2021年は「住宅ローン減税」フル活用の最後のチャンス!契約期限は11月末に迫る

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住宅購入に大きなメリットのある「住宅ローン減税」。分譲住宅・マンションを購入する方は、契約期限である11月30日が迫ってきました。支援制度を利用して、賢く住宅を購入を行うために、今一度、住宅ローン減税についてしっかりおさらいしておきましょう。

※2022年の情報については2022年の住まいの建築・購入・リフォームに使える補助金(助成金)と優遇制度について の記事をご覧ください。

目次

1、2021年の住宅ローン減税の概要

まず、住宅ローン減税がどのような制度なのか、またなぜ2021年が「最後のチャンス」と言われるのか、改めておさらいしておきましょう。

1-1. そもそも住宅ローン減税とは

住宅ローン減税は、住宅ローンを借入れて住宅を購入する際に、購入者の金利負担を軽減するための制度です。原則として、年末の住宅ローン残高の1%が、所得税(住民税)から控除され購入者に還付されます。控除期間は原則として10年ですが、消費税アップやコロナの影響もあり、様々な特例や緩和措置が取られたことで制度が複雑化しています。詳しく見ていきましょう。

1-2. 住宅ローン減税の控除額と控除年数

住宅ローン減税を正しく理解するための大きなポイントは「控除年数」と「最大控除額」です。控除年数とは住宅ローン減税が適用される期間のことです。また最大控除額とは、「1年あたりの控除上限額×控除年数」で、この制度を使ってトータルでどのくらい税金が還付されるかを表したものです。

特例や細かい条件は後述するとして、まずは原則を理解しておきましょう。購入する物件別に簡単なフローチャートにしてみました。

■住宅ローン減税の控除年数と最大控除額

フローチャートを確認する上で、不動産にかかる消費税について知っておきましょう。消費税がかかるのは、主に不動産会社が売主となる物件で、新築物件と中古の再販物件です。個人が売主となる中古物件に消費税はかかりません。また消費税が課税されるのは建物で、土地は誰が売主かに関わらず非課税です。

①新築または中古再販物件(消費税10%)

住宅ローン減税の控除年数と最大控除額 (新築または中古再販物件 ※消費税10%)

②中古物件(消費税が非課税)

住宅ローン減税の控除年数と最大控除額 (中古物件 ※消費税が非課税)

※認定住宅とは:長期優良住宅や低炭素住宅など性能が高いと認められた住宅を言います

※「未定」となっているのは2022年以降の住宅ローン減税の詳細が正式決定されていないためです。

③土地

土地は、現行制度においては購入後2年以内に住宅ローンを使って自宅を新築すれば、住宅ローン減税が受けられます。しかし、これから土地を購入しても、現実的に2021年12月末までの入居に間に合わないため、来年以降の住宅ローン減税の制度が決まるまで詳細は未定となります。

ここまで見てきた通り、住宅ローン減税の効果がもっとも大きくなるのは、消費税10%が適用される物件を、2021年11月30日までに契約し、2022年12月31日までに入居したケースで、最大480万円(認定住宅ならば最大600万円)もの控除が受けられます。

1-3. 住宅ローン減税の特例と2021年の制度改正

ここで控除期間について「あれ?」と思った方もいらっしゃると思います。前述の通り、控除期間は原則10年なのですが、新築(中古再販)のケースでは13年となっています。

これが、消費税アップにともなう特例措置で、契約期限(分譲住宅等は2021年11月30日まで)と入居期限(2022年12月31日まで)を満たす場合に限り、控除期間が13年に延長されています。

また、2021年の制度改正では、それまで床面積「50㎡以上」とされていた条件が、「40㎡以上」に緩和されました。これにより、条件を満たせば50㎡未満の物件も控除期間13年の対象となり、選択の幅が大きく広がりました。

1-4. 2021年は住宅ローン減税フル活用のラストチャンス

実はこの「控除期間13年の特例」、当初2020年で終了する予定でしたが、新型コロナの影響等を考慮し1年だけ延長されました。また2022年以降は、控除額が縮小される可能性が高いことから、今年は住宅ローン減税をフル活用できる最後の年と言われています。

次章以降で具体的な控除額や適用条件などを解説してきますので、しっかり理解した上で早めに検討を進めていきましょう。

2021年は住宅ローン減税フル活用のラストチャンス

2、住宅ローン減税で毎年の税金はどのくらい戻ってくるの?

