実際どうなの?家を買った人の物件選びやローン返済の実体像

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友人が家を買ったと聞くと「どんな家を買ったの?」、「ローン返済はいくらくらい?」などついつい聞きたくなってしまいますよね。そこで今回は、国の調査データから友人にはちょっと聞きにくい住宅購入者の「実際どうなの?」を調べてみました。実際に家を買った方々の年収や家族構成、物件選び、お金の事情などについて見ていきましょう。

目次

1)みんなどんな家を買ってるの?なかなか知れない購入者の実体

不動産価格の上昇で、購入を見送る人が多いと言われる昨今でも、年間100万件以上の住宅が取引されています。いったいどんな人が、どんな家を買っているのでしょう?

1-1. それでもみんな買っている。住宅の取引数は年間100万件以上

一般社団法人 不動産流通経営協会の推計によると、2021年の既存(中古)住宅流通量は年間約61万件。また、同年の新築住宅着工数は、注文住宅が約28.5万件、分譲住宅が24.4万件となっています。コロナ禍や不動産価格の上昇で購入意欲が下がっていると言われる昨今でも、新築・中古合わせて年間100万件以上の取引が行われていることになります。

最近、知人・友人から「家を買った」という話をよく聞くなあ、と感じている方も多いのではないでしょうか。

1-2. 親しき仲にも礼儀あり?なかなか聞けないお金の話

知人・友人が家を買ったと聞くと、購入の理由やきっかけ、広さや間取りなど色々聞きたくなるものですが、そこは“親しき中にも礼儀あり”。根掘り葉掘り聞くのはちょっと気が引けます。特に頭金や住宅ローンなど、一番気になるお金のことはちょっと聞きにくいという方が多いのではないでしょうか。

1-3. データから家を買った人の実体像を推測してみよう

そこで今回は、国土交通省が発表している「住宅市場動向調査(2022年)」から、実際に家を買った人の年収や家族構成、購入した物件、住宅ローンなどに関するデータを抽出し、購入者像を探ってみました。

注文住宅、新築分譲住宅(一戸建・マンション)、中古住宅(一戸建・マンション)それぞれに、どのような人が、どのような物件を、いくら位でかっているのか見ていきましょう。

※本記事のデータは「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」の三大都市圏のデータから作成しています。

(調査対象は2021 年4 月~2022 年3 月に住み替え・建て替え等をした世帯)

2)家を買った人の実体像【プロフィール編】

まずは、家を買った人のプロフィールから見ていきましょう。

※「一次取得者」:初めて住宅を購入する人

2-1. 世帯主の年齢、家族構成

住まいを購入した世帯主の平均年齢は、概ね30代後半~40代となっています。もっとも高いのは中古マンションで46.3歳、もっとも低いのは新築マンションで37.5歳です。40歳以下は新築マンションと新築一戸建(39.5歳)で、若い層には新築の人気が高いようです。

一般的に住宅ローンの完済年齢は80歳前後ですので、35年ローンを利用するためには45歳までに購入することが条件になります。

また、居住人数は新築一戸建がもっとも多く3.5人、中古マンションがもっとも少なく2.5人となっています。全体として一戸建よりもマンションの方が世帯人数は少なく、マンションは新築・中古とも2人居住が全体の約1/3を占めています。

2-2. 世帯年収

次に世帯年収です。世帯年収とは夫婦の年収を合算したもので、もっとも高いのは新築マンションの960万円、もっとも低いのは中古マンションの657万円となっています。

思ったより高いと思われるかもしれませんが、これを一次取得者(初めて家を買う人)だけに絞ってみると、平均よりも40~110万円ほど低くなります。これは一次取得者の方が、年齢が若いことが関係していると思われます。

また物件別に見てみると、新築マンションが飛び抜けて高く約960万円。一方、新築一戸建は750万円と同じ新築でも200万円以上の差があります。これは近年の新築マンション価格の高騰によるものと思われ、比較的買いやすい一戸建に比べ、新築マンションが「高値の花」になっていることがうかがえます。

