~2022年上半期の不動産市況まとめ~ 新築・中古とも価格上昇が継続。今後は金利と建築費の動きに注意

不動産売買_関連 市場/相場_関連 資金/ローン/税制_関連
2022年上半期の不動産市況まとめ 新築・中古とも価格上昇が継続 今後は金利と建築費の動きに注意

ロシアのウクライナ侵攻など世界情勢が不安定になり、また中国のロックダウンの影響などで物価上昇が鮮明になった2022年上半期。不動産市況はどのように変化したのでしょうか。今回も前回に引き続き、首都圏の成約数、価格、在庫などの最新データから大きな市況の流れを探ってみましょう。

目次

1.なぜ不動産市況を把握する必要があるのか

そもそも不動産の価格はどうやって決まるのでしょう?企業が売主となって販売する場合、土地や建物の仕入価格に、その土地の造成費、建築・リノベーション等の工事費、広告宣伝や販売促進の費用などを勘案して算出しますが、それ以外に非常に重要な要素となるのが「市況」です。
では、市況とはいったい何なのか?どのようにして決まっているのか?について解説します。

1-1. そもそも不動産市況とは?

前提として、不動産価格は「定価」というものがなく、その時々の需要と供給のバランスで価格が決まる仕組みになっています。また、不動産は1つとして同じものがないので、比較がしにくくいわゆる「相場」がつかみにくい商品です。
そうした価格の動きや相場をつかむためには、市場に流通している物件数(供給)や、実際に成約に至った物件数(需要)や価格等を数値的に把握していくことが重要です。こうしたデータを総合的に分析したものが不動産市況と言われるものです。

1-2. 不動産価格が変動する背景とマクロ指標

不動産価格は需要と供給のバランスで決まると申し上げましたが、その需要の背景にあるのが国内の経済状況です。簡単に言えば「景気がいい」時期には不動産の需要が高まり価格も上昇しますし、「景気が悪い」時期にはその逆となります。また、不動産の購入には住宅ローンなどの借入をともなうことが多いので、金利の動向は不動産価格に大きな影響を与えます。こうした株価や金利などの経済指標はマクロ指標とも呼ばれ、不動産価格に影響を与える重要なデータとなります。

1-3. 市況がわかると買い時がわかる?

常に変動する不動産市況を把握しておくことは、住宅購入検討者にとって非常に重要です。単に価格が安いか高いかではなく、今後どのように動いていくのか、自分にとって今は買うべきタイミングなのかどうかなどを俯瞰的に検討した上で購入判断できるからです。
本コラムでは、主に業界向けに公開されているデータを元に、一般の方にもできるだけわかりやすく不動産市況を解説していきます。

近くの住宅情報館を探してみる

2.2022年上半期の首都圏「新築マンション」

それではまず、首都圏の新築マンション市況を見てみましょう。

■首都圏の新築マンション市況(2022年上半期)
  1月 2月 3月 4月 5月 6月
発売戸数 1,128戸
(▲14.9%)
2,287戸
(-2.0%)
2,492戸
(▲19.7%)
2,426戸
(-16.1%)
2,466戸
(▲4.3%)
1,917戸
(▲1.1%)
販売価格 6,157万円
(-5.7%)
7,418万円
(-16.3%)
6,518万円
(-3.0%)
6,291万円
(▲19.0%)
6,088万円
(-3.0%)
6,450万円
(-3.8%)
㎡単価 94.7万円
(-8.7%)
109.5万円
(-15.5%)
97.6万円
(-4.4%)
93.7万円
(▲16.7%)
90.7万円
(▲2.7%)
99.7万円
(-5.8%)

※カッコ内は前年同月比 ※▲はマイナス

2-1. 首都圏新築マンションの発売戸数は2年ぶりの減少

首都圏新築マンション発売戸数(2022年上半期)

首都圏の2022年上半期(1~6月)の新築マンション発売戸数は12,716戸で、前年の13,277戸から4.2%減、2年ぶりの減少となりました。
エリア別に見ると、東京区部が5,816戸→5,390戸(▲7.3%)、東京都下が963戸→1,023戸(+6.2%)、神奈川県が3,566戸→3,066戸(▲14.0%)、埼玉県が1,303戸→1,685戸(+29.3%)、千葉県が1,629戸→1,552戸(▲4.7%)となっており、川口・大宮・川越・所沢などでタワーマンションの発売が相次いだ埼玉県が大きく伸び、神奈川県、東京区部、千葉県で減少しています。
これは建築資材や住宅設備の調達難などでマンションの完成時期が見通しづらくなったことから、販売スケジュールを見直しているためと見られています。

