マンション高騰で注目される「中古一戸建」の物件選びと購入のポイント

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昨今のマンション価格高騰とコロナ禍などを背景に、広くてリーズナブルな中古一戸建の人気が高まっています。そこで今回は、中古一戸建の魅力と、物件の見極め方、購入する際のポイントなどについて解説します。

目次

1)じわじわと人気が高まる中古一戸建。その魅力とは

首都圏ではマンションの値上がりやコロナ禍の影響で中古一戸建の人気が高まっていますが、まずは、その背景について追ってみます。

1-1. 中古一戸建の成約件数・価格の推移 まず首都圏における、中古一戸建の取引件数と価格の推移を見てみましょう。

出典:レインズデータライブラリー(東日本不動産流通機構)より筆者作成

グラフの通り、2010年に年間1万戸程度だった成約件数が、2020年には1万3,000戸を超え、コロナ禍にあった2021年には、新築物件の減少や郊外の一戸建人気により、一時1万5,000戸まで急増しています。コロナ禍が落ち着きいてきた2022年は、再び1万3,000戸程度に減少していますが、約10年で30%以上の伸びとなっています。

また価格についても、直近10年間で、2,000万円台後半から3,700万円まで上昇しており、特に2021~2022年は、2年間で約20%の大きな上昇となっています。

中古マンション価格の高騰が続く中で、一戸建に一定の割安感があることと、コロナによる一時的な供給不足が要因と考えられます。

1-2. 中古一戸建ての魅力・メリット

このように、コロナ禍をきっかけに人気が高まっている中古一戸建、その最大の魅力は「価格」と「立地」です。具体的に見ていきましょう。

①価格の安さ

中古一戸建の魅力のひとつは価格の安さです。同程度の広さなら新築の半額程度で買えることも珍しくなく、築年数が古い物件ならほぼ土地値だけで売られている物件もあります。

また、一戸建は早い時期に分譲された物件ほど土地が広い傾向があり、新築ではなかなか出ない、広い庭つきの物件などを限られた予算の中でお探しの方には大きなメリットとなります。

②立地の良さ

もう一つの魅力は立地の良さです。駅近などの好立地は早い時期に開発が進むので、新築の供給は年を追うごとに少なくなります。こうした新築が少ないエリアでも物件を探せるのが中古のメリットです。また子どもの学区など、エリアを限定して探している方も、中古であれば比較的探しやすくなる利点もあります。

それ以外にも、部屋数が多くワークスペース等を確保しやすい、自由に増築・リフォーム・建替えができるなど、マンションにはない魅力が多くあります。

1-3. 良い物件を選ぶのは至難の技?

しかし中古一戸建は、土地の形状や建物の傷みも物件によって千差万別で、価格の妥当性も分かりにくいので、新築やマンションと比べ、ある程度の「目利き」が必要になります。

今回のコラムでは、そんな中古一戸建の物件選びと購入時のポイントについて解説します。

2)中古一戸建のチェックポイント(土地編)

中古一戸建を購入する際には多くのチェックポイントがありますが、複数の物件を比較しやすくするためには、土地と建物に分けて考えるのがコツです。まずは土地から見ていきましょう。

2-1. 立地

土地を評価する上でもっとも大事なのは「立地」です。交通機関や買い物などの利便性はもちろん、子育て世帯であれば、保育園や学校、病院やクリニックなどの施設があるか、行政による子育て支援も大事なポイントとなります。

また街の将来性を見る上では、人口や世帯数が増えているか、若い世代の流入があるかなども大事な指標になります。

2-2. 道路付けや建築制限

次に土地そのものの評価について解説します。中古一戸建の場合、土地はすでに建物の敷地となっていますので、注文住宅を建てるケースと比べ、それほど神経質になる必要はありませんが、接道、建ぺい率・容積率、隣地境界などについて押さえておきましょう。

①接道

接道とは土地と道路がどのように接しているかを指しますが、建築基準法では、建物の敷地として利用する場合、幅4m以上の道路に2m以上接していなければならないと定められています。また一般的に、敷地の2面が道路に接する「角地」や、接道幅が長い(間口が広い)土地が「良い土地」とされ、価格も高くなります。

