二地域居住への取り組みが加速。都会と地方のデュアルライフは広がるか

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2021年3月、政府は「全国二地域居住等促進協議会」を設立し、二地域居住(デュアルライフ)への取り組みを本格化することを発表しました。新型コロナの影響もあり、テレワークや郊外暮らしが進む中、都会と地方に家をもつ「二地域居住」は広がるのでしょうか。

 

 

1、二地域居住への取り組みがいよいよ本格化の兆し

そもそも二地域居住はなぜ今注目されているのでしょうか。その背景とこれまでの流れを解説します。

 

1-1. 二地域居住が、今注目される背景

二地域居住が注目される大きな背景としては、東京一極集中と少子高齢化という課題が挙げられます。多くの若者が地方から東京圏に流入することにより、地方の高齢化が進んでいます。また、いわゆる「空き家問題」も深刻化しており、地方都市にとっては、人口減少を食い止め、地域を活性化することが喫緊の課題となっているのです。

一方、消費者の住まいに対する意識は多様化しています。独身者や二人住まい、共働き世帯の増加により、持ち家よりも賃貸を選ぶ人も増え、シェアハウスなど新しい形態の住まいも普及しています。二地域居住が注目される背景にはこうした地方の課題と、住まいに対する意識の多様化があります。

 

1-2. 2019年、リクルート社が住宅トレンドとして「デュアラー」を発表

そんな中、リクルート社は2019年の住宅トレンドとして「デュアラー」を発表しました。デュアラーとは『都心と田舎の2つの生活=デュアルライフ(2拠点生活)を楽しむ人たちのこと』と定義されており、都心での忙しい生活を送る人たちの中には、田舎や郊外生活への憧れなどの気持ちを抱いている人が少なくないとしています。

出典:リクルート住まいカンパニー 2019年住まいトレンド

また、月数万円の定額料金で全国の家を移り住むことができるサービスなども登場し、『アドレスホッパー』という新語も生まれました。

※アドレスホッパー:固定の住居を持たず、シェアハウスやゲストハウスなどを移り住みながら暮らす人

(参考)定額 全国住み放題 ADDress

 

1-3. 新型コロナで進むテレワークやワーケーション

そして2020年、新型コロナによって私達の生活は一変しました。テレワークが急速に普及し、通勤頻度が減ったことで、より広い家を求める人が増え、都市部から少し離れた郊外での暮らしが注目されるようになりました。また、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた『ワーケーション』という新語も誕生し、リゾート地などの自然豊かな環境でゆったり仕事をするスタイルも少しずつ広がりを見せています。

これまで海外からの観光客に頼っていたホテルも、一部客室をサービスアパートメントとして販売するなどの業態転換が進み、2021年に帝国ホテルが販売開始した月額36万円のサービスアパートメントプランが、高額ながら即日完売し話題になりました。

新型コロナをきっかけとする働き方の変化によって、住まいや暮らし方も大きく変わりつつあります。

 

1-4. 2021年、国は「全国二地域居住等促進協議会」を発足

このような状況の中、国は2021年3月に「全国二地域居住等促進協議会」を発足しました。目的は「二地域居住等の普及促進と機運の向上」で、全国の地方自治体601団体をはじめ、多くの移住等支援団体、住宅・不動産関係団体などが参加しています。前述のような地方が抱える課題や、新型コロナによる生活様式の変化により、いよいよ国も本腰を入れて取り組みをスタートしたわけです。今後、二地域居住に対する情報公開や助成金など、具体的な支援策も発表される見通しです。

国が本腰を入れたことにより、これまでごく一部の人に限られていた二地域居住というライフスタイルが大きく広がっていくかも知れません。

 

 

2、旅行でも別荘でもない、二地域居住(デュアルライフ)の魅力とは

二地域居住は長期の旅行や別荘暮らしとは何が違うのでしょうか? 2020年に不動産流通経営協会がおこなった「複数拠点生活に関する基礎調査」から、その実態を探ってみました。

 

2-1. 二地域居住の実施者は推計617万人。実施者の65.5%が満足と回答

この調査によると、現在二地域居住を実施している人(実施者)は、6.6%(推計617万人)いるのに対し、今後実施したいと考えている人(意向者)は7.1%(推計661万人)います。

また、二地域居住を始めた時期を見ると、2019年に約77万人、2020年は調査時点(3月末)で既に約51万人が実施しており、ここ1年で急速に実施者が増えていることがわかります。

 

■複数拠点生活の実施者・意向者ボリューム

 

