かつては「頭金2割」と言われたように、家は頭金を貯めてから買うのが一般的でした。しかし現在では、全額ローンで家を買うことも珍しくなくなり、しかも金利は史上最低水準。
カンタンに家が買えるようになった反面、返済ができず住宅ローン破綻する人も増えています。そんな時代だからこそ、後悔しない資金計画のポイントをしっかり学んでいきましょう。
目次
1、そもそも資金計画とは?
「家は人生で一番高い買い物」と言われるように、住宅購入では、数千万円という大きなお金が動きます。その大きなお金(資金)をどのように調達し、どのように払っていくかが資金計画です。資金計画の目的は「物件を買うため」だけでなく、買った家に暮らしながら、自分や家族が描くライフプランを実現することです。ステップごとに見ていきましょう。
2、2つのステップで考える、将来も安心な資金計画の作り方
資金計画を立てるには2つのステップがあります。次のような手順で進めていきましょう。
2-1.自己資金(頭金)を決める
まず、最初のステップは自己資金の額を決めることです。自己資金というと現在の預金額と考えがちですが、手元のお金をすべて自己資金に充ててはいけません。突然の病気など不測の事態に備え、数ヶ月分の生活費や、確実に必要になる子どもの教育費などは残した上で自己資金を決めましょう。
2-2.返済できる金額から住宅ローンの借入額を決める
次に、住宅ローンの借入額について考えます。ポイントは「借りられる額」ではなく「返済できる額」から決めるということです。
賃貸に住んでいる方なら、今支払っている家賃が返済額の目安となりますが、持ち家には次のような費用がかかってきますので、それらを引いたものがおおよその返済額になります。
・固定資産税、都市計画税(物件によるが都市部であれば月1万円くらい)
・管理費、修繕積立金、駐車場代(物件によるが月2~3万円くらい)※マンションのみ
逆に、住宅ローンの団体信用生命保険に加入する場合には、現在の生命保険料を減らせる可能性がありますので、その分は返済額にプラスしてもよいでしょう。
毎月の返済額が把握できたら、以下の表に当てはめて、借入額を算出します。銀行や不動産会社のサイトなどでは借入額のシミュレーションが簡単におこなえる機能が提供されていますので、利用してみるのもよいでしょう。
住宅情報館ローンシミュレーション https://www.jutakujohokan.co.jp/simulation/
■ 借入額算出表
フラット35 (全期間固定金利 1.06% 元利均等 ボーナス返済なし)にて試算
借入期間 | |||
30年 | 35年 | ||
毎月の返済額 | 8万円 | 2,466万円 | 2,806万円 |
9万円 | 2,774万円 | 3,156万円 | |
10万円 | 3,082万円 | 3,507万円 | |
11万円 | 3,390万円 | 3,858万円 | |
12万円 | 3,699万円 | 4,209万円 | |
13万円 | 4,007万円 | 4,559万円 | |
14万円 | 4,315万円 | 4,910万円 | |
15万円 | 4,623万円 | 5,261万円 |
2-3.「自己資金+住宅ローン」が住宅購入の「総予算」
この2つのステップで算出した「自己資金」と「住宅ローン借入額」を足したものが、住宅購入の「総予算」です。この総予算の中から以下のような購入費用を引いたものが、物件価格の目安になります。
(住宅購入にかかる主な費用)
・物件購入の諸費用――― 印紙代、登記費用、仲介手数料、不動産取得税、火災保険料、固定資産税の精算金、管理費・修繕積立金等・駐車場代の精算金 等
・住宅ローン諸費用――― 印紙代、手数料、保証料 等
・リフォーム費用―――― 中古物件を購入した場合のリフォーム費用
・照明・家具代――――― 新居に合わせて購入するカーテン、エアコン、照明、家具 等
・入退去費用―――――― 引越し代、賃貸の原状回復費用 等
・建築中のローン返済―― 土地を購入して注文住宅を建てた場合の建築中の返済(金利)負担
住宅購入にかかる費用を自分で計算するのはかなり大変なので、不動産会社の担当者や住宅ローンアドバイザーなどの資格を持つプロにきちんと計算してもらうことをおすすめします。
3、自己資金が足りない時は、税制優遇を使った親からの資金援助を検討しよう。
では予算が足りず、希望する物件を購入することができない場合にはどうすればよいのでしょうか。特に年齢が若く貯蓄の少ない世帯では、しばしばこのような問題が発生します。
そのようなときは、親や祖父母からの資金援助を検討してみましょう。国も住宅取得資金の贈与には特例を設け、若年層の住宅購入を支援しています。
3-1.住宅取得資金贈与の特例とは
住宅取得等資金の贈与とは、住宅を取得(購入・新築・増改築)するための資金を、父母や祖父母など(直系親族)から贈与してもらう場合に、一定額までは非課税で贈与できるという制度です(通常の非課税枠は年間110万円まで)。シニア層から若年層への資産移転と、若年層の住宅取得を後押しするための政策です。
3-2.住宅取得資金贈与の特例を使った場合の非課税限度額