2-3. 購入回数と住み替え前の住宅

最後に購入回数と住み替え前の住宅を見てみましょう。購入者全体の7割~8割が初めて家を買う方で、もっとも高いのは注文住宅の84.6%、もっとも低いのが新築マンションで72.9%となっています。全体としては、マンションよりも一戸建の方が一次取得者の割合が高く、持ち家からの買い替えが多いことがわかります。推測にはなりますが、2回目以降の住み替えには、子どもの独立などにともない一戸建からマンションへ住み替えるシニア世代などが含まれるからかも知れません。

また、住み替えにともない他の市区町村から移動した人の割合は、全体として40~50%台。つまり半数近くが比較的近いエリアで物件を選んでいますが、新築マンションは昨今の供給数の減少を反映して、5%ほど高くなっています。

3)家を買った人の実体像【物件編】

続いて、購入した物件の立地や広さなど、物件の実体像を見てみましょう。

3-1. 物件の立地

まず、購入した物件の立地について見てみましょう。購入前の公共交通機関までの距離は、1.1km~1.4kmとなっています。購入後は、注文住宅と新築一戸建で0.1kmほど遠くなり、新築マンションと中古マンションで0.2~0.3kmほど近くなっています。0.3kmは徒歩4分弱とわずかな差ではありますが、一戸建よりもマンションの方が駅近となる傾向があります。

また、通勤時間(片道)も購入前後であまり変わらず40分前後となっていますが、ここでもマンションは短縮、一戸建は伸びる傾向がみられます。

3-2. 物件の広さ

次に、購入前後の物件の広さ(延べ床面積)を見てみましょう。ここは一戸建とマンションではっきり差が出ており、一戸建が約20~40㎡広くなっているのに対して、新築マンションはほぼ変わらず、中古マンションは約10㎡狭くなっています。

前述のプロフィールや立地と合わせて見ると、小さな子どものいるファミリーが多く購入する注文住宅や新築一戸建は、より広さが重視される傾向があり、DINKS、シニアといった夫婦2人世帯の購入も多いマンションは、広さよりも駅距離などの立地を重視する方が多いのではないでしょうか。

3-3. 中古住宅の築年数とリフォーム

中古住宅の築年数は、一戸建が20.6年、マンションが24.9年と耐用年数の長いマンションの方がやや長くなっています。一戸建は築古の物件を買って建て替える方もいるので一概に言えませんが、イメージよりも古い物件も取引されているようです。

また売主によるリフォームは、一戸建が35.9%、マンションが52.2%、購入者によるリフォームは、一戸建が52.1%、マンションが37.2%となっています。マンションは不動産会社が買い取り、リフォームして再販するケースも多いので売主によるリフォーム率が高く、一戸建は現状のまま購入し、購入者がリフォームするケースが多いと考えられます。

なお、購入前後を含めて「リフォームなし」と回答した方が、築10年以内で約50%、築11~20年で約19%、築21年以上で約10%いることから、築浅の物件ではリフォームせずにそのまま住まわれる方も一定数おられるようです。

3-4. 住宅性能と省エネ設備

最後に近年注目されている住宅性能と省エネ設備について見てみましょう。長期優良住宅の認定を受けていると回答した方は、注文住宅がもっとも多く63.6%、新築一戸建で49.2%となっています。対して新築マンションは約37%、中古マンションと中古一戸建は10%台と大きな差になっています(※)。また、住まいの省エネ性を高める「二重サッシ」や「太陽光発電」も、注文住宅、新築一戸建の設置率が高くなっています。

鉄筋コンクリート造のマンションよりも、木造一戸建の方が、耐震性や耐久性に対する問題意識が高く、特に設計段階から施主が関わる注文住宅では、性能を重視する方が多いと推測されます。

※国土交通省の資料によると、2021年度の新設住宅着工戸数に対する長期優良住宅の割合は27.7%(全国)と発表されているので、本調査の結果が実体よりも高い可能性があります。

