ウィズコロナ時代の家づくり。間取りと設備の最新キーワード11選

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ウィズコロナ時代の家づくり 間取りと設備の最新キーワード11選

1年半に及ぶコロナ感染の拡大により、私たちの暮らし方は大きく変化しました。テレワークの定着や感染予防の高まりの中で、住まいの「間取り」や「設備」はどう変化していくのでしょうか。ウィズコロナ時代の家づくりで注目される11のキーワードをご紹介します。

目次

1、コロナで私たちの暮らし方はどう変わったのか?

まず、コロナの感染拡大により私たちの生活はどのように変化したのかを簡単におさらいしておきましょう。

1-1. テレワークは普及から定着へ

新型コロナで最も大きな変化が起きたのは「働き方」ではないでしょうか。多くの企業がテレワークを導入しています。2021年5月の東京都の調査では、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は64.8%。4月の前回調査(56.6%)に比べて8.2ポイント上昇し、過去最高の数値となっています。コロナ対策として急速に広がったテレワークは、新しい働き方として定着しつつあります。

1-2. 買い物傾向の変化

新型コロナは私たちの買い物の傾向にも影響を与えています。人との接触を避けるため、できるだけ買い物に行く回数を減らし、食料品・日用品をまとめ買いする傾向がみられます。また、買い物の場所も自宅周辺のお店で済ませる傾向が強まり、ネット通販やフードデリバリーも当たり前のものになりつつあります。

1-3. 在宅時間の増加

こうしたテレワークや買い物の回数減少により在宅時間が伸びています。そこで、いわゆる「おうち時間」をいかに快適に楽しく過ごすかが注目されています。また、在宅により光熱費が上がったという家庭も多く、住まいの省エネなどにも関心が高まっています。

1-4. ウィルス対策・衛生意識の高まり

そして何よりも、家庭内にウィルスを持ち込まない、家庭内感染を防ぐための衛生意識の高まりが挙げられます。マスク、手洗いはもはや当たり前。ドアノブやスイッチなどの消毒・抗菌や、頻繁に換気をする方も増えています。

1-5. 新しい生活様式は定着するのか

こうした暮らし方の変化、いわゆる「ニューノーマル」は今後定着するのでしょうか。本記事の執筆時点では、ワクチン接種などにより感染者数は収束に向かいつつも、重症者数はまだ高止まりが続いています。今後、仮にコロナが収束したとしても、リバウンドの懸念や、別の感染症の発生などは否定しきれず、コロナ前の生活に完全に戻るのは難しいように思われます。今後は、コロナとの共生、いわゆるウィズコロナの時代に移行していく可能性が高いでしょう。

今回はそうしたウィズコロナ時代に合った住まいについて、「間取り」や「住宅設備」を中心に、主要なキーワードとともに解説していきます。

2、ウィズコロナ時代の家づくり。「間取り」に関する5つのキーワード

それでは早速、ウィズコロナ時代の「間取り」について5つのキーワードを解説します。

2-1. 家族を感染から守る『ゾーニング』

住まいの間取りを考える上で、まず検討するのが「ゾーニング」です。ゾーニングとは室内空間をどう区分するか、またその配置や動線を指します。例えば、食事をするゾーン、家族が集まりくつろぐゾーン、仕事をするゾーン、寝室などのプライベートゾーンなどに分けられます。ウィズコロナ時代においては、衛生的な観点から、ウィルスを持ち込む可能性のあるゾーンと、そうでないゾーンを区分し、できるだけ交差しないように設計することが大切です。例えば玄関から直行できる洗面所・浴室や、リビングを通らずに2階に上がれる階段などを設け、リビングやキッチンへの動線と交差しないようにする等が挙げられます。また、万が一、家族が感染した場合には、他の家族との生活空間を分けるため、個室から直接トイレや浴室にアクセスできる動線などを考慮しておくとよいでしょう。

