【2021年版】人口統計から見る「子育て世帯に人気の街」ランキング(関東・東北編)

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2021年1月に発表された「「住民基本台帳人口移動報告」によると、2020年はコロナの影響もあり全国的に人口移動が減少し、東京でも転出超過の月が見られるなど、大きな変化がありました。今回はこのデータをもとに、関東・東北エリアにおける子育て世帯の住み替え傾向について考察します。

 

 

目次

1、2020年の人口移動報告。首都圏への流入は続くも、東京への転入は大幅に縮小

 

1-1. そもそも人口移動報告とは?

人口移動報告とは、市区町村が管理する「住民基本台帳」に基づき,国内における人口移動の状況を明らかにしたもので、世代別の転入・転出、転入出前の居住地などが集計され毎月発表されています。

本コラムでは、2021年1月に発表された「住民基本台帳人口移動報告 令和2年(2020年)結果」をもとに、昨年1年間の首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)、北関東圏(群馬県・栃木県・茨城県)、東北圏(宮城県・福島県)の人口移動ついて考察します。

 

1-2. 東京都の転入超過は前年から50,000人以上の減少に

まず首都圏の全体傾向を見ていきましょう。都道府県別に見ると、東京への転入超過数は前年から50,000人以上減少しましたが、神奈川・埼玉はほぼ横ばい、千葉は逆に増加しており、東京を除けばコロナの影響はそれほど大きくないと言えそうです。

■首都圏の転入超過数(人)

2019年 2020年 前年比
東京都 82,982 31,125 -51,857
神奈川県 29,609 29,574 -35
埼玉県 26,654 24,271 -2,383
千葉県 9,538 14,273 4,735
148,783 99,243 -49,540

※転入超過数:転入者数から転出者数を引いたもの。転入者数より転出者数が多いときは「転出超過」となる。

※マイナスは転出超過を表す

 

続いて北関東圏を見てみましょう。北関東圏では転出超過数が前年の1/3程度に減少しており、人口流出に歯止めがかかっています。

■北関東圏の転入超過数(人)

2019年 2020年 前年比
群馬県 -2208 -323 1,885
栃木県 -5775 -1862 3,913
茨城県 -7495 -2744 4,751
-15,478 -4,929 10,549

 

東北圏も同様に、宮城県で転出超過数が大きく減っており、人口流出が抑えられています。コロナの影響により、首都圏への進学や就職などが困難となり、地元に留まる方が増えたのではないかと思われます。一方福島県では、ほぼ前年並みとなっています。

■東北圏の転入超過数(人)

2019年 2020年 前年比
宮城県 -1983 -241 1,742
福島県 -6785 -6681 104
-8,768 -6,922 1,846

 

1-3. 年少者の人口移動から子育て世帯が増えている街を探ってみた

このように、全体で見ればコロナにより人口移動そのものが減少し、東京への一極集中が抑制されたと見ることができます。しかし住宅購入という観点から見るとまた違った傾向も見られます。

今回は、年少者(0~14歳)の人口移動にスポットを当て、子育て世帯が増えている街とその要因を探ってみました。子育て世帯の転入が多い街は、不動産価格、子育て環境、利便性など何らかの魅力がある街だと考えられます。これから住まいを購入する方のエリア選び、物件探しの大きなヒントなるでしょう。

 

 

2、子育て世帯に人気の街ランキング(首都圏)

それではさっそく首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)のランキングを見ていきましょう。

 

2-1. 首都圏トップ3はすべて千葉県。年少者転入超過数ランキング

首都圏の市区町村別に、年少者の転入(転出)超過が多い街トップ10をランキングしました。

 

■首都圏 年少者(0~14歳)の転入超過数               (人)

トップ10 ワースト10
千葉県印西市 792 東京都江戸川区 -1,294
千葉県流山市 744 東京都大田区 -1,053
千葉県柏市 676 東京都港区 -980
東京都八王子市 604 川崎市中原区 -834
東京都町田市 581 東京都墨田区 -824
神奈川県藤沢市 483 東京都新宿区 -801
さいたま市緑区 469 東京都板橋区 -736
千葉県八千代市 454 東京都足立区 -638
横浜市青葉区 404 東京都台東区 -556
さいたま市岩槻区 389 川崎市高津区 -515