2-2. 首都圏新築マンションの販売価格は過去2番目の高水準。埼玉県で約20%上昇

首都圏新築マンション販売価格(2022年上半期)

2022年上半期の販売価格は、首都圏平均で6,414万円→6,511万円(+1.5%)、東京都区部で8,041万円→8,091万円(+0.6%)、東京都下で5,388万円→5,418万円(+0.6%)、神奈川県で5,438万円→5,343万円(▲1.7%)、埼玉県で4,932万円→5,887万円(+19.4%)、千葉県で4,535万円→4,727万円(+4.2%)と、神奈川県以外はすべて上昇しています。
首都圏の平均価格としては過去2番目に高い水準で、特に埼玉県では高額物件の販売が多かったことから20%近い上昇となりました。
販売戸数が減少する中で、マンション価格は高止まりが続いています。2022年に入って円安や資材価格の高騰などにより建築費が上昇しており、今後さらに価格が上昇する可能性もあります。

2-3. 首都圏新築マンションの㎡単価は郊外エリアで上昇傾向

首都圏新築マンション㎡単価(2022年上半期)

専有面積1㎡あたりの価格を示す「㎡単価」の推移も見てみましょう。首都圏全体では96.2万円→97.7万円(+1.6%)、東京都区部で127.3万円→127.0万円(▲0.2%)、東京都下で78.5万円→78.4万円(▲0.1%)、神奈川県で79.1万円→81.4万円(+2.9%)、埼玉県71.6万円→83.9万円(+17.2%)、千葉県で63.4万円→64.6万円(+1.9%)となっています。東京都内ではほぼ横ばいであるのに対して、郊外エリアでは上昇しています。価格上昇局面では、専有面積が小さくなる傾向があるので、物件選びにおいては、販売価格とともに㎡単価も合わせて比較してみるとよいでしょう。

マンション・建売市場動向(株式会社不動産経済研究所)より抜粋・作成

3.2022年上半期の首都圏「中古マンション」市況

次に中古マンションの市況について見ていきます。2022年上半期の首都圏全体の市況は、成約件数は減少、成約価格と㎡単価は上昇傾向となりました。前年(2021年)の上半期、引っ越しシーズンとコロナ後の市場の回復が重なり成約数が大きく伸びた反動で、すべての月で前年比マイナスとなっています。一方、成約価格は25ヶ月連続、㎡単価は26ヶ月連続で前年同月を上回っています。上昇率も新築マンションを上回る8~16%の上昇となっており、新築と比べて割安感のある中古物件の人気がさらに高まっているとみられます。

■首都圏中古マンション市況(2022年上半期)
  1月 2月 3月 4月 5月 6月
成約件数 2,760戸
(▲20.7%)
3,146戸
(▲12.3%)
3,405戸
(▲19.5%)
3,094戸
(▲9.7%)
2,877戸
(▲12.7%)
3,003戸
(▲7.9%)
成約価格 4,149万円
(10.0%)
4,023万円
(6.6%)
4,158万円
(8.4%)
4,363万円
(14.0%)
4,174万円
(9.5%)
4,231万円
(9.2%)
成約㎡単価 64.2万円
(11.5%)
62.5万円
(8.4%)
65.4万円
(10.8%)
68.7万円
(16.3%)
65.6万円
(12.0%)
67.0万円
(12.7%)
在庫件数

36,632件(▲1.1%)

37,259件(2.6%)

37,660件(8.5%)

37,360件(9.3%)

37,039件(9.6%)

37,179件(10.5%)

※カッコ内は前年同月比 ※▲はマイナス

3-1. 首都圏中古マンションの成約件数は首都圏全域で反動減

首都圏中古マンション成約件数(2022年上半期)

首都圏の中古マンション成約件数は6ヶ月連続で前年を下回りました。首都圏全体で21,282件→18,285件(▲14.1%)。エリア別に見ると、東京都で10,861件→9,643件(▲11.2%)、神奈川県で5,315件→4,308件(▲18.9%)、埼玉県で2,531件→2,139件(▲15.5%)、千葉県で2,575件→2,195件(▲14.8%)とすべてのエリアで前年を下回っています。

3-2. 首都圏中古マンションの成約価格は全域で上昇。東京都で5,000万円超え

首都圏中古マンション成約価格(2022年上半期)

