高齢化や子どもの成長にともない、シニア世代のリフォームニーズは高まっていきますが、リフォーム補助金(助成金)や優遇制度をうまく活用できていないケースも多いようです。今回はリフォームに使える補助金や優遇制度についてまとめてみました。
※本コラムでは補助金と助成金は区別なく「補助金」という表記で統一いたします。
目次
1、リフォームには様々な補助金や優遇制度があることを知っておこう
リフォームの補助金は国や地方自治体などで様々な制度がありますが、なぜリフォームに補助金が支給されるのでしょうか。その背景について知っておきましょう。
1-1. なぜリフォームに補助金が支給されるのか
公的な建物ならともかく、なぜ個人住宅のリフォームに補助金が支給されるのでしょうか。それは国の住宅政策に深く関わっています。国は新たに建てられる建物について、法令で基準を定め、一定の品質を保とうとしています。しかし、一般的に品質基準は年を追うごとに厳しくなっていくため、法令が施行される以前に建てられた建物については、現在の基準を満たしていないものが多く残ってしまいます。そこで、既存建物については一定の品質基準をクリアするリフォームをする時に、その費用の一部を援助し、国全体の建物の品質を上げていきたいという意図があるのです。
1-2. キーワードは「耐震」「断熱・省エネ」「長寿命」
では具体的にどのようなリフォームが補助の対象になるのでしょうか。キーワードは「耐震」「断熱・省エネ」「長寿命」です。
①耐震
日本は地震の多い国であることから、これまでも大規模な震災があるごとに建物の耐震基準は厳しくなってきました。震災で被害を受ける建物は古い木造住宅が多いため、そのような建物の耐震性を高め、より災害に強い国づくりを進めていこうという狙いがあります。
②断熱・省エネルギー
従来、日本の断熱基準は世界的に見て低いレベルにあったため、古い木造住宅では断熱材が入っていない建物もまだ多く残っています。建物の断熱性を高めることにより、冷暖房効率が高まりエネルギー消費を低く抑えることができるだけでなく、高齢者の健康面でも大きなメリットがあることがわかってきました。CO2削減など、近年の環境意識の高まりと高齢者の健康維持の観点から、建物の高断熱化による省エネルギーと、太陽光発電や蓄電池などを利用した創エネルギーが推進されています。
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③長寿命
総務省の「平成30年 住宅・土地統計調査」によると、現在日本には約850万戸の空き家が存在します。また日本の住宅寿命は欧米などに比べて短く、約30年程度と言われています(アメリカは55年、イギリスは77年)。そのため日本は諸外国に比べ国民の住宅費負担と環境負荷が高いとされていました。そこで2006年に施行された「住生活基本法」では、それまでの「新築重視」の住宅政策を、今ある住宅を長持ちさせ活用する「ストック重視」に転換し、既存建物の長寿命化リフォームについても積極的に推進されてことになりました。
この3つのキーワードのほかには、高齢者の在宅介護のための「介護リフォーム(バリアフリー化)」、働き方改革にともなう「家事軽減リフォーム」なども補助金の対象になっています。
1-3. 補助金と優遇制度の違いとは
ここで補助金と、優遇制度の違いについても知っておきましょう。
補助金とはリフォーム費用の一部を国などが補助(支給)してくれることを言います。もちろん返済義務はありませんので、国から「もらえる」お金と理解しておけばよいでしょう。一方優遇制度とは、税金が一部減免されたり、ローンの金利が低くなったりする制度です。直接お金がもらえるわけではありませんが、本来支払うべきお金が減額されるので、実質的には補助金と同様の効果があります。
2、リフォーム補助金の主な制度と支給される金額は?
それでは実際のリフォームではどのくらいの補助金が受けられるのでしょうか。主な制度と補助金額についてまとめてみました。
2-1. もらえる補助金の目安はどのくらい?
