~2021年下半期の不動産市況まとめ~ 首都圏ではマンション・一戸建とも高値圏で推移。在庫は回復の兆しも

不動産売買_関連 市場/相場_関連 資金/ローン/税制_関連

依然として、コロナ禍によって先の見えない状況におかれている2021年後半の不動産市況。首都圏ではマンション・一戸建とも活況が続いており、前年から二桁上昇となったエリアも見られました。今回も前回(2021年前半の不動産市況のまとめ)に引き続き、成約数、価格、在庫などの最新データから大きな市況の流れを知り、購入判断に役立てていただければと思います。

 

 

目次

1、なぜ不動産市況を把握する必要があるのか

そもそも不動産の価格はどうやって決まるのでしょう?企業が売主となって販売する場合、土地や建物の仕入価格に、その土地の造成費、建築・リノベーション等の工事費、広告宣伝や販売促進の費用などを勘案して算出しますが、それ以外に非常に重要な要素となるのが「市況」です。

では、市況とはいったい何なのか?どのようにして決まっているのか?について解説します。

 

1-1. そもそも不動産市況とは?

前提として、不動産価格は「定価」というものがなく、その時々の需要と供給のバランスで売買価格が決まる仕組みになっています。また、不動産は1つとして同じものがないので、比較がしにくくいわゆる「相場」がつかみにくい商品です。

そうした価格の動きや相場をつかむためには、市場に流通している物件数(供給)や、実際に成約に至った物件数(需要)や価格等を数値的に把握していくことが重要です。こうしたデータを総合的に分析したものが不動産市況と言われるものです。

 

1-2. 不動産価格が変動する背景とマクロ指標

不動産価格は需要と供給のバランスで決まると申し上げましたが、その需要の背景にあるのが国内の経済状況です。簡単に言えば「景気がいい」時期には不動産の需要が高まり価格も上昇しますし、「景気が悪い」時期にはその逆となります。また、不動産の購入には住宅ローンなどの借入をともなうことが多いので、金利の動向は不動産価格に大きな影響を与えます。こうした株価や金利などの経済指標はマクロ指標とも呼ばれ、不動産価格に影響を与える重要なデータとなります。

 

1-3. 市況がわかると買い時がわかる?

常に変動する不動産市況を把握しておくことは、住宅購入検討者にとって非常に重要です。単に価格が安いか高いかではなく、今後どのように動いていくのか、自分にとって今は買うべきタイミングなのかどうかなどを俯瞰的に検討した上で購入判断できるからです。

本コラムでは、主に業界向けに公開されているデータを元に、一般の方にもできるだけわかりやすく不動産市況を解説していきます。

 

 

 

2、2021年下半期の首都圏「新築マンション」市況

それではまず、首都圏の新築マンション市況を見てみましょう。

■首都圏の新築マンション市況(2021年下半期)

※カッコ内は前年同月比 ※▲はマイナス

 

2-1. 首都圏新築マンションの発売戸数

首都圏の12月の新築マンション発売戸数は6,649戸で、前年同月比▲9.7%と減少したものの、6,000戸超えの高い水準となりました。地域別では、東京区部2,234戸→1,561戸(▲30.1%)、東京都下1,177戸→817戸(▲30.6%)、神奈川県1,360戸→1,410戸(+3.7%)、埼玉県1,126戸→1,478戸(+31.3%)、千葉県1,465戸→1,383戸(▲5.6%)となっており、東京都で大きく減少しています。

しかし東京の11月の発売戸数は1,387戸→2,529戸(+82.3%)と前年を大きく上回っています。12月はこの反動減があったものと推測され、背景には12月の住宅ローン減税改正をにらみ、発売時期を前倒しした等の事情があったようです。

 

2-2. 首都圏新築マンションの販売価格

同様に12月の販売価格は、首都圏平均で前年同月の5,620万円から▲4.2%の5,384万円となり6ヶ月ぶりの下落となりました。地域別では、東京区部7,468万円→8,043万円(+7.7%)、東京都下5,522万円→4,444万円(▲19.5%)、神奈川県5,234万円→5,212万円(▲0.4%)、埼玉県4,562万円→4,599万円(+0.8%)、千葉県4,052万円→3,954万円(▲2.4%)と、東京都下の下落が全体平均を押し下げているようです。他エリアは、東京区部で上昇、神奈川と埼玉はほぼ横ばい、千葉はわずかに下落するなどエリアによる違いはありつつも、全体としては高止まりが続いていると言ってよいでしょう。