まず、住宅ローン減税で毎年の税金が毎年どのように控除されるのか解説します。

2-1. 一般住宅の最大控除額(控除期間13年)

まず、現行制度を最大限に活用した場合の控除額を見てみましょう。

控除期間13年の場合には1~10年目までと11年目以降で控除額の計算が変わります。認定住宅ではない一般的な住宅における年間の控除額は以下の通りです。

年目 年間の控除額
1~10年目 年末の住宅ローン残高(上限4,000万円)×1%
11~13年目 以下のいずれか小さい額

・住宅ローン年末残高(上限4,000万円)の1%

・建物購入価格(上限4,000万円)の2%×1/3

つまり、1~10年目までは最大年40万円が控除され、延長された3年間で消費税増税された分の2%(8%から10%に増税された分)を控除するという考え方になっています。

■一般住宅(消費税10%)の最大控除額のイメージ

仮に1~10年目までの年末ローン残高が各年4,000万円以上あり、建物の価格が4,000万円以上だったとすると、毎年の控除イメージは以下のようになり、最大控除額は480万円になります。

一般住宅(消費税10%)の最大控除額

※1万円未満は四捨五入

■一般住宅(消費税10%)で、借入額4,000万円のイメージ

次にもう少し現実に近いシミュレーションをしてみましょう。仮に土地・建物それぞれ2,000万円、住宅ローン借入額4,000万円とした場合は以下のようになります。

ローンの返済により残高が減少するにつれ控除額も減少し、13年間の最大控除額は約382万円となります。

一般住宅の最大控除額(土地・建物それぞれ2,000万円、住宅ローン借入額4,000万円とした場合)

※青線は年末住宅ローン残高[万円](金利年0.525%・元利均等35年返済で試算)

※1万円未満は四捨五入

■一般住宅(消費税非課税)の中古物件で借入額2,000万円のイメージ

中古住宅(消費税がかからない物件)については、年末ローン残高の上限が2,000万円となり、3年延長の特例もありません。

仮に住宅ローン借入額2,000万円とした場合の控除イメージは以下のようになり、最大控除額は約170万円になります。

一般住宅(消費税非課税)の中古物件で借入額2,000万円の場合の控除額

※青線は年末住宅ローン残高[万円](金利年0.525%・元利均等35年返済で試算)

※1万円未満は四捨五入

なお、住宅ローン減税は税額控除ですから、実際の控除額は納付する所得税額が上限となります。ただし所得税から引ききれない分については、下記を上限として翌年納付する住民税から控除されます。つまり、年間40万円の控除を受けるには、それ以上の所得税(住民税)を納付していることが前提となります。

■住宅ローン減税で控除される住民税の上限(年)

消費税が10%の場合 136,500円
消費税がかからない場合 97,500円

2-2. 性能の高い住宅(認定住宅)は最大控除額が引き上げられる

最大控除額が引き上げられる「認定住宅」についても触れておきましょう。

住宅ローン減税における認定住宅とは、耐久性や省エネルギー性に優れた、性能の高い住宅を指します。具体的には、「認定長期優良住宅」と「低炭素住宅」が該当します。認定は都道府県、市(区)によって行われ、認定通知書の写し等を提出することにより、最大控除額が以下の通り引き上げられます。

■認定住宅の最大控除額の引き上げ

消費税 年目 一般住宅 認定住宅
10% 1~10年目 4,000万円×1% 5,000万円×1%
11~13年目 80万円 100万円
かからない 1~10年目 2,000万円×1% 3,000万円×1%

3、住宅ローン減税を受けるための条件とは

ここまで住宅ローン減税の「控除期間」と「最大控除額」を中心にご説明してきましたが、ここからは適用を受けるための条件について解説していきます。

3-1. 住宅ローン減税の対象となる物件

住宅ローン減税は、新築・中古どちらでも利用できますが、物件ごとに条件が定められています。

①すべての物件に共通する主な条件

・自分が居住するための住宅の購入であること(別荘や投資物件等は対象外)