前述したように、補助金で支払われるのはリフォーム工事費のあくまで一部です。考え方としては、標準的なリフォーム費用と、国が目指す高品質なリフォーム費用の「差額」を補助金で賄える程度と理解しておけばよいでしょう。つまり施主からみれば、補助金を活用することによって、同じ費用でよりグレードアップした家に住むことができ、光熱費などのランニングコストも安く抑えられる可能性があるということになります。
2-2. 主な補助金制度と補助金額
2019年度に国が実施している、リフォーム関連の主な補助金事業は以下の通りです。
■高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業(通称:「断熱リノベ」)
壁・床・屋根・窓などの断熱リフォームによって、一定の省エネ効果が見込まれる場合に、一戸建は最大120万円、マンションは1戸あたり最大15万円の補助金が支給されます。
一戸建に限り、家庭用蓄電システムや家庭用蓄熱設備などにも最大20万円の補助が受けられます。
■次世代省エネ建材支援事業(通称:「次世代建材」)
「次世代建材」は、住みながらリフォームしたいという人に適した補助金で、住戸の内側から施工できる高断熱パネルや、潜熱蓄熱建材を用いたリフォーム、またこの工事と同時に玄関ドア、内窓、調湿建材等によるリフォームを行った場合、最大200万円の補助が受けられます。
■次世代住宅ポイント
次世代住宅ポイントは、2019年10月に消費税が10%に引き上げられたことにともない、増税後に住宅を取得またはリフォームした人に、様々な商品等と交換できるポイントを発行する制度です。ポイントの対象となるのは「環境」、「安全・安心」、「健康長寿・高齢者対応」、「子育て支援、働き方改革」に資する以下のような工事で、1戸あたり上限30万ポイントが発行されます。(既存住宅の購入に伴うリフォームの場合はポイントを加算)
なお、付与されたポイントは、商品への交換はできますが、リフォーム代金の支払いに充てることはできませんのでご注意ください。
①窓・ドアの断熱改修
②外壁、屋根・天井又は床の断熱改修
③エコ住宅設備の設置
④耐震改修
⑤バリアフリー改修
⑥家事負担軽減に資する設備の設置
⑦若者・子育て世帯による既存住宅の購入に伴う一定規模以上のリフォーム工事等
断熱改修(内外窓、ガラス) | 0.2~2万ポイント×箇所数 |
断熱改修(ドア) | 2.4, 2.8万ポイント×箇所数 |
断熱改修(外壁) | 5,10万ポイント |
断熱改修(屋根・天井) | 1.6, 3.2万ポイント |
断熱改修(床) | 3,6万ポイント |
エコ住宅設備(太陽熱利用システム、高断熱浴槽、高効率給湯器) | 2.4万ポイント |
エコ住宅設備(節水型トイレ) | 1.6万ポイント |
エコ住宅設備(節湯水栓) | 0.4万ポイント |
耐震改修 | 15万ポイント |
バリアフリー改修(手すり) | 0.5万ポイント |
バリアフリー改修(段差解消) | 0.6万ポイント |
バリアフリー改修(廊下幅等拡張) | 2.8万ポイント |
バリアフリー改修(ホームエレベーター設置) | 15万ポイント |
バリアフリー改修(衝撃緩和畳の設置) | 1.7万ポイント |
家事負担軽減設備(ビルトイン食器洗機、掃除しやすいトイレ、浴室乾燥機) | 1.8万ポイント |
家事負担軽減設備(掃除しやすいレンジフード) | 0.9万ポイント |
家事負担軽減設備(ビルトイン自動調理対応コンロ) | 1.2万ポイント |
家事負担軽減設備(宅配ボックス) | 1万ポイント |
リフォーム瑕疵保険の加入、インスペクションの実施 | 0.7万ポイント |
若者・子育て世帯による既存住宅の購入を伴う100万円以上のリフォーム | 10万ポイント |
※出典:国土交通省「次世代住宅ポイント制度の概要」
■ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)支援事業
ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、太陽光発電や蓄電池を組み合わせることによって、使うエネルギーと発電するエネルギーがほぼ同じになる住宅、つまりエネルギー消費(≒光熱費)ゼロとなる住宅のことを言います。どちらかというと新築住宅向きの制度ではありますが、リフォームにも適用できます。ZEHの段階にはいくつかあり、それぞれ補助金の額も異なります。(いずれも一戸建が対象)
①ZEH 支援事業 (70万円/戸)
②ZEH+ 実証実験(115万円/戸)
