
建築費の上昇が続く中、コンパクト戸建への注目が高まっています。限られた面積でも快適に暮らすための間取りの工夫や後悔しないための注意点を解説します。
目次
1. 「小さな家」のニーズが高まる理由
建築費や土地価格の上昇を背景に、住宅の「コンパクト化」が進んでいます。しかし、面積が小さいことは必ずしもデメリットではありません。まずは、コンパクトな住まいが選ばれる理由と、そのメリットについて整理していきましょう。
1-1. 建築費の上昇で、住まいの「コンパクト化」が進む
近年、「小さな家」のニーズが高まっています。
明確な定義があるわけではありませんが、ファミリータイプの戸建は30坪(100㎡)前後が標準的な広さとされてきました。しかし近年では、20~25坪(66~83㎡)前後のコンパクトな住まいのニーズが高まっています。 大きな要因は建築費の上昇です。一般的に木造住宅の坪単価は60~70万円前後とされており、床面積が5坪小さくなれば、単純計算で建築費は300~350万円ほど安くなります。また、建物がコンパクトになると、必要な土地の面積も小さくなり、総コストを数百万~1,000万円程度削減できる場合もあります。
1-2. 建築コストだけにとどまらない小さな家のメリット
またコンパクトな家には、建築コストの削減以外にもさまざまなメリットがあります。
①生活動線が短く暮らしやすい
コンパクトな家は、廊下が少なく移動距離が短いので、家事がしやすく暮らしやすい家になります。また壁や床の面積が小さいので掃除がラクになるメリットもあります。
②光熱費が安くなる
コンパクトな住まいは、空間が小さく冷暖房効率が高いため、空調にかかる光熱費を削減することができます。
③メンテナンスコストを抑えられる
また、室内だけでなく外部(外壁、屋根など)の面積も小さいため、塗り替えなどのメンテナンス費用も低く抑えることができます。
④土地選びの選択肢が広がる
コンパクトな住まいは、床面積が小さい分、比較的狭い土地でも建築が可能となり、土地選びの選択肢が広がります。特に都心部など地価の高いエリアで家を建てる際には大きなメリットとなります。
⑤庭やアウトドアスペースを充実できる
建物をコンパクトにすることで、余った敷地を庭やアウトドアリビングなどに活用することができます。隣地との距離が確保しやすいので、日照や通風がよくなるのも大きなメリットです。
1-3. コンパクトでも満足度の高い家はつくれる
こうしたメリットがある一方、コンパクトな住まいは「狭くて暮らしにくいのではないか」という不安もつきまといます。しかし、一般的なファミリータイプのマンションが70㎡(約21坪)前後であることを踏まえると、20~25坪の戸建でも生活空間としては十分な広さといえます。
むしろ、注文住宅はマンションと違い、間取りを自由に設計できるので、工夫次第で満足度の高い家づくりが可能になります。
今回は、近年ニーズが高まっている「コンパクトな家」を建てるときの間取りの工夫について解説します。
2. 面積以上の価値を生む、検討したい間取りの工夫
コンパクトな住まいで満足度を高めるカギは「間取りの工夫」です。限られた面積でも、設計次第で広さ・使いやすさ・快適性は大きく変わります。ここでは、面積以上の価値を生む具体的なアイデアを紹介します。
2-1. 限られたスペースを有効活用する間取りの工夫
①廊下は最小限に
コンパクトな住まいを広く使うポイントは「廊下を少なくする」ことです。一般的に廊下の幅は約91cmなので、1.8mの廊下は約1畳分の面積に相当します。玄関ホールから直接リビングにつながる間取りや、2階の階段ホールから最小限の廊下で個室に入れる間取りなどを検討してみましょう。

出典:住宅情報館「間取り住まいプランサーチ」
②階段下を有効利用する
2階建ての住まいでは、階段下の活用も重要なポイントになります。階段下には意外に広いスペースがありますので、収納やパントリーはもちろん、多目的スペースやトイレなどにも使うことが可能です。またリビングに階段を設ける場合は、階段下の壁面を使って棚やテレビなどを設置することもできます。
■リビング階段下の多目的スペース

③キッチンはアイランドより壁付けで
最近はカウンター型やアイランド型のキッチンを選ぶ方が増えていますが、LDKのスペースを広く使いたい場合は、壁付けのキッチンがおすすめです。ダイニングテーブルとの動線が短くなる分、リビングを広くとることができます。
④小屋裏・床下を収納に活用
コンパクトな住まいでは、収納スペースが足りなくなることがよくあります。そこで、小屋裏や床下を収納スペースとして活用を検討してみましょう。
小屋裏収納は、あまり使わない季節用品や、場所をとるスーツケースなどを収納するのに便利です。また床下収納は、長期保存が可能な食材やホットプレート、大きな鍋などのかさばるキッチン用品の収納に適しています。
■小屋裏収納