2-2. 二地域居住の目的は「余暇・趣味」が上位。積極的な地域交流の意向も

二地域居住を実施する(したい)目的については、実施者・意向者ともに「自分の時間を過ごすため」がトップで、転勤や親の介護などのやむを得ない理由を除けば、「避暑・避寒・癒やし・くつろぎのため」「自然を感じられる環境で過ごしたい」「趣味を満喫したい」などが上位となっています。

また、上位ではないものの「サテライトオフィス(仕事の場)」「第二のふるさと」「地域貢献」など、積極的に仕事や地域交流に取り組もうとする動きも見られます。こうした地域に根ざした交流・貢献は、二地域居住ならではの目的で、単に休暇を過ごすための別荘とは一線を画するところでしょう。

 

■二地域居住の目的(最も大きな目的・理由)

 

2-3. 同県内で実施している人が4割強。平均移動時間は約2.3時間

最後に、二地域居住のメイン拠点とサブ拠点の関係を見てみましょう。

実施者のサブ拠点の場所としては、メイン拠点と同県内が40.1%、同地方内が18.8%、その他地域が41.1%となっており、メイン拠点とサブ拠点を同県内または首都圏内や関西圏内といった同地方内に持っている人が半数以上を占めます。

また、メイン拠点からサブ拠点までの移動時間は平均2.3時間、サブ拠点の滞在日数は1年当たり66.7日となっており、比較的近いエリアに、長期間滞在していることがわかります。

一方、意向者では沖縄や海外などリゾートを意識した傾向も見られるものの、実施者と同様に、比較的近いエリアにサブ拠点を持ちたいと考える人が約半数となっています。これも単なる観光旅行とは異なり、その地域を頻繁に訪れ、暮らしの拠点として利用したい意向の表れと推測できます。

 

■サブ拠点の場所(意向者は希望)

 

3、二地域居住を成功させるポイント

それでは、これから二地域居住を検討する方は、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

 

3-1. 地域(エリア)選び

二地域居住の大きなポイントは、地域(エリア)選びです。目的にもよりますが、サブ拠点を「地域に根ざした暮らしの場」と捉えるならば、週末に気軽に行けるくらいの距離感がよいでしょう。また、新幹線や高速道路などの交通アクセス、買い物や外食などの生活便も考慮すると、比較的人口の多い地方都市の周辺や、観光の中心地から少し外れたエリアなどを中心に検討してみるとよいのではないでしょうか。

前述の調査でも、都市圏にメイン拠点を持ちつつ、サブ拠点をリゾート地に持つといった従来の別荘のようなイメージの組み合わせはそれほど多くないという結果が出ています。

 

3-2. 物件選び

二地域居住で、エリア選びとともに重要なのが「物件選び」です。上記調査によれば、意向者の62.8%が「持ち家」を希望しており、中でも「一戸建」の割合が高くなっています。まずはエリアの相場をつかみながら、購入か賃貸か、またマンションか一戸建か検討してみましょう。

おおよその物件のイメージがつかめたら、地域に詳しい不動産会社などに相談しながら物件探しを進めていきましょう。価格の安い地方エリアでは、都市部ほど情報がネットに公開されていないことも多いので、実際に地域を訪れて相談してみることをおすすめします。自治体によっては移住支援センター等の施設で物件紹介や移住支援を行っているケースもあります。

(参考)移住・交流推進機構

 

3-3. 資金計画・住宅ローン

二地域居住の最大のハードルは「資金」です。物件の購入費用はもちろん、維持費(固定資産税や修繕費など)もかかるため、資金計画は慎重に検討しましょう。また、メイン拠点が持ち家で住宅ローンの残債がある場合には、住宅ローン審査が通りにくく、借入額も制限される可能性があります。

前述の調査によれば、趣味・嗜好目的で二地域居住を行う人の世帯年収は500~600万円(中央値)となっており、必ずしも富裕層と言われる人だけのものではないことがわかります。エリアや物件選びなど、不動産会社や金融機関と相談しながら無理のない資金計画を立てましょう。

なお、一般的にセカンドハウスローンは、通常の住宅ローンに比べ金利が高くなる傾向がありますが、フラット35は、通常の住宅ローンと同じ条件でセカンドハウスローンが利用できるので、購入の際は検討してみるとよいと思います。

(参考)フラット35 「セカンドハウスの建設・購入に利用できますか」

 

3-4. 二地域居住にかかる税金と税制優遇

二地域居住をするために購入した住まいには、固定資産税、都市計画税などの税金がかかります。しかし、一定の条件に該当すれば、税制上の「居住用財産」として、一般の住宅と同様の優遇を受けられる可能性があります。

