不動産の適正価格ってどう調べればいいの?  ~(2)土地編 ~

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不動産の適正価格ってどう調べればいいの?  ~(2)土地編 ~

前回に引き続き、今回は「土地」の適正価格と、価格の比較方法について解説していきます。目安となる価格の調べ方や、価格に影響するプラス要因、マイナス要因などを知っておきましょう。

目次

1、土地の価格ってどう決まるの?目安となる価格とは

土地に限らず不動産には「定価」がありませんので、最終的に売り手と買い手が合意した額が取引価格となります。しかし、取引の目安となる価格は存在します。

1-1. 土地の価格は4つある?目安となる価格を覚えておこう

まず価格の目安となる4つの価格について知っておきましょう。

①実勢価格(時価)

実勢価格とは実際に取引された価格のことを言います。売り手と買い手が合意した額ですので、最も現実的な価格と言えますが、その時々の経済情勢や需給関係を考慮する必要があります。実勢価格は国土交通省が運営する「不動産取引価格情報検索」を使って、自分で調べることができますが、不動産会社に依頼して、REINS(レインズ)を使って調べてもらう方法もあります。

※REINS(レインズ):不動産流通機構が運営している不動産会社専用のネットワークシステム

■不動産取引価格情報検索(国土交通省)

https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet

②公示地価・基準地価(都道府県地価調査)

公示地価と基準地価は、国や都道府県が、不動産鑑定士の評価に基づいて、年に1回発表する「取引の目安となる価格」です。いずれも実勢価格に近いのがメリットですが、年に1回の発表なので、直近の相場変動を反映しにくいこと、あらかじめ選定された地点の価格しか公表されないことがデメリットです。

③相続税路線価

相続税路線価(一般的に「路線価」と呼ばれる)とは、相続税や贈与税の計算根拠となる土地評価額を求めるための価格で、国税庁が年1回発表しています。路線価を使うメリットは、市街地のほぼ全域において価格が公表されていることです。ただし公示地価(実勢価格)の80%程度となりますので、価格を比較する場合には0.8で割り戻す必要があります。

■計算式:相続税路線価 ÷ 0.8 ≒ 実勢価格

関連記事:2019年の路線価は4年連続の上昇。でも、そもそも路線価ってナニ?

④固定資産税評価額

固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税を課税するための評価額で、市町村が3年に1度算出しています。個別の土地の評価額は所有者だけに通知されますが、相続税路線価と同様、固定資産税路線価という形で公表されています。固定資産税評価額は公示地価(実勢価格)の70%程度となりますので、価格を比較する場合には0.7で割り戻す必要があります。

■計算式:固定資産税路線価 ÷ 0.7 ≒ 実勢価格

公示地価、基準地価(地価調査)、相続税路線価、固定資産税路線価は、「全国地価マップ」というサイトでまとめて検索することができます。対象の土地とそれぞれの価格が地図上に表示され非常に便利です。ぜひ利用してみてください。

■全国地価マップ https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal

ここまでご紹介した指標をまとめると以下のようになります。それぞれ評価時点や発表時期が異なりますので、できるだけ直近の指標を用いて比較するようにしましょう。

■土地価格の目安となる指標

評価時点(発表) 管轄 実勢価格との比較
公示地価 1月1日(3月下旬) 国土交通省 ほぼ同水準
基準地価 7月1日(9月下旬) 都道府県 ほぼ同水準
相続税路線価 1月1日(7月1日) 国税庁 80%程度
固定資産税評価額 1月1日(3年に1度) 市町村 70%程度

※実勢価格との比較はあくまでも目安です。

2、土地の価格に影響を与えるプラス要因、マイナス要因

上記のような指標をもとにおおよその相場を把握することができますが、実際にはその土地がもつ特性や、個別の事情を考慮しながら算定していくことになります。土地の価格に影響を与えるプラス要因、マイナス要因について見ていきましょう。