一方、成約価格は全エリアで前年を上回っており、首都圏全体で3,816万円→4,183万円(+9.6%)、エリア別に見ると、東京都で4,839万円→5,220万円(+7.9%)、神奈川県で3,140万円→3,431万円(+9.3%)、埼玉県で2,391万円→2,697万円(+12.8%)、千葉県で2,309万円→2,549万円(+10.4%)と、いずれも大きな伸びとなっています。(※2022年上半期の各月の成約価格の平均)
上昇率で見ると、平均成約価格が5,000万円を超えた東京都ではやや落ち着いてきているようにも見えますが、相対的に割安感のある埼玉や千葉では2桁の上昇となっており、需要が郊外に向いていることがうかがえます。

3-3. 首都圏中古マンションの成約㎡単価は、専有面積の縮小で価格以上の上昇率に

首都圏中古マンション成約㎡単価(2022年上半期)

「成約㎡単価」も同様に上昇基調が継続しています。首都圏全体では58.6万円→65.6万円(+12.0%)、東京都で79.2万円→87.9万円(+10.9%)、神奈川県で46.1万円→51.4万円(+11.5%)、埼玉県で35.0万円→39.6万円(+13.2%)、千葉県で31.6万円→34.8万円(+10.4%)と、首都圏全域で10%を超える上昇となっています(※2022年上半期の各月の成約㎡単価の平均)。
また東京都は16ヶ月連続、神奈川県は19ヶ月連続、千葉県・埼玉県は23ヶ月連続で前年同月を上回っており、中古マンション市場は2年近くも活況が続いています。
㎡単価が大きく上昇した要因のひとつは、専有面積が小さくなっていることで、首都圏全体で65.18㎡から63.15㎡へと3.1%小さくなっています。

3-4. 首都圏中古マンションの在庫件数は東京都で回復傾向

首都圏中古マンション在庫件数(2022年上半期)

最後に、中古マンションの在庫件数を見てみましょう。グラフの通り、2021年6月ごろから東京では在庫数が増加しておりコロナ前の8割くらいまで回復しています。
1~6月の平均在庫数は、首都圏全体で+6.4%、東京都で+13.1%、神奈川県▲2.7%、埼玉県で▲6.4%、千葉県で+1.9%と、東京都で増える一方、神奈川県と埼玉県では減少しています。
これは新型コロナや都内の価格上昇で、郊外物件のニーズが高まっていることが背景にあると思われます。

レインズデータライブラリー(東日本不動産流通機構)より抜粋・作成

4.2022年上半期の「新築一戸建」市況

続いて、新築一戸建の市況を見てみましょう。2022年上半期の首都圏全体の市況としては、成約件数が減少する一方で、成約価格は上昇、在庫数は急速に回復しつつある状況です。

  1月 2月 3月 4月 5月 6月
成約件数 287件
(▲33.9%)
396件
(▲25.4%)
388件
(▲18.8%)
394件
(▲16.5%)
395件
(▲10.2%)
306件
(▲25.7%)
成約価格 4,149万円
(11.7%)
3,901万円
(3.7%)
4,054万円
(7.4%)
4,235万円
(7.1%)
3,995万円
(6.4%)
4,228万円
(6.2%)
在庫件数 9,988件
(▲6.6%)
9,970件
(5.7%)
10,253件
(18.0%)
10,632件
(26.3%)
10,841件
(39.0%)
11,305件
(53.1%)

※カッコ内は前年同月比 ※▲はマイナス

4-1. 首都圏新築一戸建の成約件数は東京、神奈川、千葉で2割を超える減少

首都圏新築一戸建成約件数(2022年上半期)

1~6月の成約件数は、首都圏全体で2,767件→2,166件(▲21.7%)、東京都で820件→592件(▲27.8%)、神奈川県で1,044件→766件(▲26.6%)、埼玉県で492件→492件(±0.0%)、千葉県で411件→316件(▲23.1%)と、埼玉県を除く3都県で20%超の減少となっています。
これは2020年に成約件数が大きく伸びた反動と、価格上昇が続いていることによる買い控えが背景にあると思われます。

4-2. 首都圏新築一戸建の成約価格は上昇が続く。特に埼玉県で上昇率が高い

首都圏新築一戸建成約価格(2022年上半期)