道路には県や市が所有する「公道」と、個人が所有する「私道」があります。もし接している道路が「私道」であれば、私道の権利や使用上の制限などについて確認しておきましょう。例えば、私道の所有者(共有の場合はその持分を含め)、維持・管理の方法や費用負担、使用上の制限の有無、建築基準法上の道路として認められるかなどが主な確認事項です。また、掘削や建替えをおこなう場合には、原則として他の所有者の同意が必要になります。

②建ぺい率・容積率

また、建ぺい率・容積率は、その土地に建てられる建物の大きさの上限を規定したもので、将来的に増築や建替えをする場合にも、その上限までとなりますので注意が必要です。

建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積(建坪)の割合のことで、「%」で指定されます。例えば建ぺい率60%の地域で、敷地面積が100㎡の場合、建築面積は最大で60㎡までとなります。

容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことで同じく「%」で指定されます。例えば、容積率200%の地域で、敷地面積が100㎡の場合、延床面積は最大で200㎡までとなります。

※建築面積:建物を真上からみたときの投影面積  ※延床面積:建物の各階の面積の合計

③隣地境界

隣地との境界については、敷地の形状や寸法を記載した「測量図」があるかどうか、境界杭などにより境界が明示されているかをチェックしましょう。

2-3. 第三者の権利や建築制限

土地に対する権利関係についても念のためチェックしておきましょう。土地に登記される権利には、所有権のほか、抵当権、借地権などがありますが、ローンの借入にともない設定される抵当権については、通常、売買時に抹消されるので問題ありません。しかし、現所有者以外の第三者の権利登記がある場合には注意が必要です。また、土地が道路の拡幅や区画整理など、公共事業の対象地となっている場合は、増改築や建替えが制限されることがあります。

2-4. 土地の高さや地盤

近年、水害や地震などの自然災害が増えています。地盤の強さや高低差などは災害リスクにかかわりますので、ハザードマップなどで確認しておきましょう。

3)中古一戸建のチェックポイント(建物編)

次に建物についてのチェックポイントを解説します。

3-1. 構造体の劣化

中古一戸建を購入する上でもっとも注意しなければならないのは、基礎・外壁・屋根などの構造体の劣化です。基礎のひび割れ、外壁の損傷、床の傾き、雨漏り、シロアリによる被害などを入念にチェックしましょう。とは言え、まったく劣化していない建物はありませんので、安全性に影響があるかどうか、修繕が可能な範囲かどうかなど、専門家のアドバイスを受けながらチェックするとよいでしょう。外から見えない屋根裏や床下などは、建築士や住宅診断業者に依頼するのもひとつの方法です。

3-2. 配管・設備・内装

給排水などの配管や、キッチン・浴室などの水回り設備、給湯器なども、築年数の経過とともに劣化します。床下や壁内の配管が損傷していると修理に多額の費用がかかる可能性があります。水回り設備は交換が可能ですが、構造によっては大規模な工事になる可能性があるので、あらかじめ費用を見積もっておくとよいでしょう。

一方、床や壁などの内装は、比較的簡単にリフォームすることができますので、汚れや細かい傷はさほど気にする必要はありません。

3-3. 建築確認済証と検査済証

建物を建築するときは、必ず「建築確認申請」をおこない、適法な建物かどうかが審査されます。この際発行されるのが「確認済証」です。また完成時には、申請の通りに建物が完成したかどうかを検査し「検査済証」が発行されます。この2つの書類があるかどうかを必ずチェックしましょう。もしない場合には、住宅ローンや増改築などに影響する可能性があります。

しかし古い建物では、書類の紛失や、そもそも完成検査を受けていないケースもあるため、そうした物件を購入する場合には、確認検査機関による事後検査を受けるなどの対処も検討しましょう。

3-4. 耐震・断熱などの基本性能

中古物件の性能を正確に評価するのは難しいですが、耐震性については築年数がひとつの目安になります。日本の耐震基準は1981年6月と、2000年6月に大きく改正されていますので、できるだけ建築確認の日付が2000年6月以降の物件を選ぶようにしましょう(※)。

