定年後のセカンドライフは郊外へ?シニア世代の住み替え人気エリアとは

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最近では「人生100年時代」と言われ、定年後のセカンドライフをどう過ごすかが注目されています。中でも住まいは暮らしのベースとなるもので、充実したセカンドライフには欠かせない要素です。そこで今回は、首都圏でシニア世代の住み替えに人気のエリアはどこなのか、また住み替えのポイントなどについて解説します。

目次

1)セカンドライフの住まいは都心から郊外へ。シニア世代の人口移動

まず、総務省の人口調査から2022年のシニア世代(65歳以上)の住み替え傾向について見てみましょう。首都圏でシニア人口の転入・転出が多い街をランキングしてみました。

1-1. 首都圏でシニア世代の転出の多い街ランキング

まず転出が多いエリアを市町村別(政令指定都市は区別)に見てみましょう。

※転入超過数は、「転入数-転出数」で算出され、マイナス(▲)の場合は、転出超過であることを示しています。

■シニア世代の転出超過数 首都圏トップ10

意外なことに、首都圏でシニア世代の転出が多い街は、すべて東京23区でした。上位は城南~城西エリアが多く、11位以下もほぼ23区で占められています。

(※出典:2022年 人口移動報告より作成  ※マイナス(▲)は転出超過を表す)

1-2. 首都圏でシニア世代の転入の多い街ランキング

次に、首都圏でシニア世代の転入の多い街を見てみましょう。

■シニア世代の転入超過数 首都圏トップ10

一方、シニア世代の転入が多い街は、東京の多摩エリア、神奈川の県央~湘南エリア、千葉市、さいたま市など、都心から20~40キロ圏の郊外が上位となっています。 シニア世代の住み替えと言えば、郊外の一戸建から都心のマンションというイメージが強いのですが、データを見る限りまったく逆の傾向で、むしろ都心から郊外に移り住む方の方が多いようです。

(※出典:2022年 人口移動報告より作成)

1-3. なぜシニアは郊外に移り住むのか?転入上位の街の共通点とは

ではなぜシニア世代は郊外に移り住むのでしょうか。転入の多い街の共通点を探ってみましょう。まず、いずれの街も「郊外」とは言え、比較的大きな街であることが挙げられます。電車・バスなどの公共交通や、ショッピングモールやスーパーなどの商業施設、病院などの医療施設も充実した、いわば郊外の中心とも言える街です。

また総務省の調査によれば、高齢者の就業率は年々上がっており、65~69歳では50.8%(ほぼ2人に1人)、70~74歳は33.5%(ほぼ3人に1人)が働いているという結果が出ています。

こうしたことから、シニア世代の住み替えは、いわゆる「定年後の田舎暮らし」を求めているわけではなく、リタイヤ後も仕事を通じて緩やかに社会と接点を持ちながら、都市の利便性を享受しつつ、たまには観光地や都心部へのお出かけも楽しみたいといった、アクティブなニーズが浮かび上がってきます。

1-4. 不動産価格が安いのも郊外エリアの魅力

しかし、金銭面では定年後に収入が減少したり、人によってはまだ住宅ローンが残っていたりと、こうしたアクティブな暮らしを実現するのは簡単ではありません。そこで、注目したいのが郊外エリアの不動産価格です。先ほどのランキングの転出上位エリアと転入上位エリアの不動産価格(地価)を比較してみると、郊外に移り住む理由が見えてきます。

※出典:2023年 平均基準地価(㎡あたり)

上表の通り、転出上位エリアと転入上位エリアでは、地価に4倍~7倍もの差があることがわかります。仮に都心部に家を持つシニア世代が、その家を売却して郊外に移り住むとすれば、売却した利益で住み替え後の住まいを購入し、余ったお金は老後資金としてストックできる可能性もあります。さらに、不動産価格に比例する固定資産税や、食料品などの物価も郊外の方が安いため、日々の生活コストも削減できます。こうした都心と郊外の生活コストの差がシニア世代の郊外移住を後押ししている可能性があります。

2)年代別・都道府県別の転入超過数ランキング

次に、シニア期を3つの段階に分けてもう少し細かく見ていきましょう。そろそろ定年退職が視野に入る50代後半、定年後でも仕事や趣味にアクティブに活動できる60代後半、そして介護などの支援が必要になる80歳前後と、住み替えのタイミングによるエリア選びを考察してみたいと思います。

2-1. 定年を間近に控えた世代55~64歳

まずは、そろそろ定年が視野に入る50代後半~60代前半の世代です。転入超過数の上位5位を都道府県別にランキングしてみました。

東京都は、やはり八王子を筆頭に多摩エリアが強く、神奈川県は湘南エリア、埼玉県は都心から少し距離のある加須市、深谷市、春日部市、千葉県も都心から離れた印西市、茂原市、木更津市などが上位となっています。

近年、定年年齢は伸びているものの、60歳定年を採用している企業も多いので、比較的早いタイミングで退職した方が住み替えていると考えられます。都心から遠いエリアが多いのは、早い時期から生まれ故郷に戻ると決めていた方や、「退職後は◯◯で暮らしたい」など、リタイヤ後のライフプランがはっきりしている方や、地域への思いが強いからかも知れません。