※出典:「住民基本台帳人口移動報告 令和2年結果(総務省)」 より作成

 

トップ3はすべて千葉県郊外で、トップ10には国道16号線に近い郊外エリアがずらりと並んでいます。一方、ワースト10は東京23区と川崎市で占められており、年少者人口の重心が都心部から郊外へと移っていることがわかります。なお、こうした傾向はコロナ前から見られるものですが、テレワークの普及などにより、その傾向が強まっていると見られます。

 

2-2. 首都圏トップ10エリアでは約7割が就園前に転居している

さらに、首都圏トップ10エリアの転入超過数を年齢別に見てみると、全体の68%が0~4歳、23%が5~9歳に集中していることがわかります。

 

■首都圏トップ10エリアの年齢割合(合計)

これは、恐らく子どもの転園・転校を避けたいという親の意向の現れで、一般的な住宅購入の時期とも重なります。あくまで推測にはなりますが、子どもの誕生によって部屋が手狭となり、住宅購入を検討する中で、保育園に入りやすく子育て環境もよい郊外の街を選ぶケースが多いからだと思われます。

 

2-3. 転入年齢はエリアによって異なる傾向が見られる

さらに、市区町村別に年齢の割合を見てみましょう。

各エリアとも0~4歳の割合が60~70%を占めますが、八王子市、藤沢市、横浜市青葉区、町田市などでは、5歳以上の割合がやや高くなっています。

 

■首都圏トップ10エリアの年齢割合と転入超過数(市区町村別)

 

2-4. 首都圏の転入超過数トップ10エリアの不動産価格

最後に首都圏トップ10エリアの不動産価格について見てみましょう。

 

■首都圏トップ10エリアの公示地価

公示地価(円) 変動率(%)
千葉県印西市 50,157 -0.50
千葉県流山市 154,141 0.08
千葉県柏市 161,128 -0.04
東京都八王子市 154,451 -0.73
東京都町田市 245,703 -0.66
神奈川県藤沢市 224,387 -0.62
さいたま市緑区 180,042 -0.51
千葉県八千代市 118,975 0.21
横浜市青葉区 314,072 0.07
さいたま市岩槻区 95,988 -1.27

※公示地価は2021年の平均公示地価(1㎡あたり)

 

トップ10エリアのほとんどが㎡あたり10~20万円台となっています。仮に100㎡(約30坪)の土地を購入すれば1,000~2,000万円台、建物を合わせて3,000~4,000万円台くらいの相場感となります。もし3,500万円を金利1.35 %(※)、35年ローンで返済したとすると、月々の返済額は約10万5,000円。都内の賃貸マンションとさほど変わらない支出で、しかも固定金利で広い一戸建を購入できると考えれば、魅力的に映るのもうなずけます。

また、2020年はコロナの影響で全国的に地価が下落しましたが、さいたま市岩槻区を除き変動幅は1%未満で、ほぼ横ばいとなっています。子育て世帯の流入の多い街は、地価下落の影響を受けにくい街とも言えそうです。

※フラット35(2021年5月)の最頻金利

 

 

3、子育て世帯に人気の街ランキング(北関東)

次に北関東圏(群馬・栃木・茨城)のランキングを見ていきましょう。

 

3-1. 北関東圏トップはつくば市。TX沿線の2市がダントツ

北関東圏の市区町村別に、年少者の転入(転出)が多い街トップ10をランキングしました。

 

■北関東 年少者(0~14歳)の転入超過数                (人)

トップ10 ワースト10
茨城県つくば市 693 栃木県宇都宮市 -248
茨城県守谷市 204 茨城県水戸市 -122
茨城県阿見町 143 茨城県神栖市 -104
茨城県那珂市 93 茨城県日立市 -73
栃木県小山市 79 茨城県ひたちなか市 -68
群馬県前橋市 75 群馬県高崎市 -64
茨城県取手市 66 群馬県大泉町 -47
茨城県境町 61 茨城県小美玉市 -45
群馬県安中市 60 茨城県結城市 -43
茨城県つくばみらい市 54 茨城県かすみがうら市 -40

※出典:「住民基本台帳人口移動報告 令和2年結果(総務省)」 より作成

 

北関東圏のトップはつくば市、2位は守谷市とTX(つくばエクスプレス)沿線の街が上位にランクインしました。北関東ではこの2市の転入超過数がダントツで多く、3位以下を引き離しています。