また、断熱性能については新築時の設計図書で、断熱材の有無や種類などを確認するとよいと思います。

※耐震基準改正前の建物で、現行の耐震基準をクリアする建物も多くありますので、ひとつの目安とお考えください。

3-5. 過去の修繕履歴

最後に、不動産会社を通して売主に確認しておきたいのが過去の修繕履歴です。修繕した箇所や修繕方法、交換した機器、実施時期などを聞いておくとよいと思います。

4)価格の妥当性

中古物件の購入で難しいのが価格の評価です。複数の中古一戸建を比較・検討するには、販売価格(土地+建物)ではなく、土地・建物それぞれの価格に分けて考えるのがポイントです。

4-1. 土地・建物それぞれの価格を比較する方法

①土地価格

まず土地価格については、近隣で販売中の土地や、過去の取引事例などから、1㎡あたりの価格(㎡単価)を割り出します。次に、㎡単価に検討中の物件の土地面積を掛け合わせれば、おおよその価格を算出できます。

②建物価格

建物の価格については、まず木造の標準的な建築費、1㎡あたり17~20万円くらいを目安に、検討中の物件の建物面積を掛けて算出します。ここから経年による値下がり分を、年5%位の割合で差し引いて現在の価格を算出してみましょう。ただし、その時々の市況、それまでの利用状況や劣化の程度、メンテナンス状況などによっても価格が変わります。

あくまで目安ではありますが、①と②の合計額と実際の販売価格がかけ離れていないかどうかチェックしてみましょう。

4-2. 土地の相場の調べ方

土地の価格を調べる際には、近隣の販売物件や過去の取引事例を参考にしますが、具体的にどのように調べたらよいのでしょうか。

近隣の販売物件は、不動産情報サイトや不動産会社のホームページなどで調べるのが一般的です。また取引事例は、不動産会社に確認するのが確実ですが、下記のサイトでもある程度調べることができます。価格は常に変動していますので、できるだけ直近の事例を参考にしましょう。いずれの場合も、立地、面積、形状などが近い物件を参考にするのがポイントです。ちなみに土地面積が小さくなるほど、㎡単価は上がる傾向があります。

不動産取引価格情報検索(国土交通省)

レインズマーケットインフォメーション

こうした方法で情報が見つからない場合には、公示地価・基準地価といった指標を参考にする方法もあります。ただしこれらの指標は、実際の取引価格よりも安い(約8割)とされています。

地価公示・都道府県地価調査(国土交通省)

5)中古一戸建の物件選びと契約上の注意

最後に、物件選びと契約上の注意点について解説します。

5-1. 物件は仲介物件と再販物件の2種類。希望は早めに伝えよう

中古一戸建は、個人が売主の物件(いわゆる仲介物件)と、不動産会社が買い取った上で、売主として販売している物件(いわゆる再販物件)の2種類があります。

仲介物件は現状での引き渡しが原則なので、状況に応じて修繕やリフォームが必要になりますが、価格が安く、自由にリフォームできるという利点があります。

一方、再販物件は不動産会社が修繕やリフォームをした上で販売されることが多く、すぐに入居できるのがメリットですが、その分価格は高くなります。

どちらも買いたいタイミングでぴったりの物件が出てくるとは限らないので、早い段階から不動産会社に希望を伝えて、気長に待つスタンスが必要です。

5-2. 契約時には不具合箇所の確認が重要

希望通りの物件が見つかり、いざ契約という段階では、物件の不具合箇所をしっかりチェックしましょう。中古物件の場合、多かれ少なかれ不具合はあるので、売買時点で判明している不具合は契約書に記載され、売主の責任は免除されます。一方、契約書に記載されてない不具合が見つかった場合には、民法の「契約不適合責任」に基づき、売主は責任を負います。なお、築年数の古い物件では「売主は一切の契約不適合責任を負わない」という特約が付されることもあります。

いずれにしても、契約書に記載される不具合の内容と、売主の責任範囲をしっかり確認し、後々トラブルにならないようにすることが重要です。

中古一戸建を買う時のポイント、ご理解いただけたでしょうか。

中古物件は、新築よりも流通量がはるかに多いので、新築でなかなか希望の物件に出会えない方や、リーズナブルに広めの物件を探したい方にはおすすめです。

一方で、物件の見極めや契約には新築にない難しさもありますので、必ず中古物件の取引に精通した不動産会社に相談しながら、検討を進めていきましょう。

住宅情報館では、中古物件の取引に精通したスタッフが、物件探しはもちろんリフォームや住宅ローンまでワンストップでサポートさせていただきます。お気軽にご相談ください。