2-1. 立地や周辺環境

土地価格に影響を与える要素として、まず挙げられるのが立地や周辺環境です。

駅から近く通勤・通学に便利、日々の買い物などに便利なスーパーやショッピングモールが近くにある、大きな公園があるなど、環境のよい立地は価格も上がります。

一方で、墓地や火葬場、工場など、一般的に避けられる傾向のある施設(嫌悪施設)が近くにある場合は価格が下がる傾向があります。

また、高圧線下にある土地は、電力会社の「地役権(ちえきけん)」により、利用が制限されたり、騒音(風切り音)や電波障害が発生したりする可能性があるので、価格が下がる傾向があります。

※地役権(民法第280条):一定の目的のために、他人の土地を利用する権利。両者の合意により成立する。

2-2. 土地の形状や向き

土地の形状や向きによっても価格は変動します。住宅用地としては、南向きの土地の人気が高く、隣地に高い建物がなく日当たりが確保できる土地は価格が高くなります。

形状については、長方形に近い「整形地」は価格が高くなり、形がいびつな「不整形地」や道路に接する出入口部分が細い「旗竿地」は価格が下がる傾向があります。また、道路との高低差が大きい土地や、崖地・傾斜地なども価格が低くなります。

土地の形状や向き

2-3. 接道状況

土地が道路とどのように接しているか(接道状況)も土地の価格に大きく影響します。接道は、建物の配置や間取りに影響を与えるためです。

①接道の方向と幅員

接道の方向とは、土地に対して道路がどの方向にあるかということです。一般的に南側に道路がある土地は日当たりがよく好まれる傾向にあります。また、道路の幅員(幅)も広い方が好まれる傾向にありますが、交通量が多く騒音や振動がある場合には、逆にマイナス要因になることもあります。

②接道の本数

土地に対して何本の道路が接しているかも重要です。以下のように2本以上の道路に接している土地は建築の自由度が高く、日当たりもよいため価格が上がる傾向にあります。

接道の本数

③間口と奥行のバランス

土地の縦横のバランスを表す言葉として、道路に接している長さのことを「間口」といい、道路からの距離を「奥行」といいます。一般的に間口の広い土地は価格が高くなり、間口が狭く奥行きの長い土地(いわゆる「うなぎの寝床」)は、価格が下がる傾向があります。

間口と奥行のバランス

④道路の種類(公道と私道)

土地が接している道路の種類(公道か私道か)も価格に影響を与えます。公道とは国道、県道、市道など、国や自治体が所有・管理する道路で、私道とは個人が所有する道路を言います。仮に土地に接しているのが私道だけで、その私道が他人の所有である場合、所有者の承諾なしに建物は建てられないので、土地の価値は大きく下がります。また、私道の一部が自分の所有だとしても、価格を算定する際は、私道部分は含めず(ゼロとして)評価します。

道路の種類(公道と私道)

⑤セットバック

幅4メートル未満の道路に接している土地は、道路の中心線から2mまでの範囲に建物や塀などの工作物を建てられません。これをセットバックと言います。実際に使用できるのはセットバック部分を除いた面積ですので、セットバック部分は価格に含めず(ゼロとして)評価します。

セットバック

2-4. 用途地域、建ぺい率・容積率

都市計画区域内の土地については、地域ごとに「用途地域」が定められており、どのような用途の建物を建てられるのかが決められています。例えば住居系の地域では、ホテルや大きな工場などは建てられません。また、用途地域によって「建ぺい率」「容積率」が定められており、その土地に建てられる建物の大きさが制限されています。

※建ぺい率:敷地面積(建物を建てる土地の面積)に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合

※容積率:敷地面積に対する延床面積(各階の床面積の合計)の割合

一般的には住居系よりも商業系の地域の方が建ぺい率・容積率が大きく、価格も高くなりますが、環境面で言うと、必ずしも住宅に適しているわけではありませんので、土地を購入する目的に合った用途地域を選びましょう。

2-5. 解体やインフラにかかる費用

土地は主に建物を建てる目的で売買されますので、その障害となる要因はマイナス評価されます。例えば、古家の解体費用、造成費用、地中埋設物や土壌汚染などを除去する費用などは、土地価格から差し引かれて取引されることがあります。また、上下水道やガスなどのインフラが整備されていない土地は、配管を引き込む費用や負担金などがマイナス評価されることもあります。