⑤省スペースな壁面収納
また、収納スペースを確保する方法として壁面収納を検討してみましょう。リビングの壁面を使って「見せる収納」を設けてもよいですし、壁の厚みを利用した「ニッチ(飾り棚)」もおしゃれな雰囲気になります。玄関に壁面収納を設ければ、コートやカバンなどを部屋に持ち込まずに収納することもできます。
2-2. 空間を広く感じさせる間取りの工夫
コンパクト戸建は、比較的狭い土地にも建てられるのがメリットですが、周囲の状況によっては圧迫感を感じたり、リビングの日当たりが悪くなったりする可能性もあります。その場合は、リビングを2階に設置する方法が有効です。日当たりがよく視界の抜ける2階リビングは、面積以上に広く感じられる快適な空間になります。
①2階リビング
コンパクト戸建は、比較的狭い土地にも建てられるのがメリットですが、周囲の状況によっては圧迫感を感じたり、リビングの日当たりが悪くなったりする可能性もあります。その場合は、リビングを2階に設置する方法が有効です。日当たりがよく視界の抜ける2階リビングは、面積以上に広く感じられる快適な空間になります。

出典:住宅情報館「間取り住まいプランサーチ」
②勾配天井
2階リビングと合わせて検討したいのが、屋根の勾配に沿って天井を貼る「勾配天井」です。天井が高い分、広く開放感のある空間になります。また、天井が高くなったスペースにロフトを設置すれば、隠れ家感のある趣味スペースや収納としても活用することもできます。

③リビング階段・吹き抜け
1階にリビングを配置する場合には、リビング階段を検討してみましょう。リビングの一部に階段を設けることでスペースの節約になりますし、階段下を有効活用することもできます。また、階段の上を吹き抜けにすれば1階でも開放感のある空間をつくることができます。

④アウトドアリビング・屋上
アウトドアリビングとは、リビングの外に、床の高さを揃えたウッドデッキやテラスなどを設け、屋外空間をリビングの一部として活用する手法です。
視界の抜けがよいので広く感じるだけでなく、天気のよい日は外で食事をしたり、子どもの遊び場になったりと活用シーンの広いアイデアです。
また狭小地など、外部にスペースがない場合には、屋上をアウトドアリビングとして活用する方法もあります。ドッグランやガーデニングなど屋上ならではの使い方も可能です。

2-3. 動線と使いやすさを高める間取りの工夫
①キッチンと洗面室を直結する動線
キッチンと洗面室を隣に配置して行き来できるようにすると、料理をしながら洗濯や子どもの入浴サポートなどができるので、家事の効率がとてもよくなります。
■キッチン奥のランドリースペース