2-2. 定年後のアクティブシニア世代 65~74歳

次に、60代後半~70代前半のいわゆるアクティブシニア世代です。

この世代も東京都は八王子・青梅が上位でとなっていますが、他の県では政令指定都市(横浜・相模原・さいたま・千葉)がランクインしてきました。この年代はまだ仕事を続けたいという方も多いので、求人が多く、都市部へのアクセスのよいエリアが選ばれているのかも知れません。

2-3. 第三者の支援が必要になり始める世代75~84歳

最後に、そろそろ何らかの支援が必要になる75~84歳の世代です。

ここでも東京都はあまり変化がなく、八王子、青梅、立川などが上位に入っています。神奈川県、埼玉県、千葉県では政令指定都市の順位が上がり、アクティブシニア世代よりもやや都市部に戻ってくる傾向が見られます。

仕事のリタイヤや体力の衰えとともに、子どもと同居・近居する方が増えたり、医療機関の充実した都市部のニーズが高まったりという事情があるのかも知れません。

そんな中でも、東京都の八王子市・青梅市、神奈川県平塚市は3世代を通じてトップとなっており、シニア世代にとっての暮らしやすさと価格のバランスのよい街と言えそうです。

3)セカンドライフの住まい、3つの選択肢とは

セカンドライフにおすすめの街がわかったところで、現在持ち家にお住まいのシニア世代の方が、住み替えの際にどんな家を選べばよいのか、3つの選択肢について考えてみましょう。

3-1. 今の住まいに住み続ける

まずひとつ目は、現在の住まいに住み続けるという選択です。住んでいる地域に不満がなく、住み慣れた土地を離れたくないという方におすすめです。

しかし、現在の家に住み続けるならば、いずれは老朽化した設備(キッチン・トイレ・浴室等)の交換やバリアフリー化などが必要になってきます。また、子どもが独立し夫婦2人の生活となると、広さや間取りもだんだん暮らしに合わなくなってきますので、タイミングを見ながら、生活状況に合わせて効率的なリフォームを検討するのが良いでしょう。

3-2. 今の住まいを建て替える

2つ目の選択肢は、今の住まいの建て替えです。建物の老朽化が進んでいてリフォームでは対処できない方や、家のサイズや間取りを大きく変更したい方などにおすすめです。

現在の敷地が広ければ、土地の一部を売却し、そのお金でコンパクトな平屋に建て替えるなどの方法も考えられます。

建て替えはリフォームと異なり、建物の耐震性や断熱性、設備、間取りなどを一新できるのが大きなメリットで、長期保証もつきますので安心です。また、低利のローンや税金の控除、補助金など、新築ならではのメリットもあります。リフォームと比較しながら検討を進めてみましょう。

3-3. 今の住まいを売却して住み替え

3つ目の選択肢は、今の住まいを売却しての住み替えです。住み替えのメリットは、住む場所と住まいを同時に一新できることです。現在の住まいが「駅から遠い」、「買い物が不便」など場所に対する不満をお持ちの方にはおすすめです。

例えば、広すぎる郊外の一戸建から駅近のコンパクトなマンションに住み替えれば、車が要らなくなったり、家事の負担が減ったりと生活そのものが大きく変わります。

また、前述の通り、都心から郊外に移り住めば、売却したお金の一部を老後資金としてストックできる可能性もありますので、地価が高いエリアにお住まいの方は積極的に検討してみるとよいと思います。

4)シニア世代の住み替えで気をつけるべきこととは

最後に、シニア世代が住み替えやリフォームを検討する上での注意点などについて解説します。

4-1. シニア世代が住み替える場合の資金計画

シニア世代の住み替えでもっとも注意しなければいけないのが資金計画です。定年退職後は収入が減少しますので、できるだけ自己資金を入れて多額のローンは避けましょう。ただし、一定の老後資金は手元に残しておくことも大切です。老後のライフプランをしっかり検討し、無理のない資金計画を立てるようにしましょう。

最近では、月々の返済は利息のみで、契約者が亡くなった時に自宅を売却して借入を返済する「リバースモーゲージ型住宅ローン」など、シニア向けの住宅ローンを利用する方も増えています。自己資金だけでは厳しいという方や、老後資金を多く手元に残したいという方はこうしたローンを検討してみるのもよいと思います。

関連記事:人生100年時代!シニア世代の住み替えと「リ・バース60」の活用法

4-2. 住み替え先のエリアの選び方

シニア世代の住み替えでは、できるだけ地域の中心駅・ターミナル駅などを選ぶ方がよいでしょう。将来的に車を使えなくなっても、こうしたエリアなら公共交通や徒歩で生活することができます。逆に過疎化が進んでいるエリアでは、公共交通が廃止されたり、商業施設が撤退したりする可能性があります。

特に郊外エリアのターミナル駅は、利便性は都心とほぼ変わらず、価格は半分~1/3程度の物件もあるので、積極的に検討してみるとよいと思います。

人生100年時代と言われる昨今、定年退職後も人生は20~30年続くことになります。充実したセカンドライフを送るためにも、積極的に住まいの住み替えを検討してみてはいかがでしょうか。

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