・住宅を取得してから6ヶ月以内に居住を開始すること

・床面積の1/2以上が自身の居住スペースであること

・控除を受ける年の年末まで居住していること

・登記簿上の床面積が40㎡以上であること

※床面積に関する注意

マンションの「登記簿上の床面積」は、壁の内側で測った「内法面積」です。販売パンフレットなどでよく使われる「専有面積」は、壁の中心線で測った「壁芯面積」で、内法面積よりも広くなります。したがって、専有面積が40㎡以上でも登記簿上の面積は40㎡未満ということもあり得ますので購入時にしっかり確認しておきましょう。

②新築物件

新築物件については、マンションでも一戸建でも、上記の共通条件に該当すれば、ほぼ問題なく適用されます。

③中古物件

一方、中古物件の場合には、一定の耐震性を有していることが条件となり、下表のA、Bいずれかをクリアする必要があります。

■中古物件で住宅ローン減税を受けるための条件

A築年数 ・木造は20年以内

・耐火建築物(※)は25年以内

B現行の耐震基準に適合 (次の3つのうちいずれか)

・「耐震基準適合証明書」を取得

・「既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)」を取得

・既存住宅売買瑕疵保険への加入

※耐火建築物とは:鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造などの建物

※耐震基準適合証明書に関する注意

耐震基準適合証明書は、原則として物件の引渡し前に取得する必要があります。また取得にあたり改修や審査の費用がかかりますので、住宅ローン減税の控除額と比較してメリットがあるかどうかよく検討しましょう。

④土地

土地を住宅ローンで購入した場合、現行制度では、以下の条件に該当すれば住宅ローン減税を受けることができます

・土地の取得日から2年以内にその土地の上に、住宅ローンを使って住宅を新築すること

※土地の住宅ローン減税に関する注意

・建物を自己資金等で(住宅ローンを使わず)新築した場合には住宅ローン減税は受けられません。

・繰り上げ返済等で建物部分の住宅ローンを先に完済した場合、土地部分のローンが残っていても、住宅ローン減税は受けられません。

・先に土地をローンで購入し、建物が未完成のまま年末を迎えても、その年の住宅ローン減税は受けられません。あくまでも入居してから住宅ローン減税が適用されることになります。

3-2. 所得や借入条件

次に住宅ローン減税を受ける人の所得や取得方法、借入条件について見ていきましょう。

①所得金額や取得方法などについての条件

・控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下(ただし、床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)

・居住を始めた前後2年ずつを合わせた5年間に、住んでいる家を売却して、居住用の財産を譲渡した場合の特別控除などを受けていないこと

・同居する家族や親族、または特別な関係のある者などからの取得でないこと

・贈与による取得でないこと

②住宅ローン等の借入についての条件

・返済期間が10年以上残っていること

・銀行、住宅金融支援機構など一般的な住宅ローンであること(親族や友人・知人などからの借入は対象外)

・勤務先からの借入(社内融資)は、金利が0.2%以上であること

3-3. 住宅ローン減税を受けられなくなるケース

住宅ローン減税を途中で受けられなくなってしまう代表的なケースについても見ておきましょう。

・転勤などで家族全員が転居した場合

ただし単身赴任など、家族が居住し続ける場合には、継続して住宅ローン減税を受けることができます。また全員が転居する場合でも、転居前に税務署に届出をし、転勤先から戻り再び住み始めた際に一定の要件を満たせば、再適用を受けることができます。

・年間所得金額が3,000万円(1,000万円)を超えた場合

ただし、翌年再び条件に合致すれば控除を受けることができます。

・返済期間が10年未満となった場合

繰り上げ返済による返済期間短縮を計画している場合には、どちらが得になるかよく検討しましょう。

3-4. 夫婦で住宅ローン減税は受けられるのか

最近では共働き夫婦が増えたことにより、夫婦の収入を合算して住宅ローンを利用するケースが増えています。収入合算により、高額の物件も購入可能となり選択肢が広がるためです。収入合算の方法はいくつかありますが、夫と妻それぞれが住宅ローン減税を受けられるかどうかは下表の通りです。

■夫婦の収入合算の形態と住宅ローン減税

ローン形態 所有者名義 住宅ローン減税
【連帯保証】夫(妻)が主債務者、配偶者が連帯保証人になる 主債務者の単独所有 主債務者のみ
【連帯債務】夫と妻が1本の住宅ローン全額に対して債務者となる 出資額に応じた共有持分 夫と妻それぞれ適用可
【ペアローン】夫と妻がそれぞれ計2本の住宅ローンを組む 出資額に応じた共有持分 夫と妻それぞれ適用可

