中古物件の2つの買い方「買ってリノベ」と「リノベ済み」。気をつけたいポイントとは

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新築物件の価格上昇やコロナの影響により、近年中古物件の人気が高まっています。今回は中古物件の2つの買い方「買ってリノベ」と「リノベ済み」物件について解説します。それぞれのメリット・デメリット、購入時に気をつけたいポイントなどについて解説します。

目次

1. 新築物件の値上がりと新型コロナで中古物件の取引数が急上昇

最初に、ここ10年間の中古物件の取引傾向について見ていきましょう。

1-1. 中古物件の平均価格と成約件数の推移(首都圏)

まず首都圏の中古マンションの傾向です。下図のように、金融緩和が始まった2013年から価格はほぼ直線的に右肩上がりで2021年にさらに急角度で上昇しています。成約件数も年による増減はあるもののじわじわと増え続け、価格は10年で2,530万円→3,869万円(+53%)、件数は28,871件→39,812件(+38%)と大きく伸びています。

※出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向」より作成

また中古一戸建は2020年まで緩やかな上昇が続いていましたが、2021年に平均価格が3,110万円 → 3,451万円(+11%)、件数が13,348件→15,436件(+16%)と急激に伸び、10年間では、平均価格が2,967万円→3,451(+16%)、件数が10,569件 →15,436件(+46%)となっています。

※出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向」より作成

1-2. 中古人気の理由は新築価格の上昇とコロナ

このように中古物件の人気が高まっている理由は、新築価格の上昇と新型コロナの影響です。特に首都圏の新築マンション平均価格は2011年の4,557万円から2021年の6,360万円(+39.5%)と大幅な上昇となっています(不動産経済研究所調べ)。また供給が都心部やターミナル駅などに絞られたことで、郊外エリアでは取引の中心が中古物件に移りつつあります。さらに2020年、新型コロナの影響で新築一戸建の供給が減少したことで、中古一戸建の価格が急上昇しました。

1-3. 中古の取引は年々増加。コスパのよい中古をあえて選ぶ人も

このような背景もあり、流通量が豊富で割安な中古物件の人気は高まる一方です。また昨今、衣服や日用品でもリユース市場が拡大しており、住宅購入の中心である若年層で中古品に抵抗がなくなってきたこともその要因のひとつでしょう。以前は予算的に新築を買えない人が買うものという意識が強かった中古物件ですが、最近では、立地やコスパのよい中古を積極的に選ぶ方も増えています。今回のコラムでは中古物件を購入するメリットや、リノベーションを含めた買い方のポイントなどを解説します。

2. 中古物件のメリット・デメリットを改めておさらい

ここで改めて、中古物件のメリット・デメリットをおさらいしておきましょう。

2-1. 価格が安く、値下がりしにくい

中古物件の最大のメリットは新築と比べて価格が安いということです。エリアや築年数による違いはあるものの、先ほどの例で申し上げれば、首都圏マンションの平均価格は、新築が6,360万円、中古が3,869万円。実に40%も安いことになります。

また一般的に中古は新築よりも値下がりしにくいという特徴があります。不動産は築年数の経過とともに価格が下がっていきますが、新築時~築20年くらいまでの下げ幅が大きく、その後は緩やかになる傾向があります。住まいを資産と考えれば、値下がりしにくいのは大きなメリットと言えます。

2-2. エリアの選択肢が多く好立地

中古は新築と比べ流通している物件の量が圧倒的に多く、エリアの選択肢が多いというメリットがあります。特に開発が進んだ都市部では、駅近などの好立地に遊休地が少なく、新築はほとんど供給されません。一方、中古物件は駅近から郊外まで広範囲に流通しているため選択肢が多く好立地の物件も探しやすくなります。

2-3. 実物を確認してから購入できる

中古は実物を自分の目で確認できるのも大きなメリットです。新築は建物の完成前に販売されることが多いので、土地(もしくは建築中)の状態で購入を決めざるを得ません。

間取りや外観だけでなく、日当たりや周辺環境などを実際に見て確認できるのは新築にないメリットと言えるでしょう。

2-4. 購入から入居までの期間が短い

新築物件、特にマンションは建築期間が1~2年に及ぶものもあり、その間ずっと家賃を負担し続けなければなりません。一方、中古は契約から1~2ヶ月ほどで入居可能ですので、

無駄な家賃を払うこともなく、すぐに新生活をスタートすることができます。

2-5. 中古物件のデメリット

中古物件のデメリットについても触れておきましょう。中古物件を個人から購入する場合には仲介手数料など新築にはない費用がかかります。また多かれ少なかれ劣化や汚れがあれば、修繕費用がかかります。その他にも耐震性や省エネ性等が低い物件では、金利や税制優遇が受けられない(少ない)ケースもありますので、こうしたデメリットも加味しながら検討していく必要があります。