2021年を通して売り出された新築マンションの平均価格は、前年より2.9%高い6,260万円で、バブル期を超えて過去最高となりました。2022年も都心の人気エリアで高額物件が多く発売される見込みで、価格が下がる要素はあまり見つかりません。

 

2-3. 首都圏新築マンションの㎡単価

専有面積1㎡あたりの価格を示す「㎡単価」の12月の首都圏平均は前年同月比▲3.7%の80.6万円で2ヶ月連続の下落となりました。地域別では、東京区部115.1万円→121.2万円(+5.3%)、東京都下81.5万円→62.6万円(▲23.2%)、神奈川県80.1万円→77.5万円(▲3.2%)、埼玉県67.0万円→70.3万円(+4.9%)、千葉県56.9万円→60.1万円(+5.6%)となっており、ここでも東京都下の下落が大きくなっています。

2021年を通してみると、首都圏全体で前年比+1.2%の93.6万円と、こちらも過去最高を更新し9年連続の上昇となっています。

出典:首都圏新築マンション市場動向(株式会社不動産経済研究所)より抜粋・作成

 

 

3、2021年下半期の首都圏「中古マンション」市況

次に中古マンションの市況について見ていきます。2021年下半期の首都圏全体の市況は、成約件数は減少傾向、成約価格と㎡単価は上昇傾向にあります。前年(2020年)の下半期は、市況の急回復により成約数が大きく伸びたこともあり、2021年はほとんどの月で前年比マイナスとなっています。一方、成約価格は19ヶ月連続、㎡単価は20ヶ月連続で前年同月を上回り、上昇率も8~11%と大きなものとなっています。新築マンションの高騰により、中古市場も値上がりが続いていると言えます。

 

■首都圏中古マンション市況(2021年下半期)

※カッコ内は前年同月比

 

3-1. 首都圏中古マンションの成約件数

首都圏の中古マンション成約件数は例年通り、秋の住み替えシーズンとなる9~11月に件数が伸びていますが、前年を上回ったのは12月のみです。12月の成約件数は前年比で、首都圏2,533件→2,881件(+13.7%)、東京都1,280件→1,521件(+18.8%)、神奈川県644件→679件(+5.4%)、埼玉県318件→333件(+4.7%)、千葉県291件→348件(+19.6%)と全エリアでプラスとなり、特に東京と千葉の伸び率が高くなっています。

 

3-2. 首都圏中古マンションの成約価格

成約価格は全エリアで上昇基調が継続しており、首都圏の12月の成約価格は前年比で3,739万円→4,116万円(+10.1%)と二桁上昇。地域別では、東京都4,765万円→5,156万円(+8.2%)、神奈川県3,078万円→3,401万円(+10.5%)、埼玉県2,299万円→2,555万円(+11.1%)、千葉県2,262万円→2,461万円(+8.8%)と全エリアで上昇が続いています。

上昇率で見ると、平均成約価格が5,000万円を超えた東京よりも、2,000~3,000万円台と値ごろ感のある神奈川・埼玉の方が高くなっており、より買いやすい物件を探して、需要が郊外に向いていることがわかります。

 

3-3. 首都圏中古マンションの成約㎡単価

「成約㎡単価」についても、同様に上昇基調が続いています。12月の首都圏全体の成約㎡単価は、57.5万円→64.2万円(+11.5%)。地域別に見ると、東京都77.2万円→85.7万円(+11.1%)、神奈川県46.2万円→50.9万円(+10.0%)、埼玉県33.9万円→38.0万円(+12.0%)、千葉県31.1万円→33.6万円(+7.9%)と全域で大きく上昇しています。

一方、専有面積は首都圏全体で64.99㎡から64.15㎡へと1.3%ほど小さくなっており、価格は上昇しつつも専有面積が縮小したことが、㎡単価の上昇につながっていることがわかります。

 