では、特例を使うといくらまで非課税で贈与することができるのでしょうか。
下表の通り平成32年9月までに契約すれば、省エネ基準などを満たす良質な住宅で1,200万円まで、一般的な住宅でも700万円まで非課税で贈与できます。しかし、契約時期が遅くなるほど、非課税限度額が減少していきますので、親などからの資金援助を検討している方は、早めに検討した方がよいでしょう。
住宅用家屋の取得等に係る
契約の締結期間 |
非課税限度額
良質な住宅用家屋 |
非課税限度額
左記以外の住宅用家屋 |
平成28年1月1日~
平成32年3月31日 |
1,200万円 | 700万円 |
平成32年4月1日~
平成33年3月31日 |
1,000万円 | 500万円 |
平成33年4月1日~
平成33年12月31日 |
800万円 | 300万円 |
※出典:国税庁ホームページ
※消費税等が10%にならない場合に限る
3-3.贈与する側のメリット
住宅取得資金を贈与する側のメリットとしては「相続税対策」が挙げられます。父母・祖父母などが自宅や現金などの資産を保有している場合、将来的に相続税がかかる可能性があります。相続が発生する前に、資産を子や孫に移転(生前贈与)すれば、相続税は軽減されますが、多額の贈与税がかかります。そこでこの特例を使い、住宅購入のための資金として生前贈与すれば、非課税で確実に資産を移転することができるのです。
3-4.住宅資金贈与をする場合には必ず専門家に相談を
このように大きなメリットがある住宅取得等資金の贈与ですが、かなり多額の資金を非課税で贈与できることから、建物の面積、築年数、入居時期など、要件が細かく定められています。もし要件や手続きを間違えて、特例が受けられなかった場合には、多額の贈与税を支払うことになりますので、くれぐれもご注意ください。親や祖父母からの資金援助をお考えの方は、まず専門家に相談してみることをおすすめします。
4、家は買ってからの方がずっと長い。持ち家にかかるランニングコスト
ここまで住宅購入時の資金計画について学んできましたが、購入してからずっとかかってくる費用(ランニングコスト)のことも考えておかなければなりません。
4-1.固定資産税、都市計画税
持ち家には毎年固定資産税、都市計画税がかかってきます。
4-2.管理費
マンションの場合は、毎月共用部分の管理費がかります。
4-3.修繕費用
マンションの場合は、将来の大規模修繕のために、毎月修繕積立金を支払います。また、一戸建ての場合にも10年に1回程度、外壁や屋根のメンテナンスが必要になりますので、同程度の積立をしておくことが望ましいでしょう。
4-4.保険料
万一の災害や事故に備える火災保険(地震保険)は、ずっとかかる費用です。また、フラット35の団体信用生命保険に加入した場合には、毎年団信保険料がかかります。(平成29年9月30日申込分まで。平成29年10月1日以降の申込分は団信保険料が金利に含まれます。)
4-5.光熱費
一般的に、賃貸から持ち家に住み替えると、部屋数が増えたり、電気の契約容量(アンペア)が上がったりするので、光熱費が上昇すると言われています。
5、長期の資金計画はキャッシュフロー表でチェックしよう
このように、住宅購入の資金計画は、購入時の資金調達と購入後のランニングコストの両面から考える必要がありますが、それを簡単にチェックできるのがキャッシュフロー表です。
キャッシュフロー表は、ファイナンシャルプランナーなどに依頼すれば作成してもらえますが、簡易的なものはExcelなどを使って自分でつくれるので「本当に買って大丈夫かな?」と不安をお持ちの方は一度つくってみることをおすすめします。
5-1.キャッシュフロー表のつくり方
キャッシュフロー表は、まず横軸に期間(1年ごと)をとり、縦軸に家族の年齢とライフイベントを記入します。ライフイベントとは、出産、子どもの入学・卒業、世帯主の独立・転職など、家族のライフプランを書き込んでいきます。
次に、縦軸に毎年の収入、支出、貯蓄残高を項目ごとに記載します。先に書いたライフイベントに合わせて、収入の変化や必要な支出をきちんと記載するのがポイントです。家計簿をつけている方は比較的簡単につくることができるでしょう。
出典:日本FP協会ホームページ(https://www.jafp.or.jp/know/fp/sheet/)
5-2. キャッシュフロー表のチェックポイントは「貯蓄残高」
キャッシュフロー表をつくることによって、長期のライフプランとお金の出入りをひと目で把握することができますが、最大のチェックポイントは「貯蓄残高」です。貯蓄残高が常にプラスであること、年々減少していないことを確認できれば安心です。
6、住宅購入だけを目的にせず、家族のライフプランに合わせた資金計画を
住宅購入にかかわる資金計画、ご理解いただけたでしょうか?
重要なのは「物件を買うこと」だけを目的にしないことです。まず自分や家族のライフプランに向き合い、将来のことを話し合い、住宅にどの程度のお金をかけるべきかを理解した上で物件を決めることが大切です。また、的確な判断をするために、できるだけ早いタイミングで不動産やお金の専門家から客観的なアドバイスを受けることをおすすめします。