3. 中古物件の2つの買い方「買ってリノベ」と「リノベ済み物件」

中古物件は購入時にリフォーム・リノベーションされることが多いのですが、大きく2通りの方法があります。ひとつは購入してから自分でリノベーションする方法、もうひとつはリノベーション済みの物件を購入する方法です。

3-1. 中古マンションの約8割、中古一戸建の約7割がリフォームしている

中古物件には多かれ少なかれ経年による劣化が見られます。また、間取りや設備も自分の理想に100%マッチすることは少なく、多くは購入時に何らかのリフォーム・リノベーションがおこなわれます。

「2021年度 住宅市場動向調査」(国土交通省)によれば、中古住宅を購入する際、売主によるリフォームと買主によるリフォームを合わせると、マンションの78.9%、一戸建の69.3%でリフォームが実施されています。またこれを築年数別に見ると、築10年以内の物件が約3割、11年以上の物件では7割以上でリフォームされています。

出典:2021年住宅市場動向調査(国土交通省)

こうした傾向からも、中古住宅の購入とリフォーム・リノベーションは、いわばセットで考えるのが合理的なのですが、買ってから自分でリノベーションするか、リノベーション済みの物件を買うかでポイントは大きく変わってきます。それぞれのメリット・デメリット、具体的なポイントなどを見ていきましょう。

3-2. 「買ってリノベ」のメリット・デメリットと進め方のポイント

①メリット・デメリット

まず購入した物件を自分でリノベーションする「買ってリノベ」。このメリットは何と言っても自由度が高いことです。壁や柱といった構造体だけを残して、間取りや設備をすべて一新することもできますし、水回りだけを交換する、表層の壁紙や床材だけを貼り替えるなど、自分の好みと予算に合わせて自由にリノベーションできます。家族の要望をふんだんに取り入れたオーダーメイドの住まいは、新築以上に満足度の高いものになるでしょう。

一方デメリットとしては、購入後に工事がスタートするため入居までに時間がかかること、プランニングや打ち合わせに時間・労力がかかること、物件費用とリノベーション費用が別々になるため、資金計画(ローン)が複雑になることが挙げられます。

住まいに対するこだわりが強く、じっくり時間をかけて「住まいづくり」を楽しみたい人向けの選択肢と言えます。

関連記事:これからの住宅購入は中古が主流に?「中古+リフォーム」が増える背景と魅力とは

②「買ってリノベ」成功のポイントは「ワンストップ」の会社を選ぶこと

このように自由度が高い反面、ちょっと複雑で時間もかかる「買ってリノベ」を上手に進めるには、物件探しとリノベーションを一貫してサポートしてくれる「ワンストップ」サービスを手がける会社を選ぶことです。言い換えれば、「不動産」と「設計・建築」という2つの要素がうまく噛み合うことが成功のポイントとなります。これがうまくいかないと、購入後に、やりたかったリノベーションができないことが発覚したり、想定していなかった追加費用が発生したりというトラブルの原因となります。 物件探しの早い段階から建築士などリノベのプロに相談でき、プランや資金計画などを包括的にサポートしてくれる会社を選ぶことが重要です。

3-3. 「リノベ済み物件」メリット・デメリットと進め方のポイント

①メリット・デメリット

次に「リノベ済み物件」です。これは中古物件を一旦不動産会社が買い取り、リノベーションした上で販売する物件で「再販物件」とも呼ばれます。リノベ済み物件の多くはマンションですが、ほとんどが間取り、設備、内装をすべて一新したフルリノベーション物件で、室内だけを見れば新築とほとんど変わりません。

リノベ済み物件のメリットは価格が明確であることです。購入する時点で価格が決まっていますので資金計画が立てやすく、追加費用がほとんどないためローンの手続きもシンプルです。また多くの方に受け入れられる標準的な設備や内装で仕上げられているので、個性にはやや欠けるものの、普通に暮らす上ではまったく支障はありません。さらに不動産会社が売主の物件は、2年以上の保証がついているという安心感もあります。

その反面、細かい要望やこだわりを実現しにくいというデメリットがあります。どちらかと言えば、立地や間取り優先で、デザインなどへのこだわりが少なく、リーズナブルに安心感のある家を買いたい方向けの選択肢と言えます。

②「リノベ済み」物件は、見えない部分の性能をしっかり確認しよう

リノベ済み物件は、販売時点でリノベーションが完了していますので、目に見える部分は新築のようにきれいな状態です。しかし、目に見えない構造や配管などの部分がどこまで改修されているかは物件によってまちまちです。極端に言えば、壁内や床下などは古いまま、表層だけをリノベーションした物件も存在します。