また、ワースト10には宇都宮市、水戸市、高崎市などの主要地方都市がランクインしています。これらの街は年少者の転入は少ないものの、20~30代では転入超過となっており、職場に近い住まいを求める単身者や2人暮らしの流入が多いと考えられます。

 

3-2. 北関東トップ10エリアでも約6割が就園前に転居している

北関東エリアでも、年少者の転入時期は0~4歳がもっとも多く62%となっています。小学校低学年にあたる5~9歳の割合が29%とやや多くなっていますが、首都圏と同様、小学校低学年までの転入が全体の9割を占めています。

 

■北関東圏トップ10エリアの年齢割合(合計)

 

3-3. 北関東のエリア別転居年齢は、首都圏よりもばらつきが大きい

北関東の年齢別・エリア別の転入超過数を見てみると、首都圏よりもエリアによるばらつきが大きいことがわかります。子育て支援が手厚いことで有名な茨城県堺町は、0~4歳の転入が90%を超えるのに対して、前橋市は0~4歳(60%)と5~9歳(51%)の割合がそれほど変わりません。「教育日本一」のスローガンを掲げるつくば市では、10~14歳の割合が高くなっています。「アクティブ・ラーニング」や「ICT(情報通信技術)活用」など独自の教育環境が評価されているのかも知れません。

 

■北関東トップ10エリアの年齢割合と転入超過数(市区町村別)

 

3-4. 北関東の転入超過数トップ10エリアの不動産価格

最後に北関東圏の転入超過数トップ10エリアの不動産価格について見てみましょう。

 

■北関東圏トップ10エリアの公示地価

公示地価(円) 変動率(%)
茨城県つくば市 68,473 -0.25
茨城県守谷市 90,205 0.34
茨城県阿見町 30,400 -0.36
茨城県那珂市 21,700 -0.44
栃木県小山市 41,478 -0.11
群馬県前橋市 56,745 -0.72
茨城県取手市 47,558 -0.95
茨城県境町 22,971 -0.27
群馬県安中市 25,275 -2.23
茨城県つくばみらい市 34,484 -0.69

※公示地価は2021年の平均公示地価(1㎡あたり)

 

トップ10エリアの地価は、すべて10万円未満となっています。1,000万円で100㎡~200㎡の土地が買えるのは非常に魅力的ではないでしょうか。最近話題になっている「二地域居住」の候補先としても検討できそうです。変動率も群馬県安中市を除き1%未満。2位の守谷市はコロナ禍においても上昇しています。

 

 

4、子育て世帯に人気の街ランキング(東北)

それでは最後に東北圏(宮城県・福島県)のランキングを見ていきましょう。

 

4-1. 東北圏はトップ・ワーストともに仙台市が上位に

東北圏の市区町村別に、年少者の転入(転出)が多い街トップ10をランキングしました。

 

■北関東 年少者(0~14歳)の転入超過数                (人)

トップ10 ワースト10
仙台市泉区 178 仙台市宮城野区 -431
宮城県名取市 154 仙台市若林区 -129
仙台市青葉区 126 福島県会津若松市 -86
仙台市太白区 115 宮城県大和町 -73
福島県伊達市 110 福島県いわき市 -72
宮城県富谷市 84 福島県浪江町 -68
宮城県塩竈市 81 福島県飯舘村 -36
福島県福島市 72 福島県富岡町 -35
宮城県利府町 70 宮城県大崎市 -33
福島県本宮市 61 福島県南相馬市 -26

※出典:「住民基本台帳人口移動報告 令和2年結果(総務省)」 より作成

 

東北圏の1位は仙台市泉区、2位は宮城県名取市がランクインしました。ともに仙台中心部からやや離れたベッドタウンで、交通・買物の便がよい閑静な住宅地で、ファミリー層に人気の街です。福島県トップの伊達市は、教育費や医療費の補助、子ども向けイベントの開催など子育て支援にとても力を入れている街です。

ワースト10上位の仙台市宮城野区、若林区は、仙台駅の東側から海につながるエリアです。

仙台市では、子どもの出生~幼少期は、泉区や青葉区のベッドタウンへの流入が多く、20代になると宮城野区、若林区への転入が多くなる傾向があります。あくまで推測になりますが、子育て世帯が住まいの購入とともにベッドタウンに移り、若い単身者や2人世帯は職場に近い宮城野区や若林区に居住する傾向があるのではないかと思われます。