ゾーニング イメージ

※間取イメージ

2-2. 室内にウィルスを持ち込まない『玄関除菌』

ゾーニングに関連して、生活空間にウィルスを持ち込まないために「玄関除菌」が重要視されています。玄関の近くに洗面所や浴室などの水廻りを配置し、手洗いやシャワーをしてから生活空間に入れるようにする。また、水廻りが配置できないときは、玄関横に独立型の小型洗面台を設置したり、玄関の外に手洗い用の水栓を設置したりする方法もあります。また、玄関から洗面所に入る扉を、開放しやすくドアノブ等への接触も避けられる「引き戸」にする等、ドアや建具の選択にも工夫がされるようになってきました。

2-3. 家族全員の靴や上着を収納できる『ファミリークローゼット』

玄関除菌を考える上で、「ファミリークローゼット」を設けるのも有効です。日本では上着やバッグなどを室内に持ち込むことが多いですが、ゾーニングの観点から言うと、ウィルス等が付着している可能性がある靴や上着は生活空間に持ち込まない方が衛生的です。

玄関横に家族全員の靴や上着、バッグなどを収納できるクローゼットを設け、洗面所に直行できる動線とすればより好ましいでしょう。

玄関手洗い・ファミリークローゼットイメージ

※玄関手洗い・ファミリークローゼットイメージ

2-4. 食料や日用品のストックに便利な『パントリー』

「パントリー」とは、食料品や日用品をストックしておく備蓄庫のことです。コロナ禍でまとめ買いが増えたことにより、より広いスペースが求められるようになりました。

パントリーを上手に活用するコツは、できるだけ玄関や勝手口の近くで、収納しやすい位置に設置すること、またキッチンから出し入れしやすい設計にすることです。

何を入れるかにもよりますが、クローゼット型のパントリーなら0.5~1畳分のスペースで作れます。ウォークイン(ウォークスルー)型なら2畳分くらいの広さがあると、ペットボトルやお米などのかさばる食品も余裕をもって収納できると思います。

パントリーイメージ

※パントリーイメージ

2-5. テレワークやオンライン飲み会もできる多目的な『ワークスペース』

コロナ禍の家づくりで最もニーズが高まったのが「ワークスペース」です。日常的にテレワークをしている方はもちろん、学校が休校になった子どもの学習スペースや、時にはオンライン飲み会などもできる多目的なワークスペースがあると便利です。3畳くらいの個室が確保できるとよいのですが、リビングやウォークインクローゼットの一角にカウンター等を設けてワークスペースとして使うことも可能です。

カウンターを使ったワークスペースイメージ

※カウンターを使ったワークスペースイメージ

空間を壁で仕切らず、自由度の高い設計にするには、可動式の間仕切りや棚などを使うのも一案でしょう。ワークスペースにはコンセントやLAN配線、場合によっては防音対策なども必要になるので、設計時にしっかり検討しておく必要があります。

2-6. 家の中でもリフレッシュできる『中庭・テラス』

テレワークなどで在宅時間が増えると、知らず知らずにストレスが溜まりがちになります。そこで、外出しなくても気軽に気分転換できる中庭やテラス、ルーフバルコニーなどを設けてみてはいかがでしょうか。テーブルやイスを置けば、ちょっとしたアウトドア気分でリフレッシュすることができます。

ウッドデッキの屋外テラスイメージ

※ウッドデッキの屋外テラスイメージ

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3、ウィズコロナ時代に取り入れたい。住宅設備の6つのキーワード

次に住宅設備に関するキーワードを見ていきましょう。

3-1. 快適な温度を保って換気できる『熱交換型換気システム』

感染対策として推奨されているのが「換気」です。1時間に2回程度の換気が有効とされていますが、エアコンでせっかく冷えた(温まった)部屋を換気することに抵抗を感じる方も多いようです。そこで検討したいのが「熱交換型換気システム」。これは熱交換という仕組みを使い、室内の温度や湿度を保ちながら、強制的に室内の汚れた空気と外のきれいな空気を入れ替えることができる換気システムです。しっかりと換気できるだけでなく、冷暖房の効率も上がり省エネにも貢献します。

熱交換機能システムの概要図

※熱交換機能システムの概要図

3-2. インテリアにも換気にも有効な『室内窓』

換気に関連してもうひとつ検討したいのが室内窓です。窓を開けておこなう自然換気では、室内に風の通り道を作ることが大事ですが、外部と接していない中部屋などでは、風が抜けにくく、空気や湿気が溜まりやすくなります。換気扇で強制換気することもできますが、間仕切り壁に室内窓を設けることにより、通風や採光も確保でき、インテリアとしてもおしゃれな印象になります。