4)家を買った人の実体像【お金編】

それでは最後に、一番気になるお金編を見てみましょう。

※1:返済負担率=世帯年収に占める住宅ローン年間支払額の割合

※2:「非常にある」「少しある」と回答した人の合計

※3:「受けている・受ける予定」と回答した人の合計

4-1. 購入資金総額と自己資金

ず、住宅購入にかかる資金総額から見てみましょう。もっとも高いのは注文住宅の6,787万円、ついで新築マンションの5,279万円。もっとも低いのは中古マンションの2,941万円で、2倍以上の差となっています。この金額だけを見ると新築はなかなかハードルが高いと思われがちですが、一次取得者のみに絞ってみると、注文住宅は4,713万円、新築マンションは5,048万円まで下がります。

同様に自己資金(頭金)も、全体平均と一次取得者のみの場合では、注文住宅は2,365万円と941万円、新築一戸建で1,160万円と869万円と大きく差が開いています。これは、2回目の購入では、従前の住まいの「売却益」を頭金として購入する人が多いためで、これから住まいを購入する方は「一次取得者のみ」の方を参考にしていただくとよいと思います。

同様に自己資金(頭金)も、全体平均と一次取得者のみの場合では、注文住宅は2,365万円と941万円、新築一戸建で1,160万円と869万円と大きく差が開いています。これは、2回目の購入では、従前の住まいの「売却益」を頭金として購入する人が多いためで、これから住まいを購入する方は「一次取得者のみ」の方を参考にしていただくとよいと思います。

4-2. 住宅ローンの借入金額、返済額、金利タイプ

上のグラフの通り、一次取得者の借入金額は、注文住宅がもっとも多く3,772万円、中古マンションがもっとも少なく1,641万円となります。一方、自己資金が多いのはダントツで新築マンションの1,438万円。次は意外なことに資金総額の少ない中古マンションで1,302万円となっています。

また、返済期間が35年以上の割合は、注文住宅と新築一戸建で約7割なのに対し、中古物件では、45~50%となっており、借入金額が少ない分、返済期間も短くなる傾向があります。

結果として、住宅ローンの月々返済額は、注文住宅で15.3万円、中古マンションで8.4万円と約2倍の差となっています。また住宅ローンで変動金利を選ぶ方が、新築では80%以上、中古では74%以上となっており、昨今の低金利を反映して、固定金利を選ぶ方は少ないようです。

4-3. 住み替え前の家賃とローン返済額

前述の通り、一次取得者は住み替え前に賃貸に居住していた方が多いのですが、住み替え前の家賃と住替え後の返済額がどのくらい変わったのかを見てみましょう。

新築は一戸建・マンションともに、月々の支払いが大きく上がっているのに対し、中古物件ではほとんど変わっていないことがわかります。

一方、住宅ローン減税の適用率を見てみると、新築は80~90%、中古では60%台となっています。住宅ローン減税の減税幅は、中古より新築の方が大きく、住宅性能が高いほど有利なため、新築を購入した方はローンの支払いが増えた一方で、減税額も大きくなっていると推測されます。

4-4. 住宅ローンの負担率と負担感

最後に、住み替え後のローン負担について見てみましょう。

世帯年収に対する返済額の割合を表す「返済負担率」は、16~19%と物件による差はそれほどありません。しかし、どのくらい負担に感じるかという心情的な部分では、負担と感じる方が注文住宅と新築一戸建で約60%、それ以外は約50~55%と差がついています。これは年収に対する”負担率”よりも、実際に支払っている“額”が影響しているのではないかと思われます。

5)購入者の実例を参考にしながら、自分に合った物件探しを進めてみよう

住まいを購入した人の実像、いかがでしたでしょうか?

住まいの購入には、「自分はいくらくらいの物件が買えるのだろうか」、「住宅ローンの金利タイプや返済期間はどうすればいいの」など、様々な疑問や不安がつきまといます。この調査結果は、こうした疑問や不安をクリアし、住まいを購入された方々の「決断の集大成」とも言えるものです。これから住まいを購入される方は、こうしたデータも参考にしながら、ご自身のライフスタイルに合った住まい探しを進めていきましょう。 よりリアルな実例や、具体的な物件探しなどはお近くの住宅情報館までお気軽にご相談ください。