成約件数が減少する一方で、成約価格は上昇を続けています。1~6月の成約価格は、首都圏全体で3,824万円→4,094万円(+7.0%)、東京都で4,655万円→4,994万円(+7.3%)、神奈川県で3,796万円→4,040万円(+6.4%)、埼玉県で3,105万円→3,539万円(+14.0%)、千葉県で3,122万円→3,422万円(+9.6%)と、全エリアで上昇しており、中でも埼玉県の上昇率が高くなっています。

※2022年上半期の各月の成約価格の平均

4-3. 首都圏新築一戸建の在庫件数はコロナ前の5割ほどに回復

首都圏新築一戸建在庫件数(2022年上半期)

一戸建人気とコロナによる供給減で、在庫は2021年前半まで減少が続いていましたが、後半から増加に転じ、2022年上半期においても増加傾向を継続しました。1~6月の平均在庫数は、首都圏全体で8,736件→10,498件(+20.2%)、東京都で2,549件→2,747件(+7.8%)、神奈川県で2,469件→2,842件(+15.1%)、埼玉県で2,260件→2,987件(+32.2%)、千葉県で1,458件→1,922件(+31.8%)と埼玉県と千葉県で大きく伸びています。しかしコロナ前(首都圏全体で約1.9万件)と比べるとまだ6割ほどの回復にとどまっており、今後の動きが注目されます。(※2022年上半期の各月の在庫件数の平均)

レインズデータライブラリー(東日本不動産流通機構)より抜粋・作成

5.2022年上半期の「中古一戸建」市況

最後に首都圏の中古一戸建の市況をみてみましょう。新築一戸建と同様に成約件数は6ヶ月連続の減少、成約価格は2020年11 月から20ヶ月連続で前年同月を上回っています。

  1月 2月 3月 4月 5月 6月
成約件数 997件
(▲17.9%)
1,220件
(▲10.5%)
1,286件
(▲21.1%)
1,190件
(▲11.7%)
1,154件
(▲18.2%)
1,145件
(▲13.8%)
成約価格 3,497万円
(7.0%)
3,769万円
(11.1%)
3,741万円
(7.9%)
3,664万円
(7.6%)
3,718万円
(14.7%)
3,822万円
(7.9%)
在庫件数 13,403件
(▲22.3%)
13,461件
(▲19.4%)
13,342件
(▲14.4%)
13,061件
(▲14.1%)
12,731件
(▲13.1%)
12,860件
(▲9.2%)

※カッコ内は前年同月比 ※▲はマイナス

5-1. 首都圏中古一戸建の成約件数は二桁減

首都圏中古一戸建成約件数(2022年上半期)

1~6月の成約件数は、首都圏全体で8,293件→6,992件(▲15.7%)、エリア別に見ると、東京都2,663件→2,189件(▲17.8%)、神奈川県2,280件→1,905件(▲16.4%)、埼玉県1,724件→1,481件(▲14.1%)、千葉県1,626件→1,417件(▲12.9%)と全エリアで減少しています。
こちらも新築と同様に、相場が上昇を続けていることで、価格的に需要にマッチしにくい物件が増えていることが背景にあるのではないかと考えられます。

5-2. 首都圏中古一戸建の成約価格は、首都圏全域で1割近い上昇

首都圏中古一戸建成約価格(2022年上半期)

成約価格は上昇傾向を維持しており、1~6月の成約価格は、首都圏全体で3,386万円→3,702万円(+9.3%)、エリア別に見ると、東京都4,772万円→5,251万円(+10.0%)、神奈川県3,504万円→3,837万円(+9.5%)、埼玉県2,274万円→2,497万円(+9.8%)、千葉県2,121万円→2,388万円(+12.6%)と全エリアで10%前後の上昇となっています。

5-3. 首都圏中古一戸建の在庫件数は減少傾向。回復の兆し見えず

首都圏中古一戸建在庫件数(2022年上半期)

中古一戸建の在庫件数は緩やかな減少傾向が続いています。1~6月の平均在庫数は、首都圏全体で前年比▲15.7%、エリア別では東京都▲15.7%、神奈川県▲18.6%、埼玉県▲14.9%、千葉県▲13.0%となっており、減少のカーブは緩やかになってきているものの回復の兆しは見えず、コロナ前の水準を回復するにはまだ時間がかかりそうです。

