制度を最大限に活用するためには、2023年中の入居を目処に動いていく必要があります。

4、2022年は、住まい購入に動き出すにはよいタイミング

ここまで見てきたように、同じ物件を購入する場合でも、タイミングや経済情勢によって、その後の住居費が大きく変わってきます。また前述の通り、この先1~2年は金利・物件価格ともに上昇圧力がかかってくると思われます。

したがって「いずれマイホームを」と考えている方が、動き出すにはいいタイミングと言えます。最終的に購入するかどうかはともかく「どのエリアで買いたいのか」、「相場はどのくらいなのか」、「自分はいくらまで借りられるのか」など、具体的な情報収集を始めてみましょう。

住まいは大きな買い物ですので、慎重さが求められる反面、タイミングを逃すと賃貸に住み続けながら、ズルズルと家賃を払い続けてしまうことにもなりかねません。

不動産会社のスタッフなど専門家のアドバイスを受けながら、まずは動き出してみることをおすすめします。