 

4-2. 東北トップ10エリアでも6割が就園前に転居

東北エリアでも、年少者の転入時期は0~4歳が60%、小学校低学年までの転入が約9割となっています。

 

■東北圏トップ10エリアの年齢割合(合計)

 

4-3. 東北圏のエリア別転居年齢。仙台市泉区は4歳未満が98%

東北圏の年齢別・エリア別の転入超過数は以下の通りです。北関東圏よりもさらにエリアによるばらつきが大きく、仙台市泉区では0~4歳の割合がなんと98%。5~9歳はマイナスになっています。逆に福島市は5歳以上の割合が高く、4歳以下はマイナスとなっています。

都市圏では共働き夫婦が多く、早い時期から保育事情のよいエリアへの転居を検討しはじめることが背景にあるのかも知れません。

 

■東北トップ10エリアの年齢割合と転入超過数(市区町村別)

 

4-4. 東北圏の転入超過数トップ10エリアの不動産価格

最後に東北圏の転入超過数トップ10エリアの不動産価格について見てみましょう。

 

■東北圏トップ10エリアの公示地価

公示地価(円) 変動率(%)
仙台市泉区 94,365 2.09
宮城県名取市 60,595 2.16
仙台市青葉区 450,500 2.77
仙台市太白区 93,835 2.09
福島県伊達市 26,438 0.21
宮城県富谷市 49,758 2.91
宮城県塩竈市 37,338 -0.87
福島県福島市 56,323 0.46
宮城県利府町 41,470 0.96
福島県本宮市 21,856 0.07

※公示地価は2021年の平均公示地価(1㎡あたり)

 

トップ10エリアの地価は、仙台中心部の青葉区を除き、すべて10万円未満となっています。仙台市はコロナ禍においても地価上昇が続いており、周辺のベッドタウンの地価も上昇しています。

 

 

5、子育て世帯の住み替え傾向とコロナ後の不動産価格

ここまで見てきたデータをもとに、関東・東北圏における子育て世帯の住み替え傾向についてまとめてみました。

 

5-1. 子育て世帯の住み替えは、出生から小学校低学年までが約9割

まず、住み替えの時期は、出生から就園前の0~4歳が最も多く、全体の6~7割。また、小学校低学年(9歳)までを合わせると、全体の約9割を占めます。

これは前述の通り、できるだけ転園や転校を避けたいという意向が反映されていると思われます。逆に小学校高学年以降の住み替えは、特定の学校(私立校等)への進学などによるものも多いと思われます。子育て世帯の住み替えは、子どもの進学などに影響することが多いので、早いうちから教育方針などについて話し合い、住み替え時期を検討しておくとよいでしょう。

 

5-2. 転入先は、子育て環境のよい郊外のベッドタウンが人気

転入者の多いエリアは、いわゆるベッドタウンとよばれる郊外エリアが多く見られます。これは、通勤などの利便性を重視しつつも、保育園の入りやすさや自然環境など、子育て世帯のニーズに合ったエリア選びが背景にあると思われます。特に子育て支援に力をいれている自治体は人気が高く、若い世代の流入が増える傾向にあります。

また郊外エリアが選ばれる大きな要因は『価格』です。地域によっては都心部の1/2~2/3くらいで購入できるエリアもありますので、教育費などにお金のかかる子育て世帯には大きな魅力だと思います。

 

5-3. コロナ禍が落ち着けば、人気エリアは値上がりの可能性も

2020年はコロナの影響もあり、都市部で数年間続いた価格上昇にも一服感が出てきました。しかし一方でワクチン接種も進みつつあり、海外では経済活動を正常化させる動きも出てきています。今年~来年以降、日本でもコロナが終息に向かうとすれば、経済回復にともなって、不動産価格は再び上昇に向かう可能性が高いと思います。特に、テレワーク普及や生活様式の変化により、郊外の一戸建はニーズが高まっていますので、価格の動きに注意しておきましょう。

 

これから住宅購入を検討する方は、コロナ後の不動産市況と、入園・入学のタイミングを睨みながらの判断が必要になります。相場に詳しい不動産会社と相談しながら、早めに物件探しをスタートすることをおすすめします。