2-6. 借地権や抵当権などの第三者の権利

土地に第三者の権利がついている場合、価格がマイナス評価されます。一般的に土地の売買は「所有権」の移転が前提となっていますが、対象となる土地に「借地権」など第三者の権利がついていると、所有権を取得してもその土地を自由に利用することはできません。また、土地が金融機関などに担保として提供されている場合には「抵当権」という権利がつきます。この場合にも金融機関に抵当権を行使され、土地を失うリスクがありますので、そのままでは売買の対象になりにくく、権利の抹消を前提として売買されることになります。

3、土地の価格を比較するときのポイント

土地価格の目安とプラス・マイナス要因がわかったところで、実際の比較方法を見ていきましょう。

3-1. 比較の基本は「㎡単価」。公簿面積と実測面積の違いにも注意

土地の価格を比較する際には1㎡あたりの価格である「㎡単価」や、1坪(約3.3㎡)あたりの価格「坪単価」がよく使われます。言うまでもなく土地価格を面積(㎡)で割ったものが「㎡単価」ですが、土地面積には登記簿上の「公簿面積」と、実際に測量した「実測面積」があり、まれにずれが生じることがあります。その場合は実測面積にもとづく単価で計算しましょう。

3-2. 標準的な価格から変動要因を加味する

実際に価格を比較する際には、公示地価等の基準となる価格に、上記のようなプラス要因、マイナス要因を加味した上で「㎡単価」を算出して比較します。

標準的な価格から変動要因を加味する

プラス・マイナスとも、立地や形状による変動幅は5~10%くらいを目安に、解体費用などは実費分をマイナスします。私道やセットバック部分は面積から除外して単価を算出しましょう。

3-3. 土地の広さと㎡単価の関係

㎡単価が同じ土地でも、面積が広くなると取引総額は上がります。例えば、㎡単価が30万円の土地は、100㎡なら3,000万円、300㎡なら9,000万円ですが、一般的に住宅用地としてどちらが売れやすいかというと、100㎡の土地です。300㎡は住宅用地としては広すぎますし、総額が高くなることによって、買い手が限られてしまうためです。土地の用途に対して広すぎる土地は、㎡単価が下がる傾向があることを覚えておきましょう。

3-4. 買い手による価格の違い

上記に関連して、広すぎる土地を買うのは誰でしょうか。主な買い手は不動産会社です。不動産会社は広い土地を買って分割し、分譲地や建売住宅として販売しますので、一般の方が個人間で売買するよりも価格は15~20%程度安くなります。過去の売買事例などを調べるときには、買い手による価格の違いにも注意しましょう。

4、土地の購入で注意すべきポイントとは

最後に、実際に土地を購入する際に注意するポイントを知っておきましょう。

4-1.購入前の調査をしっかりと行う

ここまでご説明した通り、土地はひとつひとつ形状や条件が異なり適正価格が分かりにくい上に、見た目にはわからない地中埋設物や権利関係の確認なども重要となります。また、用途地域などの建築上の制限なども事前に確認しておかないと、希望の建物が建てられないことにもなりかねません。

不動産の広告等には、価格に影響を与えるこれらの事項を明記することが義務付けられています。わからない点は不動産会社に確認するなど、購入前の調査をしっかり行うようにしましょう。

4-2. 個人の土地に不安を感じる人は、分譲地を探してみよう

事前調査が重要とは言え、一般の方が自ら調査を行い、適正価格かどうかを判断するのは非常に難しいことです。そのような時は不動産会社が分譲する土地を探してみるのもひとつの方法です。

分譲地内の土地は、家を建てる前提で測量・区画・造成され、上下水道等のインフラも整備されています。もちろん隣地との境界や接道も問題なく、権利関係もきれいな状態で販売されているので、購入後に思わぬトラブルになる可能性は低く安心感があります。

会社によっては建物の間取りや建築費などを「参考プラン」として提案してくれますので、個人間の売買に不安を感じる方は、不動産会社の分譲地を探してみるとよいでしょう。

いずれにしても、土地はマンションや一戸建と異なり、調査すべき点が多く、価格の妥当性も判断しづらいと言えます。土地探しは早い段階でプロに相談し、慎重に進めることをおすすめします。

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