したがって、契約前に「どのような改修がされたのか」を必ず確認しましょう。図面や写真なども見せてもらえると安心です。また、第三者による検査や、住宅性能評価など客観的な評価書の有無などを確認するのもひとつの方法です。(詳細は後述)

4. 失敗しない中古物件選びのチェックポイントとは

最後に、「買ってリノベ」「リノベ済み」どちらにも共通する、中古物件選びのポイントについて解説します。

4-1. 建物の基本性能と評価基準

マンション・一戸建ともに、耐震性・耐火性・断熱性など建物の基本性能は必ずチェックしておきたい項目です。正確な診断は建築士などプロでなければ難しいのですが、以下のような客観的な情報から一般の方でもある程度の判断は可能です。

①建物の築年月

日本の耐震基準は昭和56(1981)年6月に大きく改定されており、1981年5月31日以前に建築確認を取得した建物を「旧耐震」、以降に取得した建物を「新耐震」と区別しています。中古物件を選ぶ際には、まずこの築年月を確認し、できる限り「新耐震」基準に適合した建物を選ぶようにしましょう(完成日ではなく建築確認の取得日であることに注意)。

なお、旧耐震の建物でも新耐震と同等の耐震性があると認められた建物には「耐震基準適合証明書」という証明が付与されます。旧耐震の建物を検討する際は、この証明書の有無を確認しましょう。

②住宅性能評価書

住宅性能評価書とは「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」という法律に基づき、耐震性、耐火性、省エネ性、維持管理性など住宅の基本性能を評価した証明書です。国の委託機関による検査で、性能に応じた「等級」が付与される仕組みとなっており、非常に信頼性の高い評価となります。その中でも一定以上の等級を取得した「長期優良住宅」の認定を受けた建物は税制・金利など様々な面で優遇を受けられます。

③安心R住宅

安心R住宅とは、国が中古住宅の流通を促進するために運営する制度で、一定の性能を有する住宅に「安心R住宅」のマークを付与する仕組みです。具体的には、新耐震基準に適合していること、建築法令違反などがないこと、インスペクション(建物検査)により構造上の不具合や雨漏り等がないことが確認されている住宅になります。

④「フラット35」の利用可否

上記のような公的な証明書や認定は、信頼性が高い一方で、まだ広く普及しているとは言えず、全体から見ればごく一部の物件に留まっています。そこで目安になるのが「フラット35」の利用可否です。「フラット35」は耐震性、省エネ性などに独自の技術基準を設けており、それに適合した物件しか利用することができません。つまりフラット35を利用できる時点で一定以上の性能を有していると評価できます。

そして、すでにこの基準に適合していると確認された中古マンションが、住宅金融支援機構のサイトで公開されています。中古マンションをお探しの際は、ぜひ参考にしてみてください。

参考サイト:中古マンションらくらくフラット35

4-2. 中古マンションを選ぶ際のポイント

次にマンションを選ぶ際のポイントです。「マンションは管理を買え」と言われるように、専有部分だけでなく、マンション全体の管理状態やコンディションをしっかり確認することが重要です。

具体的には、共用部分の清掃やメンテナンスがしっかりされているか、定期的に大規模修繕がおこなわれているか、修繕積立金は十分にストックされているかなどです。いずれも不動産会社を通して管理組合に確認してみるとよいでしょう。

また管理規約で、リノベーションに使える建材や設備などが制限されている場合もありますので、「買ってリノベ」を計画している方は合わせて確認しておくことをおすすめします。

4-3. 中古一戸建を選ぶ際のポイント

中古一戸建を購入する際には、まず建物に法令違反がないことを確認しましょう。

具体的には、建築基準法で定められた「検査済証」が発行されていることが重要です。これは建築確認の手続きに従い完了検査を受け、法令違反等がなかったことの証明になりますが、古い物件では取得していないことも多くあります。その場合には、改めて検査を受けるなどの方法もありますが、手続きに時間がかかります。また、最終的に適法であることが証明できないと住宅ローンが通らない可能性もありますので、できる限り検査済証のある物件を選ぶようにしましょう。

また、基礎・外壁・屋根などの主要構造部に問題がないか、耐震性や断熱性は十分かなどを確認しましょう。前述の築年月や評価書などに加え、第三者の建物検査(ホームインスペクション)を利用するのもひとつの方法です。もし性能が十分でない場合には、改修方法や費用についても専門家のアドバイスを受けながら進めていくとよいと思います。

不動産価格の上昇とともに取引が増えている中古物件。エリアの選択肢も多く、リーズナブルにマイホームを購入するにはよい方法ですが、物件選びやリノベーションには中古ならではの難しさもあります。 住宅情報館では、物件探しから設計・施工、住宅ローンの手続きまで、専門のスタッフがワンストップでサポートします。ぜひお近くの住宅情報館までお気軽にご相談ください。