3-4. 首都圏中古マンションの在庫件数

最後に、中古マンションの在庫件数を見てみましょう。グラフの通り、昨年から減り続けていた首都圏の在庫は、2021年後半からやや持ち直しています。しかしコロナ前の水準には回復しておらず、しばらくは品薄感が続きそうです。

12月の前年比で見ると、首都圏全体で▲6.4%、都道府県別に見ると東京都+2.3%、神奈川県▲17.7%、埼玉県▲20.3%、千葉県▲13.3%と、東京以外は減少傾向が続いており、中でも埼玉県、神奈川県が大きく減少しています。

首都圏のマンション相場が上昇を続けてきたことにより、この先さらに値上がりするのではないかという期待から、売り控える動きが出ていること。また、コロナによって住み替え需要が高まり、旺盛な需要が郊外に向かっていることなどが考えられます。しかし東京では在庫が回復傾向にあることから、そろそろ価格も天井に近づいているかも知れません。

出典:レインズデータライブラリー(東日本不動産流通機構)より抜粋・作成

 

 

 

4、2021年下半期の「新築一戸建」市況

続いて、新築一戸建の市況を見てみましょう。2021年下半期の首都圏全体の市況としては、成約件数が減少する一方で、成約価格は二桁上昇。在庫数は前年比マイナスが続いている状況です。

背景には、コロナによる郊外の一戸建人気や、マンション価格の高止まりにより一戸建の需要が大きく伸びた反面、市場に十分な在庫がなかったことと考えられます。

 

■首都圏新築一戸建市況(2021年下半期)

※カッコ内は前年同月比

 

4-1. 首都圏新築一戸建の成約件数

12月の成約件数は、首都圏全体で368件→301件(▲18.2%)、都道府県別にみると東京都101件→104件(+3.0%)、神奈川県155件→95件(▲38.7%)、埼玉県70件→58件(▲17.1%)、千葉県42件→44件(+4.8%)と、神奈川県と埼玉県で減少しています。

 

4-2. 首都圏新築一戸建の成約価格

成約件数が減少する一方で、成約価格は上昇を続けています。12月の成約価格の前年比は、首都圏全体で3,666万円→4,195万円と14.4%も上昇しました。地域別にみると、東京都4,408万円→5,260万円(+19.3%)、神奈川県3,612万円→3,993万円(+10.5%)、埼玉県3,172万円→3,406万円(+7.4%)、千葉県2,900万円→3,154万円(+8.8%)と全域で上昇しており、特に東京都と神奈川県の上昇率が高くなっています。

 

4-3. 首都圏新築一戸建の在庫件数

一戸建人気とコロナによる供給の減少で、在庫は2021年前半まで減少が続いていましたが、後半から少しずつ増加に転じています。2021年6月時点で前年の4割程度まで減っていた首都圏の在庫数は、12月時点で▲17.7%まで回復し、地域別では、東京都▲35.8%、神奈川県▲28.2%、埼玉県+2.7%、千葉県+9.7%と、前年並みに近づきつつあります。今後、1~3月の住み替えシーズンに向けて、人気の高い東京・神奈川エリアで在庫がどの程度回復するか注目されます。

出典:レインズデータライブラリー(東日本不動産流通機構)より抜粋・作成

 

 

 

5、2021年前半の「中古一戸建」市況

最後に首都圏の中古一戸建の市況をみてみましょう。新築一戸建の価格上昇と在庫減少により、中古一戸建市場も活況が続いています。成約件数は8~11月に前年割れが続いたものの、12月には+6.0%に回復し、12月としては過去最高の件数となりました。また成約価格は14ヶ月連続で前年を上回っています。

 

■首都圏中古一戸建市況(2021年)

※カッコ内は前年同月比

 

5-1. 首都圏中古一戸建の成約件数

12月の成約件数は、首都圏全体で1,092件→1,157件と6.0%上昇。地域別では、東京都327件→379件(+15.9%)、神奈川県326件→325件(▲0.3%)、埼玉県200件→228件(+14.0%)、千葉県239件→225件(▲5.9%)と、東京・埼玉が二桁の伸びとなっています。

 

5-2. 首都圏中古一戸建の成約価格

12月の成約価格は、首都圏全体で3,448万円→3,564万円と3.4%の上昇。地域別では、東京都5,323万円→5,072万円(▲4.7%)、神奈川県3,378万円→3,493万円(+3.4%)、埼玉県2,307万円→2,412万円(+4.6%)、千葉県1,932万円→2,291万円(+18.6%)と千葉が大きく上昇しています。