室内窓イメージ

※室内窓イメージ

3-3. 不在時でも荷物を受け取れる『宅配ボックス』

コロナ禍で通販の利用が増え、非接触ニーズが高まったことにより「宅配ボックス」の需要が高まっています。不在時の受け取りはもちろん、置き配でも濡れたり盗まれたりする心配がないので安心です。後からでも設置できますが、設計時に宅配ボックス専用のスペースを作ったり、郵便ポストと一体化したデザインのものを選んだりすれば、よりスマートな設置が可能となります。

宅配ボックスイメージ

※宅配ボックスイメージ

3-4. 手で触れずに操作できる『タッチレス機器』

コロナの家庭内感染の経路として、スイッチやドアノブ、水栓などへの接触が挙げられます。帰宅時に手を洗わずに電気をつけたり、手を洗う際に蛇口に触れたりするので感染経路になりやすいのです。そこで検討したいのが「タッチレス機器」です。タッチレス機器とはセンサーを使って機器をON-OFFできる設備で、水栓、スイッチ、ライト、ドアなどに使われています。例えば、手をかざすだけで水が出る水栓や、人が近づくと点灯するライト、音声でコントロールできる機器も普及し始めています。こうした機器を使えば、モノを介した感染を最小限に抑えることができます。

タッチレス水栓イメージ

※タッチレス水栓イメージ

3-5. 『抗菌・抗ウィルス建材』

コロナ禍以降、建材の分野でも抗菌・抗ウィルス製品の開発が進んでいます。フローリング、壁、ドアノブ、手すりなど接触が多い箇所に、抗菌・抗ウィルス性の高い建材を使用することによって、コロナのみならずインフルエンザや風邪などの予防になると言われています。もちろんこうした建材を用いても感染を完全に防げるわけではありませんが、小さなお子さまや年配者のいる家庭では、導入を検討されてもよいと思います。

抗菌壁材イメージ

※抗菌壁材イメージ

4、ニューノーマルな間取りと設備。導入のメリットとデメリットとは

このようなウィズコロナ時代に合った間取りや設備、いわゆるニューノーマルな住まいにはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

4-1. ニューノーマルな住まいは平時にも多くのメリットがある

ニューノーマルな間取りや設備はコロナの感染拡大をきっかけに関心が高まっていますが、平時においても様々なメリットがあります。

例えば、感染を防ぐための「ゾーニング」や「玄関除菌」はインフルエンザや花粉症などに対しても有効ですし、パントリーは災害時の備蓄庫としても役に立ちます。また、タッチレス水栓は、肉や魚を触った手で水栓に触れることなく手を洗えるので、食中毒などの予防になります。さらにワークスペースは奥様の家事スペースや家族のライブラリー空間としても活用できるでしょう。

このように、ニューノーマルな住まいはコロナ対策に限らず様々なメリットがあるので、社会全体の変化とともに定着していく可能性が高いと思われます。

4-2. デメリットはコストとプランの自由度

一方デメリットとしては、高機能な設備を導入することによるコスト増と、プランの自由度が下がることが挙げられます。

コストについては、予算に合わせて優先順位をつけていくことである程度解決できると思います。優先順位を検討する上では、「後から変えにくいものを優先する」のがコツです。例えば建物完成後に、ゾーニングや間取りを変えるのは難しいですが、水栓や宅配ボックスは比較的簡単に設置できます。

またゾーニングや間取りにこだわり過ぎると間取りの自由度が下がることになります。土地の形状や向きによっては、玄関近くに洗面所を配置しにくいこともありますし、ファミリークローゼットやパントリーを作ることによって生活スペースが狭くなってしまうこともあるでしょう。家族の要望とのバランスを取りながらプランニングを進めて行きましょう。

コロナ禍により、働き方や生活様式が変わり、住まいに求められる機能も大きく変化しています。それにともない住宅設備も日々進化していますので、プロの設計士などと相談しながら検討していくことをおすすめします。

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