住まいの資産価値とは?資産価値の下がりにくい家を買うためのポイント

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近年、住まいを購入する際に「資産価値」という言葉がよく聞かれます。しかし、そもそも資産価値とは何なのか、価値を高く保つにはどうすればよいはあまり理解が進んでいないようです。今回は住まいの資産価値が重視される理由や、購入時のポイントなどを解説します。

目次

1)なぜ住まいの資産価値が重視されるのか

各種アンケートなどでは、家を購入する理由として「持ち家は将来資産になる」という回答がよく聞かれますが本当なのでしょうか。

1-1. そもそも住まいの資産価値とは

ではそもそも住まいの資産価値とは何なのでしょうか?賃貸と持ち家の比較では、住宅ローンを完済した後に“自分のものになる”という意味で「資産」という言葉が使われることが多いようです。

住まいにどんな価値を求めるかは人それぞれですが、ここでは経済的な価値、言い換えれば「将来いくらで売れるか」を資産価値と定義して解説したいと思います。

1-2. 20年後に得になる「富動産」と、損になる「負動産」の違い

一例として、新築で購入した一戸建を20年後に売却するケースを考えてみましょう。

購入価格は4,000万円とし、売却価格が(A)4,000万円、(B)2,000万円、(C)1,000万円の3つのケースを想定してみます。(ここでは諸経費・税金・維持費等は考慮しません)

借入金額4,000万円、金利1.5%とすると、月々の返済額は約12万3,000円、20年間の返済総額は約2,940万円、この時点でのローン残債が約1,970万円になりますので、20年間の支出総額は、2,940万円+1,970万円=4,910万円になります。

一方、売却で得られるお金は収入になりますので、20年間の実質的な住宅コストは「支出総額-売却金額」で計算することができます。

■20年間の実質的な住宅コスト

(A)4,000万円で売却:4,910万円-4,000万円 =   910万円( 4万円/月)

(B)2,000万円で売却:4,910万円-2,000万円 = 2,910万円(12万円/月)

(C)1,000万円で売却:4,910万円-1,000万円 = 3,910万円(16万円/月)

このように、同じ4,000万円の物件を購入しても20年後にいくらで売れるかによって、実質的な住宅コストに大きな差が生じることになります。もし(A)のケースように、購入額と同額で売却できれば、実質的な住宅コストはローンの利息(910万円)だけで済むわけです。

さらに(A)のケースでは残ったローンを返済した後に約2,000万円が手元に残るのに対し、(B)のケースでは、売却金額とローン残債がほぼ同額のため手元にお金は残らず、(C)のケースでは返済のために手元から約1,000万円を補填しなければなりません。

この例で言えば、(A)のような物件は「富動産」、(C)のような物件は「負動産」と言えます。実際には、築20年の住宅が買った価格で売れることは少ないですが、資産価値を高く維持することがいかに重要かお分かりいただけると思います。

1-3. 将来の売却価格を決める要因とは?

上記の(A)~(C)、それぞれ売却価格に大きな差がありますが、この差はどこから生じるのでしょうか。不動産の価格を決める要因について知っておきましょう。

まず不動産には定価というものがありませんので、価格は需要と供給で決まることになります。つまり住宅の場合は、買いたい人が多く物件が少なければ価格は上がり、買いたい人が少なく物件が多ければ価格は下がります。これが価格決定の一番大きな要因です。

したがって、(A)のような「富動産」を手にするためには、将来にわたって買い手の絶えない人気のある物件を選び、長い間その価値を維持することが重要です。

では具体的に人気のある物件とは何なのか、価値を維持するにはどうしたらよいのかを見ていきましょう。

2)不動産の資産価値を決める基本的な要素とは

不動産の資産価値を決める基本的な要素について見ていきましょう。

2-1. 立地・利便性など、街とエリアの魅力

不動産の価値を決めるもっとも大きな要素は立地です。立地には沿線・駅などの交通アクセス、買い物などの利便性、治安や医療体制などさまざまな要因がありますが、それら全体を含めた「街の魅力」が地価に大きく影響します。

総じて言えば、都心へのアクセスがよいターミナル駅や特急停車駅は、商業施設なども多く人気が高いため人の流入が増え、人口が増えることによってさらに利便性が向上し、より多くの人を呼び込むことになります。その中でも駅近エリアは新築の供給が少ないため価格が下がりにくく、資産価値を維持しやすいと言えます。

2-2. 土地と建物の割合

不動産の価格は言うまでもなく「土地価格+建物価格」ですが、土地と建物では価格の下がり方に違いがあります。木造住宅の場合、一般的に建物価格は20~30年ほどでゼロに近づくと言われますが、土地価格がゼロになることはありません。

例えば、同じ4,000万円の一戸建で、【(A)土地2,500万円+建物1,500万円】と、【(B)土地1,000万円+建物3,000万円】の2つの物件があったとします。今後20年間で土地の価格は横ばい、建物の価格が90%下がるとすると、この2つの物件の価格はどうなるでしょうか。

(A)は土地2,500万円+建物150万円=2,650万円、(B)は土地1,000万円+建物300万円=1,300万円となり、資産価値に2倍以上の差が生じます。つまり、住宅は価格に占める土地の割合が高いほど資産価値を維持しやすい傾向があります。

2-3. 土地・建物の広さや間取り

住宅価格は需要と供給で決まると申し上げましたが、面積や間取りについてもいわゆる「売れ筋」があり、主な住宅購入層であるファミリー世帯では、土地が80~120㎡前後、間取りは3LDK~4LDKくらいが売れ筋となります。