③ZEH+R 強化事業(125万円/戸)
■長期優良住宅化リフォーム補助金
この補助金は、耐久性、耐震性、省エネ性、維持管理のしやすさなどの基準で一定水準以上となる住宅を対象に、リフォーム工事費を補助する制度です。以下の3つのパターンがありそれぞれ補助金の額も異なります。他の補助金と異なり、リフォーム前にインスペクション(住宅検査)を行ない、維持保全計画やリフォーム履歴を作成する必要があります。
①評価基準型(100万円/戸)・・・耐久性、耐震性、省エネ性が一定水準を満たすもの
②認定長期優良住宅型(200万円/戸)・・・より高い耐久性、耐震性、省エネ性を満たすもの
③高度省エネルギー型(250万円/戸)・・・認定長期優良住宅のさらに高い省エネ性能をもつもの
※三世代同居対応改修工事を行う場合はそれぞれ50万円加算
■エネファーム設置補助
「エネファーム」とは家庭用燃料電池のことで、水素と酸素から電気と熱をつくるシステムです。都市ガスやLPガスから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させ、電気をつくり出します。この「エネファーム」を導入する方に対して、最大8万円の補助金を支給する制度です。
適用条件、申請方法などの詳細は各公式ページをご確認ください。
断熱リノベ、次世代建材、ZEH https://sii.or.jp/
次世代住宅ポイント https://www.jisedai-points.jp/
長期優良化リフォーム推進事業 https://www.kenken.go.jp/chouki_r/
エネファーム設置補助 http://www.fca-enefarm.org/subsidy31/
2-3. リフォームで使える優遇制度(減税、金利優遇)
リフォーム工事で利用できる減税制度の中でメインとなるのが「所得税減税」と「固定資産税の減額」です。
■所得税(住民税)
①住宅ローン減税
住宅ローン減税は、10年以上のローンを使ってリフォームした場合に、ローンの年末残高の1%(最大40万円)を10年間、税額から控除できる制度です。消費税10%の対象となった場合には、11~13年目に増税分(2%)に相当する額も控除できるようになりました。
(参考)国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1216.htm
②リフォームローン控除
5年以上のローンを使って、バリアフリー、省エネ、多世帯同居対応のためのリフォームを行った場合、ローンの年末残高の2%、同時に行った上記以外の工事については、ローンの年末残高の1%を税額控除できる制度です。
限度額等の詳細は国税庁ホームページをご覧ください。
(参考)国税庁ホームページ
No.1217 借入金を利用して省エネ改修工事をした場合(特定増改築等住宅借入金等特別控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1217.htm
No.1218 借入金を利用してバリアフリー改修工事をした場合(特定増改築等住宅借入金等特別控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1218.htm
No.1223 借入金を利用して多世帯同居改修工事をした場合(特定増改築等住宅借入金等特別控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1223.htm
③投資型減税
投資型減税はローンを使わずに、耐震、バリアフリー、省エネ、多世帯同居対応のリフォームを行った場合、それらにかかる工事費の10%を税額控除できる制度です。それぞれ限度額が決まっていますので、詳細は国税庁ホームページをご覧ください。
(参考)国税庁ホームページ
No.1219 省エネ改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1219.htm
No.1220 バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1220.htm
No.1222 耐震改修工事をした場合(住宅耐震改修特別控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1222.htm
No.1224 多世帯同居改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1224.htm