夫婦の収入合算による住宅ローンは、購入後に出産や育児などで収入が変動し、返済が困難になることもあり得ます。不動産会社のスタッフやFPなど、専門家のアドバイスを受けながら判断することをおすすめします。

4、住宅ローン減税を受けるための手続き

最後に、住宅ローン減税を受けるための手続きについて解説します。

住宅ローン減税を受けるためには、1年目のみ確定申告が必要になります。確定申告の期限は控除を受ける年の翌年3月15日です。必要書類などは前もって準備しておきましょう。2年目以降は勤務先の年末調整のみで手続きが完了します。

■確定申告に必要な書類

書類 新築 中古
土地・家屋の登記事項証明書(原本)
土地・家屋の請負契約書(写)または売買契約書(写)
住宅ローンの年末残高証明書
【築20年(または25年)超の中古住宅の場合】※いずれか

耐震基準適合証明書

建設住宅性能評価書(写)

既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約に係る付保証明書

【認定長期優良住宅の場合】

長期優良住宅建築等計画の認定通知書(写)

住宅用家屋証明書または認定長期優良住宅建築証明書

【低炭素住宅の場合】

低炭素建築物新築等計画認定通知書(写)

住宅用家屋証明書または認定低炭素住宅建築証明書

※○=必要 △=該当する場合は必要

※上記以外の書類が必要になることもあります。詳細は税務署等にご確認ください

5、2022年以降の見通し。控除額が縮小される可能性も

5-1. 住宅ローン減税は延長される可能性が高いが詳細は未定

本記事執筆時点で、2022年以降の住宅ローン減税について正式な決定はされていませんが、若年層の住宅取得を後押する制度であることや、コロナ禍で低迷する景気の下支えでもあることから、2022年も延長される可能性は高いでしょう。

しかし重要なのはその中身です。おそらく「13年控除の特例」は延長されず、1~10年目の控除額も縮小される可能性が高いと思われます。これは昨今、住宅ローン金利が1%を切るケースも多い中で、「ローン残高×1%」を毎年控除することに対し「優遇し過ぎではないか」という批判が少なくないためです。もし縮小されるとすれば、「[ローン残高×1%]

と[実際に支払った利息額]の低い方」を上限とする方向で議論が進むと思われます。

このように、住宅ローン減税が来年どうなるかは未定ですが、現在の手厚い制度をフル活用するためには、2021年11月30日までの契約が必須となります。住宅購入を検討されている方は、不動産会社への相談や物件探しなど、早めに行動を開始したほうがよさそうです。

5-2. 住宅ローン減税をフル活用するためのポイントまとめ

最後に今回の記事の要点をまとめておきます。

気になることやご質問がございましたら、お近くの住宅情報館までお気軽にご相談ください。

1. 2021年は住宅ローン減税をフル活用するラストチャンス

① 「13年控除の特例」を受けるには2021年11月30日までの契約が必須

②契約が11月30日以降になると、控除期間は10年に短縮される。

③②のケースで、入居が2022年1月1日以降になった場合、住宅ローン減税を受けられるかどうかは未定

④2022年、住宅ローン減税が延長されたとしても、控除額が縮小される可能性がある。

2. 住宅ローン減税による最大控除額と控除期間

①新築住宅等(消費税10%)は、最大4,000万円×1%×10年=400万円

②13年控除が適用されれば、延長された3年間で最大80万円

③中古物件等(消費税非課税)は、最大2,000万円×1%×10年=200万円

④性能の高い「認定住宅」なら①が500万円、②が最大100万円に増額される

3. 住宅ローン減税を受けるための条件・手続き

①自分が住むための自宅を購入後、6か月以内に入居し、年末まで住み続けること

②銀行などの一般的な住宅ローンで、返済期間10年以上

③年間の合計所得金額が3,000万円以下(床面積40㎡~50㎡の場合は1,000万円以下)

④1年目は確定申告が必要。2年目以降は年末調整で手続き

※本記事は、執筆時点での情報を元に記載しています。また、本記事に掲載されていない条件等もございますので、詳細は必ず税務署等にご確認ください。

2022年の情報については2022年の住まいの建築・購入・リフォームに使える補助金(助成金)と優遇制度について の記事をご覧ください。