「居住用財産」と認められる条件は、「生活を営む拠点となる住宅」であることです。具体的には「遠距離通勤で相当な通勤時間が掛かるため、職場の近くに第2の住居を持ち、平日利用する」とか、「平日は自宅で過ごすが、週末に帰る家として、生活の拠点として利用する」など、少なくとも月1回以上の利用実態があることが条件となります。

 

「居住用財産」に認められれば、以下のような優遇が受けられます。

【固定資産税】

・土地:200㎡以下の部分は1/6、200㎡超の部分は1/3に減額

・建物:2020年3月31日までに新築された住宅は、課税床面積120㎡まで新築後3年間または5年間、1/2に減額

【都市計画税】

土地:200㎡以下の部分は1/3、200㎡超の部分は2/3に減額

 

なお、優遇を受けるためには取得後60日以内に申請する必要があり、判断は各自治体が行いますので、詳しい条件や申請方法等は必ず自治体に確認しましょう。

 

 

4、首都圏周辺の二地域居住におすすめのエリアは?

では最後に、首都圏在住の方におすすめの二地域居住エリアをご紹介します。交通アクセスがよく、比較的物件が探しやすいエリアからピックアップしてみました。

 

4-1. 神奈川西部エリア

神奈川県西部エリアは、東海道新幹線や高速道路のアクセスがよい上、街の規模も比較的大きく、熱海、伊豆、箱根、富士山などの観光地も近いことから、暮らしの拠点としてもリフレッシュの場としてもおすすめです。

例えば、小田原市は新幹線で東京から約30分、気候も温暖で海にも近く、暮らしやすい街です。都内に通勤している方もいるほど人気の街で、生活便も申し分ありません。小田原を中心に、真鶴町や湯河原町などまで足を伸ばして検討してみてもいいでしょう。

また秦野市は小田急線のロマンスカーで新宿から約1時間。南部は市街地、北部には丹沢山系の山々が連なる自然豊かな街で、登山や渓流釣りなどアウトドアが好きな方におすすめです。周辺の伊勢原市や松田町、大井町などと一緒に検討してみるとよいと思います。

 

4-2. 三浦半島エリア

三浦半島は、葉山などの別荘地に代表される風光明媚で気候も温暖なエリアです。

マグロの水揚げで有名な三浦半島最南端の三浦市は、三崎口駅から京急線特急で品川まで約75分とアクセスも抜群。三方を海に囲まれており、サーフィン、海水浴、釣りなどのマリンスポーツを楽しむには絶好のロケーションです。最近では、Uターン、Iターンで創業する方も増えており、市も移住支援、創業支援に力を入れています。横須賀市、逗子市なども合わせて検討してみてはいかがでしょうか。

 

4-3. 奥多摩エリア

奥多摩エリアは、東京都西部の山々が連なるエリアで、玄関口となるのは青梅市(青梅駅)と昭島市(拝島駅)です。新宿からの所要時間は、青梅駅までは約70分、拝島駅までは約50分。青梅駅からは青梅線を、拝島駅からは五日市線を乗り継いで奥多摩エリアにアクセスできます。

奥多摩エリアは、東京とは思えないほど美しい大自然が広がっており、登山、ハイキング、渓流釣りなども存分に楽しめます。青梅市、昭島市をはじめ、あきる野市、奥多摩町なども合わせて検討してみるとよいと思います。

出典:奥多摩観光協会 公式Facebookページ

 

4-4. 南房総エリア

二地域居住のサブ拠点としては、千葉県の南房総も人気のあるエリアです。内房エリアでは、東京湾アクアラインの起点でもある木更津市や袖ケ浦市、ゴルフ場の数が日本一の市原市、更に南へ範囲を広げて富津市、南房総市、館山市。外房エリアではいすみ市、勝浦市、鴨川市など広く物件を探すことができます。千葉県最南端の館山までは、東京駅からJR特急や高速バスで約2時間。海に近く気候が温暖で、冬でも花が咲き誇る「花のまち」としても知られます。

 

二地域居住は、アフターコロナの新しいライフスタイルとして、ますます注目され、広がっていく可能性を秘めています。

ご紹介したエリアに限らず、地方都市やその周辺では移住・定住の促進を図るため、補助金の交付等を行っている自治体も多くあります。また、中古物件なら1,000万円以下、空き家バンク等を活用すればさらに安く購入できるチャンスもありますので、ぜひ地域の不動産会社や自治体などで情報収集してみてはいかがでしょうか。