No.1227 耐久性向上改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1227.htm
■固定資産税
固定資産税の減額については以下の通りです。いずれも工事完了後に所定の書類を添付して、市区町村の窓口に申告する必要があります。対象となる築年数・広さなどの詳細は市区町村の固定資産税窓口にご確認ください。
①耐震 (税額の1/2 × 1年間)
②バリアフリー(税額の1/3 ×1年間)
③省エネ(税額の1/3 × 1年間)
■ローンの金利優遇(フラット35リノベ)
住宅購入と耐震、省エネ、バリアフリーなどのリフォームを同時に行った場合に、フラット35の金利が年0.5%優遇される制度があります。ローンを使った住み替えとリフォーム並行して検討されている人向きの制度です。
(参考)フラット35リノベ https://www.flat35.com/loan/reno/index.html
2-4. 市区町村独自の補助金
上記のような、国が主体となって実施する事業とは別に、市区町村など各自治体が独自に設けた補助金、優遇制度などもありますので、居住地の市区町村のホームページなどで確認してみるとよいでしょう。ただし、国の補助金と併用できないことが多いので注意が必要です。
3、リフォーム補助金を受けるための手続きと注意点
補助金を受けるために必要な手続き、注意点などについても知っておきましょう。
3-1. 補助金を受けるには「申請」が必要
補助金を受けるためには、ほぼすべての制度で「申請」が必要になります。申請の窓口や必要書類は制度によって異なりますので、事前にきちんと調べて準備しておきましょう。
3-2. スケジュールと予算に注意
申請はいつでもできるものと受付期間が決まっているものがあります。これは補助金事業が国の「予算」をベースに運営されているためです。したがって、決められた予算が予定よりも早く消化されてしまえば、その時点で受付が終了することもありますので十分注意しましょう。さらに、申請が終わっても所定の審査を経て補助金の交付決定がされる前に契約・着工したものについては、補助金交付の対象外となります。
リフォーム会社としっかり打ち合わせを行ない、申請、交付決定、着工~完成までのスケジュールをしっかり立てるようにしましょう。
3-2.建材、施工要件、施工業者、などはプロに確認を
耐震、省エネなどのリフォーム工事では、一定の品質を満たすために、使われる建材(メーカーやグレード)が指定されていることが多く、施工方法も基準に合ったものでなければなりません。また、制度によっては、施工業者の指定があることもありますので、ホームページなどで確認するか、リフォーム会社への相談時に指定業者になっているかどうかを確認するようにしましょう。
4、補助金・優遇制度を上手に活用するためには
最後にリフォーム補助金を上手に活用するポイントをまとめてみました。
4-1. 対象となる工事をうまく組み合わせる
リフォーム工事の多くは水廻りの交換や、床・壁の貼り替えなど部分的なリフォームです。その際、一度の工事で一緒にできるものを組み合わせることによって、うまく補助金を活用することができます。例えば、屋根の塗装と太陽光発電の設置を組み合わせる、床の貼り替えとバリアフリー工事を一緒に行う、キッチン・バスの交換時に、ビルトイン食洗機や浴室乾燥機を設置する等の工夫をすることによって、別々にやるよりも費用が抑えられ補助金を上手に活用することができます。
4-2. 補助金の制度に精通したリフォーム会社を選ぶ
ここまで見てきたように、補助金は制度そのものが多岐にわたり、対象となる要件も複雑でわかりにくいものが多々あります。また、申請についてもリフォーム会社が代行するケースが多いので、会社選びが重要になります。補助金制度に精通していて、申請などの手続きに慣れている会社を選びましょう。
4-3. 制度・予算は年度ごとに変わる。入念な調査と準備をしよう
補助金制度は国や地方自治体の年度ごとの予算をベースに実施されますので、予算が可決されるまでは申請時期などの詳細が公開されないこともあり、うっかりしていると受付期間を過ぎてしまった、ということにもなりかねません。
また、年度内であっても予算を消化した時点で早々に募集が終了してしまうこともあるので、常に最新の情報を確認し、入念に準備をしておくことが重要です。
ちなみに、2019年度は多くの制度で募集が終了しています。これからリフォームを検討される方は2020年度の募集に向けて準備を進めることになりますが、会社選びやプランの相談、見積もりなどには思ったより多くの時間がかかります。タイミングを逃さないためにも早め早めのご相談をおすすめします。