レインズデータライブラリー(東日本不動産流通機構)より抜粋・作成

6.今後の不動産価格を占うマクロ指標

不動産価格と相関性が高いと言われている2つの指標と建築費について見ていきましょう。

6-1. 日経平均株価は年明けから下落基調が続く

1つ目は日経平均株価です。株価は不動産価格と相関関係にあると言われていますが、日々の株価の動きと同じように不動産価格が変動するわけではなく、株価の動きから半年くらい遅れて不動産価格に影響を与えると言われています。
2022年の日経平均株価は年明けの29,098円から6月末の26,393円と約9%下落しています。この大きな要因は世界的なインフレ進行です。インフレを抑え込むために海外で金利引き上げが続いており、株価低迷の要因となっています。また海外と日本の金利差から円安が進み、輸入品を中心に物価上昇が続いています。こうしたことから株価はしばらく低迷すると予想され、回復は早くても2022年冬~2023年くらいになるものと思われます。

日経平均株価の推移

※月ごとの終値
※出典:日経平均株価:リアルタイム推移・最新ニュース – 日本経済新聞

6-2. 住宅ローン金利は固定型で上昇の兆し。変動型は低水準を維持

そして、もう一つの指標が住宅ローン金利です。ここでは全期間固定金利の「フラット35」(※)の金利推移をみてみましょう。2022年に入り海外で利上げが続いたことで国内の長期金利が上昇し、連動性の高いフラット35の金利は6ヶ月連続の上昇となっています。一方、政策(短期)金利と連動性の高い変動型の住宅ローンはまだ上昇する気配はなく、実質0.5%前後の低水準が続いています。これは、日銀が2013年から継続している金融緩和(低金利)政策を維持すると明言しているためで、政策に変更がない限り今の水準が継続すると見られます。固定金利で検討されている方は少し急いで検討を進めたほうがよいかも知れません。

※フラット35とは:住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して融資をおこなう、全期間固定金利の住宅ローン。

フラット35金利推移

※融資率9割以下・借入期間21年以上35年以下・団信保険料を含まない最多金利

6-3. 世界的なインフレと円安で建築工事費が上昇

そしてもうひとつ注意しなければならないのは建築費の上昇です。新型コロナやウクライナ情勢にともない、エネルギー価格や資材価格が大幅に上昇しています。また世界的な半導体不足で住宅設備機器にも品薄になっており、木材・鉄・ガラスなどの建築資材、キッチン・バス・給湯器などの価格が大きく上昇しています。
さらに日本では資材の多くを輸入に頼っており、設備機器も海外生産しているため、円安が価格上昇に拍車をかけています。しばらく建築費の上昇は続きそうですので、新築物件の購入や注文住宅を検討中の方は特に注意が必要です。

建築工事費デフレーター(住宅総合)

出典:総合政策:建設工事費デフレーター – 国土交通省

7.今年後半は金利の動きと建築費に注意。購入の適切なタイミングを見極めよう

住宅購入を検討する方にとって重要なのは、価格が高いか安いかではなく「これからどう動くのか」「自分にとって今は買い時なのか」ということです。未来を正確に予測するのは難しいことですが、このようなデータや指標を継続的に見ていくことによって、ある程度の予測は立てることができます。

中でも注意していただきたいのは金利と建築費の動きです。現在のところ日銀は大規模な金融緩和(低金利)政策を維持すると明言しています。しかし海外の利上げの動きを反映して、日本でも長期金利がじわじわと上がり始め、固定金利の代表格「フラット35」の金利は6ヶ月連続で上昇しています。変動金利はまだ低水準にとどまっていますが、今後政策変更があれば一気に上昇に向かう可能性もありますので十分注意しましょう。
また、建築費は木材や設備機器を中心に2021年から上昇が続いていましたが、今年に入り鉄鋼、ガラス、アルミニウムなどの原材料も高騰しています。その一方で住宅メーカーは上昇したコストをまだ消費者に十分転嫁できていない状況で、住宅価格はどこかのタイミングで急上昇する可能性があります。こうした金利や建築費の上昇は、市場にとっては需要の冷え込み、つまり値下がり圧力になりますので、今後の物件供給数にも影響してくるかも知れません。
これから住まいの購入を検討される方は、ニュースなどで金利や建築費の動きに注目するとともに、できれば不動産会社などから最新の情報を収集するよう心がけましょう。数カ月後に販売される物件情報や、実際に成約した売買情報など、地域の不動産会社とこまめに情報交換しておくとよいでしょう。

価格相場や金利の最新データ、今後の見通しなどはお近くの住宅情報館までお気軽にご相談ください。
次回の市況データは2023年1月ごろ公開の予定です。

近くの住宅情報館を探してみる