②洗面室、ランドリースペース、収納を1箇所に集約
洗面室(脱衣室)と、ランドリールーム、収納を同じ場所に集約することで、洗う・干す・たたむ・しまうという一連の作業を同じ場所で完結できるので、家の中を移動する回数が減り、家事の負担を大きく軽減できます。
③階段は家の中心部に配置
階段の位置はスペース効率や生活動線が大きく影響します。階段が家の端にあると、移動距離が長くなり、余分な廊下が必要になります。階段を家の中心部に配置すると、移動距離が短くなるだけでなく、外出時や帰宅時に家族が自然に顔を合わせる機会が増えるメリットもあります。
3. 「それいらないかも?」コンパクト戸建で省いてもいいもの候補
コンパクトな住まいでは「何を入れるか」だけでなく、「何をあえて省くか」も重要な視点です。使わない設備や過剰なスペースを見直すことで、より効率的で満足度の高い住まいを実現できます。
3-1. 使うかどうかわからないものは、思い切って省く
①バルコニー
バルコニーは主に洗濯物やふとんを干すために設置されますが、最近では室内にランドリールームを設置する方が増え、バルコニーを設置しないケースも増えています。バルコニーをなくせば、その分の面積をリビングなどに充てることができ、さらに防犯性の向上にもつながります。
②2階のトイレ
設置されることが多い一方で、意外と使用頻度が低いのが2階のトイレです。もちろんあれば便利なのですが、トイレは約1畳分のスペースが必要で、設備コストや掃除の手間もかかります。そのスペースを収納や居室の一部に転用するのもひとつの方法です。
③広すぎるお風呂
足を伸ばしてゆったりくつろげる広いお風呂は、注文住宅ならではのこだわりとも言えますが、広すぎるお風呂はむしろ使い勝手が悪く、掃除の手間もかかります。
3~4人家族であれば、標準的な「1坪タイプ」で機能的には十分なので、浴室をコンパクトにし、洗面室や収納を広げるといった検討をしてみてもよいかもしれません。
④ウォークインクローゼット
収納といえばウォークインクローゼットを思い浮かべる方も多いですが、収納内に通路スペースが必要になるので、面積効率はあまり高くありません。同じ面積であれば、壁面クローゼットを各室に配置した方が、収納量を確保できるケースもあります。
⑤子ども部屋(個室)
子ども部屋が必要かどうかは、人によって意見の分かれるポイントです。子どものプライバシーや学習環境という観点から見るとあったほうがよいとも言えますが、個室をメインで使うのは10~15年ほどで、それほど長い期間ではありません。
子どもが小さいうちは多目的スペースとして活用し、成長に合わせて間仕切りなどで仕切り、子どもが巣立った後は、再び書斎や趣味部屋として使うなど、可変性の高い設計にしておくのもひとつの方法です。
4. コンパクト住宅で後悔しないための注意点
コンパクトな住宅は工夫次第で快適になりますが、設計によってはストレスを感じやすくなるポイントもあります。ここでは、後悔しないために押さえておきたい注意点を解説します。
4-1. 音とニオイに配慮
リビング階段や吹き抜けなどは、広さや開放感のある空間をつくれる一方、音やニオイが伝わりやすくなるというデメリットもあります。
対策としては、キッチンの換気計画をしっかり行う、引き戸などで緩やかに区切れるようにする、トイレやお風呂とリビングの間には廊下を挟むなどの工夫をしましょう。
4-2. 断熱・耐震など基本性能には妥協しない
床面積を抑えたり、設備や仕様のグレードを下げたりしてコスト調整をするケースもありますが、住宅の基本性能は一定以上の水準を確保するようにしましょう。
特に「断熱(省エネ)性能」と「耐震性能」は、住み心地や安全性、光熱費などに直結するので「広さは削っても性能は削らない」という考え方が大切です。
4-3. 数値よりも住み心地と使い勝手を意識
間取りを検討する際には、「LDKは◯畳、収納は◯畳」というように「数値」に目が行きがちになりますが、実際の住み心地はそれだけでは決まりません。天井が高い家は、数値以上に広く感じられますし、明るさや視線の抜けといった要素も、体感や快適さに大きく影響します。
また、家事動線や掃除のしやすさなども、日々の暮らしやすさに直結しますので、数値よりも快適さや暮らしやすさという観点で間取りを考えることが重要です。
4-4. 多目的に使える可変性の高い空間
限られた面積の中で暮らしやすさを高めるためには、1つの空間に複数の役割を持たせる設計が有効です。例えば、リビングの一角に設けたスペースは、小さいうちは親の目が届く学習スペースとして活用し、子どもの成長とともに、家事スペースやワークスペースへと役割を変えることができます。役割を固定した個室をたくさんつくるよりも、家族の変化に応じて、使い方を変えられる空間を増やすことが大きなポイントとなります。
■寝室の横の多目的スペース

5. コンパクトで満足度の高い住まいを実現する2つのポイント
建築費の上昇が続く中で、コンパクトな住まいのニーズは今後も高まっていくと考えられます。しかし、限られた面積であっても、設計の工夫次第で満足度の高い住まいを実現することは十分可能です。ここでは、そのために押さえておきたい2つのポイントを解説します。
5-1. 建築費の上昇が続く中で、本当に必要なものを見極める
世界的なインフレや円安の影響により、資材価格や人件費は上昇しており、建築費は今後も高止まりが続くと見込まれます。こうした環境下で住まいづくりを進めるには、単に面積を削るのではなく、「何を優先し、何を削るか」を見極めることが重要です。家族にとって本当に必要な機能や空間に絞ることで、コストを抑えながらも満足度の高い住まいを実現できます。
5-2. 「足し算」ではなく「引き算」で考えられる住宅メーカーを選ぶ
コンパクトな住まいを建てる上では、住宅メーカーの選び方も重要なポイントです。
多くの住宅メーカーでは「標準仕様」が設定されており、その中には必ずしも必要でない設備や仕様が含まれている場合もあります。
一般的には、この標準仕様をベースに、必要なものを追加していく「足し算」方式でプランを組み立てますが、コンパクトな家づくりでは、不要なものを省いていく「引き算」の発想が重要になります。こうした考え方に対応できる、設計の自由度が高い住宅メーカーを選ぶことが、満足度の高い住まいづくりにつながります。 「自分たちにとって本当に必要な住まいとは何か」を考えながら、家づくりを進めてみてはいかがでしょうか。
住宅情報館の「totonoie(ととのいえ)」は、ZEH・耐震等級3など高い基本性能を備えており、不要なものを省いて欲しいものだけを組み合わせて建てられる、完全自由設計の注文住宅です。