例えば、1㎡20万円の土地が100㎡なら2,000万円、建物が2,000万円とすると計4,000万円となり、ファミリー世帯が購入するには手頃な価格となります。しかし、土地が200㎡になると土地だけで4,000万円、建物と合わせて6,000万円となり、購入できる人の数がぐっと減ってしまいます。

つまり、新築時はそれなりに需要のあった家でも、広すぎる中古物件は買い手の少なさから割安になることが多く、資産価値を維持しにくい傾向があります。

2-4. 管理・メンテナンス

そして資産価値を維持するために不可欠なのが、適切な管理・メンテナンスです。

マンションの場合には、管理組合による日々の管理と定期的な修繕が適切におこなわれているかどうか、一戸建の場合には、所有者自身が定期的にメンテナンスをおこなっているかどうかが重要です。マンションは管理費・修繕積立金が十分にストックされ、住民同士の合意形成がスムースにおこなわれていることも大事なポイントとなります。

2-5. 物件の希少性

最後に物件の希少性についても触れておきましょう。

例えば、めったに売りに出ない都心のヴィンテージマンションなどは、築50年を超える物件でもほとんど値下がりせず高値で取引されています。一方、同時期に大量供給されたいわゆるニュータウンなどでは、街の高齢化とともに空き家が目立つようになり、価格を下げても売れないという現象が起こっています。

つまり、供給が少ないエリアの良質な物件(=希少価値の高い物件)は、常に需要が供給を上回るので、築年数にかかわらず資産価値を維持しやすいと言えます。ターミナル駅直結のタワーマンションなどにも同じことが言えるでしょう。また、同じマンションでも最上階や角部屋など、希少性が高い住戸は値下がりしにくい傾向があります。

3)資産価値を維持する上で、今後重要になってくる要素とは

上記のような基本的な要素に加え、時代の変化とともに重要性が高まっているものについても知っておきましょう。

3-1. 水害、地震などの「災害リスク」

近年、温暖化などの影響もあり各地で災害が相次いでいます。中でもゲリラ豪雨や台風などによる水害については、2020年7月より、宅建業者による住宅購入者に対する説明が義務づけられました。こうした流れを受けて、住宅購入者の災害リスクへの関心は高まっており、水害のみならず地震や津波といった災害に強い地域かどうかが、将来の資産価値に影響する可能性があります。

3-2. 省エネ性、耐震性などの住宅の「基本性能」

世界的な脱炭素の流れや、エネルギー価格の高騰により、政府は住宅の省エネ強化を急速に推し進めています。また東日本大震災を機に、住宅の耐震性を重視する傾向も高まっていますので、今後こうした住宅の基本性能が資産価値に影響を与える可能性があります。

関連記事:ご存知ですか?住まいの「等級」。今、住宅性能が注目される理由とは

3-3. 子育て支援を中心とした「行政サービス」

先ごろ東京都が、所得制限を撤廃した独自の子育て支援を発表して話題になりましたが、こうした行政サービスは自治体によって大きな差があります。言い換えれば、少子化が進む中で、自治体による若者世帯の争奪戦が繰り広げられているわけです。

子育て支援の手厚い自治体の人気は今後ますます高まると思われ、住まいの資産価値にも影響を与える可能性があります。

3-4. 再開発や企業誘致など「街の将来性」を左右する政策

最後に、街の将来性にも注目しておきましょう。

少子化・高齢化が進む中で、今後発展する街と衰退する街がはっきり分かれつつあります。その要因となるのが、自治体が街に人を呼び込むための政策です。例えば新しい路線の乗り入れや新駅の開業、駅前の再開発や区画整理による宅地開発、新たな産業や企業の誘致など、自治体が人口や税収を増やすために積極的に取り組んでいるかどうかは、将来の資産価値を決める重要な要素になるでしょう。

4)資産価値の落ちにくい家を買うためのポイント

ここまでの前提を踏まえて、資産価値の落ちにくい住まいを買うためのポイントを解説します。

4-1. 街や自治体の情報を調べる

物件を探す際には価格や間取りなどに目がいきがちになりますが、街や自治体の情報もしっかり調べておきましょう。

人口・世帯数などの推移、住民の平均年齢や年齢構成、子育て支援などの行政サービス、自治体の財政状況などを一通り見ておくとよいと思います。また、都市計画や再開発の情報なども自治体のホームページで見ることができますので、確認しておくことをおすすめします。

4-2. 過去の価格推移・取引事例などを調べる

不動産価格についても確認しておきましょう。公示地価、基準地価などの公的な指標や過去の取引事例は、インターネットでもある程度調べることができます。さらに、ネットに出てこないピンポイントの情報は、不動産会社で直接聞いてみることをおすすめします。

(参考)土地総合情報システム(国土交通省)

4-3. 多くの人に受け入れられる間取りやデザインで建てる

まれに奇抜な間取り・デザインの住宅を目にすることがありますが、一般的なニーズからかけ離れた間取りやデザインは、買い手を減らし、資産価値を下げてしまうことにもなりかねません。注文住宅のメリットは、自分の好きな間取りやデザインでマイホームを建てられることですが、資産価値の観点から言うと、あまり個性を出し過ぎない方が無難と言えます。

4-4. 購入後も定期的に相場をチェック

また、住まいの購入時だけでなく、購入後も不動産情報サイトなどで定期的に相場をチェックしておくとよいと思います。マンションなら同じ棟の住戸、一戸建なら近隣の物件などを見て、その時点での資産価値を大まかに把握しておくと、将来の売却・住み替え時にきっと役立つはずです。

住まいの資産価値と購入時のチェックポイントご理解いただけたでしょうか。

住まいは購入するエリアや物件によって、資産にも負債にもなります。買ってから後悔しないよう、不動産会社のスタッフなど、プロのアドバイスを受けながら検討を進めていきましょう。