 

5-3. 首都圏中古一戸建の在庫件数

中古一戸建の在庫件数も、マンションや新築一戸建と同様に減少が続いています。12月の在庫数は、首都圏全体で前年比▲26.6%、都道府県別では東京都▲25.5%、神奈川県▲29.3%、埼玉県▲26.7%、千葉県▲24.7%となっており、減少のカーブは緩やかになってきているものの、コロナ前の水準を回復するにはまだ時間がかかりそうです。

出典:レインズデータライブラリー(東日本不動産流通機構)より抜粋・作成

 

 

 

6、今後の不動産価格を占うマクロ指標

不動産価格と相関性が高いと言われている2つの指標と建築費について見ていきましょう。

 

6-1. 日経平均株価は高値圏で推移するも、2022年はやや弱含み

1つ目は日経平均株価です。株価は不動産価格と相関関係にあると言われていますが、日々の株価の動きと同じように不動産価格が変動するわけではなく、株価の動きから半年くらい遅れて不動産価格に影響を与えると言われています。

2021年の日経平均株価は1月の27,663円から12月の28,791円と約4%上昇し、概ね高値圏で推移しました。しかし2022年に入ってからはオミクロン株の流行や米国の金利上昇などもあり、足元では弱い動きとなっています。また夏には参議院選挙もあり今年は神経質な値動きになるかも知れません。

※月ごとの終値

 

6-2. 住宅ローン金利はしばらく低水準。2022年後半には動きがあるかも

そして、もう一つの指標が住宅ローン金利です。ここでは全期間固定金利の「フラット35」(※)の金利推移をみてみましょう。グラフの通り、2013年に始まった金融緩和で金利は下がり続け、2016年後半から1%前後の非常に低い水準が続いています。

住宅ローン金利と不動産価格は逆相関(金利が下がると価格が上がる)関係にありますので、この低金利が続く限り、価格は高止まりする可能性が高いでしょう。ただし、日本では政府・日銀が低金利政策を維持する方向を示していますが、米国では2022年に数回の利上げが見込まれており、国内の長期金利(新発10年物国債の利回り)にも影響してくるため、しばらくは先の見通しが難しい状態が続くでしょう。更に、日米の金利差は円安要因となるため、もし過度に円安が進むと何らかの政策転換があるかも知れません。また8年以上に渡って金融緩和を続けてきた日銀の黒田総裁は2023年4月までの任期となっています。その先の政策がどうなるかはまだ見えませんが、年の後半には何らかの動きがあるかも知れません。こうした為替や金利の情報はしっかりチェックしておきましょう。

※フラット35とは:住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して融資をおこなう、全期間固定金利の住宅ローン。

※融資率9割以下・借入期間21年以上35年以下・団信保険料を含まない最多金利

 

6-3. 木材・建材などの値上がりで建築工事費が上昇

そしてもうひとつ注意しなければならないのは建築費の上昇です。2021~2022年にかけて木材をはじめとする建築資材が値上がりする「ウッドショック」「建材ショック」が起きました。輸入木材の値上がり、コロナによる物流の混乱、半導体不足などが原因と言われていますが、建築費の上昇は物件価格に直接影響してきますので注意が必要です。

 

 

 

7、不動産市況をとらえて、購入の適切なタイミングを見極めよう

 

2021年下半期の不動産市況、いかがでしたでしょうか?

住宅購入を検討する方にとって重要なのは、価格が高いか安いかではなく「これからどう動くのか」「自分にとって今は買い時なのか」ということです。未来を正確に予測するのは難しいことですが、このようなデータや指標を継続的に見ていくことによって、ある程度の予測は立てることができます。

現在のデータを見る限り、首都圏の不動産価格はしばらく高値圏で推移する可能性が高いと思われますが、足元では海外の利上げやオミクロン株など不安要素もありますので、日々の動きについてこまめに情報収集しておくことが大切です。

 

エリアごとの詳しいデータや、今後の見通しなどはぜひお近くの住宅情報館までお気軽にご相談ください。

次回の市況データは2022年7月ごろ公開の予定です。